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「両立支援等助成金」とは?コース別の概要と支給金額を解説

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目次

こんにちは、社会保険労務士の飯田 弘和です。

「両立支援等助成金」とは、従業員が働きながら育児や介護との両立を行える制度を導入したり、女性の活躍推進のための取り組みを行う事業主に金銭的な支援をする制度です。助成金を受給するには、助成金支給のための要件を満たし、支給申請することが必要です。

今回はこの「両立支援等助成金」の概要を解説します。

「両立支援等助成金」のコース

両立支援等助成金については、次の6つのコースがあります。

  1. 出生時両立支援コース
  2. 介護離職防止支援コース
  3. 育児休業等支援コース
  4. 再雇用者評価処遇コース(カムバック支援助成金)
  5. 女性活躍加速化コース
  6. 事業所内保育施設コース

ただし、6の事業所内保育施設コースについては、現在、新規申請受付が停止されています。

したがって、現在利用できる両立支援等助成金は、5つのコースとなります。各コースについての簡単な概要と支給目的は後述します。

「両立支援等助成金」の前提事項

「中小企業」の範囲

各コースで区分される「中小企業」とは、以下の表で、「資本金または出資の総額」か「常時雇用する労働者の数」のいずれかを満たす企業をいいます。

各コースで区分される「中小企業」について

※ ただし、「女性活躍加速化コース」は、産業に関わりなく常用労働者数300人以下の企業をいいます。

個人事業主や一部の医療法人・学校法人等で資本金等のない事業主については、常時雇用する労働者の数で判定します。

出向者(在籍出向者)については、出向先・出向元の両方で労働者数に算入されます。

派遣労働者については、派遣元のみの労働者数に算入されます。

また、複数の業種に該当する事業活動を行っている場合には、主たる事業活動によって業種を判断します。

この場合、収入額・販売額・労働者数・設備の多寡等によって実態に応じて判断することになります。

生産性要件

生産性要件を満たした場合、各コースにおいて助成金の割増されます。

以下の2つの要件を満たす必要があります。

(1)助成金支給申請を行う直近の会計年度における「生産性」が、

  • その3年度前に比べて6%以上伸びていること または、
  • その3年度前に比べて1%以上6%未満伸びていて、金融機関から一定の「事業性評価」を得ていること

(2)1の算定対象期間について、雇用する雇用保険被保険者を事業主の都合によって解雇等していないこと。

「両立支援等助成金」のコース別支給金額

具体的に、両立支援等助成金の各コースの支給金額をみていきましょう。

(1)出生時両立支援コース

こちらのコースは、男性の育児休業や育児目的休暇の取得促進を目的にしています。

男性従業員が育児休業や育児目的休暇を取りやすい職場風土作りに取り組み、男性従業員に育児休業や育児目的休暇を取得させた事業主に対して助成金が支給されます。

支給額は下表のようになっています。

出生時両立支援コースの助成金の支給額

※ 支給額の表中の < > 内の金額は、生産性要件を満たした場合の支給額です。
※ 【1】は、要件を満たす育児休業取得者が初めて生じた場合のみ。
※ 【2】は、過去に男性の育児休業取得実績がある企業も対象。1事業主当たり1年度10人(支給初年度のみ9人)まで。
※ 【3】は、1事業主1回限りの支給です。

(2)介護離職防止支援コース

こちらのコースは、仕事と介護の両立支援を目的としています。

介護支援プランを策定し、プランに基づいた従業員の円滑な介護休業の取得・職場復帰に取り組んだ中小企業事業主、または介護のための柔軟な就労形態の制度(介護両立支援制度)を導入し、利用する従業員がいた際に中小企業事業主に対して助成金が支給されます。

この助成金が支給されるのは、中小企業事業主のみとなります。

介護離職防止支援コースの助成金支給額

※ 支給額の表中の < > 内の金額は、生産性要件を満たした場合の支給額です。
※ 「介護休業」「介護両立支援制度」とも、1事業主1年度5人までの支給です。

(3)育児休業等支援コース

こちらのコースは、育児を行う従業員が安心して育児休業を取得しやすく、職場に復帰しやすい環境の整備を図ることを目的としています。

育休復帰支援プランを作成し、プランに基づいて従業員の円滑な育休取得・職場復帰に取り組んだ場合、育休取得者の代替要員を確保し育休取得者を原職復帰させた場合、復帰後の仕事と育児の両立が特に困難な時期の従業員の支援に取り組んだ場合に、中小企業事業主に対して助成金が支給されます。

この助成金が支給されるのは、中小企業事業主のみとなります。

育児休業等支援コースの助成金支給額

※ 支給額の表中の < > 内の金額は、生産性要件を満たした場合の支給額です。
※ 「休業取得時」「職場復帰時」は、1事業主2人までの支給です(無期労働者1人、有期労働者1人)
※ 「代替要員確保時」は、1事業主あたり1年度10人まで5年間支給されます。
※  「職場復帰後支援」 は、制度導入については、AまたはBの制度導入時いずれか1回のみの支給。制度導入のみの申請は不可です。
※ 同制度利用は、最初の申請日から3年以内5人まで支給。1事業主当たりの上限は、A:200時間 <240時間>、B:20万円<24万円>までです。

(4)再雇用者評価処遇コース(カムバック支援助成金)

こちらのコースは、育児・介護等を理由とした退職者の復職支援および企業の生産性向上に資する再雇用の支援を目的としています。

妊娠・出産・育児・介護または配偶者の転勤を理由として退職した方が、復職が可能となったときに従前の勤務経験が適切に評価され、配置・処遇がされる再雇用制度を導入した上で、希望者を再雇用した事業主に対して助成金が支給されます。

再雇用者評価処遇コース(カムバック支援助成金)の助成金支給額

※ 支給額の表中の < > 内の金額は、生産性要件を満たした場合の支給額です。
※ 期間の定めのない雇用契約締結後、上記の期間継続雇用が必要です。2回目の申請は、1回目の支給と同一の労働者が対象です。

(5)女性活躍加速化コース

こちらのコースは、事業主による女性活躍の取り組みを促進することを目的としています。

女性の活躍に関する数値目標を掲げ、女性が活躍しやすい職場環境の整備等に取り組む事業主や、その取り組みの結果、当該数値目標を達成した事業主に対して助成金が支給されます。

この助成金が支給されるのは、常時雇用する労働者が300人以下の事業主となります。

女性活躍加速化コースの助成金支給額

※ 支給額の表中の < > 内の金額は、生産性要件を満たした場合の支給額です。

おわりに

育児・介護の「ダブルケア」時代を迎える現代社会。

各企業においても、従業員一人ひとりが抱える様々なライフイベント等にかかわりなく、一層の活躍ができるような職場づくりを目指し、効果的に助成金等を活用してみてはいかがでしょうか。

【参考】
・厚生労働省「両立支援等助成金
・厚生労働省「2019年度 両立支援等助成金のご案内

お役立ち資料

【2023年版】人事・労務向け 法改正&政策&ガイドラインまるごと解説

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