#スマレジ会 から学んだ、飲食業における「採用・人材力強化」3つの基軸

2018.06.29 ライター: 藤田 隼

これまで全4回でお届けした【 #スマレジ会_Meetup Vol.6 】の潜入レポート。人材難が叫ばれる飲食業界において躍動する株式会社favy と株式会社なすび は、いかにして採用に成功し、どのような人事施策によって人材力・定着率を高めているのかについて紹介してきました。

単に採用強化に努めるだけでなく、明確な労務体系・管理、人材活躍、そして企業成長など、人材にまつわるわらゆるフェーズを想定した上での採用ノウハウが明かされ、飲食業界はもちろん、それ以外の業界においても参考にすべき示唆に富んだ内容でした。

折角なので、本稿において、一連の講演・パネルディスカッション内容からまとめて考察していきたいと思います。

「採用」と「人材力」の密接な関係

この度のイベントのテーマは『人手不足を解消し最適な人材を採用するには?』でした。端的に言うと “採用の強化” がひとつの軸になっています。

では “採用の強化” とは何なのか。施策の強化でしょうか? 施策強化によって内定者を増やすことでしょうか? 間違いではないかもしれませんが、しかしそれは手段に過ぎないでしょう。

ここで考えるべきは、採用した人材を戦力化・定着化させ、活躍に導くか。「採用」と「活躍」はセットで考えるべきものといえます。

favy 渡辺さんが、人材の成長について「採用が90%」「採用方法=人材定着」と語るように、採用と定着を切り離して捉えるのではなく、入社後の活躍までを描く一貫した人事施策の中で、いかにして採用にこだわり、結果的に人材力を高めることができるのか。これが「採用強化」のベースではないでしょうか。

飲食業における「人材力強化」3つの基軸

今回のイベント内容から得られる示唆として、飲食業の「人材力強化」において、大きく分けて3つの基軸がありました。

各軸とそれに付随する施策例を以下に整理します。

(1)経営者・企業の率先した取り組み

経営者自ら人材と向き合い、旗振り役となっていくことが重要です。全体の指揮をとりつつ、ときに自ら辣腕を振るうことが求められます。最近では、なすび社のように、経営陣が人事機能を担い、採用や労務を強化するケースも増えています。当然、経営陣のリソースは大変貴重です。単に施策を進めるだけでなく、スマレジをはじめとしたITツールを活用するなどして、効率的に取り組むことも重要です。

また、人材と向き合うには、資金面等の企業体力も求められます。無い袖は振れません。その点、なすび社では、経営陣はもちろん企業としてもコミットしています。

具体的には、FL比率を徹底的に管理し、高い利益率を確保することで、その利益を社員旅行などのかたちで従業員に目一杯還元しています。そのための取り組みとして、家賃のかからない行政施設へ出店すべく、地道なCSRや広報活動に取り組み、行政や地域から信頼を獲得しています。

このように、経営者・企業からの率先した取り組みが必要だと考えられます。

(2)採用ブランドの確立

求職者からの「外食産業の人気度が低い」ことはこちらの第1弾記事で触れているとおりですが、あわせてまだ企業規模が小さく知名度が低い場合、やはり入口となる採用で苦労することになる可能性が高いです。また、力技で採用を進めようとすれば、広告等の手段に頼らざるを得ません。しかし、その場合、採用費が嵩んでしまうことにも目を向けなければなりません。

そこで生きてくるのが「採用ブランドの確立」です。

favy社では「Wantedly」を通し企業理念やミッションを発信することで、求職者の共感、そして応募を集めています。継続的な社員インタビュー記事の発信も地道に行い、直近1年間では、1万円台という驚異の採用単価で100人の採用に成功しています。

そのブランドを訴求する、採用チャネル選択も重要です。具体的には、自社・自店舗で活躍する人材はどのような特徴があるのか? どのようなペルソナなのか? などを踏まえ、適切なチャネルを選定することが求められます。同じくfavy社では、ターゲット年齢層の若いソフトクリーム専門店のスタッフ採用において、りゅうちぇるさんのような象徴的なインフルエンサーを定め、Twitter上でフォロワーターゲティング広告を実施。700円を切るエントリー単価を実現させています。

また、なすび社では、先述のようなCSRや広報活動はもちろん、仕事以外の日常シーンも含めSNS発信し、露出・ブランド向上を図っています。例えば、ハワイをはじめとした豪華な社員旅行が持つ効果は、従業員満足度を高めるにとどまりません。

その様子をSNSに投稿することで友人の目に触れる機会をつくり、「あの会社素敵だな」「あの人達と働いてみたいな」と、採用へのひとつのきっかけとなっています。社員と向き合うことが結果的に採用ブランドの向上に寄与する、ひとつの好循環といえるのではないでしょうか。

(3)働きやすさ×働きがいという両軸の仕組み化

favy、なすび両社は、入り口となる採用を頑張って終わり、ではなく、その後の活躍やキャリアステップもイメージし、仕組み化に取り組んでいます。

両社の具体的な取り組みには、下記のような取り組みが挙げられます。

■ 働きやすさ(従業員満足度)

  • 柔軟で多様な働き方の受容
  • 労働柔軟性を担保する「労務体系」の明確化
  • および労務の効率化
  • 海外旅行等の充実した福利厚生

■ 働きがい(従業員エンゲージメント)

  • 公共性・公益性
  • キャリアロールモデル
  • マネジメントコース/スペシャリストコースという選択肢
  • ほめ合う文化、ピアボーナス

特に、15個もの人事施策に徹底的に取り組むなすび社は、人材難が進みつつある地方飲食企業でありつつ、約9%という驚くべき離職率を誇ります。働きやすさ×働きがいという両軸をともに大切にする、同社の強いコミットメントが結果として現れているといえるでしょう。詳細の施策内容はバックナンバーよりご覧ください。

採用は「内定がゴール」ではない。一貫した人材戦略を

繰り返しになりますが、入社後の活躍までを描く一貫した人事施策の中で、いかにして採用にこだわり、結果的に人材力を高めることができるかが、採用強化において重要なポイントとなります。

「採用」は、内定がゴールではありません。

ぶれない企業理念とビジネスモデルを打ち立て、経営者が率先して従業員に浸透させ、その中で活躍する人材像を定義できるか。そこから共感で人材を呼び込み採用へと繋げ、いかに働きやすく活躍できる労務体系を構築できるのか。

どの軸も抜け漏れなく、一本芯が通った人材力強化に努めていくのが、今後求められる働き方改革なのかもしれません。

藤田 隼

SmartHR mag. 2代目編集長。ソーシャル系スタートアップでSNSマーケティングや自社メディア運営に携わり、2015年よりメディアに特化した事業会社で複数サイトのディレクターを経験した後、SmartHRにジョイン。ウェブ解析士。
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