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スケールアップ企業とは?定義から急成長期の人事施策までを紹介

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目次

近年ビジネス界で注目を集めている「スケールアップ企業」。これらの企業は、急速な成長を遂げながら市場に大きなインパクトを与えています。従来のスタートアップ企業とは異なり、スケールアップ企業はすでに市場での地位を確立し、さらなる飛躍を目指しています。

本記事では、スケールアップ企業の特徴や成長ステップ、直面する人事課題と解決策について解説します。

スケールアップ企業とは

スケールアップ企業の定義と特徴

スケールアップ企業とは、「製品の市場テストが完了し、規模拡大を行なう段階」にあり、「組織・事業ともに急成長」している企業を指します。これらの企業はサービスやプロダクトの検証を経て、適切なマーケットにサービス・プロダクトを提供しています。

また、従業員数と売上高がともに急速な成長段階にあります。組織の急拡大と事業の急成長を両立させながら、さらなる持続的な成長への基盤を固めている段階です。

参考:SmartHRという「スケールアップ企業」について 〜スタートアップにも大企業にもなれないわたしたち〜(note)
参考:【トレンド研究:スケールアップ企業】海外では当たり前の概念?日本でもすでに増えている?SmartHRだけじゃない実態を考察(FastGrow)
参考:Why some startups don’t want to be called that(TechCrunch)

スタートアップ企業とスケールアップ企業の違い

スタートアップ企業は事業が未確立で市場テストを進めている段階であり、ビジネスモデルを模索し実験的なアプローチを取ります。一方のスケールアップ企業は、すでにビジネスモデルが確立され、急速な成長段階にある企業です。

IEビジネススクールのジョー・ハスラム教授は、スタートアップ企業とスケールアップ企業の違いを端的に「スタートアップ企業は実験を進め、スケールアップ企業は標準化を進める」と表現しています。

引用:Why some startups don’t want to be called that(TechCrunch)

スタートアップ企業の特徴3つとスケールアップ企業の特徴3つを挙げて違いを示す図

スケールアップ企業へのステップ

スケールアップ企業への成長には、大きく3つのステップがあります。

  • PMFの達成
  • 顧客基盤・マーケットシェアの拡大
  • 持続可能な成長モデルの確立

まずは、PMF(プロダクト・マーケット・フィット:製品の市場適合性)の達成です。この段階では、市場ニーズの深い理解とサービス・プロダクトの最適化が成され、顧客からのフィードバックをもとに迅速な開発・改善が進められます。

つぎに事業拡大期に入ります。ここでは急速な顧客基盤・マーケットシェアの獲得が進み、組織規模を拡大、人材を積極的に採用します。また、効率的な業務プロセスの構築や大規模な資金調達と積極的な投資も特徴的です。

最後に成熟期です。持続可能な成長モデルの確立が課題となり、組織構造の最適化と経営管理体制の強化が進められます。また、企業文化の定着や人材育成システムの構築、M&Aによる成長戦略の検討なども重要なテーマになります。

参考:SmartHRという「スケールアップ企業」について 〜スタートアップにも大企業にもなれないわたしたち〜(note)
参考:「スタートアップ」でも「大企業」でもない、新たな成長ステージで直面する課題とは?SmartHRが示す「スケールアップ企業」の実像に迫る(FastGrow)
参考:【トレンド研究:スケールアップ企業】海外では当たり前の概念?日本でもすでに増えている?SmartHRだけじゃない実態を考察(FastGrow)
参考:Why some startups don’t want to be called that(TechCrunch)

スケールアップ企業の人事課題と取り組み事例

以下ではSmartHR社を例に、スケールアップ企業における人事課題と取り組みについて紹介します。

人事戦略の策定

スケールアップ企業にとって、適切な人事戦略の策定はきわめて重要です。経営陣の考えを理解し、目指すべき組織と現状のギャップに向き合いながら、具体的なアクションの実行が求められます。

SmartHR社では、人事戦略は経営戦略を実現するためのものと位置づけられています。「経営戦略に沿って、この年度までにこういう企業にしたい」という理想に対して、「どのような人材が必要なのか」「どのような仕組みで人をアサインしたらよいのか」とストーリーを描くことで、人事戦略を策定。戦略を実現するために以下のような施策に取り組んでいます。

  • 課題:採用におけるエージェント比率が高い
    • 解決に向けて:外部タレントを活用するためのルールを構築
  • 課題:タレントの育成に取り組む必要がある
    • 解決に向けて:タレントマネジメントの仕組みや研修を整備

経営幹部候補の育成

急成長する組織において、将来の経営を担う人材の育成は喫緊の課題です。SmartHR社では、タレントマネジメントの一環で「タレント会議」を実施しています。

具体的には、マネジメントを担う役職者に将来のマネジメント職候補を選んでもらいます。その後、職歴や評価、候補者自身が記載したキャリアイメージを携えて会議を実施。推薦者はその場で、候補者を選んだ理由や将来のキャリア像を紹介し、会議の参加者はサポート方法などについて質問をしながら、意見を交わします。これにより、後任育成の意識づけと育成ノウハウが共有されることに加え、人材が見える化され、経営幹部候補の発掘・育成が加速しています。

人事制度の設計

成長段階にあわせた人事制度の設計は、スケールアップ企業の持続的な成長を支える重要な要素です。SmartHR社では、2020年と2024年に人事制度を大きくリニューアルしました。

この背景には、従業員の増加と職種の多様化が進むなか、全職種共通の人事制度を適用し続けることによる、評価に対する納得感の低下や昇格定義の不明瞭さの解消などがありました。

  • 2020年の主な変更点
    • 成果給制度の導入:全社の業績や個人評価、等級によって成果給を支給する制度
    • 制度タイプの導入:職種ごとに人事制度を区別するための概念
  • 2024年の主な変更点
    • 等級制度の変更:等級制度を6等級制から7等級制に移行、等級定義を全面的に見直し
    • マネジメント評価指標の導入:ミッション達成度評価と行動評価にマネジメントに関わる項目を追加
    • 行動評価の尺度の見直し:行動評価の項目を減らし、各項目の評価も5段階から3段階に変更

組織課題の把握

急成長期の組織が健全に発展するためには、組織の現状を正確に把握することが不可欠です。SmartHR社では「組織サーベイ」を活用し、組織の健康状態を可視化。社員の本音に向き合い、具体的な改善につなげるアプローチを取っています。

毎月実施するサーベイの回答に人事担当者は目を通し、コメントに強い想いを書いている従業員には1on1面談を実施するなど、内容に応じた対応をしています。また、分析したサーベイ結果を参照しながら、前月と比較して大きく変動した数値があれば、マネジメント層へのヒアリングを実施。課題の可視化を通して個人と組織の両軸から組織を支えています

スケールアップ企業の持続的な成長のために

スケールアップ企業が成功を続けるためには、ビジネスモデルの確立や資金調達だけでなく、人材と組織の成長が不可欠です。経営陣と人事部門が緊密に連携し、組織のステージにあわせた適切な施策を講じることで、持続的な成長を実現できます。

スケールアップ期特有の課題に直面している企業にとって、本記事で紹介した事例や戦略は、自社の人事戦略を見直すよいきっかけとなるでしょう。急成長期の組織づくりとタレントマネジメントの成功によって、スケールアップ企業はさらなる飛躍を遂げられるのです。

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