HRテクノロジー導入時の社内外コミュニケーションのポイント【はじめてのHRテクノロジー #4】

2020.09.30 ライター: 山岸 慎治

こんにちは。認定NPO法人カタリバの山岸慎治です。

「はじめてのHRテクノロジー」をテーマにした本連載。過去3回の記事を通して「HRテクノロジーが従業員体験や会社文化にもたらす影響」「HRテクノロジーの導入のタイミング」「自社にマッチしたHRテクノロジーの選び方」について解説してきました。

そして今回は、実際にHRテクノロジーを導入するにあたり抑えておきたい、導入フローと社内外の各関係者とのコミュニケーションのポイントを解説いたします。

スタートアップ、大企業でHRテクノロジー導入・運用を担当した経験をもとに、今回は《共通》《中小企業》《大企業》の3種類に分けて企業規模ごとの対応をまとめました。

企業によって、部署名や役割分担、承認フロー等が違いますので、皆さまの企業の実態に合わせて読み替えていただければと思います。

【1】<社内・自部署>必要事項・条件の洗い出し、候補サービスのリストアップ

《共通》

導入候補となるサービスをリストアップします。具体的なリストアップの方法は前回の記事を参考にしてください。

自社にマッチしたHRテクノロジーの選び方とは?【はじめてのHRテクノロジー #3】

《大企業》

大企業の場合、例え同じ部署であっても、1つのサービスを給与担当と勤怠担当、社会保険担当、人事情報担当と複数の担当者が関係する場合や、事業所によって違う給与体系や運用フローを用いている場合があります。

導入するサービスに関係する業務を担当している人全員に対して、前回の記事を参考に現状のタスクや要望等をヒアリングするようにしましょう。

この時大事なのは、1つであらゆる悩みを解決できる魔法のようなサービスはないということ。ですから、各機能の重要度を明確化することと、場合によっては複数のサービスを組み合わせることが大事になります。

【2】<社内・他部署>サービス導入にあたって影響を及ぼす他部署の確認

《共通》

経理部や総務部、情報システム部や情報セキュリティ部といった管理系部門が主な関係者として挙げられます。経理部や総務部は、銀行振込サービスや経費精算サービスといった各種支払系サービスとの連携面を特に確認しておく必要があります。

情報システム部や情報セキュリティ部は、SSO(※)連携の確認や、社外から社用PCのみサービスへのアクセスを許可するといった設定を行う場合に確認が必要となってきます。

※シングルサインオン。GoogleやSalesforceなどのアカウントで別サービスにもログインできる仕組み。

特に、勤怠サービスのような社員が日常的に利用するシステムの場合、既に会社で発行しているアカウントでログインができると、社員の利用ハードルが下がるうえに、ID・パスワードの再発行を自部署で行う必要がなくなるので、必ず事前に確認するようにしましょう。

ここでも【1】と同様に、関係者からヒアリングした項目に対して重要度を決め、場合に応じてサービスを分ける柔軟性も必要です。

《中小企業》

情報システム・セキュリティに関しては、そもそも社内に担当がおらず、詳しいメンバーがいない会社もあると思います。

しかし、こちらは社員数が少ないタイミングで整えておくと、後々システム運用がとても楽になる場合が多いので、アウトソーシングや、社内外の詳しい人に教わりながらSSOだけは導入してみるなど、この機会にシステム整備を検討するのもよいでしょう。

【3】<社内・自部署>候補サービスの一次絞り込み

《共通》

【1】【2】をもとに候補となるサービスを絞り込みます。ここではサービスを5〜6個に絞り込めるとよいでしょう。

【4】<ベンダー・営業>サービスに関する問い合わせ

《共通》

候補サービスを絞り込んだら、ベンダーに問い合わせをしましょう。ここではサービスの価格、最低契約期間・契約数、トライアルの有無とトライアル期間、サポート体制といった、基本的な内容について聞きます。

このタイミングで機能に関する質問をすると良いでしょう。一般的に、営業よりもカスタマーサクセス担当者のほうが使いこなし方や代替機能、機能が無い場合の解決方法等に詳しい場合が多いです。また、今後の機能拡充・拡張に関してはプロダクトマネージャーに確認をしたほうがより正確な情報を得られる可能性が高いです。

このように、機能や仕様の詳細については、商談が進む中で確認するとよいでしょう。なお、ベンダーによってはカスタマーサクセス担当者やプロダクトマネージャーの同席がないまま商談が進むこともあります。

【5】<社内・自部署/他部署>サービスのトライアル運用

《共通》

自部署ならびに【2】でヒアリングした関係者で実際にトライアル運用を行い、各機能の評価付けをしていきます。トライアルで運用するにあたって、業務の1年間の流れをイメージした、各季節毎に発生するイベントのシミュレーションが重要になります。

特にHR系サービスの場合、4月の新卒入社の前後や社会保険の料率改定のタイミング、年末調整のタイミング、社内組織改編のタイミングなど、年に1回訪れるイベントが色々とある上に、イレギュラー業務が発生しがちなため、必ずシミュレーションするようにしましょう。

《大企業》

大企業は中小企業以上に、各部署によってローカルルールや、社員のITリテラシーに大きな差が存在することが多々あります。

そのためトライアルで運用する際に、特に勤怠や年末調整サービスなど、全従業員が利用するサービスの場合には、各部署から一般社員ならびに(承認作業を行う可能性がある)管理職に声を掛けて、実際に運用する現場の声を聞くことをオススメします。

現場を巻き込んで一緒にサービスを選定すると、サービスを運用するフェーズになった際に、味方となって率先して現場へのサービス普及を手伝ってくれることがあります。そのため、周囲への影響力がある従業員に協力を仰ぐとよいでしょう。

【6】<ベンダー・CS/PM>サービスの機能等に関する問い合わせ

《共通》

トライアル運用で発生したサービスの機能等に関する疑問点を問い合わせましょう。この際にベンダーのカスタマーサクセス担当者のみならず、できればプロダクトマネージャーやプロダクトオーナーといった開発に携わっている方々にもヒアリングできると理想的です。ここでは機能の有無の確認だけでなく、改善要望なども出して先方の反応を見ることが大事です。

《中小企業》

中小企業の場合、「サービスの改善要望を出しても相手にされない」と思ってしまいがちですが、よい提案は会社規模に関わらず皆にとってよい改善となります。だからこそ、ベンダーが驚くくらいサービスを隅々まで使いこなして、気になるポイントを質問し、大企業と対等な立場の顧客であるとベンダーに認識してもらうくらいの姿勢で臨むことが大事です。

《大企業》

大企業の場合、サービスの機能の善し悪しも重要ですが、実際に運用を開始して従業員に利用方法を周知することのほうが大変な場合があります。そのためこの段階で、従業員向け周知資料の作成に協力してらえるかどうかをベンダーに確認しておくと、後々運用への移行が楽になります。

【7】<社内・自部署/他部署>候補サービスの二次絞り込み

《共通》

【6】でベンダーから得た回答を元に、候補サービスの二次絞り込みを行います。ここでは候補を3つに絞り込むのがよいでしょう。

後ほど社内での承認を得る際に3社以上の相見積もりが必要になるケースや、市場の適正価格を知っておく上でも3社以上は価格を知っておいた方がよいので、もし絞り込んだ結果2つ以下となってしまった場合には、次点のサービスも候補に残しておくとよいでしょう。

【8】<社内・自部署>サービスの最終選定

《共通》

これまでに揃えてきた情報をもとに、最終的に利用したいサービスを決定しましょう。

【9】<社内・自部署、ベンダー・営業>社内承認プレゼン資料作成

《共通》

【8】でサービスが決定したら、社内の承認を得るのに必要な資料を作成しましょう。承認フローに関しては会社によって千差万別なため、皆さんの会社のフローに従って頂ければと思います。

ここまでにベンダーと良好な関係を築けていれば、社内承認プレゼン資料を作成するのに必要な数値データや他社利用事例などを提供してもらえるので、ベンダーの営業担当の方に問い合わせて協力を仰いでみましょう。

【10】<社内・経営層>サービス導入承認に向けたプレゼン、承認

《共通》

【9】で作成した資料を持って社内承認を得ましょう。会社の許可が出るのであれば、ベンダーの方に同席してもらうのもひとつの手です。

ベンダーの方に同席してもらう場合には、プレゼン前に必ずベンダーの方と打ち合わせの時間を作り、お互いの役割の確認や用意してもらいたい資料・データの確認、承認者の情報(社内でのポジションや、承認にあたって重要視するポイント等)の提供を行っておくと、ベンダーの方も十分に準備ができ、当日スムーズに進行できます。

【11】<社内・自部署/他部署、ベンダー・CS/PM>導入準備、移行期間

《共通》

遂に導入に向けた最終準備です。ここではシステムの設定から、実際に利用する従業員データの取り込み等を行います。

《中小企業》

移行期間は最短で2〜3ヶ月を見ておけば大丈夫でしょう。

《大企業》

社内の関係者とベンダーのカスタマーサクセスやプロダクトマネージャーを交えて最初に打ち合わせを行い、特に情報システム部や情報セキュリティ部が必要な設定情報等を先に確認しておき、どれくらいの期間が必要なのかを確認しましょう。

人事部の場合、従業員の個人情報を扱っているため、同じ社内であっても他部署には開示できないことが多いかと思います。そのためサービス側で権限の切り分けが細かくできない場合、データの取り込み作業と他部署の作業を同時にはできないので、他部署の作業完了を待ってから自部署の作業に取りかかることになります。

移行期間としては最低3〜6ヶ月は見ておいたほうが安心です。

【12】<社内・自部署/他部署>運用開始

《共通》

いよいよ運用開始です。

全従業員が利用するサービスの場合、このタイミングで全社に使い方を周知する必要があります。資料の配付や、ベンダーに来社してもらう、もしくは自分たちで使い方セミナーの開催など色々な周知方法があるので、自社に最も合った周知方法を選択しましょう。

《大企業》

社員数が多いと、資料を読まない従業員がいたり、セミナーの開催が日程が合わなかったりします。そのため、各部署にサービスの利用方法の普及を手伝ってくれる従業員を選び、サービス運用開始前に使い方講座を少人数で開催しておくと、現場で従業員同士がお互いに利用方法を教え合う文化が生まれ、ストレス無く運用を開始できます。

またサービス運用開始前に早めに従業員にアナウンスをしておくことも大事です。

特にサービスの新規導入ではなく乗り換えの場合、アナウンスが遅れると現場の混乱をきたし、運用開始日にサービスの状態を確認する暇も無いくらいに、従業員問い合わせへの対応で忙殺されることになります。

運用開始の2ヶ月ほど前から定期的にアナウンスをしておくとよいでしょう。

おわりに

今回はHRテクノロジーの導入フローと、各フローにおける各関係者とのコミュニケーションのポイントということで、中小企業と大企業との違いを交えながら解説してきました。

最後に伝えたいポイントとしては、基本的に社内の他部署もベンダーも対立する相手ではなく、サービスを通じて会社をよりよくするための仲間ということです。

だからこそ、失礼にならないようにと意見を控えるのではなく、よりよいサービスにするために必要と感じることがあれば遠慮無く要望を出して、一緒にサービスを作っていっていただければと思います。

ここまで全4回の連載にお付き合いいただきましてありがとうございました。

まだお伝えしきれていない事も多々ありますが、細かな部分は各社の状況によっても変わるので、個々で相談等をいただければ可能な範囲でお答えいたしますので、Twitter等でお気軽にご相談いただければと思います!

山岸 慎治

認定NPO法人カタリバ 教育コーディネーター。映画祭イベント運営や人材派遣会社管理部門を経て、合同会社DMM.comにて人事労務、株式会社POLにて人事全般を担当。現在は東京を離れて、福島県の「福島県立ふたば未来学園中学校・高等学校」にて外部教育コーディネーターとしてキャリア教育等に従事。
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