ITSこと「関東ITソフトウェア健康保険組合」とは? 概要や加入条件を解説


こんにちは。特定社会保険労務士の山本 純次です。

ベンチャー企業などにおいて、福利厚生を充実させるというのは非常に難しい問題です。コストに対するリターンが見えづらく、単独で実施するには創業時には非常に困難なものです。その中で、従業員が増えてきた段階で検討されるのが健康保険組合です。

健康保険組合とは、国が実施する協会けんぽと同様の業務を行いつつ、加入組合員の保険料により独自の福利厚生サービスを提供できる組合を言います。

本稿ではITベンチャー企業が検討することが多い、関東ITソフトウェア健康保険組合(以降、関東ITS健保)の概要についてみていきたいと思います。

関東ITS健保とは?

関東ITS健保は、一般社団法人コンピュータソフトウェア協会を母体として、昭和61年4月に設立し、全国健康保険協会に代わり健康保険に関する業務全般を行っています。

正式名称は「関東ITソフトウェア健康保険組合」で、「ITS」や「ITS健保」とも呼ばれています。

関東ITS健保の対象企業

加入対象としては、まず大前提として、ITソフトウェアに関する事業を行っている企業かどうかということが条件となります。

具体的な基準として、下記のような業務での売上が、会社の売上の50%以上を占めていることが前提となります。

  1. ソフトウェア等の開発・販売
  2. コンピュータ、周辺機器の販売、保守
  3. コンピュータの利用による情報の提供

この中で判断が難しいのが③です。

例えばポータルサイトの運営会社については情報提供を行っていますが、そこでの「物販の販売」が売上の中心となっている場合、ITによる売上とはみなされません。

また、アプリ開発などをしている会社でも、それが本業の業務(例えば教育業など)に付随するものでアプリでの収入が無い場合、ITによる売り上げとはみなされません。

関東ITS健保の実務上の加入条件

関東ITS健保の加入条件は下記になります。HPにも掲載されていますが、実務での基準を追加していければと思います。

  1. 社会保険加入1年以上で、本社が関東近辺にあること
  2. 被保険者が20名以上
  3. 標準報酬月額11万8千円以下の被保険者がいないこと
  4. 被保険者の平均年齢が健保組合の平均を著しく上回らないこと
    (概ね平均35歳以下が基準)
  5. 扶養率が健保組合の平均を著しく上回らないこと
    (被扶養者数/被保険者数が1.0以下、要は被保険者1人に対して1名以上の扶養者がいるかどうかを判断)
  6. 過去1年間に法人税・消費税・所得税・事業所税・健康保険・厚生年金保険・雇用保険の納入遅延がないこと
    (1日でも遅れるとアウト)
  7. 反社会的勢力でない など

この中でも、特に⑥において、租税公課の納入で、所得税は毎月10日に振り込みますが、遅れやすいので注意が必要です。

また、HPには記載がありませんが、審査では他に決算状況等を確認のうえ、以下の要素も見られることとなります。

  1. 被保険者の標準報酬月額が概ね35万円以上
    (平均年齢が低い場合これ以下でも認められるケースがあります)
  2. 欠損金の繰越額が資本金以上でないこと
  3. その他、社会保険料を納入するに足りる会社の資金関係に問題がないか

関東ITS健保加入のメリット

以下に、関東ITS健保加入メリットを具体的にみていきます。

関東ITS健保のメリット その1「福利厚生の充実」

最大のメリットは「福利厚生の充実」です。具体的には下記に紹介するようなサービスが受けられます。

  • 健康診断、人間ドックなどを低価格で実施
  • 保養施設の利用
  • スポーツクラブなどの利用
  • アミューズメント施設の利用
    (ディズニーランドの入場券補助など)
  • 飲食店などの補助を利用
    (提携のお寿司屋さんがかなり低い値段で利用ができることも)
  • 出産育児一時金などに付加給与が支給される

企業が独自に準備するにはコストがかかりすぎるため、こういったサービスは従業員にとってもメリットであり、利用に関して利用料以外が追加でかかることはありません。

関東ITS健保のメリット その2「低い社会保険料率」

また、もう一つの大きなメリットは「社会保険料が低くなること」です。

通常加入する協会けんぽと比べて保険料率が低くなります。

下記は1ヶ月分のモデルケースですが、年間を通すとかなりの法定福利費の削減になります。

関東ITS 保険料率 関東ITソフトウェア健康保険組合
※ 介護保険は含まず。平成30年11月現在保険料率

関東ITS健保の加入の流れ

加入を検討する場合、まず加入申請書と添付書類を提出します。

ただ、先述の加入条件の中で「IT企業としてみなせるか」を、登記簿謄本と会社案内などで事前に相談に行っておくと、明らかに加入基準を満たさないなどを予め判断してもらうことも可能です。

正式な加入書類を全て提出すると、1ヶ月程度で最初の審査が行われます。

この審査が通ると、被保険者情報の一覧や、各種誓約書など本審査に必要な書類の提出が求められます。

本審査は厚生労働省の厚生局で実施され、この審査が通れば、編入月が通知されることとなります。

概ね上記の書類提出から編入まで4ヶ月〜6ヶ月程度かかることになります。

以上のように、加入基準を満たされている会社では加入メリットが非常に大きいため、是非検討を進めていただくことをお勧めいたします。

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特定社会保険労務士 山本 純次

渋谷・表参道に事務所を構える人事労務の専門家、株式会社表参道HRオフィス。代表取締役CEO。社労士として社会保険・労働保険の手続き代行から就業規則の策定、労務相談までなんでも対応いたします。事務手続き代行、給与計算、就業規則作成まで幅広い人事労務業務を対応いたします。また、ベンチャーとシステムに強い社労士としてIPO支援に関する業務まで対応しております。社会保険労務士 表参道HRオフィス
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