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ジョブディスクリプションとは?メリットや作成方法、テンプレートや記載例を紹介

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目次
  1. ジョブディスクリプション(職務記述書)とは
    1. 募集要項との違い
  2. ジョブディスクリプションの導入が増えている背景
    1. (1)「ジョブ型雇用」を一部導入、移行する企業の増加
    2. (2)デジタル人材やグローバル人材の確保と活用
  3. ジョブディスクリプションを活用する6つのメリット
    1. (1)職務と報酬の明確な対応
    2. (2)採用時のミスマッチを防げる
    3. (3)スペシャリストを採用・育成できる
    4. (4)人事評価制度の納得感を向上
    5. (5)キャリアパスの指針を明確にできる
    6. (6)組織の生産性向上や効率化につなげられる
  4. ジョブディスクリプションのデメリット
    1. (1)作成・管理の負荷が高い
    2. (2)組織文化への影響
    3. (3)ゼネラリストの育成が困難
  5. ジョブディスクリプションに記載する項目
  6. ジョブディスクリプションの作成方法
    1. (1)経営・事業戦略と各組織の役割を整理する
    2. (2)組織内の各ポジションの業務と責任範囲を明確化する
    3. (3)ジョブディスクリプションを作成する
    4. (4)多角的なレビューを実施
  7. ジョブディスクリプションの記載例・テンプレート
  8. ジョブディスクリプション導入・活用のポイント
    1. (1)現場の実務と乖離しないよう注意する
    2. (2)組織全体に関する業務内容も網羅する
    3. (3)評価制度との連動
    4. (4)定期的な見直し
  9. 採用、入社手続きから育成までSmartHRでシームレスに

ジョブディスクリプション(職務記述書)は、職務内容や権限、責任範囲、必要なスキル・経験を明確に定義した文書です。欧米企業では経営目標達成のための不可欠なツールとして定着していますが、近年は日本企業でも注目が集まっています。

今回はジョブディスクリプションの定義や活用のポイント、テンプレートを紹介します。

ジョブディスクリプション(職務記述書)とは

ジョブディスクリプションは、担当する職務内容や権限、責任範囲、必要なスキル・経験を明確に定義した文書です。日本語では「職務記述書」や「職務定義書」と訳されています。

欧米企業では、経営目標の達成に向けて各職務の役割と責任を明確に定義し、適切な人材配置、評価を実現するために不可欠なものと位置づけられています。記載される主な項目は以下です。

  • ミッション:職務の存在意義
  • 職務内容:具体的な業務と実施方法
  • 権限・責任:権限および責任の範囲
  • 必要条件:必要なスキル、経験、資格

募集要項との違い

募集要項は採用活動のためのツールであり、待遇や勤務条件が重視されます。一方、ジョブディスクリプションは組織マネジメントのツールであり、職務の本質的な定義と期待値の明確化に重点を置きます。

ジョブディスクリプションの導入が増えている背景

(1)「ジョブ型雇用」を一部導入、移行する企業の増加

日本の従来の雇用形態はメンバーシップ型でした。メンバーシップ型とは、職務を限定せずゼネラリストとして社員を育成し、必要に応じてさまざまな業務や部署に配置する雇用形態です。

しかし、グローバル競争の激化やDX推進のなかで、ゼネラリストではなく特定の職務やポジションにあったスペシャリストを必要とする企業が増えています。2024年8月には内閣官房も「ジョブ型人事指針」のなかで「個々の企業の実態に応じたジョブ型人事の導入」が日本企業、日本経済のさらなる成長にとって急務と述べました。

さらに近年、働き方改革の一環として企業には同一労働同一賃金への対応が義務化されました。これは明確に職務を定義し、賃金を設定するジョブ型の雇用・人事制度とも相性がよいと言えます。

こうした流れのなかで、職務内容を明確にするツールとしてジョブディスクリプションの導入が広がりつつあります。

(2)デジタル人材やグローバル人材の確保と活用

近年IT技術の発展やDX推進の流れのなかで、デジタル人材の需要が増加しています。また企業のグローバル展開にともない、海外にバックグラウンドをもつ人材の採用に注力する企業も増えています。

こうした人材を効果的に確保、活躍してもらうために、ジョブディスクリプションが重要な役割を果たします。

具体的には、まず求める専門性と期待値の明確化により、採用時のミスマッチを防げます。また、職務や権限、責任範囲を明確に定義することで、文化や価値観の違いを超えた相互理解を促進できます。さらに、職務にもとづく評価基準と報酬レンジを設定することで、評価・報酬の透明性を確保し、高度人材の定着にもつながります。

ジョブディスクリプションを活用する6つのメリット

(1)職務と報酬の明確な対応

ジョブディスクリプションは職務の価値にもとづく等級・報酬制度である「職務等級制度」の土台となります。日本の伝統的な年功序列や職能給とは異なる、職務の市場価値や責任の重さに応じた報酬体系を構築できます。

雇用側と従業員の双方にとって、職務内容や範囲、給与・報酬面との連動性が明確になるため、過剰な業務負荷や残業の抑制にもつながります。

(2)採用時のミスマッチを防げる

ジョブディスクリプションによって、必要なスキルや期待する成果を具体的に示すことで、応募者との相互理解を深められます。採用基準の標準化による選考の効率化、職務内容の事前理解による早期離職防止、適性を重視した人材配置の実現が可能になります。

(3)スペシャリストを採用・育成できる

ジョブディスクリプションを活用する際は、各職務に必要な専門性を明確化します。これにより職務に応じた人材採用や能力開発を実施しやすくなります。

異動を前提としないため、特定の分野・技能に特化したスペシャリスト型の人材育成が可能になります。

(4)人事評価制度の納得感を向上

職務の期待値と評価基準の明確化により、客観的な成果測定が可能になります。

評価者による判断のばらつきを防ぎやすく、従業員の評価に対する納得感を高められます。

また、ポジションに求められる期待値と現状の成果を比較しやすくなるため、従業員の育成に向けた計画や面談などもより進めやすくなるでしょう。

(5)キャリアパスの指針を明確にできる

一般的にジョブディスクリプションは社内に公開されるため、現在の職務における期待値だけでなく、組織内のさまざまなキャリアパスを具体的に描けます。

たとえば、上位ポジションへの昇進を目指す場合、ポジションに必要なマネジメントスキルや専門性を事前に把握し、計画的な能力開発が可能になります。また、他職種への転換を検討する場合も、必要なスキルギャップを特定し、効果的な学習計画を立てられます。

実際にジョブ型雇用を導入しているカゴメでは、ジョブグレードを全社員に公開しています。カゴメ株式会社の常務執行役員の有沢正人氏は社員が「自分のキャリアの目標を立てやすくなります」と述べています。

(6)組織の生産性向上や効率化につなげられる

職務に必要な能力や特性が明確になるため、適材適所の人員配置が実現できます。また、各職務の目標や責任範囲が明確になり、相互の理解が深まるため、他部門との協働が推進され、組織全体の業務フローが最適化されます。結果として、重複業務の削減や意思決定の迅速化、部門間連携の強化といった効果が期待できます。

ジョブディスクリプションのデメリット

(1)作成・管理の負荷が高い

ジョブディスクリプションは各ポジションに対して作成が必要です。企業規模や職務の細分化度合いによって作成負荷は増大します。組織改編や事業環境の変化に応じた定期的な見直しも必要です。

(2)組織文化への影響

担当業務の明確化は「自分の仕事以外はしなくてもよい」と担当職務以外の業務を回避する意識・考え方を生み出す可能性があります。結果、業務の押し付け合いや部門間の連携低下が発生するリスクがあります。

(3)ゼネラリストの育成が困難

特定職務への特化により、多様な経験を積む機会が限定されると、ゼネラリストの育成は難しくなります。結果的に未来の経営人材の育成などが進みづらくなる可能性がありまうす。

未来の経営人材になり得るゼネラリストの育成には、計画的なジョブローテーション制度の導入や一時的な配置転換制度の整備などもあわせて検討しましょう。

ジョブディスクリプションに記載する項目

項目名
内容
ポジション名
募集するポジションの具体名を肩書きや職位など実際に使う呼称で記載します。社内での認識と齟齬が生じないよう、人事システムの名称と統一することが重要です。
会社概要
事業内容や提供しているサービスなどを記載します。創業の歴史やミッションにも触れると、企業の社会的価値や存在意義を伝えられます。
所属部署の詳細
部署やチームのミッション、役割、人数、働き方などを記載します。取り扱う商品やサービス、対象となる顧客など、求職者が職場と仕事のイメージを想起しやすいよう意識してまとめます。
具体的な職務内容・期待されるミッション

ジョブディスクリプションの核となる部分です。職務の目的や具体的な仕事内容を、優先度や頻度に応じて重要度に応じて記載します。

業務の範囲や求められるレベル、想定業務量も記載することで、期待値のギャップを防ぎます。
責任や権限の範囲

職務の役割、責任、ミッションを具体的に記載します。また職務によっては決裁権限や予算執行権限なども明確にします。

ジョブディスクリプションの作成方法

(1)経営・事業戦略と各組織の役割を整理する

ジョブ型人事を機能させるには、ジョブディスクリプションと経営戦略・事業戦略との連動が不可欠です。まずは経営戦略と事業計画を確認し、実現に必要な組織構造や各部門の役割を整理します。

(2)組織内の各ポジションの業務と責任範囲を明確化する

各職務担当者にヒアリングし、各ジョブの職務等級や責任、仕事内容、必要な知識やスキル、求められる責任範囲を明確にします。

意見の偏りを減らすため、現職者や管理職へのヒアリング、複数の関係者での議論など複数の声を集めましょう。

情報を収集したら、人事部門や部門責任者など関係者で体系的に整理していきます。

(3)ジョブディスクリプションを作成する

各ジョブの内容を記載したジョブディスクリプションを作成します。一般的な文量はA4用紙1枚です。項目の抜け漏れがないか、簡潔かつ具体的に記載されているかを確認しましょう。

(4)多角的なレビューを実施

作成したジョブディスクリプションは、必ずレビューを実施します。経営層、人事、現場スタッフ、現場マネジャーの確認は必須です。複数の視点でレビューすることで、ジョブディスクリプションの精度が上がります。

レビュー担当者と確認ポイント

経営層
戦略との整合性
人事部
制度との整合性
現場管理職
実現可能性
現職者
実務との一致

ジョブディスクリプションの記載例・テンプレート

以下は基本的な項目の入ったテンプレートです。土台をもとに事業や組織にあわせたものを作成しましょう。

ジョブディスクリプション導入・活用のポイント

(1)現場の実務と乖離しないよう注意する

ジョブディスクリプションは現場の実態との一致が最も重要です。実務との乖離があると、正しい人事評価ができず早期離職を招く恐れがあります。

(2)組織全体に関する業務内容も網羅する

ジョブディスクリプションの各項目は担当する職務内容を詳細に記述したものです。記載されていない細かな業務は雑用とみなされ、必要がないと判断される恐れがあります。業務の抜け落ちや偏りを防ぐためにも、組織全体にかかわる業務を適切に記載しましょう。

(3)評価制度との連動

ジョブディスクリプションにもとづく客観的な評価基準を設定し、定期的に見直し・更新しましょう。公平かつ納得性の高い評価基準の作り方は下記記事で詳しく説明しています。

(4)定期的な見直し

市場環境や経営方針の変化により、必要な職務の範囲や内容も変化します。作成したジョブディスクリプションは定期的にレビューし、現場のニーズと合致するよう更新しましょう。

採用、入社手続きから育成までSmartHRでシームレスに

効果的なジョブディスクリプションの管理・運用には、従業員データの一元管理や各プロセス間の連携が不可欠です。

SmartHRでは、採用候補者の管理から従業員登録までを一元化する「採用管理」機能を提供しています。採用管理機能では、候補者の情報や書類、選考結果を一元管理できます。

SmartHRの採用管理について詳しく知る

さらにタレントマネジメント機能への連携も拡充予定。選考における評価をタレントマネジメントの他機能に連携。評価情報やスキル情報などと一緒に、参照・活用できる状態を目指します。

※本件は予定であり、機能追加しない可能性もあります。

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