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ほとんどの場合「接待」は残業時間にならない・・・なぜ?

2017.06.30 ライター: 社会保険労務士 吉田 崇

深夜、寿司の折り詰めを持った父親が酔っ払って帰ってきて、

父「うぃ〜、ただいまぁっと」
母「まあ、あなた! こんなに酔っ払って!」
父「お仕事ですよ、お仕事。得意先の接待ですよぉ〜っと」

といったやりとりが昭和時代の家庭にはよくありました。子供心に、「なるほど、接待なるものは仕事で美味しいご飯を食べたり、お酒が飲める素敵なモノらしい!」と思ったものです。

ところが自分自身、大人になり就職し、実際に得意先の接待をするようになるとどうでしょう。確かに仕事で美味しいご飯を食べたり、お酒を飲めることには間違いないのですが、常に気を遣い、顔には笑顔が張り付き、とてもじゃないですが、食事やお酒を楽しむといったもんじゃありません。なぜ父親はあんなにも楽しそうに帰ってきていたのか……。

とりわけ、昭和の時代と違い昨今では、仕事とプライベートをきちんと切り分けたいと考える人が多いですので、「接待とは仕事の一環に他ならない」という感覚の人も多いのではないでしょうか。

今回は「接待時間は残業扱いとなるのかどうか」を考えたいと思います。

接待は労働時間に含まれず残業に当たらない

まず、一般的に「接待」は労働時間に含まれず、残業にもあたりません。

労働時間と認められるのは、「事業運営上緊急なものと認められ、かつ事業主の積極的特命がある」場合です。

つまり、費用が会社持ちで、接待の際、仕事の話をすることがあるからといって、それだけでは労働時間とはならないのです。

接待が「労働時間」に当たるケースとは?

一方、接待への参加が労働時間であると認められるケースもあります。

例えば、社命で宴会の準備や進行、接待に関する雑務を命じられていた場合や、出席者の送迎などを命ぜられていた場合は、労働時間と見なされ、残業代の請求が可能です。

また、上記のようなケース以外でも、接待への参加が強制であり、上司からの特別な命令があり、業務上重要な打ち合わせを接待の席で行う、といった場合は労働時間とみなされる場合もあります。

過度な接待は社員の心身を蝕み、中には過労死に繋がったケースも

しかしながら実際は、「接待」を労働時間と認めさせるのは、なかなかハードルが高いといっていいでしょう。

とはいえ、やはり連日深夜までの接待が続くと社員の体調も心配ですし、限度があります。

例えば、ある男性(当時56)が接待中にくも膜下出血で死亡し、妻が労災認定を求めた訴訟で、地裁が過労死と認めた判決があります。

判決理由で裁判長は、会社での会議後に行われた取引先の接待について、男性は酒が飲めないのに週5回ほど出ていたことや、費用が会社負担だったことを指摘。「技術的な議論が交わされており、業務の延長だった」と「接待も業務」と認定されました。

このように、限度を超えた接待は社員の心身を蝕む危険性がありますし、残業代の支払い義務が生じる可能性もありますので、会社としても十分に注意を払う必要があります。

どうせ業務と認められないならいっそ気楽に楽しもう

結論としまして、常識的な範囲の「接待」は、労働時間とみなされない場合がほとんどです。

しかし、どうせ業務と認められないなら、いっそのこと、もう少し気を楽にして、相手との会話や食事、お酒を楽しんでみてはいかがでしょう。

たとえそれが接待であっても、やはりお酒や食事は楽しくいただきたいですものね(なるほど、あの頃の父親は、ここまで達観して接待を楽しんでいたのか!?)。

社会保険労務士 吉田 崇

よしだ経営労務管理事務所代表。関西を中心に、社長と従業員が安心して働ける職場環境作りをモットーに多くの事業所と顧問契約し、 労務管理で成果を上げる。通常の社労士業務の他に、集客、ブランディングコンサルタントとしての実績も多数。一級カラーコーディネータの資格を有し、ポスターやロゴ等のデザイン業務やWeb制作も行う個性派社労士。よしだ経営労務管理事務所 公式サイト
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