戦略人事を後押しする! エンゲージメントサーベイの効果的な活用法
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こんにちは、SmartHRでプロダクトマーケティングマネージャーを務めている埜村(のむら)です。
戦略人事を実現する上で、従業員のエンゲージメントを測ることの重要性が近年高まりつつあります。今回は、「従業員サーベイ」機能を利用したエンゲージメントサーベイの活用方法について、事例を交えて解説していきます。
※本記事は、2021年4月27日に行われたCHOサミットでの登壇内容を再編集したものです。
戦略人事とは
戦略人事とは、企業の経営戦略を実現するために、戦略的に人材マネジメントを行うことです。
人材が付加価値の源泉となる第三次産業が増加してきたことや、情報がオープンになり事業戦略が模倣されやすくなったことに起因し、事業だけではなく、組織戦略の重要性が高まってきました。
それに伴い、人事は事業戦略を推進する立場としてより戦略性が求められるようになり、「戦略人事」という言葉が広まりました。
戦略人事とは「組織のための組織づくり」ではなく「事業戦略を推進するための組織づくり」といえます。
自社にとって重要な項目を見極めるための「エンゲージメントサーベイ活用」
戦略人事の推進における一つの選択肢として、エンゲージメントサーベイの活用も効果的です。
サーベイの項目は多岐にわたりますので、結果から全ての項目を改善しようとするのではなく、自社の事業にとって重要な項目を見極め、改善に着手することが大切です。
低いスコアの項目があっても必ず改善しなければならないというわけではなく、事業によっては課題として認識する必要がないケースもあります。
本記事では、2社の事例をもとに、エンゲージメントサーベイの活用法をご紹介していきます。
SmartHRのエンゲージメントサーベイについて
事例で利用しているのは、SmartHRの「従業員サーベイ」機能でご提供しているエンゲージメントサーベイです。
SmartHRのエンゲージメントサーベイは、「JD-Rモデル」というワークエンゲージメントの考え方をベースに設計されており、仕事から受ける精神的・身体的負荷や上司・同僚との関係性、会社の文化など「エンゲージメントを構成する要素」と「エンゲージメントを高めることで得られる結果」を測定できるものです。
慶應義塾大学 山本 勲教授と共同開発
質問項目の分類と各項目の説明は上記のとおりです。これらを測定するための全45問の質問を、慶應義塾大学の山本教授にご協力いただき設計いたしました。
サーベイの利用により、各項目の達成度を定量的なスコアとして算出できます。それにより従業員や組織の状態を可視化し、組織課題を把握できます。
それでは、実際の活用事例をご紹介します。
事例1:製薬会社
サーベイの結果を見る前に、企業の傾向から重点項目の整理をします。
- 事業について
- 事業内容:医薬品の開発及び病院・代理店への販売
- 主な職種:営業職(MR)・研究職
- その他
- 外資系企業
- 従業員の構成比は営業職(MR)が約7割、研究職が約3割
- MRになることを志望して入社した方が多い
- 取扱薬品は国内でも数少ない企業しか扱っていない
製薬・MRを行う企業の特徴
- 従業員が持つ高い専門性を発揮することで売上が伸びる
- 高い専門性をさらに伸ばしていくことが重要
- 専門性が高い仕事ゆえに業界の給与水準も高い
このような特徴がある場合、チームワークを推進するよりも、まずは個々の専門性を高める施策のほうが効果的だと考えられます。
また会社の理念やミッションなどの意味報酬への期待度は高くなりにくいので、給与水準が業界水準と比べて低すぎないかに注意したり、評価と報酬の納得感を醸成するなど、適切な金銭報酬の設計に注力することが効果的だと考えられます。
製薬会社だけではなく、「昇進するか、辞めるか(UP or OUT)」のような実力主義の会社(コンサルティング会社など)はこのような順序で施策を推進していくのがおすすめです。
業務への満足度が強みである一方、報酬・評価の課題が浮き彫りに
先ほど整理した観点から、結果について分析していきます。
まずこの会社の強みは、具体的な業務に対する満足度を示す「職務」「自分の技能や知識を仕事で使うことが少ない」の点数が高いことです。従業員が技能や知識を十分に仕事に活かすことができ、自身の職務に対しやりがいを感じられているといえます。
※補足:スコアが高い=良好な状態、を示しています
一方で「承認と報酬」「人事評価の結果について十分な説明がなされている」の点数が低くでています。評価の納得感や十分な報酬が得られておらず、離職につながる可能性があり、課題といえるでしょう。
「同僚」「キャリアに役立つ教育が行われている」といった項目の点数の低さはそれほど重視しなくてよいでしょう。スキルアップは自己研鑽に任せ、あえて差を生み出したり、一定の距離感を保ち競争したりすることで、個々の専門性を高めることにつながりうるからです。
事例2:インターネット通販会社
それでは、2例目の会社を見ていきましょう。
- 事業について
- 事業内容:インターネット通販(EC)および関連する物流
- 主な職種:エンジニア/マーケティング/セールス/カスタマーサポート/ロジスティクス
- その他
- 最も従業員が多いのはロジスティクス、次はカスタマーサポート
- 離れた物流拠点が複数ある
- 急成長しており従業員の半分以上が1年以内に入社
インターネット通販を行う企業の特徴
- プロダクト企画からお客様に届くまでの間に複数の部署が関わる
- 情報の横連携が事業のカギとなる
このような特徴をもつ会社では、先ほどの製薬会社とは異なり、まずプロダクトの価値を高めることやお客様に価値を届ける仕組み作りがポイントとなります。
同僚との関係や理念・行動指針への共感がカギ
結果を分析していきます。
「同僚」や「理念・行動指針への共感」の数値の高さが、このような会社の強みになっています。
同僚との良好な関係で連携がスムーズになり、理念・行動指針への高い共感が、自社プロダクトを良くしたいという想いの強さにつながります。従業員のノウハウを仕組みへ還元するカルチャーを醸成できれば、事業成長にもつながるでしょう。
また、「自分で仕事の順番・やり方をきめることができる」「ルーチンワークよりもクリエイティブな仕事が多い」のスコアが低いですが、あまり懸念する必要はありません。個人それぞれの好きな方法でパフォーマンスを発揮するよりも、まずは仕組みづくりが重要だからです。
まとめ
戦略人事を後押しするサーベイの活用事例をご紹介しました。
戦略人事の観点でエンゲージメントサーベイを活用することは、自社の事業戦略を推進するための組織づくりにつながります。
スコアが低い項目をただ対策するのではなく、このような観点をもって改善アクションを進めていくことが重要です。
SmartHRでは、サーベイ結果の分析ノウハウの提供も行っておりますので、お気軽にご相談いただければと思います。