人事データベースとは?メリット、項目、設計やシステム選定のポイントを解説
- 公開日
目次
人事データベースとは。人材にまつわるデータをまとめ、可視化したもの
「人事データベース」は、一般的に従業員の職務内容や評価など、人材に関係するあらゆるデータをまとめ、可視化したものを指します。
組織によっては、「人材データベース」「従業員データベース」などと呼ばれます。蓄積するデータは、年齢や学歴といった基本情報から、過去の評価、スキル、異動歴など、多種多様です。
4つの人事データの分類
一般社団法人ピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会 の 『ピープルアナリティクスの教科書』では、人事データを以下4つに分類しています。
(1)オペレーショナルデータ:採用・配置・育成・評価・報酬といったようないわゆる人材マネジメントのオペレーションを実行するために必要となるデータ
(2)センチメントデータ:従業員のモチベーションや組織風土など変化や課題を抽出するために活用されるデータ
(3)パーソナリティデータ:従業員の性格特性や能力特性を指し示すデータ
(4)アクティビティデータ:カレンダーやメール・チャットなどの従業員が日々の業務の中でどのような活動をしているかをログとして残すデータ
人事データベースは、人事情報の保管や閲覧だけではなく、分析・活用を目的として構築されることが多いです。各組織で必要とされる従業員のデータが、活用できるように整理されている状態が、人事データベースの理想的な状態と言えるでしょう。
人事データベースが必要とされる背景
人事データベースが必要とされる背景には、人事領域におけるデータ活用の重要度が増していることが挙げられます。
ビジネス環境の変化の加速
市場環境の変化が加速する昨今。企業が競争力を高め、市場優位性を保つために、経営戦略を実現するための人事戦略や人材マネジメントの重要性が増しています。
そのためには人材や組織に関わるデータを正しくかつ最新のデータを分析し、PDCAを回すことが大切です。その基盤として人事情報をデータベースで一元管理し、活用できる環境を整える必要性が高まっています。
人事情報の管理の煩雑さ
従来の人事データ管理・活用の課題も、人事データベースが必要とされる理由の1つです。
人事データを人事・労務手続きを管轄する部署ごとに管理している、紙書類や表計算ソフトをまたいで管理している企業は少なくありません。
そうした管理体制では、たとえば部署ごとの離職率を分析するにも、複数部署からデータを出してもらったり、異なる書類やシステムのデータを集約したりといった手間がかかります。
データを一元管理し、分析や意思決定に活用しやすくする手段としても、人事データベースの必要性が高まっています。
下記の記事では人事データについて起きがちな「ばらばら病」「ぐちゃぐちゃ病」「まちまち病」の“三大疾病”について紹介しています。人事データの管理に課題を感じられている方はぜひあわせてご覧ください。
人事データベースを構築する目的・メリット
戦略的な人材配置・育成
従業員の経歴や評価、特性、スキルなど、客観的な人事データをもとに人員配置や育成の意思決定が可能になります。次世代リーダー・管理職候補の早期選抜や育成はもちろん、従業員の特性やキャリア希望にあわせた適材適所の配置なども実現。次世代リーダーの育成、配置や異動のミスマッチの削減なども期待できます。
離職者やハイパフォーマーの分析
従業員の経歴や評価などのデータを継続的に蓄積・分析することで、離職の要因やハイパフォーマーの傾向などを分析しやすくなります。得た示唆を活かして離職率低下の施策やハイパフォーマーの採用・育成に活かすことで、従業員のエンゲージメント向上、ひいては業績の向上が期待できます。
「エンゲージメント向上」の効果的な施策や成功事例は、以下の記事で詳しく解説しています。
人事業務の効率化
人事データベースを構築すれば人事情報を1か所に集約・管理できます。紙書類や表計算ソフトでの管理に比べて、データ更新・追加の作業工数を削減できます。更新時の漏れやミスへの対応工数も削減できます。
人事データベースで管理すべき項目
人事データベースで管理すべき項目は企業によって多様です。以下に基本的な項目を紹介します。
基本情報
必須となるのが従業員の基本情報です。正確な情報の把握と管理が必要で、従業員が他者に知られたくない内容については共有しないよう配慮が必要です。以下、基本情報の項目例です。
項目例
- 氏名
- 生年月日
- 年齢
- 入社年月日
- 雇用形態
- 部署
- 役割
- 勤続年数
勤怠・給与の情報
従業員の勤怠や給与に関する情報です。日頃の働き方を数値で把握することは、従業員のパフォーマンスの向上や組織の生産性向上に役立ちます。残業時間などを分析し、休職者や離職者を低減する施策の立案にも活用できます。以下、勤怠データの項目例です。
項目例
- 給与・昇給履歴
- 残業時間推移
- 有給休暇
採用についての情報
従業員の採用時の情報です。優秀人材の傾向をみるために、現場で活躍している従業員の採用時の評価や経歴などのデータを参照し、採用に活かせます。
項目例
- 採用区分、入社経路
- 面接時の評価
- 業務の経験(経歴)
キャリア希望やエンゲージメントについての情報
キャリア希望は次世代リーダーや管理職候補の選抜において従業員の意向を把握、意思決定に活かせます。エンゲージメントスコアは次世代リーダーや管理職の選抜、離職傾向の分析などに役立ちます。
項目例
- キャリア希望
- エンゲージメントスコア
人事評価についての情報
評価内容や点数など、従業員の人事評価に関する情報です。過去の人事評価や面談の情報は、次世代リーダーや管理職の選抜・育成、人材の育成に活用できます。
項目例
- 評価履歴
- 受賞・表彰履歴
- 評価面談などでのメモ
資格・スキルについての情報
従業員の能力やスキルにまつわる情報です。配属先の部署のもつスキルや資格をもとに、合致する人材をアサインするなど、適材適所の人材配置に活かせます。
項目例
- 専門スキル、語学能力、ITスキルなど
- 保有資格
- 免許情報
- 研修の受講歴
人事データベースの構築方法
自社で構築(表計算ソフトの利用)
人事データベースを自社で構築する場合、表計算ソフトの使用が一般的です。手軽で取り組みやすい反面、手動で入力や更新を行う必要があり、セキュリティ対策が難しいなど、デメリットも挙げられます。さまざまな人事情報を一元管理するには不向きで、従業員数の少ない企業向けの方法です。
システムを導入する
人事データベースの構築にはシステムを導入する方法もあります。人事情報の管理に対応したシステムは、人事管理システム、タレントマネジメントシステムなどです。
近年注目を集めているのはタレントマネジメントシステムで、従業員それぞれの能力に注目し、最適な配置や育成が可能なことから、パフォーマンスの向上も期待できます。
人事データベースの構築ステップ
前提として活用できる人事データベースを構築するには、導入前に自社に必要なデータベースを明確にしておくことが重要です。以下に人事データベース構築のステップを紹介します。
ステップ(1):導入目的・要件の整理
まずは導入目的と要件を整理します。従業員のスキルや特性を把握し、人材育成や配置の検討に役立てるなど、誰がどのように人事データベースを活用するのか明確にしましょう。
また、データの閲覧・更新のほか、検索機能など、目的に沿った要件がなにかを整理しておくことも必要です。
ステップ(2):必要なデータベース項目の検討
ステップ1を踏まえ、導入目的を達成するために必要なデータベース項目を洗い出し、検討します。項目数が増えすぎないように注意が必要です。
ステップ(3):ツールの選定
自社で必要とする項目や機能を明確にした後、具体的に利用するツールを選定します。システムには多種多様な種類があり、機能や目的も異なります。目的を実現するためにも、自社に合った人事データベースシステムの選定が重要です。
ステップ(4):データの収集・更新方法の検討
自社が必要とする人事データベースの項目に沿ってデータを収集します。最新のデータを利用できるよう更新方法や頻度を検討しましょう。システムによっては従業員の入退社・異動にあわせて名簿などの自動更新が可能なものもあります。
人事データベースシステム選定の8つのポイント
(1)導入目的に合っているか
人事データベースに利用できるシステムには、タレントマネジメントのほか、労務管理や給与計算が主体のものなど、システムによって得意領域や対応範囲が異なります。人事データベースを導入する目的や課題、優先度を整理したうえで、自社に合ったシステムを選択しましょう。
(2)必要な機能が揃っているか
項目のカスタマイズや分析機能の有無など、自社に必要な機能が揃っているシステムを選択しましょう。多機能なシステムほど高額になる可能性があるため、必要な機能を洗い出し、優先度を考慮した判断が必要です。
(3)コストが予算に合うか
人事データベースの運用コストは大きく分けて、システム導入時の初期費用と、毎月支払う利用料の2種類です。毎月の利用料は契約する機能やユーザー数によって金額が大きく変わります。人事データベース運用に関わる従業員の人件費も試算し、予算に合ったシステムを選択しましょう。
(4)利用形態が合っているか(クラウド型・オンプレミス型)
システムの導入形態は、「クラウド型」と「オンプレミス型」の2種類で、自社の利用方法に応じて選択しましょう。
クラウド型は、インターネットを介して利用する方法で、自社でサーバーを用意する必要がありません。オンプレミス型は、自社でサーバーを用意し、システムをインストールして運用します。それぞれのメリット・デメリットは以下のとおりです。
クラウド型 | オンプレミス型 | |
---|---|---|
メリット |
|
|
デメリット |
|
|
(5)操作性がよいか
操作しづらいシステムは活用されにくいため、簡単に使いこなせることもポイントです。製品デモやトライアルを通して、操作性を確認しましょう。
(6)柔軟性・拡張性があるか
将来的に活用範囲を広げていきたい場合や、活用用途が変わり得る場合に備えて、システムには一定の拡張性が求められます。システムの柔軟性や拡張性も確認しましょう。
(7)セキュリティに問題がないか
人事データベースでは従業員の大切な個人情報を扱います。外部への流出防止はもちろん、情報の漏洩や悪用を防ぐための高いセキュリティ対策が必要です。
「入力情報の重要度を設定できる」「重要度に応じたアクセス権限や閲覧制限を行える」「アクセスログが残る」など、自社が求めるセキュリティを担保できるシステムかを確認しましょう。
(8)サポート体制が十分か
人事データは、雇用形態や賞与体系など企業独自の事情も多く、導入時の設定が複雑になりやすいです。また、給与に関わる業務は年末調整や法改正などによる負担も大きくなります。
人事データベースを扱うメンバーの知見やスキルを踏まえ、十分なサポート体制が用意されているかを確認しましょう。またトラブルの発生時などに、迅速かつ柔軟にサポートしてもらえるのかも確認しておきましょう。
人事データベースの活用事例
つづいてSmartHRを活用して人事データを活用できる基盤を整え、人事施策を推進している事例を紹介します。
【事例1:株式会社Flatt Security】採用力強化のためのデータ活用基盤を構築
株式会社Flatt Securityでは、従業員情報を表計算ソフトと人事・労務システムで二重管理していたため、人事・労務担当者の管理・更新の負担が大きくなっていました。
今後の企業の成長と従業員の増加を見据え、採用や配置検討に向けたデータ活用の基盤をつくるためにSmartHRを導入。二重管理していた情報をSmartHRに集約し、活用できる基盤を構築しました。
導入によって従業員情報の管理工数が削減。さらに採用サイトでは、SmartHRで集計・可視化した従業員構成を掲載するなど、採用領域でのデータ活用も進んでいます。人事・労務業務の効率化で創出した時間で、新入社員のオリエンテーション体験向上にも注力しています。
【事例2:株式会社ヤマダヤ】情報の一元化で属人的な評価・配置検討から脱却
株式会社ヤマダヤでは、少人数の人事担当者に評価や人員配置に必要な情報が集約しており、属人化しているのが課題でした。定期的あるいは突発的な配置検討時において、対象者にまつわる情報収集に時間と手間がかかっていました。
そこでSmartHRを導入、評価に関わる情報や店舗からCSVで回収した個人売上や客単価などの情報をSmartHRに集約しました。今までの表計算ソフトでは閲覧不可だった定性情報も付加できるため、販売数値のデータだけでは読み取れない、店舗運営の貢献度も評価に組み込めるように。
人員の配置検討では、SmartHR上で各位の実績と過程を見ながら、エリア別・店舗別などの数値を俯瞰して見ながら検討できるようになりました。
さらに情報が一元化されたことで、エリアリーダーや店舗責任者、各部署の部長、各担当の本社サイドの部長など、マネジメント職の社員とのコミュニケーションが増加。多角的な意見を取り入れ、公平な評価と配置検討ができているそうです。
株式会社ヤマダヤの事例の詳細は以下の記事をご覧ください。
【事例3:株式会社プレイド】人材領域における意思決定の質が向上
株式会社プレイドでは、元々労務領域でSmartHRを活用していましたが、人事評価制度構築を機に「HRストラテジープラン」へ変更。人事データの分析や配置シミュレーションへの活用を進めています。
活用以前は、データがすぐに引き出せなかったため、ファクトで人の情報を語ることが簡単ではありませんでした。一度集計しても、数か月後にまた同じ情報を見たいとなれば、またデータを集め直さねばならないことも。単発でクオリティの高い情報を届けることはできても、それを維持し続けることは難しかったそうです。
ですが、一元化された人事データベースによって、日々の人事労務の業務を通じ最新の正確な情報を蓄積。それをもとに常にクオリティの高い情報を経営に届けられるようになりました。
取締役の髙栁氏も「データを見る角度を柔軟に調整しながら、スピーディにPDCAを回せるようになったことは、本当に大きな変化」「SmartHRは、人材領域における意思決定の質を上げていくための『OS』のような存在」と述べています。
株式会社プレイドの事例の詳細は以下の記事をご覧ください。
人事データベースを構築し、データを活かした人事戦略を推進
人事データベースは、データを活かした人事戦略の推進、そして業務効率化にも寄与します。
SmartHRでは、人事・労務業務を通して人事データを自然と収集・蓄積できます。蓄積した最新かつ正しい人事データを、人材育成や人員配置など多様な場面で活用できます。
たとえばHRアナリティクス機能では部署・役職・雇用形態などのデータだけでなく、人事評価やスキル管理機能など幅広いデータを横断して分析可能。ハイパフォーマーの特定や離職分析など、組織力強化に向けた示唆を得られます。
HRアナリティクス機能について詳しく知りたい方は、以下の資料をご覧ください。
お役立ち資料
3分でわかる!SmartHRのHRアナリティクス
SmartHRの「HRアナリティクス」は、人事データをさまざまな掛け合わせで分析し、組織づくりの示唆が得られる機能です。SmartHRなら、業務を通じて自然と正確な人事データが蓄積されるため、活用したいときにすぐ人事データの分析ができます。