ハイパフォーマーとは?特徴や分析方法、育成、離職を防ぐポイントをわかりやすく解説
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この記事でわかること
- ハイパフォーマーの特徴・特性、組織にもたらす効果
- 自社のハイパフォーマーを知る方法
- ハイパフォーマーの離職要因、4つの対策
目次
ハイパフォーマーは、自社や組織で必要とされるスキル・知識を有し、業績に貢献する人材です。各業界・企業によって必要とされるスキルや知識は異なるため、ハイパフォーマーの絶対的な定義はありません。しかし、共通する特徴や特性があり、分析することで採用や人材育成に活用できます。
本稿では、優秀な人材を採用・育成するために知っておきたい、ハイパフォーマーの特徴や分析方法、離職を防ぐポイントについて解説します。
ハイパフォーマーとは自社の業績に貢献しうる人材
「ハイパフォーマー」とは、自社や組織において必要なスキルをもち、いかせる人材を指します。コンピテンシー(成果を生む行動特性)から派生した概念で、成果を上げ、業績に貢献する存在です。
イタリアの経済学者ヴィルフレド・パレート氏が1896年に提唱した統計モデル「8:2の法則」から派生した「2:6:2の法則」よると、ハイパフォーマーは以下のようにあらわされます。
企業の売上や成果を100%とした場合、
- 80%は2割の「ハイパフォーマー」によるもの
- 20%は6割の「ミドルパフォーマー」によるもの
- 残りの2割の「ローパフォーマー」は売上や成果に貢献できていない
人材育成において、パレートの法則は必ずしも正しいとは言えませんが、自社にハイパフォーマーが数多く存在するほど、生産性が飛躍的に向上し、想定以上の業績や成果を生み出す可能性が高くなるでしょう。
「コンピテンシー」の概要については、以下の記事で詳しく解説しています。
ハイパフォーマーの特徴・特性
前提として各業界・企業において成果を出せる人の特徴や特性は異なります。どのような人が「ハイパフォーマー」にあたるかは多様で、絶対的な定義はありません。
たとえば営業力を重視する企業なら顧客折衝能力や交渉力の高い人物。技術に強みがある企業なら専門知識や問題解決能力の高い人物が、ハイパフォーマーといえるでしょう。
多くの企業に共通するハイパフォーマーは、以下の特徴・特性をもつ人です。
求められた以上の成果を出せる
ハイパフォーマーは目標に対するコミット力が高く、求められた以上の結果を出します。上司や会社の期待を理解し、試行錯誤しながら目標達成に向けて努力できるのもハイパフォーマーの特徴の1つです。
成果を出すために業務の優先順位をつけ、ゴールに向けて逆算しながら施策を実行できます。
コミュニケーション能力が高い
社内業務など、ビジネスを円滑に進めるうえで他者とのコミュニケーションは欠かせません。ハイパフォーマーは、コミュニケーション能力が高く、社内外で良好な人間関係を構築します。また、組織のメンバーへのスキルや情報の共有、業務などのサポートを積極的に取り組むため、他者からの信頼も厚いです。
人間関係のなかで、自身の立ち位置を理解し、共同作業をしたり、人を動かしたりできるのもハイパフォーマーの特性です。
チャレンジ精神が旺盛
ハイパフォーマーは、失敗を恐れずチャレンジし続ける人が多いです。成果を出すためには失敗や計画の練り直しも必要だと考えているため、果敢に行動します。
たとえ失敗や挫折をしても、問題の解決に向けて粘り強く取り組むポジティブさも特徴です。チャレンジし続けるため、最終的には成果に結び付け、業績に貢献することが多くあるでしょう。
自己研鑽を怠らない
ビジネス環境が大きく変化するVUCA時代。仕事で高いパフォーマンスを発揮し続けるには自己研鑽が非常に重要です。ハイパフォーマーは、より高い成果を出すため、自分に必要な知識やスキルを常に習得していきます。
ユームテクノロジージャパン株式会社が実施した「『営業ハイパフォーマーの学習習慣』に関する実態調査(2021年)」によると、営業担当が高いパフォーマンスを継続して出すために大切にしていることは、本やセミナーなどを通じた「知識の習得(43.6%)」が上位となり、自己研鑽の意識の高さが明らかになりました。
また、業務時間外の学習頻度に関する調査では、毎日行っている人が11.9%、週1日以上行っている割合で見ると50%以上の人がハイパフォーマンスを出すために学習しており、ハイパフォーマーの学習意欲の高さをあらわす結果となっています。
ポジティブ思考である
ハイパフォーマーはポジティブ思考で、困難に直面した場合でも前向きに物事を捉えて取り組みます。仕事の失敗や逆境などが起きてもやれることを実行し、最善を尽くして乗り越えようとする点も強みです。
ポジティブ思考から起こる取り組みは、周囲のメンバーへ刺激と良い影響を与えます。困難な状況であっても状況を好転させ、成果をあげられます。
自己管理を徹底している
ハイパフォーマーは、常に実力を発揮できるよう自己管理を徹底している点も特徴です。仕事に集中するため普段から睡眠や食事、運動などに気を配り、体調を整えます。
また、自身のパフォーマンスを発揮できる仕事量を理解しており、適宜休憩をとりながらメリハリをつけて働くことも上手です。生産性を高めるためオンとオフを意識的に切り替えながら働き、成果へとつなげます。
ハイパフォーマーが組織にもたらす効果
生産性向上・業績向上
ハイパフォーマーは、常に高い成果を目指して努力するため、自社の業績向上に大きく貢献します。また、プロセスの時間短縮や業務効率化を意識して仕事をし、チームや組織全体の生産性向上に寄与します。
チームメンバーの意識を高める
ハイパフォーマーはロールモデルとして、他のチームメンバーの刺激となり働く意識を高めてくれます。自身のスキルや知識を他のメンバーに共有したり、サポートやフォローをしたりする傾向があるため、チームの成功やメンバーの能力向上も期待できます。
また、組織にハイパフォーマーがいれば周囲のメンバーはハイパフォーマーの行動や思考を学びます。さらなるハイパフォーマーの創出にも期待がもてるでしょう。
優秀な人材獲得への手掛かりがつかめる
優秀な人材獲得への手掛かりをつかめる点もハイパフォーマーが組織にもたらす効果の1つです。ハイパフォーマーとなりうる人材に求めるものは、業種や業務内容によって変化します。
自社のハイパフォーマーの行動特性を事前に分析しておけば、どのような人物がハイパフォーマーとして活躍できるのかを理解できます。
育成や採用の際には、蓄積したデータをもとに、ハイパフォーマーに似た行動特性かを手掛かりとして優秀な人材の獲得に活用できるでしょう。
自社にマッチした人材の見極めに有効な「コンピテンシー評価」。具体的な項目一覧や導入方法については、以下の記事で詳しく解説しています。
【分析】自社のハイパフォーマーを知る方法
ハイパフォーマーの特徴や行動特性を備えている人材であっても、その特性を活かせない組織では能力を存分に発揮できません。
企業は、自社にとって必要なハイパフォーマーがどのような人材なのかを明確にする必要があります。人材の能力や適性について見極め、適材適所に配置することが組織の生産性を高め、業績を向上させます。
ここでは、自社の求めるハイパフォーマーを知る方法を解説します。
ステップ1:自社の求める成果を明確にする
求める成果の定義が変われば、ハイパフォーマーの定義も変わります。まずは自社がどのような成果を求めるのかを明確にし、その成果を出すために必要なスキルや知識、特性を洗い出しましょう。どんな人物がハイパフォーマーとして理想であるかをしっかり議論し、定義することが大切です。
ステップ2:定義した成果を出している人材を選定する
定義した人物像に沿って、ハイパフォーマーに該当する人材を自社内で選定します。ハイパフォーマーを選定する際は、選定者の主観が入らないように注意が必要です。
たとえば営業職の場合、目標の達成率や受注率、残業時間といった複数の要素から客観的に判断し、絞り込む方法が挙げられます。選定する人数は、パレートの法則を参考にすると、全体の20%程度が目安です。
ステップ3:ハイパフォーマーのもつ資質を分析する
社内でハイパフォーマーとなる人材を特定後、その人物への聞き取りやアンケート調査などを実施します。ハイパフォーマーの特性に関するデータを集め、成果をあげている要因を分析しましょう。分析の観点は、以下の価値観、知識・スキル、行動特性の3点です。
- 価値観:どのような目的意識や価値基準で業務に臨んでいるか
- 知識・スキル:もっている知識やスキル。共通している資格や経験などを定義
- 行動特性:行動は、どのような動機にもとづいているか
知識・スキルは言語化や数値化によって、比較的容易に分析できます。価値観と行動特性については属人化しているため分析がしづらく、本人も気づいていないケースがあるため詳細な聞き取りが必要です。
細かな行動特性については、コンピテンシーの5つのレベルに落とし込むことで、精度の高い分析が可能になります。分析で明らかになった価値観、知識・スキル、行動特性は、育成や採用の場面で活用できます。
【育成】カリキュラム作成のカギは「入念な分析」
ハイパフォーマーを育成するにあたり、価値観、知識・スキル、行動特性を十分に分析し、自社にとってのハイパフォーマーの要件を明確にするがもっとも重要なポイントです。自社にとってのハイパフォーマーの要件がズレたまま進めた場合、時間をかけて人材を育てても成果が出ません。
分析で明らかになったハイパフォーマーの行動や特性、思考プロセスといった要件を整理し、体系化することで、ハイパフォーマー育成のためにどのような研修が良いか方針を立てられます。
カリキュラムは、一般的な従業員とハイパフォーマーの違いを理解し、差をどのようにして埋めるのかを考えて整えるとよいでしょう。
ハイパフォーマーの育成は、研修だけですぐに効果が出るものではなく、中長期的な視点が必要です。知識・スキルに関しては、どのレベルまで習得するのかを具体的に示すことで、成長のスピードアップが期待できるでしょう。
価値観や行動特性については、研修後のフォローや定期的な面談などを通じて変化を確認し、育成の進み具合や取り組みが機能しているのかを観察しながら進めるとよいでしょう。
【採用】重要ポイントは、ハイパフォーマーの「素養」をもつ人材
ハイパフォーマーは採用することもできますが、他社で成果を上げているハイパフォーマーが自社で同じように活躍できるとは限りません。また、採用してもこれまでのやり方で成功するかは不確実です。ヘッドハンティングなどのコストも高くなるため、ハイパフォーマーの採用は難易度が高いといえます。
他社のハイパフォーマーを採用するよりも、自社にとってのハイパフォーマーの要件を満たせる人材を新たに確保し、育成するほうが成果につながりやすいのではないでしょうか。
募集する際は、分析で明確になったハイパフォーマーの要件をもとにした求人を出しましょう。採用時にチェックすべき項目をリスト化し、面接担当者と共有することで自社が必要とする人材か否かを判断できます。
ハイパフォーマーが離職する要因・理由
ハイパフォーマーは業績に貢献する企業の成長に欠かせない存在です。しかし、豊富なスキルや経験があるからこそ離職するリスクも高くなります。
ハイパフォーマーが離職する主な理由は以下の3つです。
- 適正な評価や待遇が得られない
- 業務量が多いうえに期待値が過剰
- スキルを発揮できる環境が整備されていない
努力して期待に応えた働きをしているにも関わらず、相応の評価や待遇が得られない場合。より高く評価してくれる環境を求めて離職する可能性がでてきます。
また、ハイパフォーマーは優秀で前向きな人材が多いが故に業務が集中しやすくなります。周囲のメンバーよりも仕事の期待値が高くなる点も不満がたまる要因です。
採用や育成したハイパフォーマーの離職を食い止めるには、ハイパフォーマーがスキルを存分に発揮できるロイヤリティの高い職場環境を構築する必要があります。
ハイパフォーマーの離職を防ぐ4つの対策
適切な業務量に調整する
ハイパフォーマーは効率的に質の高い仕事を進めるため、多くの業務を任されがちです。周囲のメンバーと比較して業務量に偏りがあると、不満が生じやすくなります。ハイパフォーマーが望むワークライフバランスが崩れると離職へとつながりかねません。
ハイパフォーマーが担当すべき業務と周囲のメンバーができる業務に分け、仕事の量を調整することも必要です。上司は業務量が適切かを常に把握し、偏りがないかわかるように可視化するなどして不満が出ない対策をとりましょう。
評価制度を見直す
ハイパフォーマーは適正な評価や待遇を受けられない場合、離職する確率が高くなります。能力が高く、業績に貢献しているにも関わらず評価が低い状態ではモチベーションを維持することは困難です。
成果に応じた昇進や昇給の機会、業績の貢献度を反映した報酬の支給など、自社の評価制度がハイパフォーマーのスキルや能力に見合ったレベルになっているのかを見直し、必要があれば制度を変更する必要があります。
自分の頑張りが認められたと感じる評価制度を設けることは、ハイパフォーマーのモチベーションを高め、離職防止にも貢献します。
ハイパフォーマーの裁量を調整する
ハイパフォーマーの離職を防ぐには裁量の調整も大切です。多くの仕事を任されるのに裁量が与えられない状況では、モチベーションも低下します。
目指すべき着地点とクリアすべき絶対条件は事前に説明し、業務の進め方やさまざまな判断については適切な裁量を与えることも必要です。
裁量の付与によりハイパフォーマーがもつスキルや特性をこれまで以上に発揮できれば、さらなる業績の向上や成長も期待できます。
定期的に面談する
ハイパフォーマーは安定した成果を出し続けるため、心身の不調を他人に伝えず無理をすることもあるでしょう。そのため、業務負荷が高くなっていること、心身の不調に周囲が気づきづらい可能性があります。
ハイパフォーマーの体調の具合や不満の有無を把握するには、定期的な面談の実施が有効です。1on1やアンケートなどを実施することで、変化にいち早く気づき、ケアできる体制を整えましょう。
必要があれば、ハイパフォーマーに偏っている業務量のなかで重要度の低いものを他のメンバーに割り振る、リフレッシュできるよう有給休暇の取得を促すなどの対応が求められます。
「1on1ミーティング」の実施例や効果的なやり方については、以下の記事で詳しく解説しています。
ローパフォーマーの底上げも重要なポイント
ハイパフォーマーの対極にいるのが、企業のなかで生産性の低い人物であるローパフォーマーです。ローパフォーマーは以下の特徴があります。
- 受身で仕事に主体性がない
- 同じミスを繰り返し改善する意識がない
- 職務怠慢で周囲に迷惑をかける
- 能力不足を自覚していない
ローパフォーマーが生まれるのは、必ずしも本人の問題だけではありません。組織風土と合わない人材の採用や異動のミスマッチ、不適切なマネジメントなど、企業側の原因である場合もあります。
ローパフォーマーを放置すると、ハイパフォーマー側の業務負荷につながるなど、周りのメンバーの不満が高まる可能性があります。優秀な人材の離職を招く前に対策をとる必要があるでしょう。
ハイパフォーマーのスキルを存分にいかせる職場環境を作るには、ローパフォーマーの底上げも重要なポイントです。管理職はローパフォーマーと定期的なコミュニケーションを図る機会や、スキルアップの機会を設けるなど対策しましょう。
ローパフォーマーのレベルが向上すれば、組織全体の業績も向上し、ハイパフォーマーのモチベーションアップにもつながります。
ハイパフォーマーの発掘・育成・採用にタレントマネジメントシステムを活用しよう!
ハイパフォーマーの定義は、企業や業務によって変わります。組織内のハイパフォーマーの特性を十分に分析し、共通する素養を明確にできれば、ハイパフォーマーの発掘や育成、採用がしやすくなります。育成や採用計画は、自社の従業員の属性や行動、評価などのデータを収集し、分析したうえで実行すると良いでしょう。
採用や育成したハイパフォーマーの離職を防ぐには、1on1などのコミュニケーションを通じて現状を把握し、スキルや成果に見合った適正な評価を得られるロイヤリティの高い職場環境を構築する必要があります。
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さらに、育成・研修対象の可視化、採用ターゲット、手法の振り返りもできるため、より戦略的な人事施策が実行できます。
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Q1. ハイパフォーマーとはどんな人材ですか?
「ハイパフォーマー」は、自社や組織における必要なスキルをもち、いかせる人材を指します。成果を上げ、企業の業績に貢献する存在です。たとえば営業力を重視する企業なら顧客折衝能力や交渉力の高い人物がハイパフォーマーといえるでしょう。
Q2. ハイパフォーマーの特徴は?
前提として各業界・企業において成果を出せる人の特徴や特性は異なるため、どういった人が「ハイパフォーマー」かは多様です。一般的には以下の特徴・特性をもっています。
- 求められた以上の成果を出せる
- コミュニケーション能力が高い
- チャレンジ精神が旺盛
- 自己研鑽を怠らない
- ポジティブ思考である
- 自己管理を徹底している
Q3. ハイパフォーマーが組織にもたらす効果は?
ハイパフォーマーが組織にもたらす効果は以下の3つです。
- 生産性向上・業績向上
- チームメンバーの意識を高める
- 優秀な人材獲得への手掛かりがつかめる
周囲のメンバーの意識を高めることで、さらなるハイパフォーマーの創出も期待できます。