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社内導入率90%超えの企業が語る。スマートフォン向けアプリ導入・浸透6つのポイント【月刊SmartHR セミナーレポート】

公開日
目次

SmartHRのアップデート情報や、季節ごとの人事・労務イベントに合わせた機能の使い方、活用事例などを月に1回、1時間に凝縮し、オンラインセミナー形式でお届けしている「月刊SmartHR」。

2024年5月15日(水)に開催された月刊SmartHR5月号のテーマは、SmartHRの『スマートフォン向けアプリ』を活用した労務効率化と社内コミュニケーション効率化でした。

セミナーではクリーニング店「ポニークリーニング」を首都圏・中京に約800店舗展開する穂高株式会社 デジタル推進室 小野 石樹 氏にお話しいただきました。

従業員の90%以上がスマートフォン向けアプリを導入する同社では、どのように社内浸透をはかり、効率化を進めたのでしょうか。

  • 登壇者小野 石樹(あつき)氏

    穂高株式会社 デジタル推進室

    国内SIerで金融系・産業系など多数業界のプロジェクトに対して方式設計から構築、テスト、保守を一気通貫でインフラエンジニアを担当。

    2022年3月に穂高株式会社へデジタル推進担当として入社後、全社改革に向けて全部署にて研修し、約800店舗を巡回しながら業務課題を収集。2023年1月よりデジタル推進室を設立し、室長として活動開始。「むずかしくないデジタル」を掲げ、全社のデジタル推進、DX化に着手。

  • 登壇者酒井 悠作

    株式会社SmartHR プロダクトマーケティングマネージャー

    スマートフォン向けアプリ「SmartHR」の製品企画および製品マーケティングを担当。

アンケート結果からみる、スマートフォン向けアプリ導入促進のコツ

酒井

SmartHRでは、2023年よりスマートフォン向けアプリを提供しています。スマートフォン向けアプリがあれば、文書配付や従業員サーベイ、申請、お知らせ掲示板など、従業員に対する依頼や案内を、スマートフォンのプッシュ通知機能で確実に届けられます。私からはスマートフォン向けアプリに関するアンケート結果をもとに、「導入促進」のコツを紹介します。

【アンケート概要】

  • スマートフォン向けアプリ「SmartHR」に関するアンケート
  • 調査方法:インターネットを利用したアンケート調査
  • 実施時期:2024年2月中旬
  • 対象SmartHRをご契約いただいておりスマートフォンアプリを利用できるユーザー
  • 回答数:545件

(1)導入率40%超えで管理者が「業務負荷軽減」を実感

酒井

スマートフォン向けアプリの導入が進めば進むほど、従業員が自身のスマートフォンからSmartHRにアクセスしやすくなります。その結果、人事・労務担当者の業務負荷軽減につながります。

アンケート結果によると、全従業員の導入率が40%を超えると、人事・労務担当者が業務負担の軽減を実感しやすい状態になるといえます。

これからスマートフォン向けアプリの導入を推進する担当者の皆さまは、まずは「導入率40%」を目標に設定するとよいでしょう。

(2)社内周知のタイミングで「導入メリット」を提示

酒井

SmartHRスクールの「お役立ちアイテム」にて従業員にスマートフォン向けアプリのインストールとログインを促す、社内お知らせ用ポスターのテンプレートバナー素材などの「スマートフォン向けアプリ導入サポート資料」を公開しています。

それらを活用しながら、社内への周知を推進するにあたり「周知」のタイミングが重要になります。
導入促進がうまくいっている企業は、常に従業員の目に届く形での発信をする「常時」、新たな従業員を招き入れる「従業員入社時」に対応をしていらっしゃいます。特徴的だったのは、年末調整のお知らせなどの、「従業員にアクションを求めるタイミング」に合わせて、スマートフォン向けアプリを案内する点でした。

つまり、従業員目線で具体的に導入メリットを提示しながら案内をすることが、インストールを加速させる重要な要素になるといえます。具体的には以下のような従業員目線でのメリットを提示するのがポイントです。

  • 給与明細が自分のスマートフォンからいつでも確認できる
  • 年末調整の対応も見逃すことなく、手軽にスマートフォンで完結する

上記に限らず、従業員にお知らせをする際は、合わせてスマートフォン向けアプリへの案内をおすすめします。

(3)実践企業が効果を感じたスマートフォン向けアプリの案内方法

酒井

これまでご紹介した内容のほかに、スマートフォン向けアプリ導入促進が進んでいる企業のユニークで効果のあった案内方法を具体例で紹介します。

(1)入社者向けオリエンテーション内でアプリをインストール時間を設ける

  • アプリのインストール自体は数分もあれば完了します。あわせてログインなど基本的な操作について案内ができればスムーズな導入につながります。

(2)ID・パスワード忘れの従業員にはアプリ導入案内を徹底

  • ID・パスワード忘れの問い合わせをした従業員には、先述のアプリのインストールを促すチラシを配付し、再発防止につなげる方法です。スマートフォン向けアプリは定期的な立ち上げによって、ログインしている状態を維持できます。従業員が給与明細の確認などでアプリを立ち上げる状態になれば、SmartHRのログインで悩むケースがなくなります。

(3)イベント(年末調整、緊急連絡先の変更、給与明細の発行)に合わせて案内

  • 繰り返しになりますが、年末調整、緊急連絡先の変更、給与明細の発行などのイベントでスマートフォン向けアプリの案内を忘れずに実行してください。

ここまで、アンケート結果から見えるスマートフォン向けアプリ導入促進のコツについて紹介しました。

続きまして穂高株式会社 小野さまより、同社におけるSmartHR導入による変化と具体的なスマートフォン向けアプリの導入促進アクションについてお話しいただきます。

全従業員4,000名超え。50~60代が多く活躍する組織におけるSmartHR導入

穂高株式会社 概要

小野さん

穂高株式会社はクリーニング店「ポニークリーニング」を首都圏・中京エリアに約800店舗、20事業所を展開しています。セミナーに参加されている皆さまのなかにも、ご利用頂いているお客様もいらっしゃるかもしれません。この場を借りて御礼申し上げます。

弊社は従業員4,350名、9割以上がパート・アルバイトで構成されています。なかでも50、60代の女性が多く活躍していて活気がある一方、ITやデバイス操作は苦手な一面があります。

SmartHRの利用環境

小野さん

まず、弊社におけるSmartHRの利用環境をご紹介します。繰り返しになりますが、従業員はパート・スタッフ、女性、50代〜60代が多くを占めております。

SmartHRは従業員の個人所有のスマートフォンを中心に、パソコンでも利用してもらっています。

また、すべての従業員に社用メールアドレスを支給しているわけではないため、ログインには「社員番号」を使用しています。

ITが苦手な方が多く、個人のスマートフォンから慣れない操作が伴う環境でも、SmartHRのスマートフォン向けアプリのおかげで、問題なくSmartHRの利用ができています。

本日は、弊社でのSmartHRの導入効果だけではなく、このような環境におけるスマートフォン向けアプリ利用促進のヒントもお話しいたします。

SmartHR導入前の課題

SmartHRの導入前の課題

小野さん

弊社では、事業所や工場とはFAXや帳票でのコミュニケーションが主流でした。

もちろん、年末調整、給与明細、雇用契約も紙ベースです。事務所には紙が多くある状態。紙ベースの運用では、どうしても封入・配布の作業が発生します。また、年末調整や雇用契約においては、書類確認や不備があった場合の返送など、非常に工数がかかる状態でした。このような状況を改善しなければならないと考え、システム導入によるペーパーレス化を検討しました。

SmartHR導入の決め手

小野さん

SmartHRを選んだ理由は2つあります。

(1)IT・デジタルが苦手な従業員でも操作可能だった

トライアル期間を利用して、IT・デジタルデバイスの利用が苦手な従業員を対象に、年末調整の操作テストを実施しました。その結果、迷わず提出完了できたことから「弊社でも問題なく利用できる」と確信しました。

​​(2)スマートフォン向けアプリのリリース

トライアル期間は、スタッフ個人のスマートフォンのブラウザ版SmartHRでテストしました。操作の問題とは別に、そもそもSmarHRに自分でログインできるのか、SmartHRからの案内メールに気づいてもらえるかなど不安がありました。しかし、スマートフォン向けアプリがリリースされると聞き、これらの問題が解消されることが、導入の大きな決め手になりました。

年末調整と給与明細がスマートフォンから対応可能に

年末調整の効果

小野さん

年末調整はSmartHR導入から1か月で機能利用をスタートできました。事前のトライアルを加えると2か月程度ですが、操作に迷うことがないので、スムーズに導入できるサービスだと実感しております。

初年度は社内向け案内資料などの準備や学習コストがかかりましたが、20%ほど業務量を削減できた印象です。来年以降は、SmartHRが定着した状態でスタートできるので、50%程度削減できるのではないかと期待しています。

そのほか、運用していくなかで実感した効果については以下のとおりです。

【管理側】

  • 申請内容に不備があった場合の差し戻しがスムーズに従業員へ通知されるようになった
  • 給与システムへのインポートが楽になった
  • 従業員の申請状況の進捗が一覧で把握できるようになった

【従業員側】

  • 自分のスマートフォンからスキマ時間に年末調整対応ができる状態になった
  • 生命保険料控除証明書などをSmartHRから写真をアップロードできるようになった
  • アンケート形式で回答するだけで、申請が完了するので迷わず対応できた
給与明細の効果

小野さん

続いて給与明細の導入効果について紹介します。

SmartHR導入前は、全従業員へ本社経理メンバー全員で給与明細を封かんし、店舗や工場へ配布していました。しかし、従業員からは「気になるときぐらいしか内容を確認していない」という声もあり、毎月確認する人は少ない状況でした。

SmartHR導入後は、本社経理が1人でSmartHRでデータを取り込み、配信予約して配信完了できるようになりました。

また、アプリからプッシュ通知が来るので、確実に従業員個人に届けられます。従業員にとっても給与明細を確認したいときに、いつでも、どこでも確認できる状態です。

給与明細の配信によって、毎月SmarthHRのスマートフォン向けアプリに自然と触れる機会が生まれ、全社的な業務のデジタル化の土台づくりにも貢献していると感じています。

スマートフォン向けアプリ導入・浸透6つのポイント

小野さん

ここからは、弊社の取組を例に挙げながら、スマートフォン向けアプリ導入浸透のポイントを6つご紹介いたします。

ポイント(1)社内報を活用した全社周知

小野さん

まず社内報の活用です。弊社では会社の方針や取り組みをまとめた社内報「キャロット」を、全従業員に向けて、毎月発行しています。

2023年の夏、その年の年末調整がSmartHRに切り替わる予告と同時に、スマートフォン向けアプリ利用を促しました。さらに、10月発行号で具体的なアプリ登録方法や年末調整スケジュールを案内しました。

社内報を読んで多くのスタッフはスムーズに年末調整は完了しましたが、一部未対応の方もいました。1〜2週おきに未対応者を抽出。根強く社員や事務で電話などでフォローし、登録・提出率を上げていきました。

ここは泥臭いところですが、総務・事務が「今より楽になるんだ!改善するぞ!」というモチベーションで、粘り強く対応してくれました。

ポイント(2)事業所の担当者向への説明会の実施

小野さん

事務所の経理スタッフを対象に、SmartHR導入に伴う業務の変更点の説明会を開催しました。説明会ではSmartHRや、アプリ操作についてだけでなく、アプリの浸透によって「経理への電話での問い合わせ削減につながる」メリットも一緒に説明しました。SmartHRのカスタマーサクセス担当者からも説明をいただき、各メンバーの理解度が深まりました。

勉強会後は、事務所の経理同士で互いの事業所の課題解決や、キーマンが巡回し導入のフォローをし合い、年末調整対応を進めました。

ポイント(3)紙希望者へのフォロー

小野さん

給与明細は、2024年1月からSmartHRで配信をスタートしています。なかには引き続き、紙の給与明細を保管したいという従業員もいます。希望者には、スマートフォンからコンビニ印刷する方法を社内報を利用して案内をしています。

ポイント(4)全体周知だけでなく、アプリへのプッシュ通知を活用

小野さん

社内報などの全体周知を読んでないという従業員は必ず存在します。場合によってはスマートフォン向けアプリのプッシュ通知を活用し、該当の従業員に直接行動をしてもらえるような働きかけが必要です。

たとえば、年末調整の対応が進んでいない従業員向けにプッシュ通知で対応を促せます。弊社でも、プッシュ通知を活用し、提出率98%を実現しています。

ポイント(5)IT・デジタルデバイスの操作が苦手な人への導入サポート

小野さん

一定数「新しいこと・初めて触るもの」に対して、苦手意識がある従業員は一定数必ずいるものです。弊社では、事業所の従業員が苦手な方と一緒に、アプリインストールや初期設定をする機会を設けました。小さな成功体験によって、苦手意識を減らすと同時に、事業所内で「あの人ができるなら私もやろう」という雰囲気づくりをしました。

ポイント(6)アプリでの対応が難しい人には紙での対応を残す

小野さん

さまざまな事情で、どうしてもスマートフォン向けアプリを利用できない一部の従業員には、従来の紙で対応しています。デジタル化によって、貴重な人材を失わないためのアクションです。

余談ですが、スマートフォン向けアプリを利用するために、事前に自分のスマートフォンを新しく買い替えたスタッフもおりました。

スマートフォン向けアプリは絶対に必要

小野さん

会社のお知らせをパート・アルバイトを含めた全従業員へ確実に届けるためには、スマートフォンアプリは絶対に必要です。メールなどでは充分に気づいてもらえません。

弊社では入社ガイダンスのタイミングでのアプリインストールを基本ルールとして運用し、アプリからSmartHRを操作することがスタンダードになっています。

アプリを浸透させるには、ITが苦手な方へのフォロー体制も重要です。ここを乗り越えることで、今後は楽になるんだと考え、がんばりました。

本日参加している皆さまも経営層からペーパーレス、デジタル化、DXを要求されていると想像します。従来のやり方を変えるときの苦労を考えると、現場からは否定的なコメントも出てきます。しかしながらデジタル化をしないと、他社との競争に勝てない可能性があります。

まずは自社の「現場」のITレベルを確認し、丁寧なトップダウンで声がけを進めながら、現場が無理ない範囲で変革を確実に進めていきましょう。

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