読む、 #ウェンホリ No.27「仕事に対する“愛せる”気持ち」
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ラジオ書き起こし職人・みやーんZZさんによるPodcast「WEDNESDAY HOLIDAY(ウェンズデイ・ホリデイ)」書き起こしシリーズ。通称「読む、#ウェンホリ」。
前回に引き続きゲストは、看護師で文筆家としても活動している木村映里さん。現役の看護師として働きながら、その視点から見えるものを丁寧に綴った著書『医療の外れで』『看護師に「生活」は許されますか』はいずれも好評を博しています。そんな木村さんと「私が大切にしている小さなこだわり。 仕事に対する“愛せる”気持ち」をテーマに対話します。
1992年生まれ。日本赤十字看護大学卒。2015年より看護師として急性期病棟に勤務。手術や抗癌剤治療など、病気や怪我の集中的な治療を必要とする患者のケアに携わる。2018年に医学書院「看護教育」にて、「学生なら誰でも知っている看護コトバのダイバーシティ」というタイトルで1年間連載を行う。2020年に晶文社より『医療の外れで──看護師のわたしが考えたマイノリティと差別のこと』を刊行。『看護師に「生活」は許されますか』は2冊目の著書となる。
仕事で大切にしている小さなこだわり
堀井
さて、今回はですね、木村映里さんにこちらのテーマで伺ってまいります。「私が大切にしている小さなこだわり。仕事に対する愛せる気持ち」です。どんなに好きな仕事でも「辞めてしまいたい」と思う瞬間が少なからずあるはずです。そんなときに、気持ちを奮い立たせてくれるのは他人からしたら何でもない、自分だけが大切にしている小さなこだわりであるかもしれません。
自分にとって何が大切かを考えることで、仕事において必要不可欠なものが見えてくるかもしれないということで、木村さんと私が大切にしているものについて今日は話していきたいなと思っているんですけれども。
本当に日々、お忙しい木村さんなんですが。大切にしているもの。まずはプライベートを聞く前に、お仕事ではどんなことを大切にしていますか?
患者さんに嘘をつかない、汚い言葉を使わない
木村
仕事で大切にしていることは、何より患者さんに嘘をつかないことですね。たとえば患者さんによっては病気のご理解が難しかったり、コミュニケーションがちょっと難しかったりする方もたくさんおられるんですけれども。
そこで適当にごまかさず。「わかんないかもしれないけど一旦、聞いて」って言ってみたりして。その納得の上で……納得しきれないことももちろんあるとは思うんですけれども。できるだけ誠実に向き合うのが一番大切にしていることかなと思います。
あとは、仕事中に患者さんに汚い言葉を使わないこと。患者さんの前で、たとえば同僚と話してるときに「患者」って言わないとか。「○○さん、部屋にいてください」じゃなくて「部屋にお戻りください」と言うとか。
些細な言葉の違いではあるんですけれども。なんとなく、それの積み重ねで……自分が綺麗な言葉を使うと、割と周りも引っ張られてちょっと言葉遣いが丸くなったりとか。イライラしてるときでも、ちょっと丸くなったりとかもするものだなと思うので。そこを気をつけるようには……大切にしています。
堀井
患者さんにも効果はありますか?
木村
患者さんには効果あると……「あるといいな」っていう。願いみたいなところかもしれないんですけれども。どうなんですかね?(笑)。
堀井
でも、こんな上品な木村さんが「○○ですよね。お戻りください」って言ってると、ちょっと病気でストレスがあったり、トゲトゲしてる気持ちが一瞬、なんか癒されるので。
木村
そうだといいなと(笑)。それでも、急いでるときなんかだと「ちょっと待って」とか……ナースコールが鳴っているところに、本当はカーテンを開けて「1分だけお待ちください」とか言えればいいのが、もう全然そういう時間がないときに部屋の前を通り過ぎながら「○○さん、ちょっと待って!」とか言っちゃうことも多いんですけれど。うん。できるだけっていう感じですね。
看護師の自分から、素の自分に戻れる場所
堀井
そうですか。そしてですね、文筆家でもあり、本当にお忙しいんですけれども。プライベートも大切なものがあるかと思うんですが。いきなり聞きますけど、人生に必要不可欠なもの、みたいなのって、何でしょうか? このお忙しい中で。
木村
お酒?(笑)。
堀井
フフフ、かわいい(笑)。
木村
すいません(笑)。お酒っていうか、飲みの場所が好きで。だいたい、いつも行くのは近所の飲み屋さんなんですけれども。本当に小さいお店で。そこで通っているうちに知り合った常連の方……今だとお友達。付き合いの長い友人とかもすごい多くて。行けば誰か友達がいる場所っていう。
で、仕事中はどうしても気を張ったり、看護師としての自分という役割を演じたりもしているので。そういうのから離れて、素の自分に戻れる場所が私にとってはそのお酒を飲む場所で。なので、それがないとちょっと人生厳しいなと思います(笑)。
堀井
他業種の方ですか?
木村
他業種の方ですね。
堀井
どういうようなお話をするんですか?
木村
最近おすすめのお掃除グッズの話とか(笑)。
堀井
関係ないですね、看護師の仕事とは(笑)。いいですね。
木村
でも、それこそ仕事のことで、教育で悩んでいたりとかしていたときに、一般の企業の方から「うちの会社だと、1on1っていうのがあるよ」とか。そういった、病院だと絶対わからない、知らないような教育の方法とか、コーチングの方法とかを教えてもらえたりするので。すごく嬉しいし、勉強にもなるし。
堀井
いい場所ですよね。あとは、本もたくさん読まれてる?
木村
そうですね。読むのも好きだし、書くのも、元々は趣味で始めたことで。今も2冊、出させていただいて、今、3冊目が準備中ではあるんですけれども。やっぱり趣味の位置づけから、なかなか離れないっていうか。
ある程度、たとえばもちろん出版社の方、印刷所の方も生活があるし。ご家族さんもいらっしゃるので。せめて締め切りを守ろうとか、その社会人能力を疑われないようにしようとは思うけど、やっぱり根底としては趣味の中ですね。看護師ありきの。
堀井
看護師が本業で。
木村
そうですね。で、看護師がちょっとつらいときに、頭を整理する時間っていう感じで置いています。
堀井
残業の後に締め切りが来たりとか、夜勤の後にとか……。
木村
ありますね。夜勤の後に打ち合わせとか。
堀井
それも、大丈夫ですか?
木村
夜勤の後の打ち合わせは、逆にハイになっていてなんとかいけるけど。夜勤の後の締め切りが一番ダメですね。本当に夜勤の後って、酔っ払っているみたいな状態なので。人は徹夜をすると、そういう状態になるらしいので。もう夜勤明け、まさにそんな状態で原稿なんて書けるわけもなく……。
堀井
一生、文筆家として木村さん、続けられそうですね(笑)。
木村
ああ、そうですか?(笑)。
堀井
このお仕事……看護師の歴史とか、看護師のエピソードとかをずっと綴っていくっていうのを。それをずっと読み続けたいなと思いますけども。
木村
嬉しい! ありがとうございます。
心がほわっとなる瞬間がないと、どうしても仕事一色になりがち
堀井
今、3ついただいていて。お酒と本が出ましたが。あとひとつは何ですか?
木村
あとひとつは、本当に恥ずかしいんですけども……恋愛(笑)。
堀井
素敵です! いや、もう木村さんの恋愛事情、めちゃめちゃ興味あります(笑)。ずっと聞いていたい(笑)。
木村
いやいや(笑)。なんか、パートナーが結構いたり、いなかったりなんですけれども。ちょっと前に、2年くらい一緒に住んでいた人と別れたばっかりで。
堀井
いいんですか? そんなことを聞いちゃって?
木村
もう全然いいので。本にも書いてるくらいなので、全然いいんですけれども。なんか、パートナーがいるかどうかっていうより、忙しい仕事の中で、ちょっと好きな人、特別な人と連絡が取れたりとか。ちょっと……短い時間でもいいから、一緒に過ごせる時間があったりとか。
そういう心がほわっとなる瞬間がないと、どうしても仕事一色になりがちなので。なんかその中で、やっぱり気持ちが違う方向に行くっていうので恋愛があると、頑張れるなって。ちょっとLINEが来ただけで、すごく落ち込んでいても「うん。まあ明日も仕事、頑張るか」ってなります。
堀井
かわいすぎます(笑)。
木村
本当ですか?(笑)。
堀井
これで白衣を着てそんなことを言われたら、もうどうしようかとも思いますけども(笑)。でも、そうですね。なんか本当、プライベートもたくさん充実してて。いろんな人とコミュニケーションを取ったりとか。本も読まれたりして。時間の使い方は上手なんですかね?
木村
どうなんですかね?
堀井
ねえ。お忙しい看護師をやって、文筆業をやって、お酒も飲みに行って、本も読んで。で、彼もいて、みたいな。結構、黙っているぐらいだったら、外に行って……みたいな?
木村
1人で家にいるのが苦手で。基本的に外にいたいとか、誰かと会っていたい。だからつまり、寂しがりなんだと思うんですけれども。
おじいさま、おばあさまのほっぺが本当に好きで
堀井
そもそも看護師さんになりたいと思ったのは、人が好きとか?
木村
いや、結構そこがドライといえばドライで。資格が取れる……実家がそんなに裕福な方ではなかったので。進学するか、就職するか、高校生のときにどうしよう?ってなって。そのときに高卒で就職しても、特別なスキルがあるわけでもないんだからそんなに大した給料の職には就けないだろうなと思って。
で、看護師だったら比較的、専門学校だと学費も安く行けるので。で、3年通えばその後、一生安泰の資格っていうので目指し始めたのが最初で。で、記念受験みたいな感じで大学を受けたら、そこに受かったので大学に行くことにはなったんですけれども。そうですね。何かやりたいとか、人が好きっていうよりは、本当に手に職がほしくて看護師になりました。
堀井
一生のお仕事ですもんね。本当にね。最後までやり遂げようと思うと、できるお仕事ですからね。
木村
そうですね。なんかでも、たとえば大学卒業とか、1年目くらいのときは2年くらい病院で働いたら辞めてベンチャー企業とか看護師じゃないところに……給料もそんなにいいわけではないし。安定はしてるけど高いわけではないし。「なんか責任と見合ってないな。どこか、ベンチャーにでも行こうかな」とか思っていたんですけど。なんか気づいたら、いまだに病棟にいてしまって。なにがあるか、わかんないなって。
堀井
どういう理由でですか? なにがそうさせるんでしょう?
木村
うーん。なんか、ご高齢の患者さんが多いじゃないですか。病院なので、どうしても高齢の……特に80歳、90歳代のおじいさま、おばあさまのほっぺって、触ったことありますか?
堀井
ええーっ、ない!(笑)。
木村
すっごいたるんたるんで、超かわいいんです。なんか「かわいい」っていうと、かなり語弊があるんですけれども。その長い時間をかけて、重力に逆らえなくなって。もうその方の歴史が刻まれているほっぺのたるみがもう好きで。本当に好きで(笑)。
堀井
でも、そんな風に思ってくれる看護師さんがそばにいるっていうのは、家族もなんか嬉しいですね。
木村
ああ、本当ですか?(笑)。
堀江
「うちのおじいちゃんが愛されてる」って思うだけで、すごい嬉しいですよね。
木村
そう言っていただけると……コロナ前、ご家族様がまだ面会に自由に来られていたときに、ちょうどほっぺを「たるんたるんたるん……」ってやっているときにご家族様が入ってきちゃって。「あっ!」って。ご家族様も「あっ!」みたいな顔になったりもしていたので(笑)。でもご家族様は「あらー、孫より若い子に、ねえ」って(笑)。
堀井
「おじいちゃん、よかったわねー」って(笑)。
木村
「ああ、優しいご家族様でよかったな」って(笑)。でも、そこで「バカにしてるのか?」って言われたらどうしようとか、思ったりもしたので。
<書き起こし終わり>
文:みやーんZZ
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