「会社都合の生産性」ではベストパフォーマンスを発揮できない【ユニリーバプレミアムフライデーセミナー】#03

2018.05.14 ライター: 藤田 隼

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2018年1月26日、株式会社ジンズのセミナールームおよび同社の手がける「Think Lab」において、ユニリーバ・ジャパンが主催する「第10回ユニリーバプレミアムフライデーセミナー」が開催されました。テーマは『集中を科学する ― 生産性を考える』。ファシリテーターはユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社 取締役人事総務本部長の島田由香さん。そして、ゲストスピーカーは「集中力 パフォーマンスを300倍にする働き方」の著者である株式会社ジンズ・JINS MEMEグループマネジャーの井上一鷹さんです。

2時間以上にわたる充実の内容を、全5回に分けてお届けします。3本目となる今回は、「生産性の本質」に迫ります。

島田さん:ここからは、これまで井上さんが科学してきた「集中」を切り口に、「生産性」という言葉にフォーカスしてお届けします。

結論から言うと、「集中」と「生産性」にはものすごく深い関係があります。

そもそも私は、生産性という言葉が大っ嫌いなんですね。大嫌いなんだけど、世の中の皆さんが好んで使われているので、あえて使います。でも、本当は使いたくないんです。その理由も後でお話ししたいと思います。

「生産性」の上げ方はわからなくて当たり前。

島田さん:では、「生産性って何なの?」ってことをこれから考えていく時に、ちょっと質問します。この中で、自分の生産性上げたいって思っている人、どのぐらいいます?

(会場挙手)

ありがとうございます。でも、全員じゃないんですね。じゃあ、逆に今手を挙げなかった方、ちょっと手挙げてもらってよいでしょうか。ではそちらの方、もしよろしければ理由を教えて頂ければ。

――参加者Aさん:私の勤める会社はメーカーではなく、そもそも「生産性」が何なのか、いまいちよくわかっていないんです。

島田さん:なるほど、何となくわかんないんですよね。ありがとうございます。何となく「生産性向上しなきゃいけないものなんだ」と聞いてはいても、「じゃあ一体どうやって向上させるの?」って考えた時に、やっぱりわからないわけですよね。

先ほど、ほとんどの方が生産性上げたいと手を挙げてくださいましたが、挙げなかった方も中にはいて、今のように「何をすればいいかわからない」というのはもちろん、逆にもう自分なりにやり方を見つけて既に改善されている方もいらっしゃると思うんです。

なぜなら本来は「個別的」に捉える必要があるから

島田さん:「生産性」って、本来個別で捉える必要があることなんですよ。つまり、「これをやったから絶対に生産性が向上する」っていうのは一概に言えないはずだと思うんです。

もちろん全体の話としては、「統計的にこういうデータが出るよ」ってことは一般論として言えるんだろうし、それを参考にするのはとてもいいことだと思いますが、覚えておいてほしいのは、「自分はどうなのか?」ということなんです。

例えば先ほど井上さんがおっしゃった、「朝型・夜型」についてもそうですし、どこで働くと集中できエネルギーを最大限発揮できるのか、生産性が上がるのか、というのも当然個人によって異なってきます。

生産性向上の第一歩は「如実知自心」――自分を知ること

島田 由香さん。ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社取締役人事総務本部長。慶應義塾大学卒業後、パソナに勤めた後、コロンビア大学大学院へ留学し、組織心理学修士を取得。その後GEを経て2008年、ユニリーバ・ジャパンへ入社し、2014年より現職。米国NLP協会マスタープラクティショナー、マインドフルネスNLP®トレーナー。働く場所と時間を自由に選択できる制度「WAA(Work from Anywhere & Anytime)」を推進するなど、豊かで自分らしい働き方を開拓し、発信している。

島田さん:さらに、私たちは「タイムマネジメント」じゃなくて、「エネルギーマネジメント」のほうが大切だと伝えています。それをするためには、まず自分のエネルギーが、どのような時に最大化するのか、あるいは削がれてしまうのかなどを知ってもらう必要があります。なので、「にょじつじちしん」でしたっけ?

井上さん:「にょじつちじしん(如実知自心)」ですね。

島田さん:如実知自心。惜しかった〜!(笑)。はい、というわけで「自分を知る」ということ、やっぱりこれが全てだと、先に言っておきます。

で、今ほとんどの方が「もっと生産性を上げたい」と手を挙げてくれた。つまりは、変わりたいわけですよね。

この話をする時、必ずアインシュタインのこの言葉を紹介するんですが、じっくり噛み締めて読んでほしいんですね。「今まで通りのことをしていては、今まで通りの結果しか得られない」って。

当たり前じゃないですか。私たちは、もっと何かがしたいし、もっと新しい結果が欲しい。例えばそのうちのひとつが「もっと生産性を上げたい、もっと効率化したい」。でも、何をしたらいいかわからないわけですよね。

何かしたいとアクセルを踏みながら、同時に踏んでしまっている“ブレーキ”に気付いてほしいんです。思っているのにやれてない・できてないっていうのは、つまりブレーキがかかっている状態です。そのブレーキを外していくのに伝えているのが、「いつも自分がどんなことに意識をして生きているのかを意識してください」ということです。

ちょっと噛み締めて、体に落としてほしいんです。「意識する方向」を意識してください。あなたはいつも、どんなことに意識を向けて生きていますか? どんなことに意識を向けて仕事していますか?

私たちの意識っていつも、やらなきゃいけないこととか、他の誰かとか、時間とか、そういうものに向いてしまっているはずなんです。ということは、いつも“外”に意識やエネルギーを向けているんです。だから、まずは自分に意識やエネルギーを向けてください

それだけで、「自分の時間を取る」ということにつながってくるんです。是非自分がいつもどんなことに意識向けてるかって、ちょっと気付いてもらって、1日1分でもいいから、ふと自分に意識を向けてほしいんですね。これは井上さんのおっしゃる集中を上げるための25の方法のうちのひとつ「マインドフルネス」ともつながってきます。

なので、大前提として「如実知自心 ― 自分を知る」ということが第一歩になります。

「生産性」を上げる4つのキーワード

島田さん:それではスタートラインに立ったところで、生産性を上げる4つのキーワードをお伝えします。

まず1個は「当たり前を疑って」ほしいんです。普通にやっていること、当たり前になっていることに対して「本当にそうだっけ?」と、自身に問いかけてほしいんです。

2つ目のキーワードは「松本メソッド」。カルビーの松本会長(※)がおっしゃっていることがあるんですが、これを私は勝手に松本メソッドと呼んでいます。

どういうことかというと、仕事は3つに分けられると。

1.「Must do ― 絶対にやること」。2.「No need to do ― やらないこと、やらなくていいこと」。これははっきりしてますよね。で、3つ目が肝なんですよ、「Nice to do ― やったほうがいいこと」。これにみんな時間とエネルギーを使ってしまっているんです。でも、いかにこの「Nice to do」をやらないかが大切だと、松本会長はおっしゃっています。

このメソッドをもとに、まず自分のやっている今の仕事や仕事の範囲について、何が「Must do」で、何が「No need to do」で、そして何が「Nice to do」かを是非整理してみてください。

キーワードの3つ目としては先ほど挙げた「エネルギーマネジメント」、そして4つ目が「マインドフルネス」となります。

「生産性」の効果測定は感覚値でイイ

島田さん:ここから本題に入りますね。私、さっき「生産性という言葉が大嫌い」って言いましたが、今日もちょっと「生産性」って言葉を使い続けます。皆さん、ほとんどの方が生産性上げたいって言った。井上さんも上げたい?

井上さん:はい。上げたいですね。

島田さん:ありがとうございます。でも生産性って、どうやって測るんでしょうか? 生産性って何なんでしょうか?

生産性の定義について、皆さんはどのように考えていますか? 先ほどの方は、「そもそも生産性が何だかよく分からない、定義できない」と本当に良い意見を言ってくださいました。

「こんなことが生産性なんじゃないか」と、ご意見いただければと思い、挙手お願いします。……はい、ありがとうございます、ではそちらの方お願いします。

―― 参加者Bさん:弊社では、「生産性」という言葉を使う時には、8時間でフルタイムで働いている社員と、6時間の短時間勤務の社員が、同じだけの売り上げを得たとしたら、6時間の社員のほうが生産性が高いと表現しています。つまり「同じ結果を短い時間で得られたら生産性が高い」「同じ時間で高い結果を得られたら生産性が高い」などのケースで使います。

島田さん:なるほど、「時間」と「売上」などの数字の部分が生産性の要素になるということですよね。ありがとうございます。他にはどうですか?

―― 参加者Cさん:弊社は建設業なので、請け負った工事をいかに早く終わらせるかってことが「生産性」ですね。

島田さん:じゃあ、やっぱり「時間とお金」なんですね。そんな感じで、皆さんもいろいろあると思うんですよね。このように「アウトプットとインプット」ってことを思い浮かべた方がほとんどだと思うんですよ。

で、私はWAAが始まってから、いろんなことを考えてきていて、本当にいろんな意見をもらってきた中で、あることをはっきり公言しています。

「生産性ってどうやって測るの?」という問いに対して、私の出している結論は「感覚値でイイ」ということです。

「えー?」って思う方、多いと思います。でもいいんです、それで。

何故かというと、測りようがないんですよ、本当に。ある意味、何の数字をアウトプットに入れたって、何の数字をインプットに入れたっていいと。ということは、一概に「何だ」って言えないのが「生産性」なんです。

だから、今みたいに「うちの会社ではこうです」っていうものが、ちゃんとみんなで共通理解をされていたら、それはそれで良いとして、でも、それよりも大切なのが、「自分の感覚値として『あ、生産性が上がっているな』『生産性が高いな』って思えること」。これのほうがものすごく価値のある生産性の定義だと私は結論づけています。

その背景としては、皆さん「アウトプット」って言ったら、やっぱり売上や成果物を思い浮かべると思いますが、これって「会社の視点」でしか見ていないなって気がするんですね。

従業員視点の“生産性”は「生き生きと産み出したくなる状態」でいるかどうか

島田さん:一方、私は社員個人の視点から見ていった時に、「本当のインプットって私たちなんだ」ってことを、もうちょっと考えてほしいんです、皆さんに。

時間でも、売り上げでも何でもなくて、本当のインプットって皆さん自身なんですよ。

皆さんがさまざまな行動をしたり、さまざまなアイデアを出したり、だから結果につながるわけですよね。

「会社都合の生産性」ではベストパフォーマンスを発揮できないワケ

島田さん:なので、「私たち自体がインプットなんだ」「大切な従業員こそがインプットなんだ」っていう視点が無い会社都合の「生産性」という言葉が大嫌いなんです。

「あなたの生産性を上げてよ」って会社に言われたって、全くワクワクしないじゃないですか。私は全然ワクワクしません。

じゃあそのインプットとは何か?

これは「健康状態」とか「モチベーション」とか、「ハピネス、ハッピーの度合い」とか。これらはものすごく大きいと思います。例えば、怒ってる時に、大切な企画書って書けますか? ムカーってなっちゃう時ありますよね。でもそういう時に、自分のベストパフォーマンスを出せるんでしょうか?

このような、目には見えなくても、より良いパフォーマンスを発揮する上で、すごく大切なことの数々が、「生産性」の議論や「働き方改革」の議論では取り沙汰されていないのが現状です。何か忘れられちゃってる。私はここにものすごく疑問を感じています。「生産性という言葉が好きじゃない」と言っているのは、まさにそういう理由です。

このインプットがアウトプットにつながって、またその結果が私たちのモチベーションにつながるわけじゃないですか。なんだけれども、やっぱり会社視点で売上とか時間が評価され、査定にも繋がると。

というわけで、嫌いだと一方的に言うだけじゃなくて、自分で勝手に定義をしました。

私の定義として、生産性とは「生き生きと産み出したくなる状態」でいるかどうか。その中で「生産」という言葉を使っているところがミソなんですね。

実は私、これをもう1段階深めた定義をしています。それは後ほどお伝えします。


※ 松本晃・会長兼CEO(本セミナー開催時点)。2018年3月中旬に会長退任を発表。6月下旬の株主総会後に退任。

「働き方改革とは生き方を決めること」――生産性向上に“集中と余裕”が必須なワケ につづく)

【編集部より】人事労務から始める「働き方改革2018」

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藤田 隼

SmartHR Mag. 2代目編集長。ソーシャル系スタートアップでSNSマーケティングや自社メディア運営に携わり、2015年よりメディアに特化した事業会社で複数サイトのディレクターを経験した後、SmartHRにジョイン。ウェブ解析士。
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