社会保険労務士が語る人事労務業務。HRテクノロジー連携のポイントと事例
- 公開日
こんにちは。特定社会保険労務士の山本 純次です。
コロナ禍を受けて「デジタル化」「脱ハンコ化」というキーワードが飛び交うようになりました。
今回は社労士目線での人事労務分野に視点を置き、企業規模別にHRテクノロジーの導入、連携のポイントについて、主にベンチャー・中小企業向けに記載してみました。
これからHRテクノロジーを導入する方も、すでに導入している方も、HRテクノロジーを連携させる上で参考になりましたら幸いです。
人事労務においてHRテクノロジーはどのような価値を生むか
人事労務は個人情報が集約された業務であり、非常に多い情報量を扱います。入社時には履歴書や口座情報、マイナンバーなど、多くの情報を収集し管理しなくてはなりません。
また、そこからの入社手続き、給与計算、社内情報管理と進んでいくにあたって、紙で対応を進めると、同じ情報の複数回に渡る記入作業が発生する、従業員への書類の差し戻しがあるなど、何かと手間がかかります。
また、紙での書類回収は、コロナ禍に伴うテレワークシフトが進んだことで対応が難しくなりました。そこで、HRテクノロジーを導入していくことにより、テレワーク環境下でも効率的な業務対応やデータの蓄積が期待できるようになります。
連携する上でのポイント
人事労務業務を社労士にアウトソースしている場合、社内の管理帳票を作成し、社内決裁したうえで、送付、またアウトソース用の依頼シートを作成するというのが従来の手法でしたが、これも紙ベースとした場合大きな事務負担となっていました。
また、社労士側としても入社手続き書類の作成、給与計算データの入力と同じ社員の方の氏名を何度も書いたり入力したりする必要があり、非効率な業務となっていました。
HRテクノロジー同士はAPIでの連携によって効率的に業務を進められます。しかし、HRテクノロジーは種類が多く、どのようなソフト同士であれば連携できるのかわからない方も多いはず。
そこで、普段HRテクノロジーの活用支援をしている社労士目線で、連携イメージを作成してみましたので、ソフト同士の連携の参考にしてみてください。企業規模ごとに解説しております。
企業規模ごとのHRテクノロジー連携事例
(1)社員5名程度
SmartHRを核に従業員情報を管理します。SmartHRの権限を社労士側に付与すれば、入社時の情報を全てクラウドで受け渡しできます。従業員が数名の場合、給与計算システムまで導入するのはコスト面の問題もあるので、給与計算などはアウトソース先のシステムを利用するのが最適かと思います。
その際もSmartHRで情報をシェアしていれば、アウトソース先での給与計算における情報(住所変更や扶養変更など)をタイムリーに確認できます。
勤怠管理は数名であればシステムを入れずに、Excelなどでの管理も可能でしょう。会計システムについては、その後の発展を見込み、この段階からfreeeやマネーフォワード クラウド会計を導入することをお勧めします。
(2)社員20名程度
この規模になってくると、勤怠や給与計算などの管理が煩雑になってきます。特に勤怠管理が給与計算としても重要なポイントになるでしょう。SmartHRをベースに、勤怠をクラウドシステムのジョブカンやAKASHIなどを利用すると、入社時に登録した個人情報をAPI連携し、従業員情報を同期できます。
また、freeeであれば人事労務freeeと会計freee、マネーフォワードであればマネーフォワード クラウド給与とマネーフォワード クラウド会計のように、給与計算を会計と同じクラウドシステムにすることにより、従業員情報のAPI連携はもちろん、給与計算後の会計処理、経費精算などの給与連携も実施できます。給与システムと会計システムを合わせることで人事労務領域から会計領域までの業務を効率化できます。
アウトソース先の社労士は入社情報をSmartHRから、給与計算もクラウドで実施し、計算結果をWeb上で確認でき、給与明細などもWeb発行で進められます。
(3)社員50名程度
企業規模が大きくなってくると、採用に関しても人材紹介会社を利用したり、派遣スタッフの採用なども増えたりします。採用管理ソフトのTalentioをスタートに、従業員情報をSmartHRに同期していき、そこから勤怠や給与計算、会計とつなげていくことで、企業の成長におけるバックオフィス全体の効率化を図れます。
上記システムの中で選択していけば従業員情報などは基本API連携が可能です。また給与システムと会計システムの統一化が図れると良いでしょう。
注意としては、各領域のシステムを使用することで、従業員が複数のシステムにログインしながら利用しなくてはならない点が挙げられます。勤怠を見る場合や給与明細を確認する場合、住所変更を申請する場合など、どのシステムから利用するのか社内ルールを決めておくと、労務管理全体がスムーズになるでしょう。
(4)社員100名超
100名を超えてくると、様々な労務問題の発生や、従業員の評価管理の煩雑化が予想されます。人事評価システムとして、カオナビやHRBrainを導入すると、評価の年度ごとの管理が楽になります。
また健康診断の管理やストレスチェックの実施(従業員50名上)も必要となるので、健康管理システムであるCarelyなどを導入すると、さらに幅広い情報をWeb上で管理できるようになります。
このように、企業規模に応じながら先を見据えて、少しずつHRテクノロジーのシステム構築を進めていけると、企業規模の拡大の中でも効率的な業務管理ができます。
また、採用手続きや給与計算などをアウトソースする場合も、アウトソース先に権限を付与することで人事労務情報を共有し、社内と同じ情報、プラットフォームで業務を進められるようになります。
今回の連携イメージを参考に、企業規模に応じた体制を構築していただければと思います。