2020年4月「電子申請義務化」、よくある疑問を社労士がQ&A解説!


こんにちは、特定社会保険労務士の榊 裕葵です。

2020年4月に社会保険および労働保険関係の手続きの電子申請義務化施行が迫っており、未対応企業は今まさに対応を進めているところかと思います。既に対応が終わっているという認識の企業も、抜け漏れが無いか不安に思っているかもしれません。

そこで、本稿では、電子申請義務化に関して、よくある疑問点をQ&A形式で解説していきます。

【Q.1】電子申請義務化は、全ての企業が対象?

【Q.1】電子申請義務化は、全ての企業が対象になるのですか?

【A.1】2020年4月の時点で電子申請義務化の対象になるのは、資本金1億円超の法人(株式会社、合同会社など)に限られます

しかし、今後、義務化の対象となる範囲は拡大されることが見込まれますので、資本金1億円以下の法人においても関心を持つことは必要です。

【Q.2】義務化対象企業の子会社も対象?

【Q.2】親会社が資本金1億円超の場合、資本金1億円以下の子会社も電子申請義務化の対象となりますか?

【A.2】法人単位で義務化の対象を判断しますので、資本金1億円以下の子会社は電子申請義務化の対象とはなりません

【Q.3】義務化は2020年4月から一斉適用? それとも事業年度ごと?

【Q.3】電子申請義務化への対応は一斉適用ですか? それとも、事業年度が切り替わる決算月の翌月からですか?

【A.3】各会社の決算月の翌月からです。

たとえば、労働保険料の年度更新を例にとれば、3月決算の会社は2020年4月から電子申請義務化の対象となるので2020年の年度更新から電子申請をすることが必要です。

これに対し、9月決算の会社は2020年10月から義務化の対象となるので、2021年の年度更新から電子申請をすれば足りるということになります。

【Q.4】全ての手続きが義務化の対象?

【Q.4】社会保険・労働保険関係の全ての手続きが電子申請義務化の対象となるのですか?

【A.4】全ての手続きではなく、まずは、厚生労働省が定めた手続きのみが対象となります。算定基礎届や月額変更届など社会保険系の主要な手続きや、雇用保険の資格取得・喪失手続きなど、頻繁に発生する手続きが電子申請の義務化の対象になっています。

一方で、社会保険の資格取得・喪失手続きや被扶養者異動の手続きが義務化の対象外となっていることには注意が必要です。とはいえ、自社で電子申請できる体制ができているならば義務化されていなくても電子申請することは差し支えありませんし、むしろ効率化の観点から望ましいことです。

なお、対象となる手続の種類は下記の記事で具体的に説明されています。

【弁護士監修】「2020年電子申請義務化」対応で最大限効率化する方法を解説!

【Q.5】e-Govでの電子申請が難しそう…。ハードルの低い方法は?

【Q.5】e-Govを使用して電子申請をするのが基本になると聞いているのですが、難しそうで自信がありません。もう少し電子申請のハードルを低く対応できませんか?

【A.5】たとえば、「SmartHR」のような手続きの電子申請に対応したクラウドソフトを利用するのがおすすめです。

e-Govが無料であるのに対し、クラウドソフトを導入するコストは発生してしまいますが、簡単な初期設定と数回のクリックで電子申請ができるようになりますので、企業が電子申請義務化に対応するハードルは大きく下がるでしょう。

【Q.6】社会保険労務士への委託で義務を果たせる?

【Q.6】社会保険労務士に手続きをアウトソーシングすることで電子申請対応の義務を果たしたことになりますか?

【A.6】当該の社会保険労務士が電子申請に対応しているかどうかによります。

「セルズ」や「社労夢」といった電子申請にも対応した社会保険労務士専用の業務ソフトを導入していたり、「SmartHR」などのクラウドソフトに対応できたりする社会保険労務士は増えつつあります。その点を確認の上、電子申請に対応している社会保険労務士にアウトソーシングをすれば、電子申請対応の義務を果たしたことになります。

【Q.7】書面提出でも差し支えない例外の状況もある?

【Q.7】電子申請義務化には、書面提出でも差し支えない例外の状況もあるのですか?

【A.7】「電気通信回線の故障、災害その他の理由により電子情報処理組織を使用することが困難であると認められる場合で、かつ、電子情報処理組織を使用しないで当該申告書の提出を行うことができると認められる場合」には、法令上、書面による提出でも差し支えないとされていますので、災害時などには状況に応じて、臨機応変に紙での申請も検討してください。

【Q.8】罰則等の適用は?

【Q.8】電子申請義務化に違反した場合、罰則等の適用はあるのですか?

【A.8】上記 Q.7 の災害時のような正当な理由がないにも関わらず、電子申請義務化に違反した場合であっても、法律上、罰則は特段定められていません

ただし、罰則は受けないにせよ、手続きが受理されない可能性はあります

行政側がどれくらいの温度感で電子申請義務化を厳格に適用するかはまだわかりませんが、二度手間による非効率が発生することや、手続きの遅れで従業員に不便をかけないよう、義務化の対象となる資本金1億円超の法人は、実務上、しっかりと電子申請に対応していく必要があると言えるでしょう。

【Q.9】電子申請を行うために用意すべきものは?

【Q.9】電子申請を行うために、必ず企業側で用意しなければならないものはありますか?

【A.9】電子署名用の電子証明書を入手する必要があります。自社の電子証明書を「認証局」から入手し、電子申請を行うパソコンにインポートをする必要があります。

なお、社労士に電子申請義務化の対応をアウトソースする場合は、社労士の電子署名を用いますので、企業側で電子証明書を入手する必要はありません。

【Q.10】電子申請の準備でわからないことの相談はどうすれば良い?

【Q.10】電子申請の対応準備でわからないことが出てきたら、誰に相談をすれば良いですか?

【A.10】e-Gov経由で電子申請の対応をする予定の場合は、e-Govサイト内の「お問い合わせフォーム」から質問をしていただくことになります。

また、問い合わせ先の電話番号も記載されており、電話での相談も可能です。SmartHRなどのHRテックを使って電子申請に対応する予定の場合は、当該サービスの運用元のヘルプセンターなどに問い合わせをする形になります。

顧問社労士がHRテックに強い場合は、顧問社労士も相談に乗ってくれるでしょう。

特定社会保険労務士 榊 裕葵

東京都立大学法学部卒業後、上場企業の海外事業室、経営企画室に約8年間勤務。独立後、ポライト社会保険労務士法人を設立し、マネージング・パートナーに就任。「社員から信頼される会社作りをサポートする」を経営理念として、顧問先の支援に当たっている。執筆活動にも力を入れており、WEBメディアへの掲載多数。
他の執筆記事はこちら

人事労務の関連記事

人事労務の新着記事

働き方改革特集

SmartHR スタートガイド