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長引く新型コロナ。協会けんぽと国保の欠勤・休業時の取扱いを再確認

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こんにちは、株式会社Flucle代表取締役 社会保険労務士の三田です。

ご存じとは思いますが、2022年1月28日より、陽性者で無症状の方と濃厚接触者の待機期間が10日から7日に変更になっています。7日が過ぎても、10日を経過するまでは検温などを実施し、健康状態の確認が必要です。

このように、新型コロナウイルス感染症流行開始から2年が過ぎても、現場で必要な情報はどんどん変化していきます。感染予防対策の継続とともに、企業担当者・社会保険労務士は従業員の欠勤、休業に関して常に最新情報を取得しておく必要があります。

今回の記事では、新型コロナウイルス感染症の欠勤と休業について再確認してみようと思います。

新型コロナウイルス感染症と、協会けんぽの傷病手当金

従業員が新型コロナウイルス感染症に感染して仕事ができないときは、傷病手当金の支給対象になります。

傷病手当金とは、業務外の理由による病気やケガで仕事ができず、企業から給与の支払いがないときに、健康保険から生活保障として支給される手当です。支給を受けられるのは、休業している期間が4日以上あるときです。欠勤した日から最初の3日間(待期期間)は支給されず、4日目から支給されます。

支給額は以下の計算式で算出した額になります。

傷病手当金の支給額の計算

傷病手当金の申請には「医師の証明」は必要なのか

本来の傷病手当金の申請時には、仕事ができない状態であったことの医師の証明が必要です。

しかし、新型コロナウイルス感染症に感染し、発熱などの自覚症状があるときはいつものような医療機関の受診がしにくくなります。

そのためホテル療養や自宅待機等で医療機関を受診できないときは、医師の証明の代わりに保健所が発行する待機期間の証明書や、事業主の証明などで申請できるようになっています。

協会けんぽの支部によって、証明書のひな形や対応が異なる場合があるので注意が必要です。医師の証明を発行してもらえない状況のときは、事前に協会けんぽへ相談されることをおすすめします。

濃厚接触者で陰性のとき、傷病手当金は支給されるのか

濃厚接触者が検査をして陰性だったときは、傷病手当金は支給されません。傷病手当金は業務外での疾病により仕事ができないときに支給される制度のためです。

支給の対象になるかどうかは、以下の図を参考にしてください。

利用要件
自覚症状あり
自覚症状なし

(出典)新型コロナウイルス感染症に係る傷病手当金について – 全国健康保険協会 神奈川支部

新型コロナウイルス感染症関係の傷病手当金支給については、厚生労働省からQ&Aが発表されています。具体的なケースの記載がありますので、状況にあわせて内容をご確認ください。

(参考)「新型コロナウイルス感染症に係る傷病手当金の支給に関するQ&A」 の改訂について – 厚生労働省

新型コロナウイルス感染症と、国民健康保険の傷病手当金

国民健康保険には傷病手当金の制度がありません。しかし、新型コロナウイルス感染症に感染(疑い含む)し、仕事ができず給与の支払いがない(一部減額含む)ときに限り、傷病手当金が支給される市区町村があります。

【対象者】

以下の(1)~(3)のすべてに該当する従業員

(1)国民健康保険に加入している

(2)給与の全額または一部が減額されて支払われている

(3)新型コロナウイルス感染症に感染している、または発熱などの症状があり感染が疑われ療養のため欠勤している

【支給対象期間】

勤務ができなくなった日から起算して4日目から仕事ができない期間のうち、就労を予定していた日

【支給額】

(直近の継続した3月間の給与収入の合計額 ÷ 就労日数)× 2/3 × 就労を予定していた日数

※仕事ができなかった期間に給与等が一部支払われ、その額が上記で算定した額より多いときは支給されません。算定した額より少ないときは差額が支給されます。

症状のない濃厚接触者や事業主、無職の方などは対象外になります。市区町村によって傷病手当金が適用される期間や申請書の証明の方法など異なるケースがあります。該当するときは、お住まいの市区町村の窓口へご相談いただくように、従業員の皆様にお伝えしましょう。

企業の休業手当の支払いについて

新型コロナウイルス感染症はいつ誰が感染するかわかりません。また検査で結果が出るまで、職場や日常生活で多くの人と触れ合います。そのため、「感染の疑い」「濃厚接触者の疑い」となる役員や従業員が出たとき、企業が自宅待機や休業を命じるケースがあります。

それが職場の安全確保や感染予防のために取った措置だとしても、従業員に対して休業手当の支払が発生することに注意してください。

休業をしたときの休業手当の支払い

(HRbase PRO作成図)

子どもの小児接種で欠勤する従業員への企業対応

5歳から11歳の子どもを対象とした新型コロナワクチンの小児接種が開始されています。小児接種の対象は、接種日に満5歳以上の子どもです。

小児においても中等症や重症例が確認されており、基礎疾患がある小児は重症化リスクが高くなることや、今後の変異株の流行も想定されるため、小児へのワクチン接種が開始されることになりました。

(参考)新型コロナワクチン接種についてのお知らせ(5歳から11歳のお子様と保護者の方へ) – 厚生労働省

小児接種では保護者の同伴が必要なため、対象年齢の子どもを持つ従業員では、接種日や接種後の副反応等に備えて仕事を休まざるを得ない場合も生じます。

従業員のワクチン接種と同様、法令で定められた企業対応はありません。しかし、国は、小児接種を希望している保護者が安心して小児接種できるよう、接種日や接種後の副反応等に対応する休暇制度導入の検討などの柔軟な対応を推奨しています。

【企業の対応例】

  • 小児接種の特別休暇を設ける
  • 同部署内での複数欠席を避けるため、事前に小児接種日の連絡をしてもらう
  • 小児接種日および接種後の在宅勤務を認める
  • 育児介護休業法の看護休暇制度の周知と取得の推奨 など

感染症に関連した急な従業員不在時の企業対応

感染者や濃厚接触者になると、待期期間は出社できなくなるケースが出てきます。また、保護者同伴の小児接種により、仕事を休まざるを得ない場合もあるでしょう。新型コロナウイルス感染症に関連した、従業員不在時の対応を事前に検討しておくことをおすすめします。

【急な従業員不在時のための対応例】

  • テレワークの導入
  • 定期的にPCR検査を実施
  • 休業中の連絡方法
  • 業務の引継ぎ方法 など

新型コロナウイルス感染症感染症の支援

国による新型コロナウイルス感染症に関する支援は、多岐にわたり準備されています。

内閣官房サイトでは、支援内容や問い合わせ先の情報が随時更新されているので、最新の情報をご確認ください。

まとめ

新型コロナウイルス感染症の感染者数は増加・減少を繰り返しており、まだまだ気を抜かず、企業活動が滞らないような対策が必要です。従業員が出社できなくなることを想定して、業務の見直しや感染者が出たときの対応を決めておくことをおすすめします。

また、新型コロナウイルス感染症に感染していても無症状な方もいます。企業内で定期的にPCR検査を実施するなど、無症状者の早期発見につとめてください。

お役立ち資料

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