こんにちは、アクシス社会保険労務士事務所の大山です。
今回は、給与所得者が毎年書くことになるマル扶こと「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」について、その書き方やわかりづらい点を中心に解説します。
なお、この種の申告書の年齢は、その年の12月31日現在の年齢をいい、所得(あるいは年収)とは、その年の12月31日時点での所得(あるいは年収)見込み額をいいます。
したがって、ここで解説する年齢も所得(あるいは年収)もそのように考えてください。
この記事で分かること
「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」はだれが書く?
扶養親族のいない独身者は、提出する必要がないと思いがちな申告書の名称ですが、年収2,000万円以下の給与所得者であれば、必ず提出しなければなりません。提出しないと何らかの罰則があるというわけではなく、提出しないと余計な所得税を源泉徴収されてしまうので提出すべきという意味です。
給与所得者でも同時に2ヶ所以上から給与をもらっている場合は、いずれか1か所の事業所に提出します(例外については、「わかりづらい項目」で解説します)。したがって、この申告書を提出した事業所では年末調整がされ、提出しなかった事業所では年末調整がされません。この場合は、いずれにしても確定申告をしなければならないので、年末調整がされなかった事業所についても、最終的にはすべての所得に関して所得税が計算しなおされます。
また、「年収が103万円以下なので、非課税だから申告書を提出しない」となると、年末調整がされないので結局確定申告をしなければならず(しないと脱税)、かえって手間がかかってしまうのでこの申告書を提出しておいた方が良いといえます。
この申告書は、通常年末に提出しますが、年の途中でも就職、退職、婚姻、出生など所得や家族構成が変わったときには何度でも提出するのが原則です。
平成30年分からの「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の変更点
上図の①の部分が、「源泉控除対象配偶者」に変わっています(以前は、「控除対象配偶者」)。
これは、これまでの控除対象配偶者の条件が見直されたためです。すなわち、平成30年からの控除対象となる配偶者の条件は、この申告書の提出者(扶養者)の所得が900万円以下で、かつ配偶者の所得が85万円以下になりました(以前は、扶養者の所得条件はなく、配偶者の所得が35万円以下のとき控除対象でした)。
「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」のわかりづらい4項目
(1)「マイナンバー」欄
上図②の「個人番号」(マイナンバー)欄は、一定の要件を満たせば、記載しなくても良いことになっていますが、「一定の要件」とは、給与所得者が、申告書の余白に「以前提出した番号と相違ない」旨の記述をし、それを見た事業者が、申告書の余白に「提出済み番号を確認した」旨の記述を、事業者・給与所得者双方合意の上で行った場合を指します。
この個人番号をいろいろなところに何回も書きたくない場合、「一定の要件」で書かない選択ができます。
(2)「従たる給与についての扶養控除等申告書の提出」欄
以前から変更はないもののわかりづらい項目として、上図③の「従たる給与についての扶養控除等申告書の提出」欄があります。ここに○を書くと、扶養控除等申告書を従たる給与の支給事業者にも提出したことを意味します。本来、この申告書は1ヶ所の主たる事業者のみに提出するものですが、これも「一定の要件」を満たせば、従たる事業者にも提出が可能です。
その「一定の要件」とは、A.主たる事業者の給与総額から給与所得控除と、社会保険料並びに小規模企業共済等掛金の控除額を控除した額が、B.配偶者控除額、扶養控除額、障害者控除額、寡婦/寡夫控除額、勤労学生控除額、基礎控除額の合計より少ない時です(A<B)。
給与が少なく家族構成や家族の事情でBの控除額が多い場合、「従たる給与についての扶養控除等申告書」の提出が可能になります。これを行うと、何人かいる扶養親族を主たる申告書と従たる申告書に分配できるので、それぞれの課税対象所得を少なくできるメリットがあります。
(3)「他の所得者が控除を受ける扶養親族等」欄
上図の④の部分「他の所得者が控除を受ける扶養親族等」欄は、同一生計内に所得者が2名以上いる場合、何人かいる扶養親族をそれぞれに分配する場合、ここに書きます。
(4)「16歳未満の扶養親族」欄
上図⑤の部分「16歳未満の扶養親族」欄は、住民税の課税、非課税の判定をする際、非課税枠の扶養親族として16歳未満の親族も扶養親族とできるので、ここに書くことになっています。
詳しくは住民税額の算定の話になるので、これ以上は触れません。
まとめ
今回は、マル扶こと「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」について、従来からの変更点とわかりづらい点を解説しました。
これまでわからないから書かなかった欄も、その意味がわかれば必要に応じて適正な所得税、住民税の徴収に向けての申告が可能になります。
近年では、SmartHRなどのようにオンライン上での「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の作成もできるようになっていますので、予め導入を検討しておくのも良いでしょう。
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