逆パワハラとは?具体例や対処法を弁護士が解説
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こんにちは。浅野総合法律事務所 代表弁護士の浅野英之です。
よく「パワハラ」がニュースやワイドショーなどで取沙汰されていますが、「パワハラ」というと、上司から部下に対して、職場での上下関係を利用して行われる圧力、というイメージが強いのではないでしょうか。
しかし、「パワハラ」は、なにも上司から部下に対するものだけに限りません。人間関係が複雑化した現代においては、むしろ部下の方が、ある一面においては上司よりも優位な立場にある、というケースもありうるからです。
部下から上司に対して行われるパワハラを、「逆パワハラ」と呼ぶことがあります。この「逆パワハラ」もまた、「パワハラ」の一種であり、違法な行為であることが明らかです。そして、「パワハラ」と同様、損害賠償請求の対象となります。
そこで本稿では、逆パワハラの被害者となってしまった上司としては、どのように対応すればよいのかについて紹介していきたいと思います。
「逆パワハラ」とは?
そもそも、「逆パワハラ」とはどのようなものでしょうか。
通常の「パワハラ」は、上司から部下に対して行われることが多いと考えられます。これは、職場では上司が部下に命令する権利を持っているため、上下関係が生まれているからです。
しかし、例えば、ITやパソコンについての知識が豊富であるとか、身体的能力が高いといった事情から、部下の方が上司よりも優位な立場にあるケースも、少なくありません。
そして、優位な立場を利用して嫌がらせをすることが「パワハラ」にあたる以上、部下から上司に対する「パワハラ」も当然成立し得ます。
この部下から上司に対する「パワハラ」を、一般的によくイメージされるパワハラケースの「逆」として、「逆パワハラ」と呼ばれたりします。
「逆パワハラ」の具体例
「逆パワハラ」がどのようなものかを、もっとイメージしてもらいやすくするために、「逆パワハラ」の具体例をみていきましょう。
【ケース1】部下が上司の知識・経験を上回る場合
まず第一に、部下の方が上司よりも知識、経験が豊富であることによって生まれる「逆パワハラ」があります。
最近よくあるのが、急速に進歩している情報技術について、年配の上司がついていけず、若い部下から「逆パワハラ」を受ける、というケースです。
【ケース2】地位を逆手にとった過剰な権利主張
次に、地位が下であることを逆手にとった「逆パワハラ」も少なくありません。
地位が下であれば、発言力も弱いのではないかと考えるのが一般的です。
しかしながら、ブラック企業が社会問題化して以降、労働者の権利が保証されていることから、権利を強く主張しすぎるあまりに上司が委縮してしまい、「逆パワハラ」状態となってしまうケースも残念ながら少なくありません。
労働者の正当な権利は守られるべきですが、権利を過剰に主張し、「パワハラだ!」とすぐに騒ぎ立てる社員がいる場合には、「逆パワハラ」問題の発生に注意する必要があります。
集団で行われる「逆パワハラ」に注意
「逆パワハラ」は、立場の弱いはずの部下から上司に対して行われるパワハラです。
そのため、「1対1」の関係ではなく、「部下多数」と「1人の上司」の間で「逆パワハラ」の問題が発生することが少なくありません。
例えば、気に入らない上司に対して、部下全員が悪口をいったり嫌がらせをしたり、意図的に業務上の指示を無視したりといったケースがこれにあたります。
集団化すれば、立場的には下のはずの部下であっても、上司に対して嫌がらせ、すなわち、「逆パワハラ」をすることも容易になりますから、注意が必要です。
「逆パワハラ」の対処法
最後に、「逆パワハラ」の被害者となってしまったときのために、対処法を紹介しておきます。
まず、パワハラ問題の対処とも共通しますが、「逆パワハラ」の被害を受けてしまったとき、まずは証拠を収集することが必要となります。
特に、「逆パワハラ」は、労働者の正当な権利の主張と紙一重であるため、部下の側から、「逆パワハラではなく、労働者としての正当な権利主張だ。」という反論をされることが予想されるからです。
証拠を収集したら、社内のパワハラ窓口や、さらに上の上司などに、「逆パワハラ」の被害にあっていることを申告します。
「逆パワハラ」もまた違法なパワハラ行為であるということを説得的に説明する必要があることから、弁護士のサポートを受けるべきケースも少なくありません。
また、万が一、会社内での相談では「逆パワハラ」が軽視されたり、「部下の側の正当な権利主張である。」と判断されたりしてしまう場合には、労働審判や訴訟において、「逆パワハラ」の慰謝料を請求していきます。
このように、法的手続となる場合には特に、収集した証拠が重要視されます。
まとめ
「パワハラ」というと、上司が部下に対して行っているケースが圧倒的に多いのは確かです。
しかし、「部下であるから弱い。」というのは、必ずしも当てはまりません。
「逆パワハラ」の被害者となってしまった上司の方や、会社内の「逆パワハラ」問題にお困りの経営者の方は、弁護士にお早目にご相談ください。