【フォーマット付】要員計画はなぜ必要?メリットや計画の立て方を紹介!
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この記事でわかること
要員計画による長期的な人材管理は、企業全体における人手不足の解消や業務効率化には不可欠です。
この記事では
- 要員計画の目的
- 要員計画と採用計画、人事配置計画の違い
- 要員計画のメリットと注意点
- 立案の手順
- おすすめのツール
を紹介します。
要員計画とは
自社の経営計画を達成するためには、人材戦略を明確
化したうえで、長期的かつ合理的な計画を立てなければなりません。そこで必要なのが、企業にとって必要な人材の確保や配置を計画する「要員計画」です。採用や育成、配置など人事の業務はすべて「要員計画」に基づいて実施されます。
採用や育成から異動まで一貫した戦略を取るために、とくに「採用計画」「育成計画」「異動計画」の3つは必ず策定しておきましょう。
要員計画を立てる目的
要員計画を立てる一番の目的は、経営・人事・現場の3者間での「必要としている人物像」や「人事計画の方針」を一致させる点にあります。社内に広く方針を浸透させるためにも、計画を立てる際は、経営層だけではなく現場の意見も聞きながら進めていきましょう。
とくに規模の大きな企業では、「採用活動」のなかでも「求人」「面接」「選考」などフェーズごとに担当者が異なる場合があります。統一性のある方針を定めて従業員と共有できれば、採用活動の円滑な進行と精度の向上が可能です。
また、要員計画が明確になっていれば、異動の必要性やメリットを従業員に納得してもらいやすく、配置転換がスムーズになる効果も期待できます。
要員計画が必要となる背景
そもそも、なぜ要員計画が必要なのでしょうか。背景には、少子高齢化の進行が挙げられます。
内閣府の『令和4年版高齢社会白書』によると、2021年の生産年齢人口(15〜64歳)は、2000年の8,622万人から1,172万人減少して7,450万人。2050年には5,275万人まで減少する見通しです。生産年齢人口の減少で売り手市場が続くなか、自社に合った人材確保が難しい状況になっています。
さらにIT化やグローバル化など、企業を取り巻く環境も急速に変化し、人材もより多様化しています。柔軟な組織づくりに注力するためにも、「人材をどう生かすか」を定めた要員計画の必要性が増しています。
採用計画・人員配置計画との違い
要員計画と並んでよく使われる用語に「採用計画」や「人員配置計画」があります。
採用計画とは、人事のうち「採用」にかかわる業務の計画です。スケジュール、採用予算などを具体的にプランニングし、「どのような人材を、いつまでに、何人採用するか」を策定します。
人員配置計画とは、企業が人材を適材適所に配置するための計画です。「この部署がミッションを達成するために必要なのは?」「この業務に適しているのは?」など、個々の人材の「質」に着目して計画を立てます。詳しくは以下の記事でも解説しているので、ぜひ確認してみてください。
一方、要員計画では人材の「量」に着目します。企業全体の人材の充足が目的となり、採用計画や人員配置計画よりも大きな視点で計画を立てられるかが重要です。
実際の業務では、「人材戦略」→「要員計画」→「採用計画」→「人員配置計画」の順に立てるようにしましょう。
要員計画を立てるメリット
メリット1:採用時のミスマッチの防止
要員計画を立てるメリットの1つ目は「採用時のミスマッチ防止」です。
要員計画によって採用方針が明確になっていれば、求人広告の内容やメッセージで一貫した発信ができ、自社にマッチした人材の目に止まりやすくなります。
また、現場の意見を聞きながら要員計画を立てれば、現場のニーズに沿った採用活動が可能です。さらに、採用された従業員の希望にも応えやすくなり、離職率の低下も期待できます。
メリット2:人員不足の予防・解消
2つ目のメリットは「人材不足の予防・解消」です。
前述したように、現在の採用市場は売り手市場で、自社に適した人材の採用難易度が上がっています。要員計画に基づいた長期的な視点で採用や配置をコントロールしていけば、人材不足を起きにくくしたり、すぐに解消したりする効果が期待できます。
メリット3:中長期的な人材育成が可能
3つ目は「中長期的な人材育成」です。
要員計画は中長期のスパンで計画を立てるので、人材開発や育成など、実施に時間のかかる施策も進められます。人材開発に時間的コストをかけやすくなれば、ある程度の期間働いている従業員や中途採用の人材を、より専門的な人材に育成することも可能でしょう。
新卒への研修だけでなく、既存の従業員も育成することで、人員不足解消の加速も期待できます。
メリット4:人事業務の効率化
4つ目のメリットは「人事業務の効率化」が図れる点です。
事前に計画を立てておけば、実施した後に達成度や反省点の振り返りができます。
計画から対策・改善までの一連の流れを繰り返し、施策の精度を高めるPDCAサイクルを回していけるようになれば、業務効率の向上を目指していけるでしょう。
要員数の算出方式
要員計画を立てるにあたり、部署ごとに必要な要員数を算出しなければなりません。
2種類ある算出方法の違いについて見ていきましょう。
トップダウン方式(マクロ的算定方式)
1つ目の「トップダウン方式」は、財務的なアプローチ方式です。経営計画や人材戦略に基づき、必要な要員数を「人件費」「採算」の2つの面から算出します。使われる主な指標は、売上高、付加価値、損益分岐点、人件費率、労働分配率などです。
具体的には、以下の2つの数式のいずれかで算出します。
必要な人員 =(年間売上高 × 付加価値率 × 労働分配率)÷ 1人当たりの人件費
必要な人員 =(目標売上高 × 適正人件費率)÷ 1人当たりの人件費
計画に基づいた数値のため、年度の目標利益がきちんと出る点がメリットです。ただし、経営視点からの算出のため、結果的に現場が必要とする要員数を満たせない懸念があります。
ボトムアップ方式(ミクロ的算定方式)
一方、「ボトムアップ方式」は現場のニーズに合わせた視点でアプローチしていきます。こちらの方式では、現場の声を聞き、各部署の「業務量」を基に必要な人員数を算定します。要員数を求めるための式は以下のとおりです。
必要な人員 = 総業務量 ÷(1人当たりの標準業務量 × 所定労働時間)
ボトムアップ方式であれば、現場に必要な要員数を満たせない懸念が解消されるため、計画と実態の乖離を防げるというメリットがあります。しかし、現場の要求にすべて応えようとすると予算をオーバーしてしまう可能性がある点には注意が必要です。
2つの方式を併用して精度の高い要員計画を
2つの方式はアプローチの方向性が異なります。それぞれの長所で互いの短所を補完できるため、精度の高い要員計画を立てるには、両方を併用した試算が必要です。
なお、2方式間の算定結果が大きくずれる場合は、計画そのものが適正ではない可能性があります。一旦計画を見直してギャップを埋め、妥当な数を算出しましょう。
さらに、「自社の離職率」や「採用市場の動向」なども併せて確認して数値を調整すれば、より現実的な要員計画の策定につながります。
要員計画を立てる際の注意点
実現可能な計画を立てる
要員計画を立てる際は、まずはその計画が実現可能かを必ず吟味しましょう。せっかく計画を立てても、その数値が到底実現不可能であれば意味がありません。
とくに採用に関しては、予算や必要数などの社内状況だけではなく、市場の状況などの外部要因からも影響を受けます。綿密な情報収集を進めたうえで、採用難易度やコストを踏まえた現実的な目標を設定しましょう。
一度立てた計画を安易に変更しない
計画を立てた後は、常に現場の状況を把握する必要があります。また、要員計画そのものが順調に進んでいるかだけではなく、企業全体の方針である経営計画と連動しているかもチェックが必要です。
一方で、要員計画やそれに基づく採用計画を立てたものの、そのとおりにタイミングよく人材を採用できるとは限りません。思うように人材を採用できなかったなど、想定外の事態が起こってしまっても、慌てて要員計画を変更しないようにしましょう。
計画と現状に乖離が生じたなら、まずは根本的な原因を探ります。原因が判明したら、採用や育成、人員配置など、要員計画の下位に位置する計画の改善で対応できないかを検討します。計画のズレが小さいうちに原因を突き止められれば、要員計画そのものを変更せずに、採用や育成の改善を進めていくと解決できる場合があるのです。
要員計画などの大きな枠組みは安易に変更せず、一度立てたらできる限り忠実に実行できるようにしましょう。
退職・休職リスクを加味する
採用の進捗以外に、従業員の退職や休職によって計画にズレが生じる可能性もあります。
想定外の退職・休職はいつでも発生する可能性がありますが、できる限り事前に把握しておきたいところです。「辞めそうな社員がいる」といった情報をなるべく早期にキャッチするためには、現場の従業員への定期的なヒアリングといった施策が効果を発揮するでしょう。
また、退職しそうな従業員がいる場合は、直属の上司や周囲の同僚に対してケアを依頼したり、人事担当者が直接話を聞いたりするなどして、退職や休職のリスク軽減に努めるのも重要です。
要員計画の策定ステップ
要員計画の策定までには、大きく分けて7つのステップがあります。
1. 人事による現状把握
経営計画や人材戦略など、要員計画策定に必要なほかの計画の策定状況や、現在の人材の配置状況を把握します。
2. 各部署のニーズ調査(ボトムアップ方式)
部署ごとに、現場の従業員の業務量を確認します。労働時間など定量的な調査に加え、必要に応じてヒアリングも実施しましょう。
3. 経営計画の確認と必要な要員数の算出(トップダウン方式)
経営計画や実績を確認し、年間売上高や人件費、付加価値などの情報を収集します。
4. 適正値の検証と差分の調整
ボトムアップ方式とトップダウン方式で算出した要員数を比較。差分が大きい場合は調整します。
5. 採用数の割り出し
離職率や採用市場の最新動向を調べたうえで、最終的な新卒・中途の採用数を算出します。
6. 採用計画の立案
割り出した採用予定数をもとに、採用計画を立てます。
7. 要員計画の決定
採用計画と併せて、育成、人員配置の計画も立案します。3つの計画が揃えば、要員計画は完成です。
表計算ソフトで要員計画を作成する方法
以下のテンプレートを活用することで、要員計画をスムーズに作成できます。
テンプレートの使い方を見ていきましょう。
1.「部署」「部門種別」を入力する
まずは、B列に「部署名」を記載します。C列は、「直接部門」または「間接部門」をプルダウンで選択しましょう。ここでの「直接部門」とは、営業部・生産管理部門などの売上を作る部門、「間接部門」は総務部・経理部などのバックオフィス部門を指します。
2.人事担当者が把握しているデータを入力する
次に、D列には「年度当初の部署の在籍人員」を記載します。E列に新卒、中途採用、異動などで増員する人数、F列には退職、産休・育休、異動・出向などで減員する人数を入れましょう。
なお、G列「年度末在籍人員(見込み)」と、H列「年度当初在籍人員の差異」は、自動的に算出されます。
3.「要員要望数」を入力する
I列にはボトムアップ方式での要員要望数、J列にはトップダウン方式での要員要望数を記載します。
4.直間比率・労働生産性を確認する
26行目の数値に問題がないか確認しましょう。「今年度売上見込」は、D29に数値を直接入力します。
ここまで入力したら、要員要望数のギャップを調整しましょう。その後、調整済みの数値をK列に記載します。
5.要員計画が承認されたら、配員決定数を入力する
要員計画が正式決定されたら、L列からN列に配員決定数を記載します。
サービスを利用する方法
組織規模が大きくなると、扱う人事データも膨大になります。規模の大きな企業は、表計算ソフトでの管理では非効率になり、入力ミスなども発生しがちになるので、人事・労務ツールの利用を検討してみましょう。
ツールを選ぶ際は、従業員個人の保有スキルや状況などのミクロなデータから、社内の人員数や労務時間の推移などのマクロなデータまで総合的にチェックできるか確認しましょう。
SmartHRなら、人材データや組織図を一元管理できます。さらに、それらのデータをもとに組織情報や人員配置を分析する機能や、従業員サーベイ機能もあるので、効率的な計画策定の助けになるでしょう。
SmartHRの分析レポート
SmartHRの「分析レポート」は、蓄積された従業員データや人事評価などの情報を活用して、さまざまな項目を集計・グラフ化できる機能です。
なかでも「採用・人員計画検討レポート」では、採用成果の把握や人員構成・基本給推移から要員計画を検討できます。
これらの機能は、従業員情報と連携しており、データ整備やメンテナンスは不要。いつでも参照できるため、要員計画のPDCAサイクルを回しやすい点がメリットです。
SmartHRを人事戦略へ積極活用。株式会社ツマミナの取り組み
株式会社ツマミナは、福岡市内を中心に20店舗超の多種多様な飲食店を展開している企業です。店舗数の増加や新業態への進出にともない、SmartHRを導入。人事データを一元管理して、人員配置や採用後の手続きを効率的に遂行できるようになりました。
株式会社ツマミナの事例は、以下の記事で詳しく紹介しています。
SmartHRで効率的な要員計画を
精度の高い要員計画を立てるためには、生産性向上などの経営的な視点と、現場のニーズ充足の両面からのアプローチが必要です。そのためには、各種人事データに基づいた分析が不可欠です。
膨大な人事データを一元管理できるツールを導入すれば、適切な計画とPDCAサイクルの実行が可能となります。ツールを活用しつつ、企業の成長と従業員の満足に繋がる要員計画を立てたいですね。
3分でわかる! SmartHRの分析レポート
FAQ
Q1. 要員計画とは何ですか?
自社の経営計画を達成するために策定する、企業にとって必要な人材の確保や配置の計画です。経営・人事・現場の「人事計画の方針」の一致が目的。「新規採用計画」「異動計画」「社員の育成計画」を含みます。
Q2. 精度の高い要員計画を作るポイントはなんですか?
要員数は財務・業務の両面からアプローチして算出し、実現可能な計画を立てましょう。人事データを一元管理できるツールを使うと効率化を図れます。計画と現状にズレが生じた場合は、原因を解明して早期改善を心掛けましょう。
Q3. 要員計画を立てるステップは?
以下の7つのステップで進めます。
- 人事による現状把握
- 各部署のニーズ調査(ボトムアップ方式)
- 経営計画の確認と必要な要員数の算出(トップダウン方式)
- 適正値の検証と差分の調整
- 採用数の割り出し
- 採用計画の立案
- 要員計画の決定