飲食店の厨房は高温になりがち。「従業員の熱中症対策」はマスト!


こんにちは。特定社会保険労務士の羽田未希です。

今年の夏は猛烈な暑さですね。連日のように「命に関わる危険な暑さ」、「災害級猛暑」と報道され、熱中症による救急搬送、死亡事故も相次いでいます。

飲食店の厨房内、調理に火を使う調理場などは、室内であるものの暑熱な環境になり、熱中症発生の危険性が大きいと認識していただきたいのです。

そこで今回は、17年間の飲食業現場経験を持つ特定社会保険労務士としての知見も活かし、飲食店における熱中症対策、衛生管理、職場環境面での注意点について解説します。

職場のひとりひとりが熱中症についての知識と日ごろの予防法について知っておくことで、熱中症を防ぐことができるようにしておきましょう。

「熱中症」とは?

「そもそも熱中症とは何なのか?」について環境省の情報をもとに簡単に整理します。

熱中症とは、高温環境下で、体内の水分や塩分(ナトリウムなど)のバランスが崩れたり、体内の調整機能が破綻するなどして、発症する障害の総称です。
(参考「熱中症とは何か?」環境省熱中症予防情報サイト)

また、同サイトの「熱中症の予防方法と対処方法」では以下のように解説されています。

熱中症を引き起こす条件は、「環境」と「からだ」と「行動」によるものが考えられるといいます。

  • 「環境」の要因:気温が高い、湿度が高い、風が弱いなど
  • 「からだ」の要因:体調不良、睡眠不足、食欲がない
  • 「行動」の要因:激しい労働や運動、水分補給できない状況

このような条件があるときに、熱中症を引き起こしやすいのです。

厨房の気温は25度以下が望ましい

飲食店の厨房では、場合によっては熱中症のリスクが高いと考えらます。

まず、厚生労働省が作成している「大量調理施設衛生管理マニュアル」の中では、

「施設は十分な換気を行い、高温多湿を避けること。調理場は湿度80%以下、 温度は25℃以下に保つことが望ましい。」

とされています。このマニュアルは、HACCP(ハサップまたはハセップ)の概念により作成されたものです。飲食店の規模の大小にかかわらずHACCPは2020年ごろまでに義務化されます。

他方、実態としては、どうでしょうか?

厨房の室温については、大手チェーン店や冷房設備のある飲食店であれば、空調設備(冷房)と換気設備(空気の流れ、アウトエアー、エグゾーストエアー、サプライエアー、リターンエアー)を計算・設計した上で、機器を導入しているので、おおむね問題ないと考えられます。

しかし、上記のような空調設備が整っていない場合は高温になってしまうことも考えられます。

また、個人商店で「窓を開けっぱなし」でなんとか暑さ対策をしているような場合は、外と変わらないどころか、熱源を使っているので、厨房が40度以上となるお店もあるでしょう。

人身に関わる熱中症への対策としてはもちろん、規模の大小に関わらず義務化されるHACCPへの対応としても、空調・換気の整備は待ったなしといえるでしょう。

飲食店における「熱中症予防策」

室温の管理はもちろんですが、そもそも熱中症にかからないよう予防の意識を持つことが大切です。

具体的にどのようなことを心がければよいのかについてみていきましょう。

飲食店の衛生管理について

まず、飲食店における衛生管理についてです。

食品衛生法およびガイドラインにて求められる飲食店の衛生管理については、従事者の健康管理も含まれます。

出勤時に、腹痛、下痢、吐き気などの胃腸炎症状の有無、発熱の有無、手指の傷や手荒れの有無を確認し、体調不良でないかヒアリングしておくことも大切です。

なお、従業員の健康管理については、管理表に記録し、保管しておきます。

熱中症の具体的予防策

上記のような衛生管理を心がけるとともに、そもそも熱中症にならないための予防や日ごろからの対策も全員で共有しておきましょう。

出典:環境省 熱中症予防情報サイト「熱中症の予防方法と対処方法」

【日ごろの対策】

  • 十分な睡眠
  • 栄養のバランスが取れた食事
  • 体調の変化に気をつけ、無理はさせない。
  • こまめに水分補給。特に高温となる場所での作業は15分に1度は水分補給。
  • ドリンクは、5度〜15度程度に冷やしたもの。
  • 冷やしすぎたドリンクは内臓に負担がかかるので注意
  • 首などを冷やすタオル、塩飴・塩タブレットの常備など

「熱中症」の応急処置

それでも万が一、熱中症が疑われる方がいる場合、熱中症の応急処置にあたって、環境省提供の下図をご参考ください。

出典:環境省「熱中症の応急処置」

【おわりに】求められる「安全配慮義務」。飲食店の職場環境改善を

使用者には、労働者が安全に仕事できるように「安全配慮義務」が求められていることにも注意が必要です。

労働契約法第5条では、「使用者は労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」としています。

労働安全衛生法第71条の2では、「事業者は、(中略)快適な職場環境を形成するように努めなければならない」としています。

熱中症について、会社がなにも対策せず事故が起きてしまった場合、安全配慮義務違反を問われる可能性もあるのです。

麦茶、スポーツドリンク、塩分タブレットなどを用意して、作業中であってもこまめに水分補給するように声をかけ、適宜休憩を挟むなど、配慮が必要です。

また、冷房、サーキュレーター(送風機)を使用する、温度計、湿度計を設置するなど、職場環境の改善に取り組んでいきましょう。

東京労働局ホームページのパンフレット「職場の熱中症を防ごう!」もご参考いただき、熱中症が原因で労働災害とならないように対策していただきたいと思います。

特定社会保険労務士 羽田未希

17年間の飲食業現場経験を持つ、異色の女性社会保険労務士として飲食業・小売業などサービス業を得意とする。パート・アルバイト活用、人材育成のコンサルティング、労使トラブルを未然に防ぐ就業規則作成、助成金申請など、中小企業の人材活用のサポートを行う。著書に『店長のための「稼ぐスタッフ」の育て方』(同文舘出版)がある。
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