「卒業できませんでした・・・!」内定取消ってアリ? ナシ?

2018.02.19 ライター: 弁護士 浅野 英之

こんにちは、弁護士法人浅野総合法律事務所 代表弁護士の浅野英之です。

少子高齢化、人材不足が叫ばれる昨今、企業にとって「採用」が非常に重要となっています。

しかし、せっかく有力な新卒内定者を獲得したとしても、大学を予定どおりに卒業できず留年、卒業失敗となってしまう学生は、少なからず出てきてしまいます。

企業としては、新年度からの戦力として予定していたのに予定が狂ってしまうことでしょうが、「卒業できない」といった理由で、内定を取り消すことはできるのでしょうか?

内定取消」は、内定を受けた労働者の側でも非常に重要な問題で、人生を左右することもあることから、不適切な「内定取消」をしてしまうと、労働者に争われ、慰謝料を請求される等、多額のお金を払わなければならなくなった例もよく聞きます。

そこで今回は、「卒業できない」ことを理由とした、企業による内定取消について、弁護士が解説します。

そもそも「内定」とは?

そもそも、「内定」とは、法律上どのように位置づけられているのか?という基本的な考え方からご説明いたします。

「内定」は、法律の専門用語で、「始期付き解約権留保付き労働契約」と呼びます。

つまり、「始期付き」とは、契約が成立してもすぐに働き始めるわけではないということ、「解約権留保付き」とは、「内定」が成立した後であっても、一定の理由で解約できるということです。

内定取消はどのような場合に許される?

「内定取消」は、法的にいうと「解雇」と同じ性質を持っています。それは、「内定」が、既に説明したように、「労働契約」の成立であるためです。

正社員を解雇することには、高いハードルがあり、簡単には解雇できないことは、皆さんご存知のことかと思いますが、内定取消もまた、自由にできるわけではないということです。

どのような場合であれば、「内定取消」が認められるか、という点については、解雇と同様に「合理的な理由」と「社会通念上の相当性」が必要であると考えられています。

その上、内定の趣旨からして、内定時に知っていた事情をもとに内定を取り消すことはできないとされており、内定時に知りえなかった取消理由の典型例が「卒業できない問題」なのです。

卒業できなかった内定者の内定を取り消せる?

そこで、卒業ができないと申告された学生に対して、企業が内定を取り消せるかについて、解説していきます。

まず、会社にとって、「学歴」「卒業していること」が、採用においてどれほど重要視されているかによって、この問題の結論は異なってきます。

例えば、「大卒」であることを前提として採用をする新卒社会人のケースでは、「大卒」資格が得られないのであれば、内定取消となっても仕方ないと考えます。

一方、学歴をまったく特定しておらず、卒業していなくても採用をしているようなケースであれば、内定時には予定されていた卒業ができなかったとしても、これを理由に内定取消をすることが、相当ではない場合もあります。

まとめ

今回は、内定者から、「卒業できませんでした。」と言われた企業の方に向けて、これを理由に採用内定を取り消してもよいのかについて、弁護士が解説しました。

基本的には、「大卒」を前提とした新卒社会人のケースなど、卒業していることが「内定」の重要な考慮要素となっている場合には、内定取消をすることとなります。

これに対して、学校を卒業していることを重要な考慮要素とはしていない場合や、中途採用の場合には、「卒業できなかった」ことだけを理由として内定取消をすると、「相当ではない」として内定取消が無効とされるおそれがあり、注意が必要です。

弁護士 浅野 英之

弁護士法人浅野総合法律事務所、代表弁護士。企業側労働問題を得意とする石嵜・山中総合法律事務所にて、数多くの労働相談対応、顧問先企業の労務管理を行ってきた経験を活かし、「労働問題に強い弁護士」として、企業側だけでなく労働者側の相談にも対応。労働問題のスペシャリストとして活動中。特に成長中のベンチャー企業、中小企業の人事労務のコンサルティングに定評がある。 【企業向けメディア】ビズベン!企業の労働問題解決ナビ
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