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厚生労働省によるコロナウイルスの労務対応について社労士がQ&Aで解説

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こんにちは。特定社会保険労務士の羽田未希です。

新型コロナウイルスの感染拡大が心配されています。全国各地でイベント、セミナー等が中止や延期となるなど、今後の企業活動における影響も懸念されるところです。

会社として、正しい情報に基づき、必要な対策をタイムリーに実施すべく検討されていることと思います。
厚生労働省は、新型コロナウイルス感染症についての特設ページを設置、随時情報を更新し、新型コロナウイルスに関するQ&Aを企業向けに発信していますが、今回はこの中でも「労務」に関する内容について、社労士の視点から解説いたします。

※本稿は執筆時点(2020年2月21日)での政府、厚生労働省等の情報を元に解説しており、変更されることもありますので、政府や厚生労働省等の最新の情報を確認していただくようお願いします。

会社が検討するべき事項とは

使用者として労働者に対し「安全配慮義務」があることを念頭におき、労働者が安全に出勤、勤務できるような配慮が必要となります。

労働者の出勤、勤務について

  • 通勤時の満員電車利用を避けるため、時差出勤が可能か。
  • テレワーク(自宅勤務)が可能か。
  • 所定労働時間の短縮が可能か。(短縮分の給与は控除しない、または休業手当として支払い)
  • (感染拡大の状況により)イベント、セミナー、会議、懇親会等の中止または延期の検討。
  • 労働者に体調不良の時は無理して出勤させない。厚生労働省も「発熱等の風邪の症状が見られるときは、学校や会社を休んでください」としています。

社内の衛生対策

  • 労働者の健康チェック(発熱、せき、くしゃみなどの風邪の症状など)
  • 手洗い、うがいの奨励
  • アルコールによる手指消毒、設備等の消毒
  • マスク着用
  • 換気

厚生労働省ホームページ「新型コロナウイルスを防ぐには」も参照してください。

新型コロナウイルスに関する会社の対応Q&A

新型コロナウイルスは2月1日付けで「指定感染症」となりましたが、厚生労働省は労働安全衛生法第68条の「病者の就業禁止」の措置の対象ではないとしています。
よって、会社が労働者に休業を命ずることができても、休業手当を支払う必要があるということです。

新型コロナウイルスの会社対応について、以下のQ&Aにまとめましたので参考にしてください。

なお、会社の対応は就業規則等の規定によるところもありますが、個別事情に応じて検討も必要になりますので、慎重に判断してください

【Q.1】新型コロナウイルスかどうか分からない状態で、労働者が自主的に休む場合はどう対応したらいいですか?

【Q.1】新型コロナウイルスかどうか分からない時点で、発熱などの症状があるため労働者が自主的に休む場合は、どのように対応したらよいですか?

【A.1】通常の病欠と同様に取り扱い、欠勤として取り扱う、または病気休暇制度を活用するなど検討してください。

就業規則の規定によりますが、本人が年次有給休暇の取得を希望し、会社が認める場合は、年次有給休暇とすることもできます。
年次有給休暇は、原則として労働者の請求する時季に与えなければならないものなので、会社が勝手に年次有給休暇にあてることはできませんので注意してください。

【Q.2】新型コロナウイルスかどうか分からない時点で、一定の症状がある労働者を休ませる場合、休業手当を支払う必要はありますか?

【Q.2】新型コロナウイルスかどうか分からない時点で、例えば熱が37.5度以上あることなど一定の症状があることのみをもって、一律で労働者を休ませる措置を考えていますが、休業手当を支払う必要はありますか?

【A.2】会社の自主的な判断で休業とする場合は「使用者の責めに帰すべき事由」として、休業手当※(平均賃金※の6割)の支払いが必要です。

※「休業手当」や「平均賃金」の説明は記事後半にて説明しています。

【Q.3】検査するも感染したかどうかが分からない職務可能な使用者がいて、自主的判断で休業させる場合、休業手当の支払は必要ですか?

【Q.3】感染が疑われるため保健所等に相談の結果、新型コロナウイルスかどうか分からない時点で、症状がなく職務の継続が可能である方について、使用者の自主的判断で休業させる場合には、休業手当の支払は必要ですか?

【A.3】一般的に「使用者の責に帰すべき事由による休業」に当てはまり、休業手当を支払う必要があります。

ただ、休業とするのではなく、労働者が就業可能である健康状態であれば、テレワーク(在宅勤務)などで勤務ができないか検討してください。

【Q.4】新型コロナウイルスの影響で売上が見込めないため、労働者を休ませる措置を考えていますが、休業手当を支払う必要がありますか?

【Q.4】新型コロナウイルスの影響で会社の売上が見込めないため、労働者を休ませる措置を考えていますが、休業手当を支払う必要がありますか?

【A.4】会社の自主的な判断で休業とする場合は「使用者の責めに帰すべき事由」として、休業手当(平均賃金の6割)の支払いが必要です。

なお、今回の新型コロナウイルスに関連して労働者に対し一時的に休業、出向などを行う場合、厚生労働省の雇用調整助成金の特例措置もありますので、要件等を確認してください。

雇用調整助成金とは

経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、労働者に対して一時的に休業、教育訓練又は出向を行い、労働者の雇用の維持を図った場合に、休業手当、賃金等の一部を助成するものです。

新型コロナウイルスの影響による雇用調整助成金の特例の実施についてのページも参照ください。

【Q.5】労働者が新型コロナウイルスに感染したため、都道府県知事が行う就業制限により休業する場合は、給与の支払いや休業手当については、どうすればよいですか?

【Q.5】労働者が新型コロナウイルスに感染したため、都道府県知事が行う就業制限により休業する場合は、給与の支払いや休業手当については、どのようにすればよいですか?

【A.5】会社に責任はなく(「使用者の責めに帰すべき事由」でない)、「ノーワーク・ノーペイの原則」により、労働基準法上は賃金を支払う必要はありません。また、「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当しないと考えられますので、休業手当を支払う必要はありません

健康保険に加入されている方であれば、要件を満たせば、各保険者から傷病手当金が支給されます。

具体的には、療養のために労務に服することができなくなった日から起算して連続3日仕事を休んだ後、4日目以降の日について直近12カ月の平均の標準報酬日額の3分の2が傷病手当金として支払われます。

(参考)休業手当とは?

労働基準法第26条では、使用者の責に帰すべき事由により休業させる場合に、1日につき平均賃金の6割以上を支払わなければならないとしています。

使用者の責に帰すべき事由とは、天災等の不可抗力である場合を除き、ほとんどの事由が該当すると考えられます。
なお、休業手当を支払う必要がないとされる場合においても、通常使用者として行うべき最善の努力を尽くしていないと認められた場合、休業手当の支払が必要となることがあります。

使用者の責に帰すべき事由となる例

  • 使用者側の経営難、資金難等による休業
  • 資材調達ができなかった時の休業
  • 生産調整のための休業
  • 監督官庁による操業停止、営業停止等による休業
  • 違法な解雇による休業

平均賃金とは

原則として事由の発生した日以前3ヶ月間に、その労働者に支払われた賃金の総額を、その期間の総日数(暦日数)で除した金額をいいます。(労働基準法第12条)

休業手当の場合は、休業日(算定事由の発生した日)は含まず、その前日から遡って3か月です。賃金締切日がある場合は、直前の賃金締切日から遡って3ヶ月となります。(賃金締切日に事由発生した場合は、その前の締切日から遡及します。)

平均賃金 = 事由の発生した日以前3か月間の賃金総額 ÷ その期間の総日数(暦日数)

※賃金が日額や出来高給で決められ労働日数が少ない場合、総額を労働日数で除した6割に当たる額が高い場合はその額を適用します(最低保障)。

まとめ

新型コロナウイルスの状況は刻一刻と変化しています。

正しく恐れると言いますが、上記を参考にしながら、会社として今後どのような対応をすればよいか、自社で検討してください。

また、労使間でもお話しする機会を持っていただくとよいと思います。1日も早く事態が収束することを願ってやみません。

【編集部より】働き方改革関連法 必見コラム特集

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