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改正労働者派遣法の施行から3年・・・改正法への対応は万全ですか?

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こんにちは、弁護士法人浅野総合法律事務所 代表弁護士の浅野英之です。

労働者派遣法の重要な改正が、2015年9月に施行され、今年で3年目になります。

労働者派遣法の改正により、派遣期間の制限に関するルールが、従来と大きく変わりました。この改正派遣法による期間制限の上限が、改正派遣法の施行から3年を経過する2018年10月以降に、順次到来します。

そこで、改正派遣法の施行から3年が経過することにともない、「派遣切り」などの労働トラブルを起こさぬよう、改正派遣法の新しい「期間制限」への対応を、今一度おさらいしましょう。

(1)改正派遣法の「期間制限」の変更点

改正派遣法では、「期間制限」について、「派遣先事業所単位の期間制限」と「派遣社員個人単位の期間制限」の2つに整理されました。

2つの期間制限は、従来存在した「26業務」に属するかどうかの区別にかかわらず、業種を問わず適用されます。

1-1. 派遣先事業所単位の期間制限

同一の事業所単位で、派遣社員を受け入れることのできる期間の上限は、原則として3年とされます。

3年の期間制限を越えて派遣社員を受け入れる場合、派遣先は、事業所の過半数代表者からの意見を聴取する必要があります。

1-2. 派遣社員個人単位の期間制限

同一の派遣社員を、派遣先の事業所における同一の組織単位に派遣できる期間は、3年が上限となります。

なお、次の場合には、派遣社員個人単位の3年の期間制限は適用されません。

  • 派遣会社に無期雇用されている派遣社員
  • 60歳以上の派遣社員
  • 終期が明確な有期プロジェクトではたらく派遣社員
  • 日数限定の業務(1ヶ月の勤務日数が通常の労働者の半分以下で10 日以下)ではたらく派遣社員
  • 産前産後休業、育児休業、介護休業等を取得する労働者の業務をする派遣社員

(2)会社側で行うべき対応

改正派遣法の「期間制限」の内容は、以上の通りです。

この期間制限は、改正派遣法が施行された2015年9月以降に締結された労働者派遣契約に基づく労働者派遣に適用されます。

3年を越えて派遣社員を活用し続けるには、次の3つの方法が考えられます。

2-1. 派遣社員を交代する

派遣社員個人単位の3年の上限を回避するために、派遣社員を交代すれば派遣を続けることができます。

この場合、派遣先事業所単位の期間制限を延長するため、派遣先において、期間満了の1ヶ月前までに労働者代表の意見聴取を行う必要があります。

2-2. 組織単位を変更する(異動する)

派遣社員個人単位の3年の期間制限は、同一の組織単位に派遣される場合に適用されるものです。

そのため、下図のように派遣される組織単位(いわゆる「●●課」など)を変更すれば、3年を超えて派遣社員を受け入れられます。

出典:厚生労働省「派遣先の皆さまへ ~平成27年労働者派遣法改正法が成立しました~ 」

この場合も、派遣先においては、派遣先事業所単位の期間制限を延長するための手続が必要です。また、派遣先は、派遣社員の特定目的行為を行ってはなりません。

2-3. 期間制限が適用されないようにする

先述のとおり、派遣社員個人単位の期間制限には例外があります。この例外にあてはまるようにすれば、派遣社員を活用し続けることができます。

例えば、派遣会社で無期雇用すれば、その派遣社員には派遣社員個人単位の期間制限が適用されず、3年を越えて派遣し続けることができます。

(3)「派遣切り」トラブルを招かないための注意

最後に、以上の期間制限などの結果、派遣社員の派遣を終了する場合であっても、特に派遣会社は、次の点に注意が必要です。

改正派遣法では、派遣社員が引き続き就業を希望するときは、派遣会社は次のいずれかの措置をとる必要があるとされています。

  1. 派遣先に、派遣社員の直接雇用を依頼する
  2. 派遣社員に、新たな派遣先を紹介する
  3. 派遣社員を、派遣会社で無期雇用する
  4. その他安定した雇用の継続を図るための措置

派遣会社が雇用安定措置をとらずに派遣社員を辞めさせると、「派遣切り」という労働トラブルの火種となりかねません。

厚生労働省では、派遣労働者のキャリアアップ促進にあたって、キャリアアップ助成金を活用した、派遣労働者の正社員化を推奨しています。上記「1.」を検討中の方は是非ご参考ください。

(参考:厚生労働省「~ キャリアアップ助成金を活用して優秀な人材を確保 ~ 派遣労働者を正社員として直接雇用しませんか」)

まとめ

今回は、2015年に施行された改正派遣法のうち、特に重要な期間制限について解説しました。

2015年9月30日の施行日から3年を経過する日が間近に迫ってきましたが、派遣会社・派遣社員を活用している会社では、今一度見直しましょう。

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