就活離職を防ぎ在籍期間1.87倍を実現。塚田農場が仕掛けた「学生アルバイト施策」とは?【サービス産業が抱える課題と変革推進のポイント】#02

2019.01.11 ライター:藤田隼

#01 データで読み解く「サービス産業の働き方」。生産性向上への2つの突破口 はこちら


2018年9月11日、株式会社SmartHR主催イベント「SmartHR Next 2018 – HRの最先端が集結する日」を開催しました。

「SmartHR Next」は、産官学の有識者のパネルディスカッションに加え、参加型ワークショップや来場者の交流・情報交換を通じて、明日から取り組める施策を学び・いかすための「働き方改革の明日」を創る等身大の人事労務イベントです。

同イベントのパネルディスカッション第一部「働き方改革を成功に導く人事部の役割」に続き、パネルディスカッション第二部では「サービス産業が抱える課題と変革推進のポイント」と題し、働き方改革の具体的事例についてディスカッションを行いましたので、全5編にてお届けします。

#02 は、人気チェーン店「塚田農場」を運営するエー・ピーカンパニーの取り組みについてです。

■ パネラー
江澤身和(株式会社スープストックトーキョー 取締役 兼 人材開発部部長)
梶村努(株式会社ベイクルーズ 人財統括 取締役 CHRO)
大久保伸隆(元エー・ピーカンパニー 取締役副社長)

■ モデレーター
城倉亮(リクルートワークス研究所 研究員)

エー・ピーカンパニーの取り組み

城倉さん
本題として、各社における「働きがい」や「働きやすさ」の視点から、どのような働き方にトライされているのかを順番にご紹介いただきたいと思います。まずは、大久保さんお願いします。

大久保さん
独立したので、少し過去の話にはなってしまうんですけれども、エー・ピーカンパニーで取り組んでたこととして大きく2つありまして、まず1つ目が「アルバイトも含めた権限委譲」。もう1つが「学生アルバイトへの就活支援」です。

大久保 伸隆。元 エー・ピーカンパニー 取締役副社長。エー・ピーカンパニーに入社後、50坪の「塚田農場錦糸町店」の店長として、4年連続年商2億円・リピーター率6割のモデル店を築き上げ、入社4年目で取締役、7年目で副社長を歴任。ユニークな接客施策や従業員の自発性を促す制度・環境作りに積極的に取り組み、全国250店舗を展開する人気居酒屋チェーン店への成長を牽引。

アルバイトも含めた権限委譲。オーナーシップを高めた塚田農場の「ジャブ制度」

大久保さん
1つ目の「アルバイトも含めた権限委譲」についてお話します。塚田農場において、1組のお客さまに対して400円分、自由にサービスをしていいという権限を社員そしてアルバイトに与えました。

やはり物件や場所が決まっていて、商品・ブランドも決まっていて、さらにサービスまでマニュアルで縛ってしまうと、極端に自分が仕事の主役ではなくなり、オーナーシップがなくなってしまうので、そのサービスの権限委譲をしたいと考えました。

権限を委譲しただけでは社内にあまり広まらなくて、やっぱりそこに遊び心を加えるのが大切なのか、その400円のサービスを「ジャブ」と呼ぶようにしたんですね。ちょっとずつお客さまに近づいて、お客さまに感情の蓄積をしていこうという方向に切り替えたら、途端にアルバイトが自ら考えられるようになりました。

ただ、基準を保たなければ、自己満足のサービスになってしまいますので、「ジャブMVP制度」を設けました。これは6項目の基準で評価します。例えばお客さまの喜びにつながっているとか、コストとオペレーションのバランスが取れているなど。

この6つの項目を基準として、いわゆる“自分たちの会社っぽくないサービス”があまり生まれないようにインフラでカバーしながら、「ジャブ」で権限委譲していきました。

就活離職を防ぎ、在籍期間を1.87倍伸ばした学生アルバイト就活支援「ツカラボ」

2つ目の「学生アルバイトへの就活支援」ですが、こちらは社内の研修として就活支援を行っています。もともと企業としての社会性や、アルバイトのためにというよりも、僕が現場で店長をやっていたときの悩みから生まれたものです。

それは、アルバイトが大学3年生になると辞めてしまう。もしくは、出勤の頻度が下がってしまう。経験を積んで脂の乗ったアルバイトが戦力になった頃に就活で辞めてしまうことに対し、店長として悩んでいました。

そこでどうすればいいかと考えていたときに、学生アルバイトのエントリーシートをみたり、面接の練習を店舗の中で手伝ったりしていたんですね。

そのかわり週3回出勤してくださいと話していまして。そしたら、本当に出勤しつつ内定が取れまして。

この取り組みを店舗だけでなく全社に拡大し、「ツカラボ」という形で研修にしていきました。5,000人アルバイトがいる中の約700人が大学3年生だったと思いますが、彼らが「ツカラボ」に参加することで、在籍期間が1.87倍伸びたんです。

つまり、大学3年生の就活離職が半分近く減ったという結果が出て、これはやったほうがいいんじゃないかと。僕らのためにもなるし、アルバイト側としても就活で平均13万円ぐらいのお金がかかっても稼ぎながら就活できるため補えるし。効率よく全面的に就活支援をするので、学業の時間も捻出できるしと。

あとは就活中の学生アルバイトと企業のマッチングの場所も、50社ほど設けていました。これは、塚田農場で働いた学生アルバイトを優遇してくれる50社ですね。一番すごかったところは、塚田農場でアルバイトしていたら入社でいいと言ってくれた上場企業の方もいらっしゃったりですね。

エー・ピーカンパニーとしては学生アルバイトの在籍期間が伸びる、学生は就活とアルバイトを効率化できる、参加企業も採用コストが下がるといった感じで、ALL WINの取り組みとなりました。

この権限委譲と、就活支援が、エー・ピーカンパニーでの大きな取り組みの事例です。

会社として50社とのマッチングをやりきった秘訣は「適任者への権限委譲」

城倉さん
ありがとうございます。ぜひパネラーの皆さんどうしで意見交換していただければと思いますが、江澤さんからみていかがでしょうか?

江澤さん
就活支援をされて、さらに50社とのつながりもつくっていたというのが面白いなと感じました。ちなみに、卒業後、そのままエー・ピーカンパニーさんに就職する方は増えましたか?

大久保さん
そこは大きくは変わらなくて、毎年10人ぐらい入社していました。

城倉さん
梶村さんからも、ぜひ聞きたいことがあるとのことなので、梶村さんご質問いただければと思います。

梶村さん
数年前にテレビでこの取り組みを見た時に衝撃を受けまして、恐らく会社からの就活のアドバイスや、エントリーシートの書き方指導などはやろうと思えばできると思うんですけれど、この仕組みがすごいなと思ったのは、50社の企業の誘致をして、実際に学生とマッチングするところまでをやれるところが本当に素晴らしいなと。実際にやりたくてもやれる会社はそうそうないと思うんですよね。これをどのように実現したのかを聞きたいです。

大久保さん
企業とのマッチングの話は、実はある上場企業の人事の方から提案があったんですね。塚田農場で働いている子たちは元気がいいから、ぜひ採用したいというような話があり、これは仕組み化したら面白いんじゃないかということで。

僕、実は社内で結構引きこもりって言われていたくらい、人脈がまったくないんですね(笑)。なので、これをどう広げていいのか考えたときに、僕の部下だった人事の平野という者が、今引き継いでいるんですけれども、その平野が色々なコミュニティに参加していて人脈があったので、彼が適任じゃないかと思って、権限委譲しました。

#03 従業員に浸透する「働き方開拓」の秘訣。スープストックトーキョーが “人事の専門用語” を使わない理由とは? につづく


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藤田隼

SmartHR ガイド編集長。ソーシャル系スタートアップでSNSマーケティングや自社メディア運営に携わり、2015年よりメディアに特化した事業会社で複数サイトの制作ディレクターを経験した後、SmartHRにジョイン。
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