人材採用におけるアトラクトとは?施策のポイントをわかりやすく解説
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優秀な人材の獲得競争が激化するなか、採用活動における「アトラクト(候補者の心を惹きつける取り組み)」の重要性が高まっています。本記事では、アトラクトの概要や実践方法、具体的な成功事例についてわかりやすく解説します。
採用におけるアトラクトとは?候補者を惹きつける取り組み
採用におけるアトラクトとは、採用候補者に企業の魅力を伝え、「この会社で働きたい」と思ってもらえるように働きかけることです。直訳すると「引き付ける、魅了する」という意味があります。
採用候補者が何を重要視しているのか、何を知りたいと考えているのかを把握せず、一方的に情報を伝えるだけではアトラクトすることはできません。双方向のコミュニケーションを通じて、候補者の希望や価値観を理解し、それに沿った情報提供や対話を行うことが重要です。
アトラクトが注目されている背景
現在の採用市場では、新卒採用・中途採用ともに人材の確保が難しい状況が続いています。
リクルートワークス研究所の調査によると、2024年卒の大卒求人倍率は1.75倍となり、2024年卒の1.71倍より0.04ポイント上昇。2022年卒の1.50倍以降、継続的に上昇しています。
また中途の採用求人倍率も高い水準が続いており、新卒採用・中途採用ともに優秀な人材の獲得競争が激化しています。
優秀な人材を獲得するために、新卒採用・中途採用ともにアトラクの重要性は増していると言えます。効果的なアトラクトによって以下の効果が期待できます。
- 自社に合う人材からの応募増加
- 内定辞退率の低下
- 入社後の離職率の低下
(参考) 転職求人倍率レポート(2024年10月)
(参考)中途求人倍率、10月は低下2.75倍 年明けにらみ求職活発 - 日本経済新聞
アトラクトする採用候補者との接点
採用候補者とのアトラクトの機会は、以下の接点があります。
接点 | 主な段階 |
ウェブページ・SNS | 認知獲得 |
イベント | 認知獲得 |
会社説明会 | 認知獲得〜応募前 |
インターンシップ | 応募前 |
面談 | 応募前〜選考 |
面接 | 選考前〜選考中 |
オファー面談 | 選考中 |
社員懇親会 | 内定後 |
実際の採用活動では、これらの接点が前後したり、異なる段階で設けられるケースもあります。目的や狙いに合わせて組み合わせながら、段階的にアトラクトを強化していくことが効果的です。
アトラクトを行う際のポイント
(1)採用候補者のニーズを把握する
採用候補者のニーズ把握が非常に重要です。面談などを通じて、以下のような転職における優先度の高い項目をヒアリングしましょう。
- 給与
- やりがい
- 業務内容
- 社会的意義
- 福利厚生
把握した優先度の高い事項に応じて、伝える内容を調整する必要があります。場合によっては、魅力を伝えやすいメンバーに面談を依頼したり、伝えるメッセージの内容を調整したりするとよいでしょう。
(2)自社のアピールポイントを把握しておく
人事部門が経営層や事業部門と綿密に連携し、以下の点をわかりやすく伝えられるようにしておきましょう。
- 企業のミッション・ビジョン・バリュー
- 採用候補者が携わるプロダクトや業務が社会課題にどのようにつながるか
- 一緒に働くメンバーの特徴
- 福利厚生などの待遇面
(3)競合企業と自社の違いを整理して差分を伝える
面談などを通じて、採用候補者が並行して検討している企業を把握しましょう。競合企業と比較した場合の自社の強みを考慮したうえで、アピールポイントをわかりやすく伝えられるようにします。
採用フェーズごとのアトラクト方法
採用フェーズは以下の4つに分けて考えられます。
- 認知獲得
- 応募~選考前
- 選考中~オファー
- 内定承諾~入社
(1)認知獲得フェーズ
「ウェブページ」「SNS」「イベント」「会社説明会」といった一方向の発信となりやすいタイミングでも、候補者の興味を引く発信が可能です。
発信内容の例:
- SDGsやDX、D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)など社会課題に対する自社の考え
- 自社の労働環境
- カルチャー
- 事業の競争優位性
(2)応募~選考前フェーズ
カジュアル面談が該当します。認知獲得フェーズと異なり、候補者と直接コミュニケーションできます。企業や事業内容、業務内容など選考に向けて必要な情報は確実に伝えつつ、採用候補者の転職におけるニーズをヒアリングすることが重要です。
(3)選考中~オファーフェーズ
選考における面談が該当します。候補者がどういう点に共感しているのか確認しつつ、企業側でも自社へのマッチ度を確認します。
最終的な入社の意思決定をしてもらうため、これまでヒアリングした内容を整理して、自社を選ぶことで候補者の転職ニーズに最も応えられると伝えると良いでしょう。(4)内定承諾~入社フェーズ
内定者懇親会や既存社員との交流の場を設けて、入社後の働くイメージをもってもらうことで、内定辞退率の低下が期待できます。
アトラクト採用の成功事例
「内定承諾後辞退ゼロ」「従業員の離職率大幅改善」を実現した千株式会社
同社が実践するアトラクトの特徴は、採用から入社後までを一貫して捉えた「体験価値の設計」にあります。事業部門との密接な連携のもと、候補者一人ひとりに寄り添った採用活動を展開しています。
(1)入社前後をひとつなぎにした体験価値の設計
- 選考から入社後までを一貫して捉えた体験設計
- 候補者の人柄に合わせた懇親会やミートアップの実施
- 入社後も採用担当者が継続的にフォロー
(2)事業部門との綿密な連携体制
- 月1回の定例ミーティングで組織課題を把握
- 採用要件の背景から詳細に議論
- 入社後の状況を事業部門へフィードバック
(3)カジュアル面談を起点とした丁寧な採用設計
- 書類応募前からのカジュアル面談実施
- 事業の現状や課題を具体的に共有
- 候補者のスキル・経験と事業ニーズのマッチングを説明
「人生に向き合う面接」で候補者のエンゲージメントを高めるスパイダープラス株式会社
同社のアトラクトの特徴は、候補者一人ひとりのキャリアに真摯に向き合い、ときには現職継続を勧めることもある「誠実な姿勢」にあります。
(1)候補者に寄り添った面接スタイル
- 形式的な質問は避け、キャリアについて深く対話
- オファー面談では候補者のキャリア形成を真剣に考える
- 必要に応じて現職継続のアドバイスも実施
(2)面接官の個性を活かした評価
- 統一的な面接の型は設けず、面接官の個性を重視
- 「不遜なくモノごとに取り組み成長できる」人材を評価
- 多様な視点での評価で組織の多様性を促進
(3)部門人事制度による採用力強化
- 各部門の執行役員が部門人事として採用に参画
- エージェント向け合同説明会など独自の施策を展開
- 現場からの具体的な情報発信で仕事のリアリティを伝達
中小企業ならではの強みを活かし「話題づくり」で採用成功を実現する株式会社タシロ
株式会社タシロのアトラクトの特徴は、従業員が働きやすい制度の整備(土台づくり)と、継続的な情報発信による話題性の創出を両輪とした、中小企業ならではの採用戦略にあります。
(1)現場の声を活かした採用戦略の策定
- 従業員との対話から求める人材像を明確化
- 「ものづくりに興味がある若手人材」にターゲットを絞る
- 風通しの良い社風と高い技術力を重点的にアピール
(2)制度整備による働きやすい環境づくり
- 残業ゼロ、年間休日120日以上など魅力的な労働条件を整備
- 4段階の評価基準で成長過程を可視化
- 資格取得支援や手当など、スキルアップを後押しする制度を充実
(3)継続的な「話題づくり」による採用力強化
- 商品開発やコンテストへの参加で話題を創出
- SNSやプレスリリース、noteなど多様なチャネルで情報発信
- 社員全員が採用に関わり、座談会や工場見学を通じて会社の魅力を伝達
SmartHRの採用管理機能で、効率的な入社手続きを
SmartHRの採用管理機能では、候補者の情報や書類、選考結果を一元管理できます。採用が決定した候補者の情報は、そのままSmartHRに従業員として登録できるため、データの再入力の手間がかかりません。採用管理の効率化により、人材の採用活動や採用広報などの業務に時間を充てやすくなります。
SmartHRの採用管理を詳しく知るQ1. アトラクトとは何ですか?
採用候補者に企業の魅力を伝え、「この会社で働きたい」と思ってもらえるように働きかけることです。単なる一方的な情報発信ではなく、候補者との双方向のコミュニケーションを通じて、その人の希望や価値観に沿った情報提供や対話を行う取り組みです。
Q2. アトラクト採用が重要な理由は?
新卒・中途採用ともに人材獲得競争が激化しており、優秀な人材の確保が困難になっているためです。効果的なアトラクトにより、自社に合う人材からの応募増加、内定辞退率の低下、入社後の離職率低下といった効果が期待できます。
Q3. アトラクトを行う際のポイントは?
- 採用候補者のニーズ(給与、やりがい、業務内容など)を丁寧に把握する
- 自社のアピールポイント(ミッション、社会的意義、メンバーの特徴など)を明確にする
- 競合企業との差分を整理し、自社の強みをわかりやすく伝える
これらの3点を意識しながら、候補者との各接点で効果的なコミュニケーションを行うことが重要です。
- 採用候補者のニーズ(給与、やりがい、業務内容など)を丁寧に把握する