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出産・育児による「女性のキャリア分断」はどうしたら防げるのか?

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2016年度の育児休業取得率は、女性81.8%、男性で3.16%となっています(*1)。

数字だけで見れば、女性については、「出産→育休」という流れが、かなり定着してきたようです。しかし、第1子出産後の女性の継続就業率は約5割しかありません(*2)。半数近くの女性は、出産を機に離職しているのが現状です。それだけ、育児と仕事の両立は難しいということでしょう。

一方、仕事と育児の両立に積極的に取り組んでいる企業や、これから取り組んでいこうという企業も多くあります。

それらを推進していこう企業が直面しやすい課題とその対策について考えていきます。

最大の問題は「マタハラ」

まず問題として挙げられるのが、マタハラです。

妊娠・出産した派遣社員の48%、正社員の21%が、マタハラを経験したことがあると言われています(*3)。

マタハラは、上司や同僚の妊娠や育児に対する理解不足から生じることも多々あります。心ない言動が相手を傷つけたり、本人の意思や能力を考えずに「本人のため」と思い込んで、軽易な業務へ異動させたりしがちです。

また、短時間勤務や残業免除によって、子供のいない従業員に負担が集中してしまうことでマタハラに発展することもあります。負担が増えた従業員の不満が、育児中の従業員に向かうためです。

「ドミノ人事」で負担を偏らせず、なおかつキャリアアップチャンスを拡大

その対策として、まずは、管理職者らが妊娠や出産・育児について正しい知識を持つことが重要です。管理職研修などでこれらの教育を行っていきます。負担が一部の従業員に集中しないよう、適切な人員補充も行っていきます。

このとき効果的だと考えられる施策のひとつが「ドミノ人事」です。

「ドミノ人事」とは、育休取得で空白となったポジションに、1つ下のポジションの者が就き、その代役となったその人のポジションに、さらに下のポジションの者が就くというものです。

ドミノ人事では、負担が一部の人に偏ることがない上、皆がキャリアアップの機会を得られます。

根本的には、子育て中の従業員だけを優遇するのではなく、全従業員がWLB(ワーク・ライフ・バランス)を実感できる制度・運用方法を検討すべきです。

「マルチスキル化」で業務の滞りを防ぐ

ドミノ人事には、残業時間の削減への取り組みが必要となります。

業務内容やフローを見直し、非効率の是正・生産性向上を目指す中で、多能工化(マルチスキル化)も有効な手立てとなります。

多能工と聞くと、工場での作業を連想しがちですが、事務系の業務でも、「経理」と「商品管理」と「販売」をこなすような多能工化が可能です。

この多能工化によって、子供の体調不良等で急に誰かが休んだとしても「業務の滞り」を防ぐことができます。これを、多能工化ではなく、情報共有の徹底や業務の複数担当制で対応する企業もあります。

男性の育休取得を積極的に勧め、男性も育児に参加することで、女性の早期の復職や仕事と育児の両立をしやすくすることも行われています。

「マミートラック」への対策も忘れず

「マミートラック」などへの人事制度対策も必要になります。

「マミートラック」とは、仕事と育児の両立をしている社員が、出世コースから外れた昇進・昇格とは無縁のキャリアコースを、選択せざるを得ない状況に追い込まれることです。近年はマミートラックの実態が題材となったテレビドラマも放送されるなど、メディアでも取り沙汰されるようになりました。

対策の大前提としては、長時間労働に頼ったビジネスモデルから脱却する必要があると考えられます。

そして、採用した人材が中長期的に活躍していけるよう、男女問わずキャリア形成や出世に不利とならないような人事制度が、必要になるでしょう。

まとめ

女性活躍をはじめ、多様な働き方が受容される環境構築し、従業員サイドとしても充実したライフプラン・キャリアプランを描けることが理想的な職場のひとつです。

それが結果的に、人材採用の拡大や従業員エンゲージメントの向上に繋がり、ひいては企業成長へと寄与していくようなエコシステムを形成できると理想的と言えるでしょう。

これからの時代の企業成長は、人材の活性化なくしては語れません。

今回取り上げたように、育児と仕事の両立を目指す女性はもちろんのこと、自社のビジネスモデルと従業員の働き方に、是非向き合ってみてください。

【参照】
*1:平成28年度雇用均等基本調査(確報)/事業所調査 – 厚生労働省
*2:「第1子出産前後の女性の継続就業率」の動向関連データ集 – 内閣府
*3:マタハラ、派遣の48%「経験」 正社員は21% 厚労省調査 – 日本経済新聞

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