社内相談窓口を設置する際のポイント、運用時のノウハウとは?【Smart相談室】Vol.1 セミナーレポート

2022.04.20 ライター: 元田 有紀

2022年3月23日、オンラインカウンセリングサービス「Smart相談室」を提供する、株式会社Smart相談室主催のオンラインセミナー「延べ2万件以上のカウンセリング経験を持つカウンセラーに聞く『社内相談窓口を設置する際のポイント、運用時のノウハウとは?』」が開催されました。

労働者が抱える「仕事」や「働く環境」に起因する悩みや不安、ストレスに対し、どのように対応すればよいか、お悩みの方もいるのではないでしょうか。

そこで、Smart相談室スーパーバイザーであり、産業カウンセラー資格の養成業務に長く携わりながら、企業でのカウンセリングも担当されている、オフィスファーロ代表、鵜飼 柔美氏を講師として迎えたセミナーをまとめました。今回は、全7回を予定されているセミナーの第1回目となります。

<セミナー講師> オフィスファーロ 代表 鵜飼 柔美 氏

<進行> 株式会社Smart相談室 CEO 藤田 康男 氏

藤田:株式会社Smart相談室の藤田と申します。よろしくおねがいします。

弊社のオンラインカウンセリングサービス「Smart相談室」を提供する中で、直接労務担当の方々とお話しする機会も多く、さまざまなご質問をいただきます。そこで、企業内での相談に対応する際のヒントになればと思い、オンラインセミナーを開催することにいたしました。今回から始まる全7回のセミナーは、すべて鵜飼さんに監修いただいております。

それでは、鵜飼さんよろしくお願いいたします。

鵜飼さん:「Smart相談室」のスーパーバイザーをさせていただいております、カウンセリングルーム オフィスファーロ 代表の鵜飼と申します。よろしくお願いいたします。

カウンセラーの資格を1985年に取得し、本格的に活動を始めたのは2005年になります。2007年に開業届を出してフリーランスで活動をスタート。、独立行政法人の運営する若年者就労支援施設や高校、大学の学生相談室、Smart相談室のような企業様の外部相談機関の登録カウンセラーとして、定期的に訪問してカウンセリングを行うなど、事業場外産業保健スタッフとしての活動をしてまいりました。

また、昨年までは日本産業カウンセラー協会の認定の実技指導者として、産業カウンセラーの養成講座の講師も務めておりました。受講者の中には、労務担当をされている方も結構多く、「労務担当として相談業務をすること」の難しさなどを知れたことも、今回のセミナーに役立つのではと思っています。

労務担当者が社内相談窓口を担当するメリット

労務担当者は従業員の日常を知り、「変化」に気づける

労務担当者が社内相談窓口を担当するメリット

鵜飼さん:まず、労務担当者が相談業務を行うメリットからお話しします。

まず1つ目は、従業員の変化に気づいたときにすぐ声を掛けられることです。人がメンタル不調を起こすときには、前兆が必ずあります。

例えば、その方らしくないミスが続いたり、遅刻や欠勤が増えたりなど。あるいは、身綺麗にしてらっしゃる方の身だしなみが少し乱れがちといったこともあるかもしれません。従業員ご本人も気づいていなかったり、大したことないと考えていたりすることもあるんです。

労働災害でよく言われる「ヒヤリハット(ハインリッヒの法則)」を思い出していただくと想像しやすいかもしれません。1件の重大な事故の前には29の軽微な事故があり、その背景には、300件もの「ヒヤリハット」があるといわれています。

従業員の方の日常を知っているからこそ、労務担当の方は変化に気づけるわけです。私たちのようなカウンセラーが従業員の方にお会いするときには、残念ながらすでに重篤な状態のことがあります。そうした変化に気づいたときに、すぐに声をかけられるという点が労務担当の皆さんが相談業務を行うメリットです。

相談のハードルが低いことが不調の早期発見につながる

鵜飼さん:相談のハードルが低いという点もメリットになります。

例えば、EAP(従業員支援プログラム)のように企業が契約している相談窓口があったとしても、予約をして相談室まで行かなければならないハードルがあります。しかし、社内で労務担当の方に相談できる機会があれば、「行く」というハードルがなくなるメリットがあります。

日頃の働き方を知っている、あるいは、入社したときから知っている関係性であれば、かまえずに相談しやすいと思います。相談先が社内の人であれば、会社の組織風土などの説明がなくとも状況をつかみやすいのではないでしょうか。

そういったことから、労務担当はメンタル不調に対して早期に気づけます。そして経過を観察し、必要に応じて医療機関や専門的な機関に早い段階でおつなぎできるのです。

産業領域におけるメンタル不調は、本人の気持ちの問題だけではありません。社会情勢や組織風土など、働く人を取り巻く環境の在り方と関連しています。ですので、可能であれば必要に応じて会社として環境改善を進めることが、未来の不調を防ぐことにもつながるでしょう。

例えば、「ハラスメント」や「多様性」など、時代とともに変化する社会通念に関して、労務担当として啓蒙活動できるのではないでしょうか。

労務担当者が社内相談窓口を担当するデメリット

「あの人のことを知っている」という先入観がもつ危険性

労務担当者が社内相談窓口を担当するデメリット

鵜飼さん:一方で、労務担当者が相談業務を行うデメリットですが、これはある種メリットの裏返しのようなお話にもなります。

それは、「日常の姿を知っている」からこそ、一定の先入観をもってしまうことです。

例えば、「最近あの人が落ち込み気味だな」と社内の方が気にかけていたとします。変化には気づいていたのですが、「あの人は野球のファンで、応援している球団の戦績が悪くて落ち込んでいるのかな」と思ってしまったというエピソードがあります。

ところが、本人は「あるプロジェクトで思うような評価が得られず、自信喪失していた」ということだったのです。よく知っている人だけに高をくくってしまうという怖さもあります。

メリット・デメリットを踏まえて外部カウンセラーと社内相談業務の検討を

鵜飼さん:労務担当の方が相談業務を担当する場合、通常の業務と並行することが一般的です。相談業務の分だけ業務量が増えるため、スキマ時間や合間で対応する感覚では、業務量がひっ迫してしまう可能性があります。

また、突発的に相談を受けることによって、労務担当者ご自身の仕事のペースが乱れてしまうことも考えられます。

相談業務とはいえ、あくまで同じ社員です。カウンセラーのように相談者の「気持ち」を受け止めることも大切ですが、同時に労務担当者として事実を確認することも必要になります。

また、相談業務を担当する際に「専業のカウンセラーではないわけだから、どういう立場で聞けば良いのだろうか」と、産業カウンセラーの養成講座に来られた労務担当の方から相談いただくこともありました。

相談する従業員の方にとっても、労務担当者は身近であるがゆえに、本音で話しづらいこともあるかもしれません。話した内容が別の人に共有されるかもしれない不安、人事評価への影響に対する不安を感じる可能性があります。

そのため、先ほどお話したメリット・デメリットを総合的に考え、外部のカウンセラーを活用しつつ、内部の労務担当者が相談業務を行うことを検討されるのが良いと思います。

社内相談窓口設置の際に決めておくと良いこと

社内相談窓口設置の際に決めておくと良いこと

鵜飼さん:これから社内に相談窓口を設置しようと検討されている場合に、先に決めておいたほうが良い点をまとめてみました。まずは、相談の枠組みです。

カウンセリングでは枠組みが重要です。例えば、50分と決めていたらその時間の枠組み。そして、約束の時間をきちんと守ることがとても大切です。

相談者さんが感情を吐露し、「50分なのに2時間も話を聞いてくれた」と。しかし、2回目は、50分で「終了ですね」と言われてしまったとき、スッキリしない気持ちを感じられたしまったケースがあります。あるいは、「他の方は長く相談に乗ってもらえたと聞いたが、私のときは時間通り」と思われるケースもあります。

それらが依存を生んだり、関係性に影響を与えてしまうため、カウンセリングの勉強をする際に枠組みは重要と強く指導されます。また、相談対応だけで通常業務ができないことも考えられます。専門のカウンセラーでなくとも、きちんと枠組みを決め、社内に周知させる必要があるのです。

相談時間を20分、あるいは30分、50分というように基本的な時間を決めておくこと。そして、何曜日の何時から何時までというように、相談可能な時間を決めて周知することで、労務担当の方の業務圧迫を軽減できるのではないでしょうか。

また、相談をどこで実施するのか、オンラインでも可能なのかといった「場所」を決めておくことも大切です。

次に、決めておくべきことは「窓口の申し込み方法」です。例えば、申込方法をメール等のツールを利用するのも良いかと思います。

藤田:ここで私から2点質問させてください。1点目カウンセリングのトレーニングについて鵜飼さんから20分や30分、50分と挙げていただきましたが、適切な相談時間の目安はどのあたりになるのでしょうか?

鵜飼さん:私の感覚ですが、カウンセリングのトレーニングを積んでいない方が集中してお話を聞けるのは、20分〜30分くらいが限界なのではと思います。

また個人差はありますが、20分〜30分経過すると、話を聞いている側がご自身の経験などから「何か言いたくなってしまう」ことがあります。しかし、それはあまり効果的でないこともあるため、話を集中して聞ける20分〜30分を目安にすると良いと思います。

藤田:ありがとうございます。

2点目の質問です。さきほど、「相談者様が感情を吐露してくださった」という例のお話がありましたが、相談者様が感情を吐き出した結果、うまくコミュニケーションが取れなかった場合、どう対応すればよいのでしょうか?

例えば、相談対応者となった労務の方が「思うように相談にのれず罪悪感が残ってしまった」と聞くことがあります。

鵜飼さん:たしかにコミュニケーションは難しくなってしまうかもしれないのですが、感情を吐き出すとスッキリするという面もあるんです。これを「カタルシス効果」といいます。一般的な社会生活を送っていると、あまりネガティブな感情を吐き出すことはないと思うんですが、「ここでは良いんだよ」と安心できる場として吐き出してもらうのは効果があることなんです。

普段出ない感情や本音がたくさんでたら、それは、対応した方もお役目を果たしていると思っていただいて大丈夫ですよ。私たちカウンセラーも「ここは心のお手洗いですから」とお伝えして話していただいています。

相談対応をされる方にとって、何もできなかったことに罪悪感や無力さを感じることもあると思うのですが、役割として吐き出してもらう必要性というのを、割り切っていただけたらと思います。

対応者のバーンアウトを防ぐための「守秘の範囲」と「限界」

鵜飼さん:また相談対応者のバーンアウトを防ぐために、「守秘の範囲」と「限界」を決められると良いかと思います。相談業務を受けている側の担当者が「つらくなってしまう」ことがあります。

そのため「集団守秘」といって、相談内容を対応者が胸の内にしまうのではなく、特定の範囲で情報共有できる状況を作るのが良いと思います。相談窓口を設置する際には、産業医や保健師など「事業場内産業保健スタッフ」、外部のカウンセラーのような「事業場外産業保健スタッフ」と連携を取れるように事前に話し合っておくことも大切です。

相談対応者がすべて対応するのではなく、「相談に対応できる範囲を超えているのでお願いします」というようにリファー(専門機関への紹介や支援の依頼)できる状態が理想です。

また熱心な企業様の中には、ストレス性疾患についての勉強会や事例共有などを実施しているところもあるようです。そのように、普段から連携のため企業とスタッフ間でコミュニケーションを取るのも良いのではないでしょうか。

労務担当部署、産業保健スタッフそれぞれを活かした協力体制を作る

相談後のフォロー

鵜飼さん:最後に、労務担当者が相談業務を行った後のフォローについてお話しします。労務担当者が相談を受ける中で注意しなければならないのが、担当者自身がつらくなってしまうバーンアウトです。

私たちカウンセラーはどんなにヘビーな話を聞いたとしても、そのことに感情が巻き込まれないトレーニングをしています。引きずってしまうと次の相談に響いてしまうため、次の面談の前には一旦手放してクリアにしています。

カウンセリングのトレーニングをしていない労務担当者の方が相談業務をされると、相談者のつらい気持ちがわかるだけに、罪悪感や無力さを感じるかもしれません。

そうならないためにも、労務担当の部署として相談対応者をフォローできる体制を作っていただきたいと思います。

相談内容を共有し、一緒に対応を検討して役割を分担できないかを考えます。また業務がひっ迫しないように、業務量のコントロールなども必要です。相談から帰ってきた担当者がつらそうにしていないか、いつもの状態に戻っているかを関心をもって観察していただけたらと思います。

また相談担当者ご自身は、「自分と他者の区別」をしっかりつけることが大切です。

これ以上は無理だと感じたら、迷うことなくプロの産業保健スタッフに委ねてください。まずはご自身の感情を吐き出すという体験もしていただきたいです。「ちょっとため息つきに来ました」のように、気軽にカウンセラーを使っていただくことが、全社的に相談業務を浸透させることにつながるため、率先して利用するのも良いと思います。

そのように、働く人の心の健康のために、それぞれの持ち味を活かしながら協力しあって支援できたら良いのではないかと思います。

質疑応答

Q:相談窓口についてハラスメントとメンタルヘルスを分けたほうが良いでしょうか?

藤田:ありがとうございました。ここからは質疑応答とさせていただきます。

まず、「相談窓口についてハラスメントとメンタルヘルスを分けたほうが良いでしょうか?」というご質問があります。

鵜飼さん:そこは企業にもよるかもしれませんが、メンタルヘルスはどちらかといえば人事・労務寄りで、ハラスメントはコンプライアンスを扱う部門のほうが適切かと思います。しかし、それも含めて人事・労務で対応されている企業も多いかもしれないですね。

藤田:私からも補足というか考えも含めてお伝えすると、ハラスメントとメンタルヘルスの窓口というのは、まず機能が違うと思います。どちらも対応されていたらすごいですね。とはいえ弊社の「Smart相談室」では、なんでも相談して良いとしているんです。

Smart相談室を導入した結果、ハラスメントに関する相談が来るようなこともあります。ハードルの低さだけでいうと、もしかしたら分ける必要がないかもしれません。

一方で、そういった相談が来たときにハラスメント、メンタルヘルスそれぞれにあった専門的な対応ができなければなりません。そのためSmart相談室では、それぞれの専門領域の方に対応してもらうことがあります。

鵜飼さん:藤田さんがおっしゃるように、対応や聞き方が異なるので、1人では難しい面がありますね。そこをうまく切り替えられる方が担当するか、完全に担当を分けるのも良いかもしれません。

Q:相談と相談の間はどのくらいあけていますか? 聞き役が記録を残す上で、技量にもよると思いますが、目安の時間を教えてください

藤田:ありがとうございます。続いては枠組みに関する質問が届いています。「相談と相談の間はどのくらいあけていますか? 聞き役が記録を残す上で、技量にもよると思いますが、目安の時間を教えてください」

鵜飼さん:専門のカウンセラーであれば、カウンセリングとカウンセリングの合間に10分間の時間がある場合が多いです。その間に記録を書いて、お手洗いを済ませ水を飲むようなイメージです。

初めて相談を担当するカウンセラーの方は、10分は難しいと思うので20分〜30分くらい見ておくと落ち着いて記録を取り、気分を変えやすいのではと思います。

Q:企業と個人の板挟みになることがありました。どの程度まで企業に報告したら良いのでしょうか?

藤田:ありがとうございます。続いては相談を受けた経験のある方からの質問です。「企業と個人の板挟みになることがありました。どの程度まで企業に報告したら良いのでしょうか?」

鵜飼さん:基本的には、相談者さんとどこまで企業に共有するかを話し合っておくことが大切です。「ここまでは良いけど、ここは絶対に言わないでほしい」という意向を伺うのが基本です。また、事前に「ここまでは共有しますよ」とお伝えしておくのも良いと思います。

藤田:ありがとうございました。社内相談窓口設定において、参考になるお話をありがとうございます。以上でセミナーを終了いたします。

※記事で紹介した他にもたくさんの質問をいただき回答させていただきました。ご興味があればぜひ次回のセミナーにご参加ください。

▼Smart相談室について

Smart相談室は、従業員のモヤモヤを解消し、個人の成長と組織開発を促すEAP(従業員支援プログラム)サービスです。
メンタル不調はもちろん、業務内容、プライベートなこと、ハラスメントの訴えまで、様々な相談にオンラインで対応します。メンタル不調になる前に対応することで離職を防止します。

詳細はこちら:Smart相談室

【執筆:宮川 典子】

SmartHR Mag.編集部員。子育て・働く女性向けのWebメディアの編集・ライティング担当、HRサービスのマーケティング担当を経て、2020年SmartHRに入社。主に「導入事例」の編集に携わる。ダンスが好きな関西人。
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