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「春闘」そして「ベア」と「定昇」はどう違う?

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最近「募集しても人が来ない」といった事業主さんの声を耳にする場面が多くなっています。

人が来ないのであれば、求人の待遇を上げる対策は単純に効果があります。そして人が来ないから待遇を上げるという流れが続けば、「定昇」や「ベア」の力も強まるのでは?と考えるかもしれませんが、2017年の春闘では「正社員は昨年よりも低い水準、中小は上昇」とのことです。

……と、このような感じで春になるとよく目にする「春闘」と「ベア」と「定昇」ですが、改めてどう違うのか、解説していきましょう。

「ベア」と「定昇」何が違う?

下の図は、年齢に応じた給料額を示したものです。青い線を見ると、毎年給料が上がっています。定期的に給料が上がっていくので、「定昇(定期昇給)」と呼ばれています。

定昇が必ずある会社では、従業員は必ず給料が上がる前提があるので、ある程度は安心した人生設計ができます。一方会社としては、新入社員から定年社員までの社員構成が均等(例えば、各年齢で10名ずついる)であれば、毎年定期昇給をしても、給料として支払う総額は大きく変動しません。従業員満足を得ながら、実質のコスト負担「増」が少ないという終身雇用にマッチした制度です。

年齢と給料額

編集部作成

一方ベースアップ(べア)は、下の図のオレンジの線のように全世代の賃金が上がります。定昇と異なり、全体的な底上げになるので、会社の負担額は大きくなります。この場合は定期昇給となっている上で更にベースアップとなっているのですが、現実的にはこうした合意になることを目指した交渉になります。

春闘はどうやって何を交渉する?

春闘は、労使で行われる春の時期の労働運動です。労働組合が主体になり給料はもちろんですが、賞与・企業内最低賃金・労働時間・待遇・働きやすい職場環境等について幅広く交渉することになります。

大企業から交渉が始まり、中小企業にも交渉が移行していきますが、やはり最大の焦点は給料であり、この時に決まった「ベア」や「定昇」の金額は、産業全体の指標にもなりやすく、その年の企業の動向や景気を左右する目安にもなります。

こうして基本的に春闘は会社と労働組合との団体交渉になりますが、国内の労働組合は、会社単位で組織することが多いことから、組合側が不利にならないように、他の組合や産業別組合等と連携して交渉を行うケースが多くなります。

企業の対応次第で発展もするが、ストライキになることも

健全な交渉で経営者側と組合側が対峙できれば、より良好な労働条件で就労が可能になり、ひいては企業の発展にも寄与する場合もありますが、対応を間違ってしまえば、ストライキに突入するケースもあります。

近年で大ニュースに発展するような大規模ストはあまり見受けないですが、時限スト(時間を区切ったスト)や部分スト(一部の人のみが行うスト)などは行われています。また、労使交渉の中で企業が回答を出さない場合に、無回答であればストライキに突入するといったニュースは時折耳にします。

企業は真摯に交渉に臨む姿勢が無い場合は、その言動によっては労働組合法による不当労働行為として都道府県労働委員会からの命令を受けたり、あっせんに発展したりと、更に問題は大きくなってしまいます。

景気回復が話題になる中、深刻な人材不足時代に突入しています。企業はきちんと収益を上げ、労使交渉になる以前に雇用環境の待遇改善に取り組むことで人材確保をするのも、成長戦略のひとつになるでしょう。

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