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「自ら成長し変化する組織」がこれからの経営を支える【SmartHR Agenda #3】

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目次

“企業の「リアル」から紐解く、経営を支える人材マネジメント”をテーマに3月7日(火)に実施されたオンラインイベント「SmartHR Agenda #3」。

クロージングセッションでは、Almoha LLCの唐澤俊輔さんとWake Consultingの南和気さんを迎え、「『自ら成長し変化する組織』がこれからの経営を支える」と題してパネルディスカッションを行っていただきました。

  • パネラー唐澤 俊輔 氏

    Almoha LLC 共同創業者COO(デジタル庁 Chief Corporate Officer)

    大学卒業後、2005年に日本マクドナルドに入社し、28歳にして史上最年少で部長に抜擢。経営再建中には社長室長やマーケティング部長として、全社のV字回復を果たす。2017年よりメルカリに身を移し、執行役員 VP of People&Culture 兼 社長室長として、人事・組織の責任者を務める。2019年からは、SHOWROOMにて最高執行責任者(COO)として、事業と組織の成長を牽引。2020年にAlmoha LLCを共同創業し現職。COOとして組織開発やカルチャー醸成のコンサルティングおよび、組織開発のためのサービスやシステムの開発に取り組む。併せて、デジタル庁にて人事・組織開発を担当。グロービス経営大学院 客員准教授。スタートアップエコシステム協会 理事。『カルチャーモデル 最高の組織文化のつくり方』著者。

  • パネラー南 和気 氏

    Wake Consulting 代表(元 江崎グリコ株式会社 執行役員 グループ人事部長)

    人事戦略アドバイザー/エグゼクティブ・コーチ

    江崎グリコ株式会社 執行役員 / グループ人事部長

    SAPジャパン株式会社 人事・人財アドバイザリー本部 北アジア統括本部長 / 人事本部 ディレクター ・日本オラクル株式会社 マーケティングマネージャ / Webエンジニア

    【書籍】「人事こそ最強の経営戦略」、「世界最強人事」、「Engaged Organization」【寄稿】NewsPicksトピックス 「南 和気のキャリア・人事のホンネ」【講義】グロービス・マネジメント・スクール 客員講師、日本能率協会講師。

  • モデレーター瀧口 友里奈 氏

    経済キャスター

    東京大学工学部アドバイザリーボード/東京大学出身。幼少期に米国に滞在。大学在学中にセント・フォースに所属して以来、アナウンサーとして活動。「100分de名著」(NHK)「モーニングサテライト」(テレビ東京)、「CNNサタデーナイト」(BS朝日) 、日経CNBCの番組メインキャスターを複数担当するなど、多数の番組でMC・キャスターを務め、ForbesJAPANエディターとして取材・記事執筆も行う。イノベーション・スタートアップ・テクノロジー領域を中心に、多くの経営者を取材。2022年、新生銀行社外取締役に就任。現在、東京大学大学院で研究も行う。

「価値」が激動する時代。変化に対応できる人材が必要に

瀧口さん

まず最初のテーマは「現代の日本企業における人材育成の課題」についてです。先に南さんから、お話しいただけますでしょうか。

南さん

現代では、人材育成の目的や中身が徐々に変わってきていると感じています。その背景を、スマートフォン市場を例に考えてみましょう。ノキアという会社をご存じでしょうか。同社が販売したスマホは、2007年における世界シェアの半分を獲得しています。次に市場を席巻したのがBlackBerryで、こちらは2009年に20%のシェアを有していました。

唐澤さん

BlackBerryは私もユーザーでした。

南さん

素晴らしいスマホでしたよね。しかしノキアを含め、いずれも数年のうちにシェアが急減したのです。そして2010年代後半からは、AppleやGoogleのOSのスマホがシェアの多くを占めています。このような流れを考えれば、スマホ市場の今後は、どのようになるのかわかりません。現在、新しいAI(人工知能)のサービスもリリースされ、「スマホの操作性が大きく変わってしまうのではないか」との予測もあります。

瀧口さん

生成型AIは2022年の暮れごろから、とくに話題となっていますよね。

南さん

おっしゃるとおり、スマホで検索するという当たり前の行為が、今後どうなるかわからない。このように新しい価値は次々に生まれていますが、その価値はすぐに変化してしまうのです。会社が変化のスピードに対応していくためには、未来を考え、新しい能力や手法をもつ人材を早く育てなければならない。その遅れが、今の日本企業における大きな課題だと思います。

南さん

日本では雇用の安定や長く働く仕組みが優先され、会社としての新しい取り組みや変化が難しい環境といえるでしょう。すると新しい価値を生み出せずに売り上げは伸び悩む一方で、原材料価格などは上がっていくため、人件費は上げられない。結果的に、ここ20年で世界各国の人件費が上がっているなか、日本だけ下がっているわけです。

経営スタンスの明確化が人材育成のカギとなる

瀧口さん

続いて、唐澤さんに人材育成に対する問題意識をうかがっていきましょう。

唐澤さん

最近は「リスキリング」や「ジョブ型雇用」をはじめ、さまざまな言葉が人事部門のなかで使われ始めています。このようなワードが断片的に出てくるので、人事としては「何かジョブ型雇用なるものがあるから、制度を考えてみよう」など、多様な論点に取り組まれている方も多いでしょう。ここでの課題は、全体としてどのような組織にしたいのかという像がないまま、個別の案件に動いていることです。

唐澤さん

人材育成をやりたいのに、何から着手したらよいのか迷う問題に突きあたってしまう。そこで重要となってくるのが、私の著書でも触れている「カルチャーモデル」です。この言葉でお伝えしたいのは、会社のミッション・ビジョンという大きな目標のもと、事業のビジネスモデルに合わせて組織のカルチャーモデルを意図的に決めていく重要性です。具体的には、次に示す「7S」と呼ばれる要素を設計していく必要があると考えています。

唐澤さん

7Sは人材育成においても大いに関係があります。一番上に位置づけているのが「選択する経営スタンス」。「どのような組織でありたいのか」というスタンスを決めなければ、人材の育成方針もなかなか定められません。では、具体的にどのようなスタンスをとり得るかというと、次のようにわけられると考えています。

唐澤さん

これらのスタンスに正解・不正解はなく、これと決めたらその方向にしっかり振り切ろうという姿勢が大事だと思っています。

瀧口さん

バラバラとした課題を1つずつ潰していく考え方ではなく、まずはどんなカルチャーとするのかを、腹をくくって決めるのですね。

唐澤さん

そのとおりです。たとえば「全員リーダー経営」のGoogle社は社内に食堂を整備しており、従業員は食事をするなかで新しい人と知り合います。結果的に違う部門の人とのネットワークができて、仕事にもよい影響を与え、人材として成長していく場合もあるでしょう。「20%ルール」に代表されるような、創発的かつフラットな組織だからこそ、効果が見込めるのです。

一方で、「チームリーダー経営」の日本企業に食堂を入れたとしても、同じ課の同じメンバーで、同じ食堂で食べて帰ってくるだけの場合が多くなるかもしれません。このように、「どのような組織にしたいか」と「だからこそ、この育成環境を整備しよう」とする取り組みは常にセットなのが、大きなポイントです。

従業員が「成功体験」を積みやすい組織づくりへ

瀧口さん

次に、「現代において成長する組織とはどのような組織なのか」そして「成長に人材育成がもたらす影響」についてお伺いしていきたいと思います。では、南さんからお願いします。

南さん

まず注目したいのが管理職の年齢層です。日本において課長に登用される平均年齢は47歳、部長はだいたい50歳前後。社長に至ってはさらに高齢となっています。これからも従業員の高齢化は進み、かつ長く働くようになる。そのため管理職のポストが空かないのが現状です。一方で世界がどうなっているかというと、Microsoft社やGoogle社、アジアではAlibaba社などのCEOは、40代でポストを後継者に譲っています。

南さん

それができるのは、後継者となる人材を早い段階から育てているからです。海外では新入従業員に対して、早期に人材育成のコストをかけ、30歳ぐらいでマネジメントのポストに就かせるケースも珍しくありません。その結果、後々に長期間にわたって人材育成の投資成果が得られるのです。

一方で日本は、人材育成に時間がかかりすぎている。リーダーとなり得る従業員を育成しても、管理職になったときには決して若くない年齢になっています。残り10年から15年程度の期間しか、人材育成に投資した分を回収できないわけですね。早く人材を育てて、責任があるレベルの高い仕事をしてもらい、長く活躍してもらう。このような取り組みを実践する組織が、成長していくのではないでしょうか。

瀧口さん

責任ある仕事は、そのポジションを経験してみないとわからないケースもありますね。

南さん

そのとおりですね。さらに、成長を早めるとなると成功体験をさせなければいけません。みなさんも、今まで成長したタイミングを思い返すと、苦労して何かを達成したときが多いのではないでしょうか。そのための環境づくりを組織が意図的に実施するべきなのです。

南さん

成功体験を通じてモチベーションが高まる。さらなる成長を望んでスキルを高めるスピードも上がる。そして次の成功体験を早く迎える。このようなサイクルの人材育成が、組織の成長をさらに後押ししていくでしょう。

従業員の「多様性」が成長の原動力に

瀧口さん

唐澤さんから見た人材育成の意義、組織にもたらす影響についてもお伺いできればと思います。

唐澤さん

先ほど4つの経営スタイルをお話ししましたが、今後は多くの会社が、変化を志向するスタイルになっていくと思います。少子高齢化で日本市場が縮小していくなかで、変化を続けなければ組織として成長できなくなるためです。そのためには、次に示す「スタートアップカルチャー」をつくっていく必要があると思います。

唐澤さん

スタートアップカルチャーにおいては、従業員の多様性がより重要となります。まったく違う考え方や背景、経験をもつ人が自分たちの組織の外から入ることで化学反応が起こります。これにより変化が生まれ、そしてその変化の差分として成長が果たせるのではないでしょうか。

マネージャーの立場からすると、自分にないスキルをもつ従業員が入社してくる状態になります。結果的に自身の背中を見せて、従業員を育成していく方法は困難になっていきます。つまり今後は、自分がもたないスキルを持つ人材に対して、マネジメントしていく世の中になると考えています。

唐澤さん

また、従業員の多様性、そして専門的な資質を活用するためには、権限をある程度委譲して、現場に任せる自律分散型の組織にしていく必要も生じます。必然的に、成長と自律分散を志向する「全員リーダー経営」が増えてくるのではないでしょうか。

専門性のある人材により、組織の仕組みが変わる

瀧口さん

それでは最後に、「人材育成にどう取り組むべきか」について、お二人の視点をお伺いしたいと思います。南さんのお考えはいかがですか?

南さん

「変化に対応するための人材育成が必要」とお話ししましたが、そのためには、従業員がどれだけ専門性をもっているかが重要です。顧客、ニーズ、課題を理解し、それに合わせたマーケティング、営業、サプライチェーン、経理、人事などを構築することが求められます。

南さん

高い専門性をもつ人材を外部から採用するだけではなく、在籍している従業員の多様性にしっかりと光を当てる。それぞれの従業員の強みや経験、やりたいことをデータとして会社がもっているのかが、大きなポイントとなるでしょう。

瀧口さん

そうした取り組みは、従業員のモチベーションにも大いに関わりますね。今後、働き手にとっても大切な要素だと思います。続いて、唐澤さんはいかがでしょうか。

唐澤さん

「スタートアップカルチャーが必要」というお話をしましたが、「これをやれば実現できる」というモデルをご紹介します。スタートアップカルチャーを構築する「4E」を、それぞれ3つずつ全12項目で整理します。項目には人材の専門性や多様性の視点も含まれています。組織を変革するうえでのポイントは、従来と異なるタイプの人材の「量」も重要であることです。一人だけ異質な人材が入ってきても、「あの人は変わっているね」で終わってしまうのですが、それなりの人数規模で加わってくると、彼らをどのようにパフォーマンスを発揮させるかが課題となります。

唐澤さん

結果的に「オンボーディングやアサインをどのように進めるか」や「評価制度を変えていかなければ」といった取り組みも加速するでしょう。そのための環境をつくるために、私もジョブ型雇用を交えた採用を検討していくべきだと思います。

質疑応答

ミドルマネジメントにおける、モチベーション維持のコツは何でしょうか?

南さん

私も経験がありますが、上司からは無理難題をもちかけられ、部下は話を聞いてくれない場合もあり、大変ですよね。ミドルマネジメントだけの問題ではないことも多いので、トップマネジメントから考え方やカルチャーを変えていく努力も検討していくべきだと思います。

早期育成のため、体系的な育成プログラムを数年単位で考えたいと思いつつ、その過程で転職されてしまうのではとの葛藤があります。

唐澤さん

キャリアプランの提示と、セットで取り組むべきだと思います。「あなたをこのような育成プログラムに、選抜しようと思います。それは5年後に、このようなプロジェクトに携わってもらうためです」と長期目線での期待をしっかりと伝えましょう。

瀧口さん

ありがとうございます。まだまだお話を伺いたかったのですが、お時間となってしまいました。クロージングセッションをこれにて終了とさせていただきたいと思います。唐澤様、南様、どうもありがとうございました。

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