全国約600店舗の業務効率化と経営統合を支える総務部の軌跡【SmartHR Agenda#2 レポート】
- 公開日
目次
働き続けたい組織となるために、企業はHRテックをどのように活用しているのか。企業の担当者から直接事例をうかがい、視聴者とともに考えるオンラインイベント「SmartHR Agenda#2 〜HRテック活用事例に学ぶ働き続けたい組織〜」。
SmartHR導入事例講演Ⅱでは、「全国約600店舗の業務効率化と経営統合を支える総務部の軌跡」と題したパネルディスカッションの様子をお届けします。
- パネラー杉野 愼 氏
株式会社TECO Design 代表取締役
医療系IT上場ベンチャー企業にてセールス職に従事、マニュアル化した営業手法を確立しトップセールスに。その後、大手の社会保険労務士事務所に入社。実際に給与計算業務などに従事し、顧問先担当企業のIPO、M&Aも経験。同時にIT推進室室長として、社内のマニュアル整備、IT推進などに注力。また、コンサルティング会社を設立し、顧客データベースの導入・移行作業や、クラウド勤怠、クラウド給与等の導入、また、業務フローの見直しなどを含めたバックオフィスの業務設計を中心に実施。2019年、TECO Design設立。これまでに、400社以上の給与・労務・勤怠サービスの導入支援業務を実現。クラウド導入支援事業に加えて、クラウド体験型ショールーム「CLOUD STATION」を運営。業界のクラウド化推進のため、社労士検索サイト「社労士ステーション」をリリース。
- パネラー岡田 隆則 氏
C-United株式会社管理本部 総務部マネージャー
大手旅行会社で法人営業として社会人生活をスタートしたのち、学生時代に志望していた衣料・小売業界にて総務・人事にキャリアチェンジ。その後、外食事業会社を経て2020年1月にC-Unitedに入社。株式上場会社では株式実務・株主総会などを経験し、株式非上場会社では総務・労務・人事を幅広く従事、上場準備業務にも関わる。現在、働き方改革、健康経営等を推進するほか、ITを用いた人事労務管理業務の改善や人事データの整備等に注力している。
- モデレーター佐々木 昂太
株式会社SmartHR プロダクトマーケティングマネージャー
UCLA 数学科卒業後、コンサルティングファームに入社し、DXを基軸とした事業戦略~組織改革、アナリティクス、業務改革等のプロジェクトに従事。2018年よりSmartHRに経営企画として入社し、新規プロダクトの立ち上げから既存プロダクトのグロース、現在はPMM組織のマネージャーを担う。
業務効率化で乗り越える、異なる企業文化
佐々木
2021年4月に株式会社シャノアールさま、珈琲館株式会社さまの合併により、新たなスタートを切ったC-United株式会社さま。2022年2月にはグループ会社に、株式会社ポッカクリエイトさまが加わりました。
本日のセッションは、従業員数6,000名を超える同社がSmartHRを導入することで、どのように店舗の業務効率化を実現したか。約600店舗からなる各拠点への浸透方法、メリットなどをお伺いします。
岡田さん
まずは、株式会社シャノアールと珈琲館株式会社、それぞれ50年以上の歴史を持つ企業同士の合併による障壁として、さまざまな文化の違いがありました。総務領域では、労務管理を紙ベースもしくはオンラインのどちらで行っているのかといった違いや、業務をアウトソーシングしているかどうかといった違いです。
6,000名以上の従業員数に加え、拠点も日本各地に現在では約600店舗を展開しています。文化の違いをあらためて統合し、各地域で働く社員の事務手続きをより効率化するため、SmartHRの導入へ至りました。
導入後初となる昨年の年末調整では、作業効率化にSmartHRが大きく貢献してくれました。もともとは長い間紙ベースで年末調整をしていた従業員もいるなかで、現在では約95%以上の従業員がオンラインで済ませています。
“店舗目線”で取り組む、新たなワークフロー
佐々木
SmartHRに加えて、人事給与システムや勤怠システムも併せて運用されていますね。ほかクラウドサービスのシステム運用やデータ連携について補足説明をお願いします。
岡田さん
合併にあたって各社の使用システムや運用ルールなど、何から何まで異なっていました。社内での運用体制を整えるに当たり、給与システムはカンパニー、勤怠システムはガルフネットに統一できましたが、システム連携には非常に苦心しました。当時すでに従業員数5,000名を超えていましたので、情報収集にも時間を要しました。
労務領域では入退社手続きや社会保険の手続き、マイナンバー取得方法など、それぞれ仕組みが異なります。紙ベース管理からの抜本的な改正に四苦八苦していた頃にSmartHRに出会いました。SmartHRを情報収集の入り口とし、SmartHRのAPIを活用した各種システムへのデータ連携を外部ベンダーに委託開発して実現したことで、各手続きの情報収集と連携の効率化が一気に図れました。現在はオンライン上で約95%以上の従業員が操作、申請を行っています。
杉野さん
給与・労務・勤怠サービスの導入サポートを行っていると、「今までのやり方を変えたくない」「このフローでやり続けているので変化が怖い」といった声が上がります。今回のケースでは、それぞれの会社のルールや規則をどのように一つに揃えましたか?
岡田さん
合併に当たり経営層から「1+1=3にしよう」というメッセージを受け、「3の実現には何をすべきか」に着目しました。結論からお伝えすると「今までやってきたことをリセットしないとダメ」と気づいたんです。新たな取り組みを採用し、全社的にやり方を統合することで改善が進むのであれば、新たな方法を実践しようと考えました。
佐々木
店長、店舗スタッフの業務効率化について、導入時はどのような目標がありましたか?
岡田さん
総務部は店舗から異動してきた社員が多く、「店舗の視点を忘れない」という思いがあります。店舗勤務時の体験から「店舗から本部へ伝えるべき手続きや内容を効率化したい」と考えていました。言い換えると、「店長や店舗スタッフがお客様との接客時間を増やすために手続きを簡略化しよう」という意識で取り組んでいたと思います。
質問されて当たり前。感謝とともに伝える、導入メリット
佐々木
SmartHR導入における店長を巻き込む初期設計や、浸透に向けたPDCAサイクルについてお伺いできますか。
岡田さん
まずは、マニュアル通りに進めれば、5分もかからずに入社手続きが完了し、店長の負担が軽減されることを伝えるために、詳細に記載された操作マニュアル作成とオンライン説明会を実施しました。それぞれ約300名の店長が参加した説明会を2回実施しましたが、活発に質疑応答や意見交換が行われていました。
佐々木
説明会やマニュアルの改善には、難しさもあったかと思います。工夫されたことはありますか。
岡田さん
私たちが1番SmartHRの仕組みを理解し、必ず質問に答えられる状態でいるようにしています。初導入のシステムですから、疑問・質問が発生して当たり前ですし、店長たちの協力があってのことだと忘れてはいけません。そういった意識で、感謝の気持ちも含めて丁寧に説明した結果、一人ひとりに納得してもらい導入を迎えられました。
杉野さん
現場には慣れたやり方があるため、改善前の状態をシステム化してほしいという要求も耳にします。新しいシステム、フローを浸透させるために取り組まれたことはありますか。
岡田さん
SmartHR導入により、煩雑な書類手続きがなくなり、システム導入のメリットを多くの従業員が実感しました。
しかし、実際に機能を触らないとその利便性は伝わりません。メリットを理解してもらうために、SmartHR導入で何が変わるのか、どのように効率化されるのかに焦点を当てて説明しました。さらには「問い合わせはいつでも受け付けています」「夜に質問いただいてもかまいません」と店長に伝えたうえで、新たな運用フローへの対応をお願いしました。
セキュリティ強化も叶える、安心のペーパーレス化
佐々木
入社手続き以外では、どういったところにSmartHRの利便性を感じていますか。
岡田さん
氏名や住所、通勤経路ならびに口座の変更など、さまざまなニーズがあります。身上変更機能を使って店長から申請者に配信し、申請者が情報を入力して返信することで給与システムと自動連携する。一例ですが、このような場面で活用しています。
佐々木
全体のペーパーレス化では1/10、年末調整では1/3が削減されていますが、現場ではどのような効果を実感されていますか。
岡田さん
毎月200店舗から書類が送られていましたが、今ではゼロになっていますし、紙で送っていた年末調整の案内もSmartHRに内包されるので解消しました。あとは保険料の控除証明書を解消すれば、ペーパーレス化が完了するという段階を迎えています。
佐々木
数字に表れない反応やデータ、個人情報のセキュリティなどでも効果を感じているそうですが、従業員の声やセキュリティについてはいかがですか。
岡田さん
入社前に必要な紙ベースの書類記入がなくなり、従業員の負担は軽減できたと思います。個人情報においても電子化されたことで、セキュリティが強化されました。
業務改善からスタートする、誰もが働きやすい会社づくり
佐々木
総務目線から考える、今後の展望について教えてください。
岡田さん
当社は文化の異なる会社が一つになり、大きく変わろうとしている環境です。これまではあらゆるシステムを継ぎ足して導入していましたが、一つに統一することで総務、店長双方の業務負担を軽減できると思います。
また、経営陣も現場が大好きで、時には現場勤務するなど、アルバイトのみなさんと接する時間を大切にしています。今後もさまざまな意見を聞き入れ、誰もが働きやすい会社を目指します。
佐々木
岡田さんが考える働き続けたい会社とは何でしょう。
岡田さん
経営陣から店舗のアルバイトのみなさんまで風通しのいい会社が作れたらと考えています。やりがいを持てる環境ならば、ハラスメントとなどはなくなるのではないでしょうか。人材教育にも力を注いでいるので、今後もよりよい会社になるために邁進します。
佐々木
企業理念であるコーヒー文化の創造と発展を通じて人を幸せにすることや、総務部のオペレーションが一つひとつとても対応が丁寧ですね。SmartHR導入を検討している企業にとって参考になる取り組みが聞けました。本日はありがとうございました。