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「経営者が“なぜ”を語れなければ、働き方改革は失敗する」JINS MEMEが切り拓く働き方の未来[前編]

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慢性的な社会問題となっている、過重労働などに晒される日本の労働環境。そんな背景もあり、世間では「働き方改革」が叫ばれています。

そんなさなか、日本企業はもちろん、海外企業や大学なども交えた、「HR-Solution Contest ―働き方改革×テクノロジー― (以下、HR-Solution Contest)」が開催されました。経済産業省及びIoT推進ラボがタッグを組み、産学官連携で働き方の未来を提言する重要な足がかりとなることが期待されます。

同コンテストで見事グランプリを受賞したソリューションが、株式会社ジンズの「JINS MEME OFFICE BUSINESS SOLUTIONS」。

このソリューションに期待される「改革」は、どのような未来を切り拓いていくのかに迫るべく、JINS MEMEグループマネジャーの井上 一鷹さんにお話をお伺いしました!

株式会社ジンズ 井上 一鷹

慶応義塾大学理工学部応用化学卒業後、新卒でADLに入社。大手製造業を中心とした事業戦略、技術経営戦略、人事組織戦略の立案に従事。現在は株式会社ジンズにて、JINS MEMEグループマネジャーを務める。2017年7月、「JINS MEME」を活用したアイデア・ソリューション「JINS MEME OFFICE BUSINESS SOLUTIONS」で、「HR-Solution Contest ―働き方改革×テクノロジー―」のグランプリを受賞。

日本が抱える人事労務の課題

この度のソリューションがどのような未来を切り拓くかについて迫るにあたり、その背景となる「日本が抱える人事労務課題」について井上さんの見解を、お聞かせいただけますでしょうか?

井上さん

今後、障壁となるだろう人事労務の課題としては大きく分けて3つ挙げられると思います。

(1)労働人口と労働時間の減少により、成果水準を保つなら「生産性」を1.5倍にする必要がある

井上さん

最初に上げられるのは、「生産性」の問題です。

これを因数分解すると2つの課題に分けられます。1つが「労働人口の減少」、もう1つが「労働時間の削減」です。

まず、前者についてですが、日本はこれからの時代の中で、生産年齢人口(15〜64歳の人口)、つまり「労働人口」の減少が進み、2030年には6,700万人ほどになると言われています。これは、2010年時点で8,000万人だった労働人口が、20年の間で実に16.3%(1,300万人)も減少するということです。

労働人口の減少

提供:JINS MEME OFFICE BUSINESS SOLUTIONS

次に、後者の「労働時間の減少」です。

これはどういうことかと言うと「残業時間削減」に伴う、労働時間の減少を意味します。

仮に1ヶ月の就業時間を1日8時間・月20日で計算すると、計160時間です。

これにVorkersが調査した残業時間平均47時間(*1;回答者数68,853名)を当てはめて考えると、1ヶ月の実質就業時間は207時間となります。

「働き方改革」の中で残業時間削減は重要なミッションのひとつですし、一瞬良いことのように見えます。それが一転、課題になってしまうのでしょうか?

井上さん

確かに、残業は本来イレギュラーなものでありますし、削減に向けた動きがあります。

しかし、事実上、残業がこれまでの産業を支えてきたことは向き合わなければなりません。それを前提に、仮に「残業時間をゼロ」にするとなれば、22.7%もの労働時間を削減するということになります。

残業時間

提供:JINS MEME OFFICE BUSINESS SOLUTIONS

これらを踏まえ「労働人口」×「労働時間」×「生産性」の積を成果として計算してみましょう。「労働人口」が16.3%、「労働時間」が22.7%減少していますから、これを掛け合わせると、成果は従来の64.7%(約3分の2)にまで落ち込んでしまいます。

実際にはもっと複雑な計算を要するものの、「労働人口」・「労働時間」両者の減少分を代替し成果を維持するには、単純計算で、(現状の生産性を1と考えた時に)生産性を2分の3、つまり1.5倍にする必要があります。

残業時間と生産性

提供:JINS MEME OFFICE BUSINESS SOLUTIONS

(2)経営者が働き方改革の「ナゼ」を語れていない

井上さん

次に「経営者」のビジョンの課題です。

前述のような、避けては通れない社会的課題があるなかで、「働き方改革」が推進されていますが、このキーワードを鵜呑みにして実行に移している会社が多いのではないでしょうか。

このような状態で「働き方改革をしよう」だとか「生産性を上げよう」と社員に訴えたところで、上手くいくとは考えられません。

鵜呑みにするだけでは「なぜそれに取り組むのか」を経営者自身が理解できていないからです。

経営者が理解していないのに、それを進めるとなると、従業員側も当然理解しようがなさそうです。

井上さん

はい、従業員に浸透するはずもなく、失敗に終わると思います。

何が課題かは各社で異なることであり、「なぜそれに取り組むのか」についてコミットメントする必要があるのではないでしょうか。

(3)現状分析せずに始める働き方改革は、体重計に乗らずにダイエットを始めるようなもの

井上さん

あと、これは今回のソリューションにおいて、今の課題を挙げる時によく話す例え話なんですが、現状を分析し把握することなく始める働き方改革って「体重計に乗ることなくダイエットを始める」ようなものだと思うんですよね。

なるほど、とてもわかりやすい例えですね(笑)

井上さん

そうなんですよ(笑)

しっかりダイエットしようとすると、体重や体脂肪率などによって、実行すべき最適なダイエット手法は変わります。

それなのに、体重計に乗らなければ解決の道筋は得られません。働き方改革にも同じことが言えると思います。

井上さん

「集中度」をインジケーターとして見える化し「生産性」を推し量る

それではなぜ「体重計に乗らない」経営者が多いのでしょうか?

井上さん

端的に言うと、「客観的な定量指標が無い」からだと考えています。

例えば「生産性を上げる」と言ったところで、その「生産性」を示すものが何なのかを定義できていない。

そこで我々が着目したのが「集中度」です。

イノベーションに欠かせない「コミュニケーションとコンセントレーション」

「集中度」が「生産性」を示す指標である、という認識であっていますか?

井上さん

「集中度=生産性」というわけではありません。ここでは、生産性の議論よりも「イノベーション」をポイントに考えるとわかりやすいと思います。

「イノベーション」を起こせるか起こせないかで、経済の発展は左右されます。労働人口が減少し、労働時間も削減する方向で世の中が動いている中で、その必要性は一層増していきます。

「イノベーション」とはつまり技術革新であり、従来の仕組みに対して全く新しい観点や切り口が必要になります。

では、新しい観点や切り口を模索するには何が必要か? その中で大切な要素が「コミュニケーション」と「コンセントレーション」だと考えています。

これまでの話を踏まえると、その「コミュニケーション」と「コンセントレーション」を定義する必要がありそうです。

井上さん

まず、「コミュニケーション」については、日立さんが取り組まれている「ハピネス」などが挙げられると思います。「ハピネス」とは「職場の幸福度」を見える化したものです。こちらの詳細についてはこの場では割愛させて頂きます(*2)。

そして一方の「コンセントレーション」ですが、つまりは「集中」です。これまで、「集中」はそれを指標として定義されたことがない曖昧な概念でした。

逆に考えると、ないからこそ定義する必要がある。

そしてこの「集中度」をインジケーターとして、メガネ型ウェアラブルデバイス「JINS MEME」で計測し「JINS MEME OFFICE」というアプリによって見える化させることに成功しました。

JINS MEMEが「集中度」改善のPDCAサイクルをもたらす

長い歴史でみるとウェアラブルデバイスの歴史も浅いですし、そんな中で「集中度」を定義するには、「確かな計測データ」であることが必要だと思います。その信頼性を担保する強みや特徴は、どのような点にあるでしょうか?

井上さん

主に次の3点によって、それらの確かなデータを担保しています。

  1. 普段使いできるため、TPOを問わず365日計測できる
  2. 数値としてログが取れる=頑張るきっかけを得られる
  3. 「集中度」をインジケーターとして最適な改善施策を洗い出し、PDCAをまわせる

1つ目の、「普段使いできる」という点に関しては、今使っている眼鏡がまさに「JINS MEME」(JINS MEME ES)なのですが、ウエリントンタイプのフレームで、普段から着用しても違和感のないデザインであることがおわかりいただけるかなと思います(GOOD DESIGN AWARD 2015受賞 *3)。

JINS MEME

提供:株式会社ジンズ

私も眼鏡が好きでして、ウェアラブルであるということを忘れ、「黒ぶちメガネ」としてカッコイイつくりだなあと感じます。
それと2点目に挙げられている、「数値としてログが取れる」ということに関しては、ユーザー目線で考えても腹落ちします。私自身、最近フィットネスアプリで歩数の記録を追っているのですが、例えば、その日の歩数記録が8,000歩だとしたら「あと2,000歩頑張って1万歩を目指そう」といった具合にもう少し頑張ろうって気持ちになれるんですよね。

井上さん

その通りだと思います。これを「JINS MEME」に当てはめて考えると、自分はどういうときに集中できている、できていないということが見える化され、客観的に知ることができます。

そして3点目に挙げたように、その人に適した方法をよりブラッシュアップすべく、自ずとPDCAサイクルを回すようになります。

PDCAサイクル

提供:JINS MEME OFFICE BUSINESS SOLUTIONS

ちなみに、私が最も集中できる場所がどこなのか検証してみたんですが、悲しいことに「オフィス」が最も集中できず、一方最も集中できるのが「公園」だったんですね。

恐らくですが、オフィスでは常になんらかの会話が聞こえますが、なんとなく聞こえる会話でも意味を持って耳に入ってくるので、どうしても気になってしまうんだと思います。

一方、公園には子どもたちが多くいますが、子どもたちの「ワー、キャー」という声は、意味を持って耳に入ってくるわけではないので、特段気になっていないのでしょう。

今のは場所の観点でしたが、これが曜日の観点だとどうなるか?

曜日ごとの深い集中の割合

提供:JINS MEME OFFICE BUSINESS SOLUTIONS

こちらのグラフを見ていただくと、ウィークデーで見ると水曜日に最も集中しているのがわかります。最も生産性が高い曜日と言っても良いでしょう。

しかし、世の中的には水曜日を「ノー残業デー」として設定している会社も多いですよね? このように客観的に把握できれば、最も生産性が高い日だからこそ、この日に集中的に業務を進めようとすることもできる。

逆説的に言うと、「ノー残業デー」だから集中度が高まっているのかもしれません。であるならば、他の曜日で「ノー残業デー」を実施して、それぞれの違いを分析すればいい。それを見える化できる、というのが重要です。

場所や時間の例を挙げましたが、このように集中度が上がる下がるというのは要因によって異なりますし、何より測ってみないとわからないことなんです。

1日15分集中時間が伸びれば、1年で61時間もの伸長に

これらを会社単位で考えると、生産性に関わる「従業員の集中度」を計測することで、「集中をもたらす要因は何なのか」ということを見える化させ、そのための必要な施策を洗い出すことができると考えて良いでしょうか?

井上さん

そうですね、「これまでの働き方改革」で忘れられがちであると同時に、「各社に適した働き方改革」を定義し評価するには欠かせない「尺度」や「指標」にあたるのが、まさに「集中度」であると思います。

例えば、今回のソリューションの試験運用において、株式会社ビズリーチさんとタッグを組み、エンジニアが最も集中できる時間(Time)を洗い出すべく検証を行いました。

集中できる時間帯の検証

提供:JINS MEME OFFICE BUSINESS SOLUTIONS

26人の社内エンジニアを対象にし、1週目で各エンジニアの集中できる時間帯を分析、そして2週目に各エンジニアの集中できる時間帯へとシフトした結果、1日あたりの集中時間が「15分間」伸びるという結果が出ました。

これを1年(250日勤務)で計算すると、実に61時間も集中時間が伸び、結果的に生産性向上への寄与を期待できるということになります。

61時間も集中時間が伸びる

提供:JINS MEME OFFICE BUSINESS SOLUTIONS

なるほど。「1日15分」というのが分析できれば、その時点で「生産性向上を目指すにあたり、1年間で集中時間を61時間伸ばせることがわかったので、タイムシフトを本格的に導入します」というように具体的な説明ができ理解を得られスムーズに施策を実行できそうですし、前半でも触れた「なぜ」とも大きくリンクしそうですね。

井上さん

まさにおっしゃる通りだと思います。

今回お話したような要点を抑え、「JINS MEME」を活用することで、行き当たりばったりでない、各社に適した「本当の働き方改革」を目指すことができると考えています。

【参考】
*1:調査レポートVol.4 約6万8000件の社員クチコミから分析した’残業時間’に関するレポート – VORKERS
*2:AIの働き方アドバイスが職場の幸福感向上に寄与 – 株式会社日立製作所
*3:JINS MEME ES – JINS MEME

JINS MEME OFFICE BUSINESS SOLUTIONS ]

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