人事・労務担当者がもつ評価・キャリア・スキルのモヤモヤに効く記事6選
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縁の下の力持ちゆえ、ときに「やって当たり前」と見なされがちな人事・労務の仕事。定常業務に追われ、戦略人事の実践への道のりは遠く感じる。いまの環境ではたして専門性は身につくのか、このスキルは他社でも通用するのかーー。そんな“モヤモヤ”を日々抱える人事・労務担当者も少なくないでしょう。
今回は、Smart HR Mag.で2025年に公開した記事のなかから、人事・労務担当者の悩みに寄り添う記事6本を紹介します。ナビゲートするのはSmartHR Mag.編集長である廣嶋と、飲食関連の事業会社で人事として活躍する穴原さんです。穴原さんは最近転職したばかりということで、あらためてリアルな悩みについても聞いてみました。
穴原彩子さん株式会社スープストックトーキョー HR拡充部。労務を中心に約10年、SmartHRを含む複数の企業で人事業務に携わってきた経験をもとに、人と組織の成長を支える人事領域を幅広く担当。
廣嶋祐治SmartHR Mag.編集長。雑誌編集者、クリエイティブディレクターを経験したのち、2022年3月より「SmartHR Mag.」にジョイン。バウムクーヘンをこよなく愛す甘党。通称、みんなの「おかあさん」
人事部の仕事とモチベーションについて
廣嶋
どうも、「SmartHR Mag.のおかあさん」こと編集長の廣嶋です。本日は、以前、SmartHR Mag.編集部に所属していた穴原さんに来ていただきました。
穴原さん
その節はありがとうございました!
在職時、穴原さん(人事・労務経験あり)は記事や動画など、さまざまな解説コンテンツの制作を担当していました
廣嶋
穴原さん、転職されてもう4か月ですよね。現在はどんな業務を担当されているんですか?
穴原さん
私は現在、食べるスープをコンセプトにしたスープ専門店「Soup Stock Tokyo」を運営する株式会社スープストックトーキョーで労務をやりつつ、最近は人事評価業務を担当しています。人事評価の運用を初めてやらせてもらっていて、フィードバックなども行なうので、身が引き締まる思いです。
廣嶋
人事部は、全体で何人くらいですか?
穴原さん
10人くらいですね。採用や育成、労務など役割ごとに分かれていて、兼務の方も多いです。
廣嶋
周りを見渡して、人事部はみなさん忙しい感じですか?
穴原さん
はい、タスクは多いですが、それぞれが意味のある仕事ばかりです。人や組織が変化し続けるからこそ、私たちの仕事にも終わりはありません。
廣嶋
そんななかでも、周りのみなさんのモチベーションはどうですか?
穴原さん
人事部のモチベーションは高いと思います。みんなすごく前向きに業務に取り組んでいる印象です。会社のことが好きだったり、メンバーが好きだったり、とにかく職場環境をもっとよくしたいという気持ちの強い方が多いですね。
廣嶋
素敵ですね!そうした部の雰囲気が、転職したての穴原さんに未経験の業務へ挑戦してもらう際の後押しになっているのかもしれませんね。
定常業務に追われるモヤモヤ、どう解消する?
廣嶋
あらためてお聞きしたいんですが、穴原さんが考える人事業務のやりがいはどういうところにありますか?
穴原さん
やはり、社員の成長に寄与できる点ですね。それがゆくゆく会社の成長につながって、さらにそれが社会によい効果をもたらす。人事・労務は、そういうポジティブなサイクルをつくれるんじゃないかなと思います。
廣嶋
社員から会社、会社から社会へ。いい視点ですね。穴原さんはこれまで、現場での接客をはじめ、SmartHRでは労務、マーケティングとさまざまな職種を経験されてきましたが、「人事だからこそ」できることは何だと思いますか?
穴原さん
人が成長する仕組みづくりですね。もちろん個別の部署でも育成はされていると思うんですけど、全社的に、大きな仕組みをつくれるのは人事ならではだと思います。
廣嶋
まさに会社の経営戦略にもつながる「戦略人事」にあたる部分ですよね。
しかし、実際に人事部が担っている業務内容を見ると、およそ半分の企業が「定例・定型的な人事労務管理が中心的」と感じており、以下のように業務のやりがいと実際の実施率を比較したデータもあります。

廣嶋
こうしたデータから戦略人事が注目される一方で、現場は定常業務に追われている実態が見えてきます。
穴原さんも人事評価業務の佳境では、完遂がマストの定常業務が山積みの状態だったと思うんですが、そういうときはどのようにモチベーションを上げていますか?
穴原さん
定常業務は作業を繰り返す部分もあるので、そのほかの「やりたいこと」に時間を割くためにどう効率化するかを考えています。そのためにツール活用も、設定を少し変えれば業務工程をまだまだ縮められるところもあると感じていますね。
廣嶋
ツールも導入がスタート地点になるはずですが、目の前の業務に追われて、使いこなせていない企業も多いかもしれませんね......。
それだけ人事の仕事は膨大で、つい「1人で抱えがち」になるケースも多い。そんな労務担当者にぜひ読んでほしいのが、こちらの記事です。
穴原さん
労務のプロフェッショナル鼎談ですね!
労務はセンシティブな情報を扱う分、どうしても孤独を感じやすい仕事です。私自身も1人、または少人数で労務を担ってきたので、社外の人とつながり、情報や意見を交わす場をもつことを大切にしてきました。そうした交流を通じて、「一般的な感覚」や「よりよい対応の基準」が自然と身についていったと思います。
また、OE(オペレーションエクセレンス)・RM(ルールマスター)・ST(ストラテジスト)の構造が腑に落ちました。STには、奥深いOEの理解がないと戦略を立てても実務運用に落とし込めないためです。私の尊敬する人事責任者の方は、労務の基礎をしっかりと理解しておられます。
評価されない不安との向き合い方
廣嶋
人事・労務の仕事は業務量が多いのに、「やって当たり前」と見なされてなかなか評価されにくいという声もよくありますが、いかがですか。
穴原さん
定量化が難しい職種ではありますね。
廣嶋
そういう悩みに対して、ぜひ次の記事をおすすめさせてください。戦略人事の手前にある定常業務について、具体的にどう評価されるポイントをつくっていけばよいのか、目標設定の例も含めて解説しています。
穴原さん
人事・労務担当者自身の評価について扱うコンテンツは、いままであまりなかったのではないでしょうか。オペレーションを回すので精一杯の日々から抜け出し、人事パーソンとして成長するヒントが詰まっていました。
ただ、これは人事・労務に限らずバックオフィス全般に言えるかもしれませんが、ミスなくオペレーションが回っていることも、個々人の努力のうえで成り立っていると思います。特別なことをしていなくとも、定常業務が安定運用できている点も評価されるようになると嬉しいですね。
廣嶋
それも大切な視点ですよね。ここ数年でAIをはじめ労働環境が大きく変化しています。なかでもミドル世代など、長くキャリアを積んできた方が抱える「評価されなくなるかもしれない不安」というのも、人事・労務に限らずビジネスパーソン全般の悩みでもありますよね。
こちらの記事では、とくにミドル・シニア世代が抱えるキャリアや評価に関する不安へのアプローチとして、評論家の宇野常寛さんが語られています。
穴原さん
いま、人事評価業務に関わる立場の私からすると少し矛盾するようにも思いますが、宇野さんの
“他人の評価を気にせず『ひとり』で仕事やあそびに没頭するノウハウです。そして、評価や承認ではなく、仕事そのものの面白さに気づくことです。”
という言葉にとても共感しました。
評価が人の成長を後押しすると感じる一方、評価を意識しすぎてしまい本来の仕事の楽しさを見失ってしまうこともあります。だからこそ、制度や仕組みに頼りきるのではなく、「仕事そのものの面白さ」や「自分が成し遂げたいこと」から湧き上がるモチベーションを大切にしたいと思います。
評価に縛られず、仕事を楽しむ姿勢が結果としてよいパフォーマンスにつながる。そんなサイクルを人事パーソンとしてつくっていきたいですね。
いわゆる「ローカルルール」への対策
廣嶋
続いて、会社や部署特有の事情で生じるモヤモヤについての話です。穴原さんは所属する会社の制度やその運用が、他社でも応用できるか不安になることはありますか?
穴原さん
ありますね。これまでにやったことのない業務を経験をしたいと思って、いまも人事評価業務をやらせてもらっていますが、ほかでも通用するだろうかと常に感じています。
廣嶋
特有の「ローカルルール」がある会社も多いですよね。もちろん、そのやり方で右肩上がりに個人も会社も成長していれば何の問題もないでしょう。でも、いざ行き詰まったときにほかのやり方を探そうとしても、そういう目線をもった経験がないと困ります。
穴原さん
そうですね。ほかでも通用するだろうかと疑う視点があるから、業務改善にもつながっていくのだと思います。
廣嶋
そういう意味で、人事・労務担当者が仕事の基本に立ち返りつつ、戦略的な視点をあわせもつのはあらためて大事だと思っています。この記事では、経営戦略と人事戦略を同じ「1丁目1番地」として捉え、DXを牽引する若手人事リーダーのキャリアが紹介されています。
穴原さん
インタビュイーの伊藤さま、たいへん興味深いキャリアですね!
“人に働きかけ理解を深めてもらうしかなく、この意味で、人と関わり、人の力を引き出す、かつての人事職の経験がここでも役立っていると感じています。”
という伊藤さんの実体験を拝読して、人事職のスキルに大きな可能性を感じました。
私もかつて現場の店長職を経験して、何を進めるにしても人との関わりが大事だなと思い、人事職に就きました。人事職で培われるスキルは人事から事業へ、またはその逆のパターンでもよいシナジーが生まれるのではと思います。
担当者として、視野を広げることの大切さ
廣嶋
穴原さんはかつてSmartHRで労務からマーケティングの部署に異動したときも、常に視野を広げようと努力されていましたよね。他社の事例を調べたり、コミュニティに参加したり。
穴原さん
目の前の作業だけに追われると、仕事がつまらなくなるタイプなんです。だからほかの会社の事例を調べたり、労務以外の業務ってどうなんだろうって考えたりすることで、実際に視野が広がった気がします。
廣嶋
一歩引いて、俯瞰する視点って大事ですよね。マーケティングの仕事をしたことで、人事職につながる示唆は得られましたか?
穴原さん
はい、どんなコンテンツを用意すれば会社に興味をもってもらえるかという視点などは、採用人事にもすごくつながると思います。
廣嶋
人事の仕事って、「人とのコミュニケーション」が核になりますものね。次の記事では、そのコミュニケーションを円滑にする「ユーモア」について、現役弁護士芸人・こたけ正義感さんが語ってくれています。
穴原さん
人事の人が現場に行くと、「何かあったのかな?」と周囲をざわつかせがちなんですよ(笑)。そんななかユーモアをうまく織り交ぜて、遠すぎず近すぎない距離感を適切に取るのはとても大事だと思います。
こたけさんが披露してくれた「緊張感があるビジネスの場を和ませる方法」は私も参考にしようと思いました。
廣嶋
ユーモアのある人の周りには、自然と人が集まりますものね。別角度ですが、チームをリードする立場になったとき、感情をどう扱うかも重要なテーマです。こちらの記事では、リーダーシップの新しい解釈が紹介されています。
穴原さん
マネージャーや人事担当者は従業員やその評価を業務として扱うため、「それに相応しい人間でなくてはいけない」と必要以上に自分にプレッシャーをかけてしまい、ときに自分から周囲に壁をつくってしまうことがあります。
この記事を読むと、周囲も自分も同じ人間なんだと気付かされます。肩肘の張らないナチュラルなコミュニケーションが、物事をスムーズに進めるカギかもしれません。
キャリアについて、人事を続けたい人が多い理由
廣嶋
最後に、キャリアについてお聞きしたいです。人事という職種は、実は「人事を続けたい」と考える人が多い職種なんですよね。
パーソル総合研究所によると、人事部非管理職のキャリア意向として「人事を続けたい」が57.4%、「人事として管理職を目指したい」が29.7%と、多くの担当者が人事職にロイヤリティをもつ結果が出ています。

廣嶋
また、人事としての転職経験は「ない」という人が全体の7割というデータもあります。人事職への愛着は強いけれど、転職はあまりしない。このデータを見て、穴原さんはどのように感じますか? 人事職を続けるうえで、さまざまな会社を見たほうがよいのか、それとも1つの会社に腰を据えたほうがよいのか。
穴原さん
両面あるので悩ましいですね。人事パーソンとして成長するなら、やっぱり複数社で経験を積めると強みになると思います。その反面、とくに人事の仕事は中長期的なものが多いので、制度設計から運用を経てその効果計測をするのに、ある程度時間がかかるんですよね。
廣嶋
効果が出る前に卒業してばかりだと、少し説得力に欠けるかもしれませんね。以前、「ベンチャーは辞めない人事を採ることが大事」という投稿をSNSで見たこともあります。
穴原さん
たしかにそうだと思います。人が入れ替わり続け、仕組みが生まれた背景を誰も知らないという状況は少々まずいと思いますし。その意味で、腰を据えて同じ会社で人事を続けるのも大切ですね。
廣嶋
キャリアの話は本当に正解がありませんが、自分がその会社で人事・労務をしている意味をきちんと見出して仕事ができれば、自ずと道が拓けるのかもしれませんね。
穴原さん
自分もそうあれるように、いっそう頑張ります。
廣嶋
穴原さんが「意味づけ」や「動機づけ」を大切にしてお仕事をされているのが、あらためてよくわかりました!
そして、今回ご紹介した6つの記事が、自身のスキル、評価、キャリアなどで感じる人事・労務担当者のみなさんの“モヤモヤ”を解決するヒントになれば幸いです。
穴原さん、読者の方々に有益なコンテンツを届けるため、今後ともぜひアドバイスなどよろしくおねがいします。
穴原さん
ぜひ!本日はどうもありがとうございました。
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以下は、本コンテンツ内で紹介した記事です。気になるものをぜひお読みください。











