1. 人事・労務
  2. 労務管理

フルタイムパート・アルバイトの「社会保険・36協定・有給」はどう扱われる?

公開日
目次

「アルバイト」という言葉に法的な定義はありませんが、学生が空き時間を使って収入を得るとか、本業を持っている人がダブルワークで別の会社で短時間働くといった場合を指すのが「アルバイト」の一般的なイメージかと思います。

しかし、「フリーター」という言葉が徐々に市民権を得たり、企業の人件費削減などで非正規雇用が増えたりした結果、いつの間にか「フルタイムだけどアルバイト」という働き方が珍しいものではなくなってきました。

この「フルタイムアルバイト」という働き方においてしばしば相談を受けるのは、「フルタイムで働いているのに社会保険に入れてもらえない」とか「正社員に比べて給料が安すぎる」といった労働条件に関することです。

そこで、本稿では正社員との対比も意識しながら、「フルタイムアルバイト」の労働条件や労務管理上の注意点について解説をしていきたいと思います。

社会保険や雇用保険は「正社員と同じ」

社会保険や雇用保険は、「正社員」「契約社員」「アルバイト」といった雇用区分で、加入条件に差を設けておらず、加入するかどうかは、下表の通り、所定労働時間と雇用期間で定められています。

社会保険と雇用保険

従いまして、フルタイムアルバイトの場合は、少なくとも2ヶ月以上勤務しているならば、社会保険および雇用保険には加入していなければなりません

36協定や有給も正社員同様なので要注意

また、時間外労働を命じるには36協定が必要とか、6ヶ月以上継続勤務して8割以上出勤した場合は年次有給休暇を与えなければならないといったことも正社員と同じです。

有給休暇の付与日数も、フルタイムアルバイトなら正社員と同等で、勤続6ヶ月後に付与されるのは10日となります。

年末調整、住民税の特別徴収といった事務的な便宜、定期健康診断やストレスチェックなどの健康管理といった点も、フルタイムアルバイトは正社員と同様に行われなければなりません。

賃金や福利厚生の違いは許されるのか?

それでは、フルタイムアルバイトの場合、賃金や福利厚生なども正社員と全く同じでなければならないのでしょうか?

例えば、正社員は月給制だが、フルタイムアルバイトは時給制とか、正社員にだけ賞与や退職金が支払われるといったような場合です。

この点は、所定労働時間は同じでも、職務内容や役割、責任などに違いがある場合には、問題は無いと考えられています。

例えば、フルタイムアルバイトは勤務地の変更はないが、正社員の場合は会社の命令で日本全国転勤の可能性があるとか、フルタイムアルバイトは定型業務に限られるが、正社員は顧客からのクレーム処理など定型外の業務や精神的負担の大きい業務も担当するといった違いがある場合です。

逆にいえば、職務内容が正社員と同じにも関わらず、フルタイムアルバイトだけ不当に低い待遇を受けている場合は、待遇改善を求めることができる可能性があります。

労働契約法では正社員と非正規社員の不合理な労働条件差別を禁じており、最近では「正社員に支払われている各種手当が契約社員に支払われないのは労働契約法違反にあたる」という判決が出た裁判例もあります。

また、正社員には社員食堂を使わせて、フルタイムアルバイトを含め非正規社員には使わせないというような福利厚生の差別的扱いも、直ちに違法となるものではありませんが、パートタイム労働法などで定められた「努力義務」に反していますし、非正規社員のモチベーションにも影響するでしょう。

これらを鑑みても、正社員と同等の福利厚生の提供を目指すことが望ましいでしょう。

おわりに

「フルタイムアルバイト」は、フルタイムで働いているにも関わらず、正社員に比べ低い労働条件で働いているというのが、多くの場合の実情であると思います。

確かに、企業側の立場としては、人件費の予算制約や、雇用リスクの面などから、フルタイムで働く人を全員を正社員にしたり、フルタイムアルバイトの労働条件を正社員並みに引き上げることは難しいでしょう。

しかしながら、働き方改革の中でも「同一労働同一賃金」は重要な項目として捉えられている、世の中の大きな流れのひとつともいえます。

「役割」「責任」などの部分で合理的な差を設けるのは良いとしても、法的に必要な社会保険への加入などはもちろんのこと、福利厚生などの努力義務の部分に関しても労働条件向上に努め、正社員だけでなく、フルタイムアルバイトも含め、働きやすい会社を目指してほしいと願っています。

人気の記事