人事労務改革のヒントは「クラウド人事労務ソフト」の活用【飲食・小売業、人事カイカク #09】


こんにちは。特定社会保険労務士の羽田未希です。

前回の『人事労務改革で会社の「働き方改革」を後押ししよう』では、飲食業・小売業における人事労務改革を始める前におさえるべき3つのポイントを挙げました。

今回は、飲食業・小売業において、人事労務改革を進めていくための具体的な方法をお伝えします。

(1)「人事部」と「店舗」の役割の明確化

飲食業・小売業の労務管理の基本は、現場となる事業所単位(各店舗)です。

現場での労務管理が整備されていないと、法令違反のリスクが高まります。さらに職場に対する不満が発生し、離職率が上昇、人材が確保できない状況にもつながりかねません。

人事部、現場の労務担当者(おもに店長)は、労働法について、最低限の知識を共有しておきましょう。以下にその具体的な役割を見ていきます。

労務管理における「人事部」の役割

人事部は自社の働き方改革をリードし、他部署や現場(店舗)が効率よく人事労務作業を実施できるようにフォローアップします。

具体的には以下のような業務があります。

  • 従業員情報の一元管理
  • マイナンバー管理
  • 作業の効率化、標準化
  • 働き方改革や労働生産性向上への施策
  • 他部署、店舗(現場)での労務タスクの設定
  • 採用活動(店舗スタッフ含む)

労務管理における「店舗」での労務管理

店舗での人事労務に関する作業は最低限にして、本来注力すべき業務に専念できるように工夫が必要です。

ただし、店舗で実施、管理するべき労務タスクもあるため、必要な労務管理の基礎知識を習得するとよいでしょう。具体的には以下のような業務です。

  • 勤怠管理
  • 年次有給休暇の申請および取得
  • 就業規則、36協定の労働者代表の選出方法
  • 就業規則や各種協定書(36協定など)の労働者への周知

一方、店長・店舗社員がアルバイトスタッフの入社にまつわる作業やペーパーワークに追われてしまうと、その分、本来注力すべき業務に専念できる時間が減ってしまいます。

その対策のヒントを(2)以降で紹介します。

(2)「クラウド人事労務ソフト」の活用

人事労務改革の最初の段階で、業務の棚卸しを行い、廃止や方法を変更しても支障のない業務や非効率な作業は極力削減します。

その際、一番お勧めしたいのは、紙ベースでの管理手法からの脱却です。

なぜなら紙での管理は、作業する時間や場所、担当者など、範囲を限定してしまうためです。ファイリング、郵送などやりとりする上での物理的な負担もかかります。

また、人事データが担当者に集中し属人化を起こしかねないため、こちらも避けたいところです。

「クラウド人事労務ソフト」とは?

その解決策として、「クラウド人事労務ソフト」の活用が考えられます。

「クラウド人事労務ソフト」とは、煩雑でアナログな人事労務の業務を、Web上でカンタンに実施できるようにする業務効率化ツールです。

これにより、書類作成や手続き、従業員情報の管理などの人事労務タスクが効率化されるとともに属人化の解消にも繋がります。

「クラウド人事労務ソフト」の具体的メリット例

具体的には以下のようなメリットがあります。

例えば、入社時に従業員情報をWeb上で収集し、そのまま社会保険手続き書類などを作成できるため、人事労務担当者はもちろん店長・店舗社員の負担も軽減されます。紙で回収しExcelで管理していたこれまでの業務フローから脱却できるでしょう。

また、従業員データの一元管理も可能になります。すると、管理権限を持つ担当者であればいつでもどこでも閲覧・編集・作業できるようになり作業効率が向上します。

これまでの業務フローにおいては、顧問の税理士や社会保険労務士等と、メールや郵送でのやり取りしながら書類作成・手続きを行うのが一般的でした。しかし「クラウド人事労務ソフト」では、外部委託業者にアカウントを発行することで、クラウドサービス上でスムーズにやり取りできます。

「クラウド人事労務ソフト」の選び方

このように飲食業・小売業の人事労務改革においては、人事労務ソフトやクラウドサービスをいかに有効活用できるかが人事部・店舗ともにカギとなります。

繰り返しにはなりますが、これまで労務のペーパーワークに追われてきた人事スタッフ・現場スタッフが、より付加価値の高い業務に専念できれば、働き方改革は加速すると考えられます

とはいえ、自社の課題に適しているかが最大限活用する上でのポイントになります。各サービスの特徴を比較し、自社に適した使いやすいサービスの選択をお勧めします。下記の関連記事で「クラウド人事労務ソフト」の特徴がタイプ別に解説されていますので、あわせてご参考ください。
(関連記事 ▶ 労務効率化なら「クラウド人事労務ソフト」。 タイプ別の特徴を理解しよう!

(3)行政手続きにおける「電子申請」の活用

政府は行政手続きコストの削減のため、「電子申請」を積極的に推進しています。2020年4月には大企業を対象に、社会保険手続きの「電子申請」が義務化されます。

電子申請が義務化される社会保険手続き

電子申請が義務化される社会保険手続きは下記のとおりです。

【厚生年金保険】

  • 被保険者賞与支払届
  • 被保険者報酬月額算定基礎届
  • 70歳以上被用者 算定基礎・月額変更・賞与支払届
  • 厚生年金被保険者報酬月額変更届

【健康保険】

  • 被保険者賞与支払届
  • 被保険者報酬月額算定基礎届
  • 健康保険被保険者報酬月額変更届

【労働保険】

  • 労働保険概算・追加概算・確定保険料申告書・石綿健康被害救済法一般拠出金申告書

【雇用保険】

  • 雇用保険被保険者資格取得届
  • 雇用保険被保険者資格喪失届
  • 雇用保険被保険者転勤届
  • 高年齢雇用継続給付支給申請
  • 育児休業給付支給申請

※ 出典:規制改革推進会議 行政手続部会「行政手続コスト削減に向けて(見直し結果と今後の方針)」

「電子申請」のメリット

電子申請の一番のメリットは、役所の窓口に行くことなく、待ち時間なしで、いつでもWeb上から申請ができることです。

役所の窓口に書類提出に行くと、所要時間が最低でも2〜3時間を要し、更に往復の交通費がかかります。しかし電子申請に慣れてしまえば、1件20〜30分程度で終わるので、これを活用しない手はありません。

一方で、電子申請にあたっては、各種保険制度の手続きについてある程度知識がないと、入力が難しいかもしれません。また、電子証明書の取得、パソコンの設定など、電子申請を開始する前のセットアップに手間取っているケースもあるようです。

なお、電子証明書の取得方法については下記にまとめられているので是非ご覧ください。
(関連記事 ▶ 【徹底解説】最短1日! ビックリするほど簡単な「電子証明書」の取得方法

「電子申請」の便利なやり方

電子政府の総合窓口「e-Gov(イーガブ)」の画面から直接申請もできますが、効率的に電子申請するには、「e-Gov」と連携した「クラウド人事労務ソフト」の活用がオススメです。

なぜなら多くの「クラウド人事労務ソフト」において、従業員データベースから必要な情報をもとにスピーディかつ自動で申請書を作成でき、そのまま電子申請を実行できるからです。先ほど「1件20〜30分程度」かかると書きましたが、電子申請可能な「クラウド人事労務ソフト」であればほんの数クリック程度で済みます。

このようなWebツールに慣れていない方でも、多くのサービスでチャットをはじめとした「カスタマーサポート」があり安心です。

なお、顧問の社会保険労務士がいる場合は、先述の通りアカウントを発行し、入力のチェックや電子申請を依頼するとスムーズです。この場合、会社の電子証明書がなくても、社会保険労務士の電子証明書を使用できます。

まとめ

2019年4月1日以降、働き方改革関連法が順次施行されます。施行日まであと5ヶ月程度。自社の「働き方改革」は、いよいよ待ったなしの時期となりました。

中小企業においては、働き方改革に「まだ取り組んでいない」「現段階で何も検討していない」という会社も多いようです。

しかし、取り返しがつかないほど遅くはありません。

これまでの記事を参考にしていただき、自社の状況を把握し対策の方向性を決め、今回紹介したような人事労務改革から着手してみてはいかがでしょうか。

人事部・店舗ともに、煩雑な紙管理から脱却することで、働き方改革の一歩を踏み出せるはずです。

 

【編集部より】飲食業におけるSmartHR導入事例

飲食業でSmartHR導入後に起きた変化とは?
飲食業におけるSmartHR導入事例

アルバイト人材をはじめ、多くの入退社手続きが発生する飲食業界は、その管理も煩雑。特に多くの業態や店舗を持ちチェーン展開する会社では、管理が分散してしまうなど、より大きな課題を抱えます。この飲食業を営む企業において、SmartHRを導入した結果、どのような変化が訪れたのかに迫ります。

【こんなことがわかります】

    • ・月間40時間の労務工数削減に成功したワケ
    • ・なぜ約2,000名の労務管理をたった数名でできるようになったのか?
    ・労務兼任スタッフが店舗勤務に注力できるようになった話
特定社会保険労務士 羽田未希

17年間の飲食業現場経験を持つ、異色の女性社会保険労務士として飲食業・小売業などサービス業を得意とする。パート・アルバイト活用、人材育成のコンサルティング、労使トラブルを未然に防ぐ就業規則作成、助成金申請など、中小企業の人材活用のサポートを行う。著書に『店長のための「稼ぐスタッフ」の育て方』(同文舘出版)がある。
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