【2022年6月更新】ロクイチ報告に用いる「高年齢者・障害者雇用状況報告書」とは? よくある質問を社労士が解説


こんにちは。特定社会保険労務士の羽田未希です。毎年6月中旬ごろ、一定規模以上の事業主の皆さんに「高年齢者・障害者雇用状況報告書」が届きます。

この報告書を作成するにあたり、2021年4月1日施行の改正高年齢者雇用安定法、2021年3月1日からの障害者の法定雇用率改定、自社制度などの確認が必要です。

今回は、この「高年齢者・障害者雇用状況報告書」についてQ&A形式で解説します。

【Q1】高年齢者・障害者雇用状況報告書とは?

【Q1】高年齢者・障害者雇用状況報告書って何?

【A1】事業主は、毎年6月1日現在の「高年齢者の雇用に関する状況(高年齢者雇用状況報告)」および「障害者の雇用に関する状況(障害者雇用状況報告)」を厚生労働大臣に報告することが法律で義務付けられています(通称:ロクイチ報告、または6/1報告)。この手続きの際に提出するのが「高年齢者・障害者雇用状況報告書」です。

この報告は、国が、高年齢者雇用安定法に定める65歳までの雇用確保措置や70歳までの就業確保措置の実施状況、障害者の雇用状況などの現状を把握し、今後の施策の検討に活用されます。また必要に応じて、各企業に対してハローワークによる助言・指導などに用いられます。

【Q2】提出義務のある企業は?

【Q2】高年齢者・障害者雇用状況報告書の提出義務のある企業は?

【A2】提出義務のある企業は以下のとおりです。

・「高年齢者雇用状況報告書」は、労働者を雇用する事業者

・「障害者雇用状況報告書」は、常用労働者数が43.5人以上の事業者(特殊法人は38.5人以上)

高年齢者雇用状況報告は労働者を雇用する事業者が対象で、報告書が郵送されてきた事業者は提出が必要です。東京労働局は、従業員20人以上規模の事業所に報告用紙を郵送するとしています。

障害者雇用状況報告は、2021年3月1日から障害者の法定雇用率が引き上がったため、対象となる事業主の範囲が常用労働者数43.5人以上(特殊法人は38.5人以上)となりました。

「常用労働者」とは、1年以上継続して雇用される者(見込みを含む)のうち、1週間の所定労働時間が20時間以上の者を指し、正社員のほか、契約社員、パート労働者なども含みます。なお、この常用労働者数は除外率により除外すべき労働者を控除した人数なので、注意してください。(Q7を参照してください)

なお、雇用している障害者数が0人の場合でも報告義務があります。

【Q3】提出方法は?

【Q3】高年齢者・障害者雇用状況報告書の提出方法はどのようなものがありますか?

【A3】事業所所在地の管轄ハローワークあてに郵送、持参、または電子申請による提出となります。

新型コロナウイルス感染症を予防する観点から、前年同様に窓口へ持参する方法ではなく、郵送または電子申請による提出が推奨されています。

なお、報告期限は毎年7月15日です。

【Q4】電子申請も可能?

【Q4】高年齢者・障害者雇用状況報告書は電子申請も可能ですか?

【A4】電子申請も可能です。

ハローワークへの郵送または持参による紙の報告書の提出に代わって、e-Gov電子申請システムを利用してお手元のパソコンからインターネット経由で手続きできます。

電子申請時に使用する「ユーザーID」と「パスワード」は、報告書用紙郵送時に同封されていますので、確認してください。

なお、障害者雇用状況報告については、電子申請用の様式(マイクロソフトExcel)が指定されていますので、e-Govホームページからダウンロードしてください。

(参考)障害者雇用状況報告の電子申請による提出 – 厚生労働省

【Q5】高年齢者と障害者、それぞれの雇用推進者を選任する必要はある?

【Q5】高年齢者雇用推進者や障害者雇用推進者を選任する必要はありますか?

【A5】高年齢者雇用推進者や障害者雇用推進者の選任は、高年齢者雇用推進者や障害者雇用推進者の選任は努力義務です。

しかし、高年齢者雇用、障害者雇用について理解していないと、報告書の作成は簡単ではありません。改正高年齢雇用安定法、障害者の法定雇用率の改定をはじめ、日ごろより自社の高年齢者、障害者の雇用状況を把握し、取り組みへの中心的役割を担う者として、選任するとよいでしょう。

【Q6】記入時に注意すべきポイントは?

【Q6】記入時に注意すべきポイントは?

【A6】注意すべきポイントは以下のとおりです。

「高年齢者及び障害者雇用状況報告記入要領」をよく確認する

記入要領は報告書と一緒に同封されて郵送されてきます。

(1)6月1日現在の状況を把握する

常用労働者数、定年到達者や離職者の人数、障害者の人数などあらかじめ確認しておくとスムーズに記入できます。

障害者雇用状況報告書作成においては、障害者の把握(人数、障害種別、障害程度など)が必要です。障害に関する事項は、個人情報保護法における「要配慮個人情報」であり、取得に際しては利用目的を明確にし、本人の同意が必要です。

厚生労働省が策定した「プライバシーに配慮した障害者の把握・確認ガイドライン」(一部、法改正が反映されていない箇所がありますので注意してください)を参照し、留意して適切に取り扱ってください。

(2)記入の流れ、記入例などを参考にする

記入要領は報告書と一緒に同封されています。報告書の書式に沿って説明されているので、順に読みながら、記入していきましょう。労働者の範囲、雇用障害者数のカウントの方法など、用語や計算方法を確認しなければ間違えてしまう恐れがありますので、記入要領をよく読んでください。記入例は自社に合うものを参考にしましょう。

高年齢者雇用状況等報告の記入例

(参考)高年齢者雇用状況等報告書及び障害者雇用状況報告書記入要領」 – 厚生労働省

障害者雇用状況報告書では、以下のいずれかに該当する企業は「記入方法A」を参照します。

  1. 除外率が設定された事業所があるとなる企業
  2. 特例子会社の認定を受けている企業
  3. 就労継続支援事業(A型)の事業所

障害者雇用状況報告書の記入方法A

(参考)障害者雇用状況報告 – 厚生労働省(p.29)

上記のいずれにも該当しない企業は「記入方法B」を参照します。

障害者雇用状況報告書の記入方法A

(参考)障害者雇用状況報告 – 厚生労働省(p.33)

記入方法の説明について、厚生労働省が動画を作成しているので、こちらも確認するとよいでしょう。

就業規則を確認しながら記載する

自社における高年齢者の雇用確保措置について、現在の実態や慣行などではなく、就業規則等に記載されている条文にもとづいて記入します。2021年4月1日改正の高年齢者雇用安定法の施行にともない、就業規則の規定が変更されている場合があります。自社の「定年年齢」や「継続雇用制度」、これら制度の改定予定などを確認しましょう。

毎年の報告書の控えを保管しておくと、前年と制度変更がない場合でも参考にしながら記入できるため、記入時に用意しておくとよいでしょう。

高年齢者雇用安定法改正の詳細については、厚生労働省のホームページ「高年齢者雇用安定法の改正~70歳までの就業機会確保~」を参照してください。

【Q7】障害者雇用状況報告の人数はどのように計算するの?

【Q7】障害者雇用状況報告の人数はどのように計算するの?

【A7】障害者雇用状況報告の提出は常用労働者数43.5人以上(一定の特殊法人は38.5人以上)とされていますが、この人数は常用労働者から「除外率により除外すべき労働者を控除した数」です。

以下のような計算方法となります。

常用労働者数 × 除外率 = 除外すべき労働者数(端数切捨て)
※業種によって設定されている「除外率」が異なります。

常用労働者数 - 除外すべき労働者数 = 法定雇用障害者の算定の基礎となる労働者数(基礎労働者数)

【Q8】報告しなかった企業はどうなる?

【Q8】報告しなかった企業はどうなる?

【A8】高年齢者雇用報告については、法による罰則はありません。

しかし報告の義務は法律に規定されており、ハローワークの指導の基本情報であることから、罰則の有無にかかわらず報告しなければなりません。

一方、障害者雇用報告については、報告をしない場合または虚偽の報告をした場合に、障害者雇用促進法の規定により罰則(30万円以下の罰金)の対象となります

障害者の雇用は、「事業主が共同して果たしていくべき責任である」という社会連帯責任の理念に立っています。そのため、経済的負担の調整および障害者雇用の促進および継続を図る目的で、法定雇用率の達成、未達成に応じて、調整金および報奨金、障害者雇用納付金の制度があります。

この障害者雇用納付金制度()は、事業主の自主的な報告・納付が基本ですが、それがなされない場合、今回の報告書を元に調査が入ります。

(※常用労働者100人超であって、障害者法定雇用率が未達成の企業から、不足1人あたり5万円の納付金が徴収される制度

まとめ

年齢や障害の有無に関わらず誰もがイキイキと働ける社会を目指すべく、企業は高年齢者、障害者の雇用において責任を果たすことが求められています。

今後、企業は法令遵守だけではなく、企業の社会的責任(CSR)がますます重要視される時代です。毎年の報告を機に、高齢者や障害者雇用における自社の取り組みを見直し、ぜひ積極的に取り組んでいただきたいと思います。

17年間の飲食業現場経験を持つ、異色の女性社会保険労務士として飲食業・小売業などサービス業を得意とする。パート・アルバイト活用、人材育成のコンサルティング、労使トラブルを未然に防ぐ就業規則作成、助成金申請など、中小企業の人材活用のサポートを行う。著書に『店長のための「稼ぐスタッフ」の育て方』(同文舘出版)がある。
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