コンカーが主導した「電子帳簿保存法」規制緩和マル秘ストーリー【働き方を考えるカンファレンス2018】

2018.03.26 ライター: 藤田 隼

(前回の記事『「バックオフィスの仕事が無くなる」の本意』はこちら


2018年2月15日、一般社団法人at Will Work主催の、働き方を考えるカンファレンス2018『働くを定義∞する』が開催されました。

【人 × テクノロジー】を軸に、株式会社コンカー 代表取締役社長 三村 真宗さんと、株式会社SmartHR 代表取締役社長・宮田 昇始が登壇。モデレーターは一般社団法人at Will Work 理事でSansan コネクタの日比谷 尚武氏 さんです。

全4回に分けてお送りするこちらのセッション、3記事目の今回は「コンカーとSmartHRは国をどう巻き込み連携しているのか?」について迫ります。

法規制や国の動きにどう対応する?

日比谷さん:国の規制、あるいはデジタル化なども進んでいますが、そのような動きに対して、コンカーとSmartHRはどう向き合っているのかを伺えればと思います。まずは三村さんからお願いします。

三村さん:コンカーに関わる法律に「電子帳簿保存法」というものがあり、日本ですと領収書の7年間の原本保管が義務付けられております。これに対して2年越しで政府に働きかけまして、2017年1月に、スマートフォンで撮った領収書画像で原本を代替できるように規制緩和されました。

海外ですと領収書の原本保管が義務付けられていない国が増えています。つまり「画像」で済む国が増えています。日本はそこが遅れていたんですね。

コンカーが日本市場に展開するなかで、規制緩和が遅れたまま事業展開しても、結局社会的な貢献って頭打ちになるだろうということで、「法律から変えるべきだ」と決意して政府に働きかけました。それが実を結び規制緩和に至ったと。

「正しいところに正しいタイミング」で持ちかければ規制は変わる

三村さん:規制緩和といいますと非常にハードルが高いように思いますけれども、「正しいところに正しいタイミング」で持ちかければ変わるんだということを実感しています。この例では、「領収書の電子化」によって、日本全体で1兆円の経済効果が生まれるという定量的なメリットを提示しました。

当初我々はこの提言を財務省と国税庁に持ち込んでいたんですね。しかしながら、規制というのは「守る側」と「変える側」がありますので、「守る側」に持ち込んでも絶対に変えてもらえないんです。規制官庁と改革官庁という構図がある中で、財務省と国税庁はまさに「守る側」の規制官庁だったわけです。

「改革官庁」を通した「規制官庁」へのアプローチ

三村さん:なので途中で作戦変更し、経済産業省を「改革官庁」として位置付け、まずは経産省にアプローチし、経産省経由で「規制官庁」である財務省や国税庁と調整を図っていくというアプローチをしました。

定量的なメリットをふまえた会議、そして改革官庁を味方につけるという構造的なアプローチ。このように「正しいところに正しいタイミング」で持ちかけられれば、難しいものも不可能でなくなるというような実感を得ています。

日比谷さん:つまり、世の中によってはあるべきもの、必然的に求められるものだということを、定量的なメリットをもってしっかりと算出し、改革官庁も巻き込んで推進していったということですね。

三村さん:そうですね。スマートフォンのようなものを使って領収書を撮影し、画像として保管することで代替するというアイデア自体、国は持っていなかったんですよね。なのでコンカーがその気付きを与えられたということで、逆に経産省から感謝されました(笑)。

自社にとっての都合ではなく「世の中ごと」として巻き込んでいく

日比谷さん:自分たちの会社に都合がいいからということではなく、世の中ごととして非常に大きなメリットがあり、そのためには、規制を変える姿勢も必要になることもある。逆に企業さんからすると、今こういう法律があるからとか、制約・ルールがあるからといって、それにとらわれずに法規制を変えていこうとか、変わっていく兆しを受けて、どう自社から変革を起こしていこうか、などの材料を見つけられるかが重要になりそうですね。

三村さん:そうですね。あきらめる必要はないと思います。この規制緩和は2年かかりましたし、今もう1つ働きかけていますけれども、結構地道な活動を粘り強くやっています。

国を挙げた電子化の潮流。まだ低い人事労務領域での利用率をどう改善するか?

日比谷さん:一方、SmartHRさんはいかがですか? 僕の知っている限りでは、国のオープン化の流れに上手く対応しているように見えるんですけど、いかがでしょうか。

宮田:我々の人事労務のジャンルですと、国としても今この分野の電子化をとても後押ししているので、その流れに乗れたかなと思っております。

電子申請の窓口を総務省が運営しており、2015年にAPIを公開したのですが、それ以前から実は電子申請できたものの、私たちのジャンルである社会保険・労働保険分野の電子申請利用率だけ異様に低かったんです。なんと約9%と一桁台でした。一方利用率が高いところですと「登記」や「財務」などのジャンルの利用率がそれぞれ66%、58%で、6倍から7倍もの差がついていました。

行政側も「このままではいけない」ということで、APIをオープンにし、より使いやすいシステムを民間に作ってもらうことで広げようという動きがありました。
我々としてもその流れに乗りまして、総務省の方たちからも「どうやったらAPIを使いやすくなりますか?」といったヒアリングもされるまでの関係性を構築できています。

行政への働きかけによってボトルネックが解消?

宮田:あと、我々のジャンルの中でボトルネックになっていたのが「電子証明書」です。オンラインで使う印鑑のようなものなんですが、取得自体はやってみると意外にカンタンなんですが、どうも難しく思われていたり、そもそもやり方がわからなかったりと、これがボトルネックとなり電子申請普及率が高まらないなというのが我々ベンダーの悩みでした。

この「電子証明書を何とかしてください」ということで行政に働きかけていましたが、2020年以降、電子証明書が不要になるかもしれないというような報道が先日ありまして、これは我々が思っていた以上に行政側も動きが早いなと感じました。

日比谷さん:おふたりの話を聞いていると、イマの時代と実態がかけ離れてきた既存のルールや古いルールの中で無理やり仕組み化するのではなく、近い将来を見越してあるべき姿に向かって進むプレイヤーもいるのだと感じます。その流れを読んで仕組みを作っていく、あるいは政府に働きかけていくというのを検討するのも良いのかなと思います。


(「コンカーとSmartHR。両社長が語る「組織づくり」へのこだわりとは?」に続く)

藤田 隼

SmartHR mag. 2代目編集長。ソーシャル系スタートアップでSNSマーケティングや自社メディア運営に携わり、2015年よりメディアに特化した事業会社で複数サイトのディレクターを経験した後、SmartHRにジョイン。ウェブ解析士。
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