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「配置転換の拒否」は業務命令違反?会社がとるべきトラブル対策とは


6月も終盤に差し掛かりました。4月に入社した新入社員の方の中で、既に本配属されている方もいれば、次の7月から本配属を迎えるという方もいらっしゃることでしょう。

勤務地や部署、仕事内容が決まり、自身の今後の生活やキャリアビジョンを大方思い描いているかもしれません。できることなら、大きな変化のない安定的な環境の中、慣れた仕事にずっと携わり続けたいというのは、多くの人が思うことです。

しかし、会社に勤めていれば誰でも人事異動の可能性はあるのです。

人事異動には転勤、配置転換、出向、転籍がありますが、今回は「労使トラブルなく配置転換するために会社として必要な対策」について解説します。

会社は「営業職から開発職」のような配置転換を命じることができる

「配置転換」とは、勤務地を変更せずに業務内容を変更することです。

例えば、営業職だった人が開発職になるなどです。

一見、無茶な配置転換にみえますし「そもそもこうした人事異動は会社は勝手にできるのか?」と思う方もいらっしゃると思いますが、結論から言うとできます

会社は、社員の働く場所や業務内容について決めることができる人事権があります。

多くの会社では就業規則に「会社は業務の必要性に応じ、職種、勤務場所の変更を社員に命じることができる」と定めています。

正社員の転勤や配置転換は、原則として本人の同意がなくても行うことができます。

ただし無制限に配置転換できるわけではない

だからといって無制限にできるというわけではありません。

よくトラブルになるのは、会社が社員を辞めさせるために遠方に転勤させたり、本人の適性をまったく無視した嫌がらせと思えるような配置転換を命じることです。

例えば、ドラマの中で会社で不正が起きていてそれを正そうと奮闘する人がいますよね。

しかし、だいたい本社勤務なのに地方に飛ばされたり、閑職の部署に飛ばされたりします。

ドラマ「半沢直樹」などではよくあったシーンです。ドラマの中では「これは不当な異動だ!」と労働問題に発展するシーンはありませんけどね。

労使問題を避けるには「事前説明」を

「地方の支店に異動させることが、その人の今後のキャリアで必要」といった合理的な理由があれば良いのですが、嫌がらせや辞めさせるのが目的とみられる場合は、不当な異動と判断される可能性があります。

例えば、今年5月、アリさんマークの引越社で知られる「引越社関東」で不当な配置転換を巡る訴訟がありました。その後和解が成立し、当該社員は配置を戻され会社から解決金が支払われることで落ち着くようです(*1)。

一方、会社的としては嫌がらせや辞めさせるのが目的ではないのに、社員から「不当な異動だ」と言われて労働問題に発展させないためには、事前説明をしておいた方が良いでしょう。

「他部署も経験し経営者視点を身につけてほしい」という意図を明白に

例えば、

「君は営業だが、ゆくゆくは会社を背負う中枢の存在として活躍して欲しい。だから他の部署も経験して経営者視点で会社全体を見渡せるようになって欲しい。」

といったニュアンスで、予め意図を明白に説明すれば、少なくとも悪い方向には進まないと思います。

社員は原則として異動命令には従わなければなりませんが、「嫌がらせや恣意的な異動命令なのではないか?」と感じるような、不当な異動と思われる場合は会社に確認した方が良いでしょう。

それでも配置転換を拒否されたら?

では、そこまでの対策を施した上で配置転換を命じたのに拒否されたとしたらどうすれば良いでしょうか?

配置転換を命じた時に「私は営業で入社したので嫌です。」と言われても配置転換させることができます。

従わない場合「業務命令違反」としての処分を下すことに

配置転換は業務命令ですから、従わない場合は業務命令違反として処分を下すことになります。

転居を伴う転勤の場合、介護などの家庭の事情でどうしても転勤することができないという事情があり、配慮しなければならないことはありますが、「配置転換」は転勤に比べれば個人への負担感はないはずです。

本人に事情は聞くものの、従わないのであれば解雇も視野に入れなければなりません。

1人のワガママを許すと、その後他の社員も「Aさんは断っていたじゃないですか!」と配置転換の命令に従わないということが起きる可能性は高くなります。

配置転換だけでなく、異動に関しては対象者には事前に説明して納得してもらうことが大事です。社内で公に発令して従わないという状況になってしまったら厳しい対応を取らざるを得ないからです。

【参照】
*1:不当な配置転換で和解 引越社関東、解決金支払い – 日本経済新聞

特定社会保険労務士 野崎 大輔

日本労働教育総合研究所所長。サービス業におけるプロフェッショナル人材育成の仕組み構築と紛争予防解決コンサルタントとして労働問題対応を行っている。問題が起きたら解決するのではなく、問題が起きないように根治療法の重要性を提唱し、組織の風土改革、人材育成を実施している企業は労働問題の発生率が低下する一方で社員の定着率向上、業績向上といった成果が出ている。【公式サイト】「ハラ・ハラ社員」が会社を潰す(講談社)
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