【第6回 人材像WG】“人材育成”と“女性復職”の肝/リカレント教育に「出口戦略」が必要なワケ

2018.01.18 ライター: 藤田 隼

AIやIoTといった次世代テクノロジーを中心に、第四次産業革命が到来していると言われる中、産業構造の変化はもちろん人の働き方も大きな転換点を迎えています。

「人材力」こそが企業競争力の源泉たる要素として注目され始め、「一億総活躍プラン」の流れの中で「働き方改革」とともに「人づくり革命」などの議論が活発化しています。2017年9月に発足し、HR業界をはじめ各所で話題になっている「人生100年時代構想会議」も、まさに同様の文脈に端を発しています。

その流れを受け、経済産業省主導のもと「我が国産業における人材力強化に向けた研究会(人材力研究会)」が設置され、それに紐づくワーキンググループのひとつ「必要な人材像とキャリア構築支援に向けた検討ワーキング・グループ(人材像WG)」が、2017年10月16日より始動しました。

2018年1月12日に開催された第6回「人材像WG」のレポートをお送りいたします。

なお背景となる要旨、及びこれまでの展開は過去のレポート記事をそれぞれご覧ください。

第6回 人材像WGのテーマ

前回のWGでは、ゲストスピーカーとして株式会社日本総合研究所の山田久理事と、NewsPicksの佐藤留美副編集長が登場。また、中核人材確保WGより参加する、株式会社日本人材機構の小城武彦社長もプレゼンを行い、メンバーシップ型とジョブ型とを上手く組み合わせた「ハイブリッド型人事」や、大企業から地方企業への人材移動、NewsPicksによる公募型の政策提言などが主な内容となりました。

そして今回のWGでは、プロ人材の転職マッチングサービス「Warisプロフェッショナル」や女性の再就職支援「Warisワークアゲイン」などを手がける株式会社Warisの共同代表 田中美和氏と、人材育成をはじめとした総合的な人材事業を展開するキャプラン株式会社の研修ソリューション営業部 第3チーム長 臼井秀光氏がゲストスピーカーとして登場。「女性の復職支援」や「人材開発設計」などの重要なポイントについて紹介されました。

女性の再就職支援にはキャリア自律意志と一貫した支援の双方が必要

田中美和氏(写真提供:経済産業省 産業人材政策室)

まず、株式会社Warisの共同代表 田中美和氏によるプレゼン。同社では、フリーランス女性と企業とのマッチングサービス「Warisプロフェッショナル」や女性のための再就職支援サービス「Warisワークアゲイン」などを事業展開しており、多様な働き方を求める約4,000名の女性プロ人材が登録しています。

今、「女性活躍」が叫ばれる一方で、育児と介護のダブルケア問題などが徐々に顕在化するなど、世の中的な課題も多く抱えます。その中で、「復職」「再就職」は女性が人生とキャリアと向き合う中でのひとつの壁であり、一筋縄ではいかない現状があります。

「離職期間」が女性から奪うもの

田中氏はその壁となる要因について、企業側・女性側の双方にあると述べています。

まず、企業側の要因としては、求職者が元々持っている経験やスキルの如何に関わらず、「離職期間の長さ」を理由に正社員の採用対象から外してしまう傾向があることです。

一方、女性側の要因としては、主な再就職先である「パートタイムの仕事」では、やはりキャリアアップが困難であり、離職期間中にかつて持っていた経験やスキルに自信がもてなくなってしまうことが考えられます。

女性復職支援の対策は一気通貫で考えるべき

同社の事業におけるこれまでの取り組みの中で、女性復職支援に関する課題について以下ように分析しています。

  • 40代前後のブランク人材層においてはコアキャリアを持たない人が圧倒的に多いこと
  • 再就職先は人手不足感の強いところにフォーカスする必要があること
  • 自身の単価をあげていくためには、スキルアップの様な継続的な学びの場が必要であること
  • 継続的に支援するキャリアの伴走者が必要であること

 

これらを踏まえ、女性の再就職にあたっては、

  1. 継続的なスキルアップ
  2. 産業界で必要とされる知識を踏まえた学び直し
  3. インターンシップを通じた自信の回復、自分に合った働き方(再就職先)の選択

 

上記のようなフローが必要であるとし、これらを相互に循環させ、一気通貫した支援をすることが必要であると提言しています。

ここで重要なのは、女性自身でもスキルアップと産業構造の変化やその情報のキャッチアップに臨み、そして自らのキャリアと向き合う必要がある、つまりこれまでのWGでも散々議論された「自律的なキャリア形成の意志」が求められということです。

支援する側としても、その本人の自律を促す、一気通貫の視点でのサポートが重要になってくるでしょう。

成果創出の観点から人事制度と連携した「研修制度」づくりが肝

臼井秀光氏(写真提供:経済産業省 産業人材政策室)

続いて、キャプラン株式会社 研修ソリューション営業部 第3チーム長 臼井秀光氏によるプレゼンです。

同社の手がける人材育成は、

  • 自己表現力や発信力を始めとしたビジネスマナーやコミュニケーション
  • マネジメント
  • グローバル

 

の3つのカテゴリーで企業向けの研修事業を実施しています。

リーマンショック以後は低調の時期もあったようですが、研修という単体のサービス提供ではなく、人事制度と連動し、そして研修制度の全体像を設計するフェーズから携わっていったことで事業も上向き、クライアントの成果創出に貢献しているようです。

その中で蓄積された知見をプレゼンにおいて紹介しています。

まず「研修」ありきで“スキル”や“行動の質”を上げようとしても成功に結びつかないため、「そもそも何故そのスキルが必要なのか」という必要性の腹落ちが大前提として求められること。

人材開発研修の具体的ポイント

そして、それを踏まえた上で、人材開発研修の具体的ポイントを以下の5点にまとめています。

  1. スキルばかり磨いても意味がない。OSに相当するような、マインド研修の重要性を認識すべき。
  2. あくまで人事制度や社風が研修と連動する必要あり
  3. 社員が「受講したい!」と思うような研修設計
  4. 研修前後でのビフォーアフターを意識すべき
  5. 研修効果の継続性を意識した設計をすべき。キャプランでは、EQを定量的に前後で測定し、研修前後での効果を測定している。

 

各企業で長年実施されているような研修制度の中には、研修担当と受講者側の思惑が一致せず、「とりあえず受けるのが当たり前だから」と、形骸化してしまうケースも珍しくないでしょう。あるいは、研修が実際に効果を発揮しているのかどうかがイマイチつかめないという、やりっぱなしのケースも考えられます。

一方、臼井氏の提言のように、大前提となる必要性(そのほか認識齟齬の解消も含めた)理解のうえで、事業KGI/KPIや個人成果、そして評価をはじめとした人事制度の連携など、研修制度の全体を成果創出の観点からロジカルに設計できれば、前述のようなネガティブケースの懸念も解消されるだけでなく、最終的な成果に繋がっていくかもしれません。

意見交換

続いて、委員・オブザーバーも加わり意見交換されました。

まず、プレゼンに続き田中氏による発言。

「出産・育児などを機に一度離職した女性は、ブランク期間に論理的思考力、コミュニケーション能力が低下しているわけではない。スキル面よりむしろブランクがあることによる自信の喪失が課題」とコメント。その一方で、「“働ける喜び”を感じる彼女たちは企業へのコミットメントが強い傾向がある」としています。

個人の成長推進には「企業のベクトル」との整合性で課題?

続いて、臼井氏は「EQ(心の知能指数)」の有効性について言及。研修の前後で各個人のビフォーアフターを定量的に可視化できるほか、個人だけでなく組織の開発状況としても間接的に効果測定できるメリットを挙げています。

加えて、若手や部下に研修を受けさせるだけではなく、上司も同様の研修を体験することで、どのような研修内容のもと、部下がどのような考え方や行動をしているかについて認識する必要があることについてもコメントしています。

垣見俊之氏(写真提供:経済産業省 産業人材政策室)

一方、今回そして前回までのWGも踏まえ、キャリア自律や柔軟な働き方推進に基づく人材流動性が話題になる中で、企業側として個人の成長を臨んでも、転職もしてほしくないのも同時に本音であり、「個人の成長と企業のベクトル」を合わせる必要があるのではないかと、委員の伊藤忠商事 人事・総務部長 垣見氏がコメントしています。

リカレント教育のカギは「出口戦略」。学びと活躍の連動的な経験が必要

米田瑛紀氏(写真提供:経済産業省 産業人材政策室)

エッセンス代表 米田氏は、大人になっても学び直す、あるいは学び続ける「リカレント教育」のポイントについて、学ぶことはもちろん大切だがそれだけでは不十分で、実際にそれを生かして何をアウトプットしたいのか、どうアウトプットしたいのかなど「出口戦略」をあわせて考えることが求められるのではないかと発言。

西村創一朗氏(写真提供:経済産業省 産業人材政策室)

続いてHARES代表 西村氏も「インターンシップなどを通じ、学んだスキルを実際に発揮する経験をさせることが必要」と、同様のコメントを残しています。

学びと活躍の連動性に関し、リクルートジョブズ ジョブズリサーチセンター長 宇佐川氏は「人材難に悩まされる企業も、優秀な人材確保のため大学と積極的に連携し、学びと仕事を関連づける講座を開発するなど、採用に生かしていくべきではないか」としています。

宇佐川邦子氏(写真提供:経済産業省 産業人材政策室)

まとめ

ただ「学ぶ」「研修を受ける」ではなく、どのような目的や意志のもと主体的に学び、成果創出へと繋げるのか。企業側は、それをどう後押しし、研修から評価など包括的な人事制度としてデザインするのか。教育機関はどのようなカリキュラムのもと企業へ人材を輩出するのか。また、経産省や厚労省をはじめとした行政機関は、それら個人・企業・教育機関をどう助成していくのか。

これらは、就職や転職、出産・育児、介護、転居・転勤など、ライフステージや環境の変化も見据え、「人生100年時代」として捉える必要があるはずです。誰もが自分ごととして捉えるべき重要事項であると言っても過言ではないでしょう。

産官学いずれの視点も含めたこれからの動向に注目です。

※ 田中氏・臼井氏のプレゼン後、経済産業省 産業人材政策室 出光補佐より「『働き方改革』と『人づくり革命』の最近の動向」、また伊藤参事官よりこれまでのWGを振り返った全体像説明がありましたが、当記事とは切り離し、機会を改めて個別でまとめ紹介させていただきます。

【参考】人材像WG委員名簿(敬称略)

■ 「必要な人材像とキャリア構築支援に向けた検討ワーキング・グループ」委員
垣見 俊之 伊藤忠商事株式会社 人事・総務部長
諏訪 康雄 法政大学 名誉教授【座長】
西村 創一朗 株式会社HARES 代表取締役
米田 瑛紀 エッセンス株式会社 代表取締役

■ 「中小企業・小規模事業者・スタートアップ等における中核人材の確保・活用促進に向けた検討ワーキング・グループ」より参加
宇佐川 邦子 株式会社リクルートジョブズ ジョブズリサーチセンター長
小城 武彦 株式会社日本人材機構 代表取締役社長(代理 矢野社長室長)
宮島 忠文 株式会社社会人材コミュニケーションズ 代表取締役社長

■ ゲストスピーカー
田中 美和 株式会社Waris 代表取締役/共同創業者
臼井 秀光 キャプラン株式会社 研修ソリューション営業部 第3チーム長


【編集部より】人事部に今後求められる姿とは?

人事部の現状と今後の姿
人事部の現状と今後の姿 smarthr

多くの人事担当者が「今後求められる姿」を認識しながら、現状にギャップを感じていると答えています。「人事担当者が今後求められる姿は何か?」「なぜ理想の姿と乖離があるのか?」「何が課題となっているのか?」について調査し、解決策を提示します。

藤田 隼

SmartHR mag. 2代目編集長。ソーシャル系スタートアップでSNSマーケティングや自社メディア運営に携わり、2015年よりメディアに特化した事業会社で複数サイトのディレクターを経験した後、SmartHRにジョイン。ウェブ解析士。
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