労災発生時の対応手順とは? 搬送や労災保険手続きの注意点を解説


こんにちは。社会保険労務士事務所しのはら労働コンサルタントの篠原宏治です。

労働者が仕事中や通勤途中にケガをしてしまった場合、労務担当者は労災保険の給付手続きや事故報告などの手続きが求められます。

ただ、ほとんどの会社では頻繁に発生するような手続きではなく、どのような流れで手続きを進めればよいのかわからないという方も多いのではないでしょうか。

今回は、労働災害(労災)発生時における対応手順について解説します。

労災が発生したときの対応手順

労災が発生したときの一般的な対応手順は次のようになります。

  1. 医療機関への搬送
  2. 労災保険手続き
    ( 労災指定病院の場合)

    • 「療養補償給付たる療養の給付請求書(様式第5号)」の作成
    • 病院に請求書を提出
  3. 労災指定病院以外における給付手続き
    • 「療養補償給付たる費用請求書(様式第7号)」の作成
    • 所轄労働基準監督署に請求書を提出
  4. 労働者死傷病報告の届出

以下に、各手順の詳細を解説します。

(1)医療機関への搬送

労災事故が発生した場合には、直ちに最寄りの病院に搬送または労働者に病院に行くように指示します。

病院の窓口では、必ず労災事故であるため労災保険から給付を受ける旨を伝えます。誤って健康保険証を使用して受診すると、後で健康保険への7割部分の返金や労働基準監督署への費用請求の手続きなどが必要となって余計な手間がかかることになります。

また、労災であることを隠すために意図的に健康保険証で受診した場合には、「労災隠し」として罰則に処せられます。労災保険の給付は健康保険の給付よりも手厚く、労働者が十分な補償を受けられなくなるため、国は非常に厳しい姿勢で取り締まりを行っています。不利益を被った労働者からの相談で発覚することが多いのも特徴です。労災隠しは決して行わないようにしましょう。
(関連記事 ▶ 厳罰の対象となる「労災隠し」とは? 該当ケースや罰則を解説

(2)「労災指定病院」における給付手続き

搬送された病院が労災保険を使用できる「労災保険指定医療機関」である場合は、「療養補償給付たる療養の給付請求書(様式第5号)」を作成します。

請求書の作成主体はあくまで労働者本人であり、本来会社は災害の発生日時や発生状況などを証明するだけですが、労働者自身で作成することは困難であることが多いため、会社が積極的に作成をサポートするのが望ましいです。

労働者は、請求書を病院に提出すれば自己負担なしで診察や治療などの必要な療養を受けられます(=現物給付)。ただ、ほとんどの場合、実務上は最初に病院に行く時点で請求書を用意できませんので、通常は、一旦費用全額(10割)を支払っておいて後で請求書を提出して返金してもらうという流れとなります。

病院で治療を受けて薬局で薬をもらう場合などは、それぞれの医療機関ごとに請求書の提出が必要です。一度請求書を提出した医療機関は、2回目以降の療養は自己負担なしで受けることができます。

(3)「労災指定病院以外」における給付手続き

搬送された病院が労災保険指定医療機関ではない場合は、窓口に請求書を提出しても無料で療養を受けることができません。

この場合は、労働者が病院で費用全額を支払い、後日「療養補償給付たる費用請求書(様式第7号)」を、事業場を所轄する労働基準監督署に提出することによって口座振込による支払いを受けます(=金銭給付)。

また、労災保険では一定の要件を満たす通院費用や装具費などについても給付が行われますが、これらの費用は口座振込で支払ってもらう必要があります。労災指定病院で療養を受けた場合であっても、これらの費用請求が必要である場合は、様式第7号を作成して所轄労働基準監督署に請求する必要があります。

様式第7号には領収証やレシートなどの添付が必要となるため、労働者に保管しておくように指示しておきましょう。

(4)労働者死傷病報告の届出

ケガの程度が重篤で4日以上の休業が見込まれる場合は、労災発生ごとに「労働者死傷病報告(様式第23号)」を作成して、労働基準監督署に遅滞なく報告することが義務付けられています。なお、休業1~3日の場合は、一覧表形式になった別様式(様式第24号)によって四半期ごとに取りまとめて報告を行います。労働者が休業しなかった場合には労働者死傷病報告の届出の必要はありません。

労働者死傷病報告の届出を故意に行わなかった場合や、虚偽の内容を記載して報告した場合は労災かくしとして厳しく罰せられるため、忘れずに報告を行って下さい。

労災対応におけるその他の注意点

労災対応においては、上記手順のほか、下記のようなポイントにも注意しましょう。

パートやアルバイトの労災が発生した場合

労災保険は、雇用形態にかかわらず全ての労働者の加入が義務付けられています。労災保険料は全額会社負担で労働者の本人負担はありません。

社会保険や雇用保険には加入していないパートやアルバイトであっても、仕事中にケガをしたのであれば労災保険の給付対象となることに注意してください。

通勤災害の場合の手続き

通勤災害が発生した場合の手続きも、手続きの流れはほぼ同様となりますが、労災保険の給付申請は通勤災害用の様式(様式第16号の○)を使用します

また、労働者死傷病報告の届出は必要ありません。

通勤途中のケガの場合、労働者がそのまま病院に行って健康保険証を使ってしまうケースも少なくありません。健康保険証を使用して受診してしまった場合であっても、すぐに労災保険の請求書を病院に提出すれば、労災保険に切り替えて自己負担の3割分を窓口で返金してもらえる場合がありますが、健康保険証を使用しないように普段から周知しておくようにしましょう。

 

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特定社会保険労務士 篠原 宏治

社会保険労務士事務所しのはら労働コンサルタント代表。元労働基準監督官。特定社会保険労務士。労働基準監督官として残業代不払いや長時間労働などの労働問題に関する数多くの相談対応、監督指導(臨検)、強制捜査などを行ってきた経験を活かし、「労働問題に強い社会保険労務士」として、労使双方からのご相談に対して実務的な助言やコンサルティングを行っています。社会保険労務士事務所しのはら労働コンサルタント
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