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コロナ禍における"Employee First." を実現する組織づくり【PARK 2021 パネルディスカッションレポート】

公開日
目次

2021年8月27日、株式会社SmartHR主催イベント人事労務のミートアップ『PARK 2021』を開催しました。第3回目となる今回は、2020年に引き続きオンラインでの開催。当日は164名もの人事・労務担当者が集まりました。

本記事では、パネルディスカッション「コロナ禍における “Employee First.” を実現する組織づくり」の模様をお届けします。

“Employee First.”とは、SmartHRがすべての人が、信頼しあい、気持ちよく働ける社会をつくるために掲げているサービスビジョンです。Employee=従業員が、より働きがい、働きやすさを感じながら働ける環境をつくるために、各社はどのように取り組んでいるのでしょうか。

記事の最後には、本セッションを1枚のイラストでまとめた「グラフィックレポート」もご用意しておりますので、お楽しみに!

登壇者のご紹介

登壇者のご紹介
  • パネラー渡辺 歩

    ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ株式会社 人事

  • パネラー田島 穂隆

    アディッシュ株式会社 管理本部 人事総務部 部長

  • パネラー副島 智子

    株式会社SmartHR 執行役員 / SmartHR 人事労務 研究所 所長

  • モデレーター佐々木 昂太

    株式会社SmartHR プロダクトマーケティングマネージャー

佐々木

それでは「コロナ禍における “Employee First.” を実現する組織づくり」をお届けしたいと思います。モデレーターを務めさせていただきます、佐々木と申します。簡単に皆さまから自己紹介をお願いします。

渡辺さん

ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ株式会社の渡辺と申します。ITとファシリテーションに強みを持つコンサルティング会社です。現在は従業員数が167名となっており、カルチャーと言語化・見える化にこだわっている会社です。本日はよろしくお願いします。

田島さん

アディッシュ株式会社の田島と申します。弊社の事業は投稿モニタリング、ネット炎上や誹謗中傷の対策といったものや、ネットいじめの対策などに対応しております。グループ全体では710名の従業員がおり、事業所は国内に6拠点、海外に1拠点となります。本日はよろしくお願いします。

副島

株式会社SmartHRの副島と申します。皆さまいつも大変お世話になっております。私たちは皆さまにご活用いただいているSmartHRの企画、開発、運営、販売をしている会社です。

SmartHRはプロダクトをリリースしてから6年目を迎えておりまして、従業員数はもう間もなく500名に達します。拠点は国内に4拠点あります。よろしくお願いします。

佐々木

ありがとうございます。本日のセッションのテーマは3つ用意してあります。また参加者の皆さまから質問を受け付けておりますので、最後に質疑応答とまとめという流れで進めていきたいと思います。

PARK 2021 パネルディスカッションの様子

コロナ禍における各社・人事労務の対応

withコロナ時代の到来。人事・労務に求められること

佐々木

1つ目のテーマは「withコロナ時代の到来。人事・労務に求められること」です。まずは2020年3月の最初の緊急事態宣言の時にどのような対応をされたか、渡辺さんから順番にお願いします。

人事は水先案内人。従業員サーベイをチェックしメンタルヘルスにより重点を置いた(ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ社)

渡辺さん

おそらく各社さんそうだと思うのですが、緊急事態宣言が発表されて、しっちゃかめっちゃかな状態になりました。ただ経営から明確に「リモートワークへシフトします」とメッセージがあったので、それに対して社員が自律的に動く状態を作っていきました。

人事としては役割が少し変わってきていると感じていて、“水先案内人”だなと思っています。新卒や中途社員に対して、情報のある場所を案内したり、近い従業員を紹介したり、エージェントのような役割をしています。

佐々木

水先案内人というキーワードが出ましたが、社会や働く環境が大きく変化する中で、社員のケアが論点の中心になるかと思います。その辺りどのような意識がありましたか?

渡辺さん

人事労務として、社員のメンタルヘルスケアにはより時間を割くようになりました。以前までは会社で一緒に働いていたので、変化があればすぐに声がけやケアができていたのですが、オンラインではそれが難しいという実感は皆さんお持ちだと思います。

実際に、ある社員から「静かに沈んでいっている」という表現で相談を受けたことがあり、自分の悩みを言語化できないままどんどんダウナーな方向に進んでしまう方がコロナ前後で増えていました。そこで以前よりも従業員サーベイの結果をより細かくチェックし、人事が面談する機会も増やすようにしました。

小さな違和感に気を配る(アディッシュ社)

田島さん

弊社では、まず在宅勤務を中心に進めるという意思決定がありました。元々チャット文化が根付いていたので、リモートになったからといって大きく変わった部分はなかったです。ただフィンテック系のセキュリティレベルの高い業務を行なっているチームなど、職種によってはリモートでの業務が難しかったり、導入が遅れたチームもありました。

佐々木

元々チャット文化が根付いていたとはいえ、対面で会えなくなる中では社員のメンタルヘルスケアは非常に重要になってくるかと思います。どのようなことを意識されていましたか?

田島さん

先ほどの渡辺さんのお話と同じように、「気づいたら気持ちが沈んていた」という人もやはりいました。人事としては、急な欠勤などの勤怠の変化を重点的にチェックしたことと、上長やチームメンバーから「この人、最近変わったよね」という“小さな違和感”に気を配っています。

公平性に対する攻めと守りの対策を実施(SmartHR社)

副島

SmartHRでは元々リモートワークの制度がありませんでした。ですが、ちょうど2020年の2月に、オリンピックに向けた「お試しリモートワーク」の実施をしていて、課題の洗い出しをした矢先に、緊急事態宣言が発令されたんです。

「外部モニターがない」「インターネット回線を自宅に引いていない」など、細かい話まで早い段階で議論することができ、解決策として『リモートワーク環境を整える手当』を作りました。一律の金額を支給し、その中で個人個人の課題を解決してくださいとお願いしました。

佐々木

ありがとうございます。急な環境の変化の中でどのようなことを意識していましたか?

副島

公平性に対する“攻め”と“守り”をすごく意識していました。

例えば攻めの例としては、『スライドワーク制度』の導入です。弊社はフレックスタイム制でフレキシブルタイムが22時までです。深夜手当の公平性や従業員の健康面が心配なので、手放しに深夜勤務を許可することは難しいと考えています。ですが、お子さんがいらっしゃる方が日中に仕事ができない状態を救うことが当時一番求められていることと考え、期間限定の申請制で22時以降の勤務を許可しました。

逆に守りとしては「通勤手当問題」です。リモートワークでは定期代が使われなくなり、その分格差が生まれていました。全体最適のため、当時の通勤手当の平均額を『リモートワーク手当』として新たに一律で支給することで公平性を担保しました。

佐々木

通勤手当と比較して『リモート手当』の方が少なくなる方もいるかと思うのですが、ハレーションは起きませんでしたか?

副島

起きなかったですね。全体に周知したときもSlackで皆さんから「それいいね!」とリアクションをいただけて、何のための手当なのかをはっきりさせることで素直に受け止めてくれたのはありがたかったですね。

環境の変化に対する各社の施策

“Employee First.”に向けた具体的な取り組み

佐々木

次のテーマは「“Employee First.”に向けた具体的な取り組み」です。この1年間で起きた変化に対して、具体的にどのような取り組みをされてきましたか?

社員のやりたいことを応援。お膳立てをするのではなく、一緒に作り上げる(ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ社)

渡辺さん

この環境変化に対してポジティブな反応としては、副業や兼業をしたい社員が増えたことです。こちらですべてお膳立てをしていくのではなくて、社員のやりたいことを後押しして「一緒に制度を作りましょう。ぜひ案を作って見せてください!」と伝えました。社員と一緒に会社を作っていく文化をとても大事にしています。

会社の制度は管理部だけでなくみんなで決める(アディッシュ社)

田島さん

弊社では委員会制度というものがあり、社内の制度は管理部だけでなく、社員と一緒に考えて作っています。リモートワークや時差出勤、副業についての制度もみんなで作りました。

最近は「多様性」がキーワードになっています。外国籍社員の国籍も10カ国ほどに増えており、より多様性について考える機会が増えました。例えば、LGBTQの社員で、戸籍上認められていない場合でもパートナーシップ証明書があれば結婚祝い金を差し上げます、という取り組みなども進めています。

決めごとに対する背景や議論の過程をオープンにして納得感を作る(SmartHR社)

副島

コロナ以前からあったものですが、決定事項に関して、背景や議論の過程を共有して納得感を生むことを大切にしています。

そのため基本は情報をオープンにして、経営会議にも誰でも参加ができたり、週に1度社員なら誰でも議題をあげられる「モム(揉む)会議」があったりする点が、弊社の考え方を象徴しているかなと思います。

アフターコロナを見据えたこれからの働き方とは?

アフターコロナを見据えたこれからの働き方

佐々木

テーマ2では各社さんの共通点として「参加型で巻き込んでいく」ことが必要だと気づかされました。従業員自身も自分ごと化して、みんなで”Employee First.” を作っていく流れになっていくのが共通の見解かと思います。

さて、最後のテーマですが「アフターコロナを見据えたこれからの働き方・展望」という大きなテーマについて、考えを巡らせていきたと思います。まずは副島さんからお願いします。

暫定対応から新しい働き方へシフト。労務の考え方も変化している?(SmartHR社)

副島

今年の7月にオープン社内報(「暫定対応からの卒業!SmartHR社の新しい働き方を発表します。(2021年7月〜)」)で新しい働き方について発表しました。

これまではコロナ以降、暫定対応として2ヶ月に1度働き方を見直しながら制度を運用してきました。ですが、ずっと暫定対応となると従業員も生活がし辛いと思うんですね。そういった背景から3月より検討を開始して、7月から新しい働き方をスタートしています。

リモートワーク

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コアタイム フレキシブルタイム

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ワーケーション

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簡単にご紹介させていただくと、リモートワークやコアタイム、フレキシブルタイムやワーケーションの制度を見直しました。リモートワークに関しては適用範囲をプロダクトサイド、ビジネス・コーポレートサイドと分けて対応をしています。

田島さん

ワーケーション制度の利用状況はいかがでしょうか?

副島

意外に申請が多くて、皆さんに活用いただいている状態です。実家だったり、気分転換で別の場所だったり、いろいろな場所でお仕事をされる方が結構いらっしゃいます。

渡辺さん

働く時間と休む時間をきっちり分けるという考え方で働いてきた人からすると「旅行しながら働くの?」といった疑問は残りそうですよね。

副島

そうなんです。私もどちらかといえばそちらの考え方だったんですが、今は考え方そのものが変わってきました。ネットワークやセキュリティがしっかり担保されていれば、働く場所は関係ないのかなと私自身も思うようになりました。

田島さん

私も旅行と仕事を一緒にするのは考えられなかったのですが、コロナによる変化によって労務担当者の意識が一番変わったのかなと思いました。

副島

運用するためにはいろんなことを考える必要がありますが、アイデアを駆使しながら新しい制度を作っていけたら面白いかなと思っています。

質疑応答

佐々木

お時間が迫ってまいりましたので、いくつか質問を取り上げたいと思います。まずは、渡辺さんへ「従業員サーベイはどのようなタイミングで実施しますか?」という質問です。

渡辺さん

弊社では1ヶ月に1度、10問の質問をしています。その人のモチベーションや上長との関係を10点満点で回答してもらっていますね。しきい値を超えた人に対して「面談しませんか?」と声を掛ける運用を地道にしています。

佐々木

続いて副島さんの”Employee First.”に関するご質問です。「新たに施策を実施する際の“攻め”と“公平性”のバランスについて、考え方を教えてください

副島

影響範囲も広いので難しいですよね。困っている従業員をいかに救うかと考えたときに、いま何が課題なのかを見極めたうえで、少しずつ試してみるという考え方はいかがでしょうか。

例えばスライドワークの制度も最初から「トライアルですよ」と伝えていました。一度始めてみて少しずつ試行錯誤していくと心理的なハードルは下がるかなと思います。

佐々木

それでは最後の質問です。「SmartHRの経営会議では秘匿の内容はどのように扱われていますか?

副島

弊社が唯一、非公開にしている情報があって、給与と個人の評価やセンシティブな内容に関してはオープンにしていません。そういった内容は人事会議という場を設けて話をするようにしています。なので「これは絶対にオープンにしない」ということをあらかじめ決めて、それ以外については経営会議でオープンにするようにしています。

佐々木

ありがとうございます。今日のお話が参加者の皆さまに少しでもお役に立てれば幸いです。また交流会で続きの話などをしていただければと思います。このPARKで集まり、語り合い、明日の人事を皆さんで面白くしていきましょう。それでは、ありがとうございました。

当日のグラフィックレポート

当日のグラフィックレポート

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当日の様子をリアルタイムでまとめた1枚。今回は、グラフィックレポートのプロフェッショナルであり、「はじめてのグラフィックレコーディング」などの著書でも知られる、デザイナーのkubomiさんが会を彩ってくれました!

​​【執筆:宮川 典子】

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