セクシュアルハラスメント(セクハラ)とは?定義や具体例、対策を解説
- 公開日
目次
セクシュアルハラスメント(セクハラ)は、加害者と被害者の問題にとどまらず、職場全体の雰囲気や働きやすさに深刻な影響を及ぼします。そのため、早急に対策を講じなければなりません。企業は、セクハラを未然に防ぐための対策を講じることに加え、発生した際には迅速に対応する義務があります。さらに、職場環境や従業員を守るための体制づくりが必要です。
本稿では、セクハラの定義や2つの類型、セクハラに該当する言動の判断基準、企業が実施すべき防止措置、発生時のリスクを解説します。
セクシュアルハラスメント(セクハラ)とは
セクシュアルハラスメントは、相手の意に反する「性的な言動」により、働く人が不利益を受けたり、就業環境が害されたりする行為です。正式にはセクシュアルハラスメントですが、セクシャルハラスメント(以下、セクハラと表記)とも呼ばれます。
セクハラは、身体に触れるなどの直接的な行為に限らず、言葉による性的な嫌がらせも含みます。注意したいのは、加害者に悪意や自覚がなくても、後述する要件を満たし、相手が不快に感じた場合には、セクハラに該当する可能性がある点です。
セクハラが認定されると、加害者本人だけでなく、企業の使用者責任が問われるケースもあるため、組織として予防と対応が重要です。かつては個人の問題として扱われがちでしたが、現在では企業が向き合うべき重大な人権課題と認識されています。
また、男性から女性への行為だけでなく、女性から男性、同性間での言動も対象となり、すべての従業員が当事者になり得ます。
職場におけるセクハラの定義・要件
男女雇用機会均等法では、職場でのセクハラ防止措置を講じる義務が定められています。同法によると、セクハラの定義は以下のとおりです。
職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されること
上記の指針によると、職場でのセクハラには、以下の3つの要素が含まれています。
- 職場における言動
- 労働者の意に反する性的な言動
- 対価型または環境型の被害が生じる言動
また、「職場」「労働者」「性的な言動」の範囲は、次のように整理されています。
- 職場:通常就業場所、取引先、出張先、業務関連の宴会などを含む
- 労働者:正規・非正規・派遣社員すべてを含む
- 性的な言動:言葉、視覚、行動によるもの
セクハラになり得る性的な言動
セクハラには、身体に触れるなどの行為だけでなく、言葉による性的な嫌がらせが含まれます。直接的な性的表現に限らず、「(性的な関係や性的な要求に)応じなければ仕事に支障が出る」と脅すような言動も、セクハラに該当する可能性があります。
セクハラの核心となる性的な言動とは、「性的な内容の発言」および「性的な行動」の2つです。

性的な発言には、性的な冗談やからかい、食事やデートへの執拗な誘い、個人的な性的体験談を話す行為などが含まれます。
一方、性的な行動には、性的な関係の強要、身体への必要のない接触、わいせつな図画の配布や掲示などが該当します。
重要なのは、これらの言動が相手の意に反して行なわれている点です。「コミュニケーションのつもりだった」「親愛の情を示しただけだ」など加害者側の認識は、セクハラに当たらない理由にはなりません。
また、SOGI(Sexual Orientation and Gender Identity)ハラスメントといわれる性的指向や性自認に関する侮辱的な言動も、内容によってはセクハラに含まれる場合があります。たとえば、本人が望まないかたちで性的指向や性自認を暴露したり、性自認が女性の労働者に対し男性的な呼称で故意に呼び続けたりする行為などといった言動が挙げられます。
なお、このような言動により職場環境が害される場合には、セクハラだけではなく、態様によってはパワーハラスメントに該当する可能性もあります。
セクハラの行為者になり得るのは上司・部下・同僚などの会社の枠組みだけではありません。取引先等ほかの事業主、その雇用する労働者や顧客・患者・学校の生徒等もセクハラの加害者になる可能性があります。
また、男性から女性だけでなく、女性から男性、同性同士であっても、性的な言動はセクハラに該当することがあります。
どこからがセクハラ?厚生労働省が示す判断基準
「どこからがセクハラになるのか」の境界線は曖昧になりがちで、個別のケースごとに慎重な判断が必要です。厚生労働省は、「労働者の意に反する性的な言動」により「就業環境を害された」かどうかの判断基準として、被害者の主観だけでなく、「平均的な女性労働者(または男性労働者)がどう感じるか」の視点も考慮するとしています。
これは、特定の個人の受け止め方だけでなく、社会通念上許容される範囲を超えているかを客観的に測るためです。セクハラのなかでも、とくに意に反する身体的な接触により、強い精神的苦痛を被る場合には、一般的に1回であってもセクハラに該当すると評価される可能性が高いと考えられています。
セクハラの判断基準の例は以下のとおりです。
- 身体的接触:強い精神的苦痛を与える身体的接触は、1回でも就業環境を害すると判断されうる
- 継続的な行為:「明確な抗議をしているのに放置された」「心身に重大な影響が出ている」場合などは回数にかかわらず就業環境が害すると判断されうる
明確に拒否していなくても、職場の人間関係や上下関係によって「拒否できない状況」にあった場合は、合意があったとはみなされません。「嫌だと意思表示しなかったから合意だ」などの主張は通用しないと理解しましょう。
セクハラに関する法規制
セクハラは、単なる職場内のトラブルではなく、複数の法律にもとづいて企業責任が問われる行為です。とくに中心となるのが「男女雇用機会均等法」で、事業主に対してセクハラ防止措置を講じる義務が定められています。
ここでは、セクハラに関して企業が理解するべき、「男女雇用機会均等法」「民法」「刑法」3つの法律を解説します。

男女雇用機会均等法
男女雇用機会均等法第11条では、事業主に対して「職場における性的な言動に起因する問題に関して、雇用管理上必要な措置を講ずること」を義務付けています。
参考:e-GOV|雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律
具体的に求められるのは、セクハラ防止の方針を明確化し周知すること、そして相談窓口を設置し、適切に対応できる体制を構築することなどです。違反した場合、厚生労働大臣による助言・指導・勧告の対象となり、企業名が公表される可能性もあります。
参考:厚生労働省|女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律(令和元年6月5日公布)の概要
この法律は、セクハラを単なるマナー違反ではなく、企業の管理責任が問われる法的義務として位置付けている点で重要です。事業主は、従業員が加害者にならないよう予防する責任と、被害が発生した際に速やかに対応する責任を負います。
民法
民法ではセクハラ行為が「不法行為(民法第709条)」に該当し、被害者から加害者に対する損害賠償請求の根拠となります。加害者本人が責任を問われるのはもちろんですが、企業も「使用者責任(民法第715条)」を問われるケースも少なくありません。
ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
使用者責任とは、事業のために他人を使用する者(使用者)が、その被用者が事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負うものです。また、企業は従業員が安全かつ快適に働ける環境を整える「安全配慮義務(労働契約法第5条)」も負っています。
セクハラを放置して被害者が精神疾患を患ったり退職に追い込まれたりした場合、企業は安全配慮義務違反として、損害賠償金を支払わなければならないおそれがあります。
刑法
セクハラ行為そのものが、刑法上の犯罪として一律に規定されているわけではありません。ただし、悪質な場合は、刑法上の犯罪として処罰される可能性があります。
たとえば、無理やりキスをしたり身体を触ったりする行為です。これらは「不同意わいせつ罪(旧・強制わいせつ罪)」に問われることがあります。また、性的な関係を強要した場合には、「不同意性交等罪」として5年以上の有期拘禁刑が科される可能性もあります。
出典:男女共同参画局|薬物やアルコールなどを使用した性犯罪・性暴力って?
そのほか、セクハラ行為の態様によっては、次のような犯罪が成立することもあるため理解しておきましょう。
- 卑猥な質問:各都道府県によって定められている迷惑行為防止条例に違反する可能性がある
- 性的情報の流布:名誉毀損罪
- 暴行又は脅迫を伴うかたちで行なわれたデートへの執拗な誘い:強要罪
- 恋愛感情等を背景とした執拗につきまとう行為:ストーカー規制法違反
セクハラは社内の問題として処理できるものではありません。警察が介入する事態に発展すれば、加害者個人だけでなく、企業の社会的信用にも重大な影響を及ぼします。
セクハラの種類と具体例
セクハラには「対価型セクシュアルハラスメント」と「環境型セクシュアルハラスメント」という2つの類型があります。セクハラ対策には「どのような状況で発生するのか」の理解が欠かせません。類型ごとに特徴を理解することで、どちらの種類のセクハラにあたるか判断しやすくなります。

ここではこの2つの類型と具体例を紹介します。
対価型セクシュアルハラスメント
対価型セクシュアルハラスメントとは、労働者の意に反する性的な言動に対し、その労働者が拒否や抵抗をしたことを理由に不利益な取扱いを受けることを指します。たとえば、解雇、降格、減給、労働契約の更新拒否、昇進・昇格の対象からの除外、客観的に見て不利益な配置転換などがこれに当たります。
典型的な例として、「性的な関係を持てば昇進させる」「デートに応じなければ契約を更新しない」など交換条件を出すケースが挙げられます。このような行為は、拒否した従業員に対する解雇・降格・減給・配置転換などにつながる場合があり、法的に問題となる可能性が高い行為です。
参考:厚生労働省|事業主の皆さん 職場のセクシュアルハラスメント対策はあなたの義務です!!(p5)
対価型セクハラは上下関係が背景にあるため、被害者が声を上げにくい特徴があります。 直接的な不利益だけでなく、「評価を下げる」「必要な情報を与えない」など、見えにくい嫌がらせに発展することもあります。
2026年に施行される改正労働施策総合推進法では、求職者等に対する対価型セクハラの防止措置が事業主の義務になることが決まりました。採用面接時やインターンシップなどで、求職者や内定者に対する「内定をちらつかせたセクハラ」を防止するため、企業には適切な雇用管理措置が求められます。
出典:厚生労働省|ハラスメント対策・女性活躍推進に関する改正ポイントのご案内
環境型セクシュアルハラスメント
環境型セクシュアルハラスメントとは、労働者の意に反する性的な言動や装飾物の設置などによって、労働者の就業環境が害されることです。
対価型セクシュアルハラスメントとは異なり、加害者に悪意や自覚がないまま行なわれるケースも少なくありません。 周囲が不快に感じていても指摘しづらく、結果として行為がエスカレートしやすい点が特徴です。
企業には、「どこからがセクハラに当たるのか」という基準を明確にし、従業員へ周知することが求められます。
環境型セクシュアルハラスメントに該当する行為の一例は、次のとおりです。
- 職場で性的な会話をする
- 事務所内にヌード写真を掲示する
- 身体を執拗に眺める など
参考:厚生労働省|事業主の皆さん 職場のセクシュアルハラスメント対策はあなたの義務です!!(p5)
特定の個人を狙った言動でなくても、周囲が苦痛を感じ、業務に集中できない状態であれば、環境型セクハラに該当します。
加害者が「場を盛り上げるつもりだった」と考えていたとしても、被害者が職場に行くこと自体を苦痛に感じるようであれば、就業環境の侵害と判断される可能性があります。
セクハラに該当しうる発言一覧
職場で日常的に交わされる会話のなかにも、セクハラに該当する可能性がある発言は少なくありません。以下は、相手を不快にさせやすく、セクハラと判断されるおそれがある発言の例です。
(1)容姿・身体的特徴に関する発言
「最近太った?」「スタイルがいいね」「化粧が濃い」「足がきれいだね」「最近、髪の毛薄くなったんじゃない?」「お腹が出てきたね(メタボじゃない?)」「筋肉すごいね、触らせてよ」「男のくせにひ弱だね」など。
(2)性別・年齢・結婚・出産に関する発言
「女性は気が利くね」「彼氏はいないの?」「男のくせに情けない」「男なら気前よく奢ってよ」「一家の大黒柱なんだから」「まだ結婚しないの?」「お子さんの予定は?」など。
(3)性的な冗談・からかい
「最近モテてるんじゃない?」「何か隠してることあるでしょ?」「そんなに仲がいいってことは、特別な関係なの?」「彼女とは最近どうなの?」など。
(4)個人的な性的体験談を話すこと
「若いころはいろいろあってね」「昔は遊んでいたからさ」など。
(5)食事への執拗な誘い
「(しつこく)ランチに行こうよ」「(断っているのに)デートしてくれないの?」「落ち着ける場所でゆっくり話そうよ」など。
これらの発言は、発言者に悪意がなくても、受け取る側にとっては不快なセクハラとなり得ます。とくに、業務と関係のないプライベートな話題や、性的なニュアンスを含む言動は、職場では避けるべきです。
セクハラ被害の発生割合は約4割
セクハラ被害は、一部の職場に限られた問題ではありません。
厚生労働省の「令和5年度職場のハラスメントに関する実態調査」からも、約4割の企業でセクハラに直面している実態が明らかになっています。
企業調査に見る発生件数と推移
2023年のハラスメントの発生状況をみると、セクハラの相談があったとした企業は「39.5%」でした。一方で、企業がハラスメントに該当すると判断した事例は80.9%もあり、相談せずに黙っている被害者が多いと考えられます。

出典:厚生労働省|職場のハラスメントに関する実態調査 結果概要(p2)をもとに編集部で作成
また、セクシュアルハラスメントに関する相談の有無を業種別に見ると、「ある」の割合がもっとも大きかったのは金融業・保険業(156社)の68.6%でした。企業数が多い卸売業・小売業(1,235社)では44.0%、製造業(1,738社)では37.0%となっています。

労働者調査から見るセクハラの内容と行為者
厚生労働省の調査によると、セクハラを受けたことがある人は全体の6.3%で、約20人に1人がセクシュアルハラスメントを受けている計算です。また、セクハラを受けた人の約4人に1人が「何度も繰り返し」、約2人に1人が「時々」受けると回答しており、複数回経験している労働者が多い実態が浮き彫りとなっています。

一方、Job総研が実施した『2025年 ハラスメント実態調査 〜被害・職場対策編〜』では、ハラスメントの内容について調査結果があります。
ハラスメントを受けたと回答した299人のうち、性的な言動または嫌がらせを受けた方の割合は26.1%でした。被害を受けたあとの対応は「誰にも相談していない」が最多で、声を上げていない方が多くいることも示されています。


セクハラが社会問題として重要視されるようになった背景
アメリカで生まれたセクハラの言葉と概念が、日本に持ち込まれたのは1980年代後半です。女性の社会進出が進むなかで、職場における男女の力関係の不均衡から生じる問題として注目されるようになりました。
1989年には、日本で初めてセクハラを問う裁判が福岡地裁に提起され、被害者が声を上げたことで社会的な関心が高まりました。 同年には「セクシャル・ハラスメント」が新語・流行語大賞に選ばれ、概念が広く認知されるようになります。
また、近年では2017年のセクハラや性的暴行などの性犯罪被害の体験を告白・共有する「#MeToo運動」により被害体験が可視化され、セクハラに対する社会的な問題意識が一層高まっています。
さらに2020年6月施行の改正男女雇用機会均等法により、職場でのセクハラ対策が強化され、事業主の管理義務が明確化されました。現在では、SDGsやESG投資の観点からも、人権を尊重しない企業は社会から選ばれにくくなっています。
企業がセクハラを放置した場合のリスク

セクハラを放置すれば、被害者個人だけでなく、企業全体に深刻な影響を及ぼします。ここでは、企業がセクハラを放置した場合に想定される主なリスクを「生産性の低下」「離職率の増加」「法的責任が問われるリスク」の3つの観点から解説します。
(1)生産性の低下
企業がセクハラに気づいていない場合や、気づいていたにも関わらず放置するなど、適切に対処しなかった場合、生産性の悪化につながります。加害者や会社に不満を抱く従業員が続発し、職場の雰囲気や作業へのモチベーションが悪化するためです。
また、仕事へのモチベーションが下がるだけでなく、出社自体が苦痛になり、遅刻や欠勤が増える場合もあります。
被害者をはじめ、周囲の従業員も「明日は我が身」と萎縮し、自由な発言や提案ができなくなるでしょう。結果として、チームワークが悪化し、ミスやトラブルが頻発するなど、組織全体の生産性が著しく低下します。
(2)離職率の増加
セクハラが横行している職場では、従業員がメンタルヘルス不調を患い、耐え切れずに休職や退職などにつながり、離職率が増加する可能性があります。
セクハラを放置するような企業風土に失望し、よりよい環境を求めてほかの従業員が離職を検討することも考えられるでしょう。
人材不足が深刻化するなかで、離職率の増加は企業にとって大きなダメージとなります。新たな人材を採用・育成するには多大なコストと時間がかかるだけでなく、悪評が広まれば採用活動自体が困難になります。
(3)法的責任が問われるリスク
企業は労働契約法第5条により、従業員が安全で健康に働けるよう配慮すべき安全配慮義務を負っています。
使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。
セクハラを放置すれば安全配慮義務違反となり、民事上の損害賠償請求や行政指導を受けるリスクがあります。被害者から訴訟を起こされた場合、解決金や弁護士費用などの直接的なコストだけでなく、対応に追われる人事担当者の人的コストも発生します。
さらに、報道されれば企業のブランドイメージは失墜し、顧客離れや取引停止につながるおそれもあります。一度失った社会的信用を取り戻すのは容易ではありません。
企業が講じるべきセクハラへの対策
セクハラを防ぎ、従業員が安心して働ける職場環境を整えるためには、企業が事前に体系的な防止措置を講じることが不可欠です。
厚生労働省の指針では、事業主に対して、セクハラを未然に防ぐための体制整備と発生時の適切な対応を求めています。

ここでは、企業が講じるべき主なセクハラ対策を指針に沿って解説します。

(1)事業主の方針の明確化および周知・啓発
企業がまず取り組むべきなのは、事業主として「セクハラは決して許されない行為である」と方針を明確に示すことです。方針が曖昧なままでは、現場ごとの判断にばらつきが生じ、被害の見逃しや対応遅れにつながります。
就業規則や服務規律にセクハラの禁止規定を設け、どのような行為が処分対象となるのかを具体的に明記しましょう。そのうえで、管理職を含むすべての労働者に対し、社内報や研修などを通じて繰り返し周知・啓発することが重要です。
とくに有効なのが、職位や役割に応じたセクハラ研修の実施です。管理職向けには「加害者にならないための注意点」、一般社員向けには「被害を受けた際の対応方法」など、立場に応じた内容にすることで、実践的な理解が深まります。
(2)相談窓口の設置と対応するための体制整備
被害を早期に把握し、深刻化を防ぐためには、従業員が安心して相談できる窓口の設置が欠かせません。相談しづらい環境では、被害が表面化せず、問題が長期化するおそれがあります。
相談窓口は人事部や法務部が中心となって設置し、対応担当者にはプライバシー保護や相談対応の手順について十分な教育を行いましょう。被害内容や状況に応じて、適切な初動対応が取れる体制を整えることが重要です。
また、社内での相談に心理的な抵抗を感じる従業員もいます。そのため、外部の専門機関や弁護士など、社外相談ルートの併設も有効な対策です。
(3)セクハラに対する適切で迅速な事後対応
セクハラに関する相談が寄せられた際、企業には迅速かつ公平な事実確認が求められます。対応が遅れたり不十分だったりすると、被害の拡大や二次被害につながるおそれもあるためです。
調査では、被害者と行為者の双方から事情を聴取し、第三者の証言なども踏まえて客観的に事実を認定します。セクハラの事実が確認された場合は、就業規則にもとづき行為者に対して厳正に処分するとともに、被害者のケアや職場環境の改善に取り組みましょう。
また、対応は一度きりで終わらせてはいけません。被害者のアフターケアや再発防止策を検討し、同様の事案が起こらない仕組みを整えることが重要です。
セクハラかどうか判断が難しい事案であっても、「被害を感じた」という声が上がった時点で対応する姿勢が企業には求められます。いわゆる「ヒヤリ・ハット」の段階で対策を講じることが、重大な被害の防止につながります。
(4)相談者・行為者などのプライバシー保護
セクハラ対策では、企業は相談者・行為者などのプライバシーを保護するために必要な措置を講じる義務があります。相談や調査の過程で得られた個人情報は、関係者以外に漏れないよう厳重な管理を徹底しなければいけません。
また、相談や調査への協力を理由に、不利益な取り扱いを行うことは禁止されています。相談後に嫌がらせや不当な扱いが生じれば、被害者はさらに追い詰められ、職場全体の信頼も損なわれます。
セクハラの撲滅には被害を受けた相談者だけでなく、周囲の従業員が協力できる環境を整えることも不可欠です。「プライバシーが守られない」「協力すると不利になる」など印象が広がらないよう、企業として一貫した姿勢を示しましょう。
セクハラがない職場づくりで、誰もが安心・安全に働ける環境を
セクハラのない職場づくりは、単なるトラブル対応ではなく、誰もが安心して働ける社会を実現するための重要な取り組みです。従業員の尊厳を守ることは、結果として職場の信頼関係や生産性の向上にもつながります。
誰もが自分らしく長く活躍できるウェルビーイングな環境は、互いに尊重し合い、心理的安全性が確保された職場で初めて実現するものです。
セクハラを未然に防ぐ体制づくりと、万が一発生した場合の適切な対応を積み重ねていくことが、その基盤となります。本稿を参考に、セクハラの種類やリスクを正しく理解し、自社に必要な防止策を見直すきっかけとしていただければ幸いです。







