100年企業を目指して。日東ベストの人的資本経営とデータ活用の未来
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日東ベスト株式会社は、「食品産業の分野において広く社会に貢献し、永続と繁栄のもとに企業を構成する人々の理想を実現する」という社是のもと、日配食品、チルド、常温食品の製造・販売を展開。企業行動規範にもとづく事業活動を通じて、持続可能な社会の発展と地球環境の保全に貢献し、すべてのステークホルダーと存在意義を共有する企業を目指しています。
2024年7月に設立76年を迎える同社は積み重ねてきた開発力、製造技術、販売力を受け継ぎながら、時代の変化にも柔軟に対応し、1993年から65歳定年制度を導入するなど、男女ともに働きやすい職場づくりの実践など、先進施策を実施してきました。
100年企業に向けてさらなる飛躍を見据え、2024年6月よりSmartHRを導入し、労務業務の効率化、人事データの集約化、集約したデータを活用したタレントマネジメントを推進するための準備・施策が進行中。
総務人事部が果たそうとする役割とSmartHR活用ビジョンを、同社取締役 常務執行役員の遠藤雅明さんに伺いました。
日東ベスト株式会社 取締役 常務執行役員
100年企業に向けて。見えてきた制度見直しと、組織データ管理の課題
御社の総務人事部が掲げているミッションを教えてください。
遠藤さん
総務人事部では当社における「ヒト」に関わる、人事・労務領域全般を担っています。ミッションは、「百年企業に向けて、人と事業をつなぐ血管、血液となり、日東ベストで働くすべての 従業員を支援していく」こと。重要なのは、現在働いてる従業員に「日東ベストはいい会社だ」と感じてもらうために、エンゲージメントを高めて、人が辞めない会社、人から選ばれる会社にすること。そして、100年企業に向けて組織・従業員を支えることが人事としてのミッションです。
とくに人的資本経営が注目を集める昨今、人事施策は経営戦略のなかでも重要な位置にあります。当社では、既存の規則や制度の棚卸し施策のなかで、改善すべき課題が浮き彫りになりました。
具体的にどのような課題が見えてきたのでしょうか?
遠藤さん
人的資本経営ではこれまでの勘所や経験に頼るのではなく、データを効率的に活用し、客観的な指標にもとづく意思決定が求められています。しかし、当社は組織・従業員のデータを集める仕組みづくりが十分ではありませんでした。さらにこれまでの規則・制度が複雑に積み上がり、一部形骸化しているものもあり、制度周りの見直しも必要でした。
そこで、優先課題として(1)既存制度の見直し、(2)組織・従業員のデータを集約する仕組みづくりを定め、具体的な改善を進めてきました。
(1)既存の人事制度の見直し
ジョブ型の役割給を組み込んだ新・人事制度を導入
遠藤さん
繰り返しになりますが、当社はこれまでも働き方に関する制度には積極的に取り組んできました。75年の歴史のなかで制度の運用が複雑化が進んでいて、形骸化しているものも少なくありません。経営層のなかでも「もっとシンプルにすべきでは」と考えるようになりました。
とくに人事制度は、約20年ほど抜本的な見直しができていませんでした。これまでは、コース別資格制度を基本として運用してきましたが、正しく従業員の働きが反映しきれていない側面が増えていました。
新しい人事制度ではどのような見直しをされたのでしょうか?
遠藤さん
既存のヒトを基軸にした資格制度を残しつつも、ジョブ型給与(役割給)を組み込んだハイブリット型に新生しました。ハイブリッド化により、資格で評価される軸とジョブ型で期待される業務に対しての成果で評価される軸が生まれました。
たとえ若くても、ジョブ型の業務領域で期待される貢献度が高ければ、相応の評価が得られる形になります。この人事制度の刷新によって、旧体制で発生しがちだった給与の不公平感を解消したことはインパクトが大きかったと思います。
(2)組織・従業員のデータ集約の仕組みづくり
SmartHRを導入し、労務業務の効率化と組織・従業員データの集約を目指す
SmartHR導入以前はどのように組織・従業員データを管理にどのような課題がありましたか?
遠藤さん
そもそも、人的資本経営にもとづく組織・従業員データを管理をする余裕が総務人事部にありませんでした。労務に関わるワークフローや手続きが体系化されておらず、紙を中心とした業務体制で、オペレーション業務に大半の時間を取られていました。
したがって、総務人事部内の生産性向上によって、企画や戦略などの将来型の業務に携わる時間の創出をするべきだと考えました。
そこでまず、SmartHRによる総務人事部内業務の標準化、効率化、ペーパーレス化を目指すことにしました。
SmartHRの導入の決め手は何でしたか?
遠藤さん
喫緊の課題だった「労務業務の生産性向上」だけでなく、組織・従業員データを管理が実現できるのが大きな決め手です。さらに、従業員情報を集約化できるキャリア台帳やスキル管理、従業員エンゲージメントの指標づくりに役立つ従業員サーベイをはじめ、組織・従業員データ「管理」だけでなく、「活用」を見据えたプロダクトラインナップは魅力的でした。
現在は、皆さんのデータの移行が整備され、ようやく機能を活用していくフェーズまできています。
組織・従業員データの集約によってどのような効果を期待されていますか?
遠藤さん
人的資本経営では人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことが重要です。そのほかにも「資本となる従業員情報の可視化」には多くのメリットがあると考えています。
これから当社では従業員の基本情報だけではなく、保有資格・経験、評価データ、サーベイの回答をSmartHRに集約し、可視化を進めます。これを推進する理由は、「企業価値向上」はもちろんですが、従業員が働きやすい環境づくりに直結するからです。
たとえば、配置検討をする際、該当の従業員の情報が充実していれば、本人の経験、評価データ、キャリア意向を参照して、その従業員の実力が発揮できる配属先を決められるでしょう。また、定期的なサーベイの実施によって組織・従業員個人に抱える課題を抽出し、具体的な改善施策を実行するなど、やれることは非常に多いでしょうね。
優先すべき機能の見極めが肝。段階的な社内浸透を図る
現在はどのようにSmartHRの利用をはじめていますか?
遠藤さん
導入から各種機能の活用までのスケジュールを「フェーズ1」と「フェーズ2」に分け、段階的に利用する機能を拡張していく予定です。SmartHRは非常に多くの機能が備わっていますが、自社の抱える課題に沿って利用開始する機能の優先順位をつけることが肝だと考えています。
「フェーズ1」では、「現場の声を収集し、分析・活用に向けた現状把握ができる状態」を目指し、従業員にSmartHRのログインを促していきます。とくに「フェーズ1」では、従業員にSmartHRの利用をポジティブに受け取られることが重要で、それが今後の活用機能拡大のカギになると考えています。
これまでの紙ベースでの各種申請や、煩雑な書類管理がなくなっていくことが期待できます。
ほかの従業員に先立ち、2024年4月入社の新卒社員向けに従業員サーベイを実施されたそうですが、どのようなサーベイを実施したのですか。
遠藤さん
トライアルの目的で、新卒社員が研修を受けたあとに「研修後サーベイ」を展開しました。先ほど述べたとおり、今回は設問の工夫などには注力せず、「サーベイ展開→従業員回答→総務人事部で結果参照」の大きな流れを体験することが重要でした。
結果としてサーベイの回答や操作に迷った新卒社員もなく、総務人事部としても回答結果が簡単に表やグラフにできるとわかり、活用に向けた手応えを感じています。
これまでの取り組みをふまえて、今後はどのような取り組みを考えていらっしゃいますか?
遠藤さん
人的資本経営に向けた施策に奮闘している企業は数多くいらっしゃると思います。当社もそのひとつですが、「何のために動くのか」「そのために何をするべきなのか」を明確にして、自社にあった進め方を見つけることが重要だと実感しています。
当社では、「新人事制度の導入と運用の定着」と「組織・従業員のデータ集約の仕組みづくり」が人的資本経営に向けた緊急かつ最大のフォーカスポイントでした。後者はSmartHRを利用したその先の動きを見据えて導入し、総務人事部の業務効率化、従業員の負担軽減によって効率的な組織・従業員のデータ集約の体制を構築中です。
従業員目線では、新しい制度やシステム操作を厄介に思うケースもあるかもしれません。しかし、進行中の改善アクションは従業員一人ひとりの生産性を向上し、それぞれが意欲的に働ける環境づくりにつながり、最終的に日東ベストとしての新しい価値の創出につながると信じています。
「フェーズ1」の準備期間で総務人事部としてもSmartHR導入による組織改善のビジョンを見せながら、利用浸透に向け邁進していきます。