エンゲージメントサーベイが新たな会話の起点に。人事と現場が一体となって取り組む職場改革
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総合物流企業の株式会社ギオンは、経営トップの交代を機に、2024年3月にMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を策定しました。策定を主導した人事部では、新たなMVVのもと、かねて課題だった「離職率の改善」や「エンゲージメントの向上」「適切な人事評価」といった人事課題の解決に向けて、さまざまな施策に取り組んでいます。
同社は2024年5月から6月にかけて、全国約90拠点、全従業員5,000人を対象にSmartHRの「従業員サーベイ機能」を活用した第1回エンゲージメントサーベイを実施。以後も年に1度の頻度で、継続的なサーベイの実施に取り組んでいます。
「人事部が果たそうとする役割」や「施策立案や戦略実行のポイント」を伺った前回の取材から約1年が経過。
今回は、第1回エンゲージメントサーベイの結果を振り返り得られた成果、新たに見えてきた課題について、執行役員 管理本部本部長 兼 人事部長の須藤亮平さん、管理本部 人事部 ゼネラルマネージャーの渋谷千尋さん、さらに物流現場の従業員を代表して相模原センター マネージャーの山口孝さん、リーダーの小泉迅さんの4名にお話を伺いました。
- 須藤 亮平さん
株式会社ギオン 執行役員 管理本部本部長 兼 人事部長
- 渋谷 千尋さん
株式会社ギオン 管理本部 人事部 ゼネラルマネージャー
- 山口 孝さん
株式会社ギオン 相模原センター マネージャー
- 小泉 迅さん
株式会社ギオン 相模原センター リーダー
全従業員を対象に第1回エンゲージメントサーベイを実施
あらためて、2024年5~6月に実施した全従業員向けのサーベイの概要について教えてください。
須藤さん
まず対象は、アルバイトさん・パートさんを含む全従業員が対象です。設問はSmartHRの従業員サーベイ機能のプリセット(テンプレート)をそのまま使用しました。質問項目が45個と多かったので、ちゃんと回答してもらえるのか不安もありましたが、回答率は予想を上回る85%。従業員への周知など、現場のマネージャーがしっかり協力してくれたおかげです。

執行役員 管理本部本部長 兼 人事部長の須藤 亮平さん
各部署に結果をフィードバック。自分たちの「強み」と「弱み」を分析
サーベイの実施後は、どのように振り返りましたか?
渋谷さん
集計・分析結果を社内で共有して活用するために、社内で独自のフォーマットを用意しました。そのフォーマットを使って、各センター(拠点)に部署単位で結果をフィードバック。グループ会社も含めると、計100件ほどになります。
そしてそのフィードバックにもとづき、自分たちの「強み」と「弱み」を各部署に3つずつ挙げてもらいました。「強み」をどう伸ばし、「弱み」をどう正していくか。改善に向けてどのような取り組みをすべきか話し合ってもらいました。
私たち人事部としても全社的なサーベイは初めてでしたから、振り返りも手探りで進めたというのが正直なところです。ただ、「フィードバックをどうアクションにつなげてもらうか」がもっとも重要なポイントであることは理解していたので、現場の人たちにモチベーションを保ってもらえるよう、一方的に結果を伝えて終わりではなく、「どうすれば良くなるか、一緒に考えましょう」というスタンスで臨みました。
また、サーベイのスコアが振るわなかった拠点においては、地方であっても私たちが直接足を運び、ディスカッションに参加しました。やはり、「拠点メンバーだけではどう振り返ればいいのか、勝手がわからない」という声もあったので、「今はどのようなことで困っていますか?」「この結果を見て率直にどう思いますか?」などと、私たちがファシリテートして、建設的な議論になるよう努めました。次回以降は、拠点メンバーのみでも自走できると思っています。

管理本部 人事部 ゼネラルマネージャーの渋谷 千尋さん
サーベイの結果の率直な感想をお聞かせください。
須藤さん
まず、「自分たちの仕事に誇りをもっている」という設問のスコアが全体で良かったことが、非常に嬉しかったですね。自分たちの仕事(=物流)の社会的意義、会社の存在価値を皆さんすごく感じてくれている。これは正直、予想外でもありました。
一方で、「マネジメント」と「コミュニケーション」に関する項目は、全体的に低スコアでした。マネジメントは、「上司が時間をかけて部下とじっくり面談する」など、評価をフィードバックする機会を十分に取れていないことが原因ではないかと思います。
コミュニケーションに関しては、そもそも全体で会議をしたり、議論をしたりする機会があまりないことが要因だと思われます。物流という業務上、シフト制の24時間体制で皆さん勤務していますから、どうしても他業種と比べると、全体で顔を合わせる機会が少なくなってしまう現実があります。
ただ、これら課題として明らかになった項目は、ここ数年、人事部が研修などを通じて重点的に改善に取り組んできたポイントでもあるので、施策の方向性は間違っていないという自信をもつことができました。これも大きな収穫でした。

(参考イメージ:従業員サーベイのクロス集計画面)
サーベイが相模原センターの一大転機に
では、現場ではサーベイの結果をどのように受け止めて、行動に移したのでしょうか?
山口さん
実は私が所管する相模原センターは、最下位に近いスコアでした。それゆえ、人事部から結果が届いた際には、かなりのインパクトを受けました。自分たちの「強み」と「弱み」が記載されたフィードバックを確認しつつ、リーダーの小泉さんやサブマネージャーと一緒にすぐに今後について議論しました。
先ほど、須藤さんが述べられたように、相模原センターも「コミュニケーション」の項目のスコアが低く、とくに課題だと認識しました。加えて、「勤務時間」や「休暇取得」に関しても課題が浮き彫りに。皆さん忙しくて、なかなか休暇を取得できない状況にあったので、そういう勤務形態への不満が悪い結果に結びついてしまったのだと考えています。今は1年前と比べて、だいぶ改善できていると思います。

相模原センター マネージャーの山口 孝さん
小泉さん
自分たちのセンターの「弱み」には、うすうす気づいていたのですが、あらためて数字で示されたことで、より危機感が増しました。切迫した状況にあることを実感し、すぐに人事部の方々や山口さんと連携して改善のための行動に移せたので、すごくいい機会になったと思います。次回のサーベイの結果が楽しみです。
サーベイの結果のフィードバック後、相模原センターがすぐに改善行動に移せたポイントはどこにあるのでしょうか?
山口さん
いま小泉さんが言われたように、改善点が数字で明確に提示されることが大きかったと思います。マネージャーとして責任も感じましたし、力不足も痛感しました。忙しさを理由に先延ばしにしてきた改善行動を、人事の方々と一緒に議論できたのは本当によかったと感じています。もし、サーベイを実施していなければ……と考えると、冷や汗が出ますね。職場の雰囲気や環境の悪さを感じながらも、自分に言い訳をして、今もずるずると惰性でそのままにしていたのではと思います。
須藤さん
山口さんの人柄も大きいですよね。サーベイの結果は見て見ぬふりだってできるし、改善策を適当に講じて人事に形式的に報告できなくもないわけです。ですが、山口さんは結果と向き合い、真摯に改善に取り組んでくれた。これはサーベイを実施した側としてもうれしいですし、信頼できますよね。
渋谷さん
実は私は、サーベイ後にこの相模原センターを訪れたとき、本当にスコアが低かったのか疑ってしまうくらい、良い雰囲気だと感じました。それはフィードバック後、すぐに拠点メンバーだけで自主的に議論を開始して、具体的なアクションを実行していたからですよね。帰り道、私もすごくポジティブな気持ちになれたことを覚えています。
小泉さん
たしかに、初動は早かったですね。議論から生まれた取り組みを1つ挙げると、お昼に勤務メンバー全員で集まる「昼礼」を始めました。「参加者は、最低1回は発言する」というルールで、業務連絡が中心です。しかし、これまで部署の異なるメンバーが顔を揃えるということがほとんどなかったので新鮮でした。団結力のようなものが芽生えたと思います。
あとは、「評価後の1on1」もスタートしました。上長からのフィードバック不足を受けて開始した取り組みになります。こういった機会を通して、マネジメントとのコミュニケーション不足を補っていけたらと思っています。

相模原センター リーダーの小泉 迅さん
須藤さん
本当に相模原センターでは、小泉さんたちの柔軟な発想やポジティブな思考、そしてそれを実践する判断をした山口さんのリーダーシップを中心に、良い取り組みをされていると思います。
本来、エンゲージメントサーベイの結果が悪いと、得てして現場のマネージャーがやり玉に挙げられますが、決してマネージャーだけの責任ではありません。また、スコアを悪くしている原因を一人のせいにする「犯人探し」に陥りがちです。ですが、それをやっても組織として進歩しません。
今回、相模原センターのメンバー全員がサーベイの結果を自分ごととして真摯に受け止め、前向きに取り組んでくれたことが成功につながったと、人事部では分析しています。
コミュニケーションを生む場として、SmartHRが機能
最後に今後の目標についてお聞かせください。まずは人事部のお二人からお願いします。
須藤さん
現時点では、サーベイ結果のフィードバックの受け止め方と、改善活動については、各部署のマネージャーの裁量に任せている状態です。皆さん、山口さんのように責任感をもって改善活動を牽引してくれればよいのですが、残念ながら実際はそういうマネージャーばかりではありません。
ですから、サーベイに参加した一人ひとりが結果を自分ごととして受け止め、より具体的なアクションの必要性を感じてもらうために、目下、SmartHRで従業員一人ひとりに直接フィードバックをすることを検討しています。
やはり、「数字」で会社の今の状態、職場の雰囲気を把握することはとても重要だと考えます。数字を共有することで、現場の従業員から経営層まで、同じ目線で会社のこれからを語れるようになりますし、今後自分たちの部署をどう変えていかなければいけないか、議論が生まれますよね。サーベイの結果がコミュニケーションのきっかけになることも、これからどんどん浸透させていきたいですね。
渋谷さん
本当にそのとおりで、SmartHRがコミュニケーションを生む場として機能しはじめています。当社は全従業員がパソコンを持っているわけではありませんから、スマートフォンから操作ができるSmartHRのメリットを強く感じています。この利点をさらに活かして、今後はオンライン研修などにも活用していきたいと思います。
従業員の皆さんも「従業員サーベイ」「給与明細」「年末調整」「お知らせ機能」による社内の案内など、SmartHRを開く機会が日々増えてきています。とくに便利な「お知らせ機能」は、今後、積極的に活用していきたいですね。
また、良いエンゲージメントの取り組みをした部署や拠点を社内報で表彰する制度も考えています。あとは、企業内大学「祇󠄀園塾」のマネジメントのコースで、今年から「エンゲージメントを向上させよう」というテーマのプログラムを今年から始めました。さまざまな角度から、MVVやエンゲージメントサーベイを自分ごと化する浸透活動を進めていきたいと思います。

続いて、現場のお二人の今後の目標を教えてください。
小泉さん
今後、自分がずっとこの会社でキャリアを重ねていくことを考えると、すべての従業員が誇りに思える会社、入社して良かったと思える会社にしたいですね。せっかく働くなら、嫌な気持ちじゃなくて、楽しい気持ちで働きたいですし、まわりの人にもそう思ってもらいたい。その最初の一歩として、まずこの相模原センターの皆さんの意識を高めていけたらと思っています。微力ですが、自分ができることに全力を尽くしたいと思います。
山口さん
今回のサーベイの実施からフィードバック、そして改善活動と、一連の取り組みがとても良い経験になりました。小泉さんのようにポジティブ思考の従業員が近くにいてくれますし、私も皆さんと協力して、相模原センターをもっと働きがいのある職場にしていきたいと思います。
そしてそれが、他のセンターの参考になれば理想ですね。仮にメンバーがほかのセンターに異動しても、相模原センター出身だと誇れるような、そういうモデル、発信地にしていきたい。ギオンを代表する拠点になれるよう頑張ります。

お役立ち資料
3分でわかる! SmartHRの従業員サーベイ