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両立支援等助成金の「カムバック支援助成金」とは?支給金額や要件を解説

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目次

こんにちは、社会保険労務士の飯田 弘和です。

前回の記事で解説した「両立支援等助成金」のコースのひとつに、「再雇用者評価処遇コース(カムバック支援助成金)」(以下、カムバック支援助成金)があります。

今回はこちらのコースの概要について解説します。

カムバック支援助成金の目的

妊娠・出産・育児・介護または配偶者の転勤が理由で退職した方が復職可能になったとき、本人の希望に応じ再び雇入れた事業主に対して助成金が支給されます。

再雇用に際し、退職前の勤務経験や能力等を適切に評価し、その評価を配置や処遇の決定に反映させる再雇用制度を導入している必要があります。

育児・介護等を理由とした退職者の復職支援と企業の生産性向上に資する再雇用の支援を支給目的としています。

カムバック支援助成金の支給額

支給額は以下の表のとおりとなっています。

カムバック支援助成金の支給額

※ 支給額の表中の < > 内の金額は、生産性要件を満たした場合の支給額です。

生産性要件について

生産性要件を満たした場合、助成金が割増されます。

以下の2つの要件を満たす必要があります。

(1)助成金支給申請を行う直近の会計年度における「生産性」が、

  • その3年前に比べて6%以上伸びていること または、
  • その3年前に比べて1%以上6%未満伸びていて、金融機関から一定の「事業性評価」を得ていること

(2)1の算定対象期間について、雇用する雇用保険被保険者を事業主の都合によって解雇等していないこと。

「中小企業」区分について

中小企業と中小企業以外では、支給額に差があります。

「中小企業」とは、下の表で、「資本金または出資の総額」か「常時雇用する労働者の数」のいずれかを満たす企業をいいます。

「中小企業」区分

個人事業主や一部の医療法人・学校法人等で資本金等のない事業主については、常時雇用する労働者の数で判定します。

出向者(在籍出向者)については、出向先・出向元の両方で労働者数に算入されます。

派遣労働者については、派遣元のみの労働者数に算入されます。

また、複数の業種に該当する事業活動を行っている場合には、主たる事業活動によって業種を判断します。

この場合、収入額・販売額・労働者数・設備の多寡等によって実態に応じて判断することになります。

カムバック支援助成金の支給要件

カムバック支援助成金を受給するためには、以下の支給要件を満たさなければなりません。

事業主の支給要件

  1. 雇用保険適用事業所の事業主であること。
  2. 妊娠・出産・育児・介護または配偶者の転勤を理由とした退職者について、退職前の勤務実績等を評価し、処遇の決定に反映させることを明記した再雇用制度を導入すること。
  3. 再雇用制度に基づき、離職後1年以上経過している対象者を再雇用し、無期雇用者として6ヶ月以上継続雇用し、支給申請日においても雇用していること。
  4. 育児休業・介護休業・育児又は介護のための所定労働時間の短縮措置について、法の定める水準を満たした規定が就業規則または労働協約に定められていること。
  5. 支給のための審査に協力すること。
  6. 申請期間内に申請を行うこと。

また、過去に助成金の不正受給や労働関係法令違反があった場合、受給できないことがあります。

事業主や役員等が、暴力団と関わりのある場合には受給できません。

労働者の支給要件

この助成金受給の対象となる労働者とは、以下の要件を満たした労働者です。

  1. 退職時または退職後に、退職理由と再雇用の希望を申し出ていたことが書面で確認できること。
  2. 支給対象事業主または関連事業主の事業所を退職した日の前日において、当該事業主等の雇用保険被保険者として継続して雇用されていた期間が1年以上あること。
  3. 退職後、再雇用に係る採用日の前日までに、支給対象事業主または関連事業主と雇用、請負、委任の関係にないこと、もしくは出向、派遣、請負、委任の関係により当該事業主等の事業所において就労していないこと。
  4. 再雇用日において、退職の日の翌日から起算して1年以上が経過していること。

カムバック支援助成金の手続きフロー

助成金受給のための手続きの流れは以下のようになっています。

手続き・支給の流れ

厚生労働省・都道府県労働局「両立支援等助成金 カムバック支援助成金のご案内(再雇用者評価処遇コース)」より抜粋

おわりに

事業者にとって、経験や実績を積み、技術・能力を磨いた従業員が退職するのは痛手となります。新たな人材を雇って一からトレーニングし、活躍人材として育て上げるには、大変な労力・コストがかかります。

このような課題に対し、カムバック支援助成金を活用し、ライフステージの変化とともに退職せざるを得なかった従業員を再び雇入れることができれば、生産性向上に寄与するでしょう。

また、このような制度があることで、従業員にとって、様々なライフイベントの発生に対する対応の選択肢が広がり、キャリアプランを構築しやすくなると考えられます。ひいては、QOL(クオリティ・オブ・ライフ)の向上や会社との信頼関係の構築、業務へのモチベーションアップに繋がるのではないでしょうか。

【参考】
・厚生労働省・都道府県労働局「両立支援等助成金 カムバック支援助成金のご案内(再雇用者評価処遇コース)」

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