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スキルの評価方法は?スキルマップや評価シートを使った段階評価のコツ、事例を紹介

公開日

この記事でわかること

  • スキル評価の概要とメンバーシップ型雇用からジョブ型雇用への変遷
  • 人材育成、人員配置の観点からみるスキル評価のメリット
  • スキル評価に最適な「スキルマップ」と「ルーブリック評価」の特徴
  • スキル評価に役立つ厚生労働省の「職業能力評価基準」
  • 評価基準に取り入れる3段階・4段階・5段階の評価基準の特徴
  • 担当者が気になるスキル評価のQ&A
目次

ジョブ型雇用の浸透から、多くの企業でスキル評価の必要性が増しています。スキル評価は、従業員のモチベーション管理や適切な人員配置などに効果をもたらす取り組みです。本稿では、近年のジョブ型雇用への変遷を背景に、スキル評価の必要性や実施によるメリット、2つの評価方法、厚生労働省の「職業能力評価基準」について解説します。

スキル評価とは

スキル評価とは、従業員の能力やそのレベルを評価し、可視化することです。スキル評価では、人事評価のベースとなる業務内容や職務行動において発揮する、具体的なスキルレベルを評価します。実施時は従業員が自己評価し、上司が認定する方法が一般的です。

スキル評価の意味と注目される理由をまとめた図

スキル評価が求められる背景には、近年の雇用スタイルがメンバーシップ型雇用から、ジョブ型雇用に変遷しつつある点があります。

ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用の違い

ジョブ型雇用とは、職務内容(ジョブ)を明確に定義したうえで、その職務内容にふさわしい人物と雇用契約を結ぶ手法です。一方で、メンバーシップ型雇用は終身雇用制度を背景として、これまで日本で主流となっていた「ヒト」に仕事をあてる手法です。

ジョブ型とメンバーシップ型は、労働政策研究・研修機構研究所長の濱口桂一郎氏が人事管理の分析概念として提起しています。優劣はなく、社会状況の変化によって、メリット・デメリットが存在するとされています。しかし、過去30年間において、メンバーシップ型のデメリットが目立っており、ジョブ型雇用に注目が集まっているという見方があります。


(参考:濱口桂一郎:ジョブ型とメンバーシップ型の世界史的源流 - 三田評論オンライン

ジョブ型雇用にスキル評価を用いるメリット

では、なぜスキル評価がジョブ型雇用に効果的なのでしょうか。理由として、以下のメリットがあげられます。

ジョブ型雇用にスキル評価を用いる3つのメリット

適切な人員配置

ジョブに対応する従業員のスキルレベルや長所・短所が明確化され、一人ひとりがパフォーマンスを最大化できる場所へ的確に配置できます。各業務、職務への最適な人員配置により、業務の効率化および生産性の向上が期待できます。適切な人員配置は、組織全体の生産性の最大化にもつながります。

効果的な人材育成

スキル評価の実施により、従業員のもつスキルの現状やレベルが把握できます。そのため、実際の職務で求められるレベルとの差が明確になり、ジョブの遂行にあたって不足しているスキルや課題がわかります。

不足しているスキル・課題の把握により、より効果的な人材育成プランの設計・実施が可能です。求められるスキルレベルに向け、ターゲットを絞った適切な研修や教育が実施可能です。また、OJTにおいても、育成する従業員のスキルレベルによって、ポイントを押さえた効率的な指導が可能です。加えて、スキル評価にあわせたフィードバックを定期的に実施すれば、より効果的な人材育成を実施できます。

従業員のモチベーションアップ

評価されるスキルの把握により、業務や職務に対する従業員のモチベーション向上が期待できます。スキル評価では、具体的な業務内容や職務行動を明確に定義するため、従業員が意識すべきこと・やるべきこと・範囲がわかり、自信を持って担当業務に取り組めるようになります。また、仕事に対するモチベーションも変化し、パフォーマンスの向上にもつながります。

さらに、ほかの従業員のスキルレベルがわかることで、競争意識が芽生えることもメリットです。自分と比べて優れている点をみつけ、目標として意識でき、それぞれが切磋琢磨しながら自己成長につなげられます。

このような背景から、企業はジョブ型雇用への変遷に対応するため、スキル評価を用いて従業員一人ひとりのスキルを把握したうえでの、評価が重要です。

スキルの評価方法

スキルの評価方法には、2つの手法「スキルマップ」と「ルーブリック評価」があります。

2つの手法「スキルマップ」と「ルーブリック評価」について

スキルマップ

スキルマップは、従業員の保有スキルを一覧にした表のことです。企業により、能力マップや力量表と呼ばれることもあり、また、海外企業では「スキルマトリックス」と呼ばれます。

スキルマップの具体例

スキルマップの作成には、まず作成目的の整理が必要です。たとえば、「公平な人事評価のため」や「人材育成の効率化のため」など、目的を明確にすれば設定すべき項目がわかります。目的を整理したのち、業務を洗い出し、スキル項目や評価基準を設定して作成します。導入の際は以下の点に注意しましょう。

  • スキル項目はできるだけ具体的に挙げる
  • 管理者だけでなく現場の従業員も作成に携わる
  • 導入後は全社的に共有する
  • 定期的に更新する

スキルマップは業務の効率化や生産性の向上を見据えて作成します。すべての従業員が関わり、共有し、常に最新を保つことで、スキルマップの効果的な活用が実現します。

スキルマップが適している業界に挙げられるのは、IT業界や製造業、営業職などです。とくに製造業では以前から国際規格ISO認証取得を目的にスキルマップの導入が進んでおり、製造工程における業務フローに沿ったスキルを洗い出し、スキルマップを作成しているケースが見られます。

(参考:激変する製造業、今こそ「スキルマネジメント」で組織力向上を!:ゼロから学ぶ! 製造業のスキルマネジメント(1) - MONOist

ルーブリック評価

ルーブリック評価とは、表を用いて、一人ひとりの学習の達成度を測る評価方法です。主に学校教育で活用される手法ですが、企業の人材育成においても活用が進んでいます。

ルーブリック評価は4つの要素で構成されています。

  1. 与えられた「課題」
  2. その課題の達成度を示す「評価尺度(レベル)」
  3. 課題に必要となるスキルや知識の「評価観点」
  4. 評価尺度に対するパフォーマンスを示す「評価基準」
ルーブリック評価の具体例

ルーブリック評価は、ある課題に対し、細かく観点・基準を設定・評価したい場合に適しています。レベルに対応する評価基準を明文化するため、営業力、思考力、判断力などの評価基準が曖昧になりがちな課題の評価に適しています。

ただし、ルーブリック評価では、評価基準を明文化する必要があるため、作成に時間がかかります。また、評価項目・基準が明確に設定されていない場合は、評価者ごとにばらつきがでるなど正確な評価が難しいといった特徴もあります。そのため、スキルマップと同様に、活用目的を明確にし、必要な項目・基準を具体的に設定して作成すれば、人材育成への高い効果が期待できます。

ルーブリック評価を導入している企業例に、株式会社JTB(以下、JTB)があります。JTBでは、研修習熟度の評価方法として「レッスン・ルーブリック」を採用しています。研修で変容させたい行動項目を設定し、4段階の評価をします。研修前の自己評価と、研修1か月後・研修3か月後の自己評価や上司からの評価を比較して、研修前後の行動変容を可視化しています。

(参考:JTBは、さまざまな研修を社員の“行動変容”にどうつなげているのか - ダイヤモンド・オンライン

スキル評価の基準作成に参考となる資料

厚生労働省が公開する「職業能力評価基準」は、スキル評価の基準作成に効果的です。業務に必要となる知識やスキルに加え、職務遂行能力が整理されています。

2023年現在公表されているのは以下の業種です。

  • 業種横断的な事務系職種(経営戦略、人事、情報システム、生産管理、営業など9業種)
  • 建設関係(7業種)
  • 製造業関係(13業種)
  • 運輸業関係(2業種)
  • 卸売 小売業関係(6業種)
  • 金融 保険業関係(12業種)
  • サービス業関係(16業種)
  • その他(10業種)

以上の全75業種に対して、個別に評価基準が設定されています。当てはまる業種の評価基準をベースに、自社の目的や状況に応じてカスタマイズして作成しましょう。厚生労働省のサイトから、各業種のモデル評価シートも無料ダウンロードできます。

(参考:職業能力評価基準- 厚生労働省

スキル評価は何段階にすべき? 設定のコツと例

スキル評価は数段階の基準を設けて評価します。段階ごとにある、評価時のメリット・デメリットを把握したうえでの設定が重要です。

スキル評価、段階別のメリット・デメリット

3段階評価

3段階評価は、シンプルな評価になります。厚生労働省の職業能力評価シートの評価基準を見てみると、「〇:一人でできている(下位者に教えることができるレベルを含む)」「△:ほぼ一人でできている(一部、上位者・周囲の助けが必要なレベル)」「×:できていない(常に上位者・周囲の助けが必要なレベル)」で設定されています。

3段階評価のメリットは、そのシンプルさから、誰でも直感的に評価ができる点です。3択であるため迷いにくく、評価に苦労しません。一方、上図の例では、中間の評価である「△」を選びやすくなるという点がデメリットです。中間への偏りを防ぐには、「〇」と「×」の評価基準を明確化するなどの工夫が必要になります。

4段階評価

4段階評価は「中間の基準」が存在せず、偏りの防止が期待できます。たとえば、「A:達成している」「B:ほぼ達成しているが、不十分なところもある」「C:達成に向けて努力している」「D:達成していない」のように設定でき、良し悪しをはっきりと評価できます。

曖昧な評価は、成果が見えづらくなる要因となり、従業員にとっても納得感が得らにくくなります。成果にもとづき、シビアで正確な評価ができるといった点が、4段階評価のメリットです。反対に、中間の無難な評価がないことで、評価しにくくなるといった考えをもつ評価者もいます。

5段階評価

5段階評価は、さらに細かな評価が実現できる評価方法です。具体的な例では、「5:期待を大きく上回っている」「4:期待したレベルを大いに満たしている」「3:期待通り」「2:期待したレベルを下回っている」「1:期待したレベルを大きく下回っている」のような基準です。

5段階評価のメリットは、具体的で細かな評価により、従業員一人ひとりの納得度が高まることです。最高評価を得られた場合には、従業員のモチベーション向上や、仕事に対する姿勢の変化も期待できます。

一方で、3段階評価と同様に中間の基準に評価が集中する可能性がある点はデメリットです。また、評価車によっては最高値や最低値をつけにくく、無難な数字で評価するケースが多いのも特徴です。

スキル評価で適切に人材育成・人員配置を

スキル評価は、従業員のスキルを評価・可視化により、効果的な人員配置や人材育成、従業員のモチベーション変化を実現します。結果、業務効率・生産性の向上も期待できます。

スキル評価には、従業員のもつスキルの一覧表であるスキルマップの作成や、ルーブリック評価の活用が有効です。また、厚生労働省の「職業能力評価基準」や無料でダウンロードできる「モデル評価シート」など、自社の状況にあわせてカスタマイズできる参考資料もあります。

評価基準は、3段階・4段階・5段階など、自社の業務にあわせた設定が大切です。

スキル評価は、適切な評価基準を設けて従業員のスキルの可視化により、多くのメリットが得られます。スキル評価のさらなる効率的な実施には、人事評価ツールなどの導入もおすすめです。

ツール活用で実現する効率的なスキルの可視化

SmartHRでは、「スキル管理」機能を提供中。従業員の保有するスキルを可視化し、習熟度も一覧でわかります。

SmartHRのスキル管理機能のサンプル画像

客観的に組織の現状を把握でき、納得感が高く、企業成長につながるスキル評価の実現をサポートします。

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スキル評価に関するFAQ

  1. Q1. どんなスキルを評価する?

    部署ごとの具体的な業務において発揮すべきスキルを評価します。たとえば、営業部であれば「商談スキル」や「コミュニケーション能力」など、営業に必須のスキルを細分化し評価します。また、製造業などは、製品ごとの製造工程における業務フローに紐づくスキルの評価が効果的です。

  2. Q2. スキル評価の手順は?

    スキル評価を実施する目的を定めて業務を洗い出し、現場を知る管理者などが評価項目・基準を設定します。スキル評価開始の際には従業員に周知し、テスト運用を重ねて内容を見直します。また、評価のブレやばらつきを防止するために、評価者研修を実施し、評価基準や評価項目の意図をしっかり伝えることが大切です。

  3. Q3. 誰が評価する?

    スキル評価の目的次第で、誰が評価者になるかは変わります。たとえば、人材育成を目的とするスキル評価では、上司による評価もしくは自己評価などが有効です。研修後の習得度を評価する場合は、講師など研修の担当者が評価する場合もあります。

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