どう対処すべき? 取引先からの「セクハラ問題」 責任所在と注意事項

2017.09.15 ライター: 弁護士 浅野 英之

こんにちは。浅野総合法律事務所 代表弁護士浅野英之です。

近年、男女雇用機会均等法に事業主のセクハラ対策義務が明記されたことにより、「会社が社内でのセクハラ被害にどのような対策を講じるか?」ということが注目を集めています。

従業員のセクハラ被害は、なにも職場内に限ったことではなく、営業先で、顧客や取引先の従業員から受けるセクハラ被害も少なくありません。

顧客獲得のため、どうしてもいうことを聞かざるを得なかった、という取引におけるパワーバランスの不均衡がこうしたセクハラを助長するケースもあります。

そこで、今回は、取引先によるセクハラから従業員を守るために、会社がどのような対応をとれば良いかを解説していきます。

Japanese Businessman and businesswoman are working at the side walk of office buildings

セクハラ問題は社内で起こる場合にとどまらない

セクハラ(セクシャルハラスメント)とは、業務に関連する、性的な嫌がらせのことをいいます。

直接的な性的言動はもちろんのこと、性的な関係を拒否した社員に対して、労働条件や職場での待遇につき不利な取り扱いをすることも含まれます。

セクハラのタイプには、大きく分けて2つのタイプがあります。

労働条件を不利益に変更するなどの対価を求め、性的関係を要求する「対価型」と、卑猥なポスターを貼って職場の居心地を悪くするなど労働環境を悪化させる「環境型」です。

しかし、冒頭でも解説した通り、セクハラ問題は社内で起こる場合だけにとどまりません

取引先からのセクハラの法律的な扱い

(1)社内外とわずセクハラは違法

従業員に対して精神的・肉体的な苦痛を与える「セクハラ」は、民法上の「不法行為」に当たり、違法です。

セクハラ加害者は、被害の程度に応じて、被害者に対して慰謝料などを支払う責任を負います。

セクハラの程度が酷い場合は、強制わいせつ罪などの犯罪に当たることもあります。

このように、セクハラが民事上も刑事上も違法であることは、社内で起こるセクハラであっても、取引先で起こるセクハラであっても変わりありません。

(2)取引先企業の「使用者責任」に問える場合がある

会社は、事業活動に際して、従業員が他人に与えた損害を賠償する責任を負います。これを、「使用者責任」と呼びます。

取引先の従業員からセクハラ被害を受けた場合には、被害を受けた従業員は、加害者従業員だけでなく取引先企業にも使用者責任を問える場合があります

取引先からのセクハラに対し会社が取るべき対処

(1)社外で起こるセクハラにも対策が必要

冒頭にご紹介した男女雇用機会均等法が定めるセクハラ対策義務は、自社内のセクハラ対策を念頭に置いているものですが、会社としては、社外で起こるセクハラにも注意が必要です。

労働契約法5条は、全ての会社に対し、従業員が心身ともに安全に働けるように配慮すべきことを義務づけているからです。

(2)当該顧客と交渉すること

「文句をいうと顧客を失う危険があるのでは。」と不安を抱くセクハラ被害者自身が、顧客や取引先の従業員から受けるセクハラに強く抗議することは困難です。

取引先からのセクハラ被害を解消するためには、会社が被害相談を受けて、顧客や取引先の会社に対応改善を求めていくことが必要になります。

その際には、相手方のセクハラが違法であることと、自社従業員がセクハラ被害に苦しんでいることをはっきりと伝え、セクハラをやめてもらうよう強く求めましょう。

(3)当該顧客を失ってしまう?

セクハラ加害者が取引先の社長である場合など、セクハラをやめるよう要求すると顧客を失ってしまうケースもあるかもしれません。

しかし、顧客を失うことを恐れ、社員のセクハラ被害を放置することは、社員から慰謝料請求を受けるリスクはもちろんのこと、発覚すれば、貴社の企業イメージを大きく低下させます。

 

社外のことだから我関せず、では済みません。

セクハラ対策では社外との接点にも注意し、然るべき対処を施しましょう。

弁護士 浅野 英之

弁護士法人浅野総合法律事務所、代表弁護士。企業側労働問題を得意とする石嵜・山中総合法律事務所にて、労働問題に関する数多くの相談対応、顧問先企業の労務管理を行ってきた経験を活かし、弁護士法人浅野総合法律事務所を設立。以降、「労働問題に強い弁護士」として、企業側はもちろん、労働者側の相談にも対応し、労働問題のスペシャリスト弁護士として活動中。特に成長中のベンチャー企業、中小企業の人事労務のコンサルティングに定評がある。 【企業向けメディア】ビズベン!
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