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OKRとMBOの違いとは?活気に満ちた職場づくりのヒント

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近年、日本国内でも注目が高まりを見せる、目標設定・管理のフレームワーク「OKR」。また、多くの国内企業で導入実績のある、目標管理のためのフレームワーク「MBO」。

本稿では、OKRとMBOの違いや特徴を解説します。それぞれの導入事例も紹介しますので、導入検討時の参考にしてください。

OKRとMBOは、目標の設定・管理を助けるもの

OKRとMBOはどちらも目標設定・管理のためのフレームワークでありながら、異なる特徴をもっています。

OKRもしくはMBOの導入検討中であれば、それぞれのポイントを把握して、自社に適した効果的なフレームワークを選びましょう。

OKRとは

OKRは目標設定・管理のためのフレームワークです。

OKRは目標設定・管理のためのフレームワークです。O(Objectives)とKR(Key Results)という2つの要素から成り立ち、O が「目指すべき目標」、KRは「目標達成に向けた成果指標」をそれぞれ表します。

基本的な実施方法は、まず最初に企業全体での目標(O)を決めて、その達成に必要な成果指標(KR)を複数設定します。

基本的な実施方法は、まず最初に企業全体での目標(O)を決めて、その達成に必要な成果指標(KR)を複数設定します。次に、企業全体の目標を叶えるための、部門の目標と成果指標、さらにその達成に向けたチームの目標と成果指標……と徐々に細分化しながら設定。

最終的に従業員一人ひとりの目標と成果指標が企業全体の目標達成にリンクする構造を作成します。こうして、企業と従業員が大きな全体の目標達成に向けて、同じ方向を向いて活動する環境を整備します。

企業の人事制度にOKRを活用すれば、「挑戦しがいのある目標をもてる」「組織が目指したい方向性を従業員と明確に共有できる」といったメリットが得られます。

OKRでは野心的な目標設定が求められるため、目標達成率が高い目標は、設定レベルが低いとみなされます。

OKRでは野心的な目標設定が求められるため、目標達成率が高い目標は、設定レベルが低いとみなされます。そのため、目標設定に関連するフレームワークでありながら、理想的な目標達成率は60~70%といわれており、この点はOKRの特徴の1つです。

達成難易度が高い目標は、従業員に高いモチベーションをもたらし、社内全体を活気づける効果に期待ができます。目標達成に向けて取り組んでいけば、たとえ未達成だとしてもチームや従業員には大きな成長の機会となるでしょう。

ただし、日本国内では導入している企業がまだ少なく、参考事例が少ないため、導入のハードルは高いといえます。また、OKRは従来の目標管理フレームワークと比較して、考え方に大きな違いがあるため、導入しても組織に浸透するまでに時間が長くかかってしまうかもしれません。

MBOとは

MBOは、人事評価のための目標管理手法です。「Management by Objectives」を略した言葉で、日本語では「目標管理制度」と訳されます。

MBOでは、各従業員が自ら個人目標を設定し、その達成度合いを人事評価に反映します。評価対象となる目標を自ら設定できるため、従業員のモチベーションを高く維持しやすい手法です。

一方でMBOは、定期的に目標達成率の測定とフィードバックを実施しなければならず、管理者の負担が大きいというデメリットも。また、個人が設定する目標が企業の方向性と合致しなかったり、従業員によって目標達成の難易度に差が出たりする可能性もあるので注意が必要です。目標達成できるように建前的な目標設定になることを避けなくてはいけません。

MBOは、マネジメント理論の発明者として有名な経済学者のピーター・ドラッガーが著書『現代の経営』内で考案しました。

OKRとMBOは、目的が異なる

OKRとMBOはいずれも目標管理を目的としたフレームワークですが、それぞれ目的が異なります。OKRが「企業全体での生産性向上」を目的とする一方で、MBOは「従業員の業績を評価し、人事評価につなげる」ためのフレームワークです。そのため、OKR、MBOの導入を考えている場合、自社の課題に合わせて採用する仕組みを選びましょう。

OKRとMBOはいずれも目標管理を目的としたフレームワークですが、それぞれ目的が異なります。

ただし、OKRとMBOのどちらも取り入れる場合は、運用の難易度が高くなるので注意が必要です。異なった目的をもつOKRとMBOなので、多くの場合、設定される目標内容は一致しません。そのため、それぞれのフレームワークに合わせた複数の目標設定が必要となるからです。

目標が複数あると、従業員がどの目標を追うべきか定められなくなり、進むべき方向性を見失ってしまうでしょう。また、併走する2つのフレームワークの管理が求められ、マネージャー層の業務が煩雑になると予想されます。

OKRとMBOの併用を考えている場合、導入前に無理なく運用・管理できる仕組みを整えておきましょう。

OKRとMBO、自社に向いているのは?

目的の異なるOKRとMBOは、企業の特徴に応じて向き不向きがあると考えられます。

OKRは、難易度の高い問題へのチャレンジに意欲的な組織に適しているでしょう。成長志向の強い従業員が多い企業なら、OKRが効果的に機能すると考えられます。逆に、安定志向の強い従業員が多い企業では、導入初期に組織や従業員から大きな戸惑いの声があがるかもしれません。

個人のモチベーション向上には、OKRよりもMBOのほうが効果的と考えられます。また、MBOには達成率を人事評価と結びつけやすいので、目標管理と人事評価をセットにしたいなら、MBO導入がよいでしょう。

OKR・MBOの導入事例。なかには失敗例も

ここからはOKRとMBO、それぞれの導入事例を紹介します。

OKR導入事例

OKRは設立間もないGoogleで導入されて、「ストレッチゴール」と呼ばれる高い目標設定により、同社の世界的巨大企業への急激な成長に貢献しました。日本企業では、メルカリが導入事例として有名です。

メルカリでは、1度のOKR実施期間を四半期ごとに区切って取り組んでいます。

目標に対して、グリーン・イエロー・レッドの3色で達成度を判定しており、80〜100%達成でグリーン、40〜70%がイエロー、40%未満はレッドに分類されます。基本的に、目標に対して必ずグリーンにしなければならないと考えてはいませんが、コンプライアンスやセキュリティなど一部の分野では、達成度100%が望ましいとしており、内容によってわけて考えているようです。

目標設定では、保守的にならないように、本来妥当だと考えられる難易度を上回る、わくわくするような目標を意識して設定しているといいます。

(参考)OKRは仕組みだけ入れても機能しないメルカリに学ぶ「わくわくするOKR」を作るコツ - logmi

MBO導入事例

MBOはOKRよりも歴史が長く、日本で導入している企業も多くあります。幅広い事業展開のグリー株式会社がその一例です。グリーでは、従業員の成長支援制度の一環としてMBOを導入しています。

同社の従業員は、半期ごとに自身でMBOの目標を設定。月に一度の上長との1on1ミーティングの場で達成状況や課題などを共有します。

グリーでは、MBOに「個々人が納得感を持って業務に取り組み、かつ組織として成果を出す」という効果を期待しているといいます。

ただし、MBOの実施に一工夫が必要な場合も。MBOの導入実績をもつヤフーでは、過去に「目標達成に集中するあまり、目標以外のことが疎かにされる」「評価を得るために本来目標にするべきではない内容まで目標に掲げる」といった弊害が発生したといいます。

対応のために人事制度の改定を進め、「従業員の負担軽減のために、評価期間を3か月から6か月に拡大」「上長との1on1ミーティングを週に一度実施」といった変更をしたといいます。

(参考)成長支援制度 - GREE目標管理制度 継続 × 廃止 - リルクルートワークス研究所

OKRを導入するなら、試験的にスタートするのがおすすめ

まだ日本企業での導入は少ないですが、これからOKR導入を検討中の企業も多いでしょう。ただし、OKRを実施するためには、企業全体で大がかりな準備が必要な点がネックになるかもしれません。

導入には、まず最初に企業全体での目標(O)と成果指標(KR)を決めて、それから各部門ごと、チームごと、従業員ごとの目標と成果指標の設定が必要です。さらに、進捗確認の必要もあるので、ミーティングや面談の定期的な実施も必要になるでしょう。

上記プロセスを企業全体で取り組む場合、非常に煩雑な作業の発生が予測されます。導入コスト削減のためにも「まずは一部のチームだけでOKRを導入し、そこから徐々に社内全体に浸透させる」といった段階的な導入も検討してみましょう。

まだまだ認知度が低く、導入ハードルが高いOKRですが、SmartHR Mag. ではOKRについて詳しく紹介した記事を複数公開しています。

導入から運用、うまくいかないときのチェックリストが気になる方は以下の記事を参考にしてください。

お役立ち資料

納得感のある人事評価を実現。組織を成長させる15のキーワード

FAQ

  1. Q1. OKRとMBOの違いはなんですか?

    A. 進め方など、違いは多くありますが、最大の相違点は“目的”です。OKRは「企業全体での生産性向上」、MBOは「従業員の業績を評価し、人事評価につなげる」を目的としています。

  2. Q2. OKRとMBOは併用できますか?

    A.併用は可能ですが、それぞれ異なる目的が設定される可能性が高い点に要注意。目的が複数あると、従業員が方向性を見失ったり、管理者の作業が煩雑化したりといった、弊害が発生する可能性があるため注意が必要です。

  3. Q3. OKRの導入事例を教えてください。

    A.OKRはGoogleが設立間もない時期から導入していたことで有名です。日本企業では、メルカリやChatworkなどで導入されています。

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