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【後編】社員の期待値ギャップをなくし、魅力的な組織を作るポイント

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目次

若手社員・優秀社員の「離職要因」「離職対策のポイント」を前編では紹介しました。離職対策を検討するうえでは、「社員の会社へのエンゲージメント」を意識することも非常に重要です。後編では、「離職とエンゲージメントの関係性」「エンゲージメント向上の取り組み」について解説します。

前編はこちら

離職対策はエンゲージメントを意識

エンゲージメントとは、社員の組織への愛着やコミットメントを示す指標です。「会社の役に立つこと」「お客様の役に立つこと」を仕事の目的としない社員が多い状態はエンゲージメントが低いといえます。エンゲージメントが低いまま、社員の「やりがい」や「成長」を高めてしまうと、最終的にどこかのタイミングでよりよい環境を求めて会社を離れてしまう、もしくは高めた能力が会社のために発揮されにくい状況を作ってしまいます

エンゲージメント向上の取り組み

それでは、エンゲージメントを向上させるためには何をすればよいのでしょうか。

心理的安全性とキャリア安全性がプラスに影響

リクルートワークス研究所が発表した調査では、職場の「心理的安全性」と「キャリア安全性」はエンゲージメントにプラスの影響を及ぼすことがわかっています。

「心理的安全性」とは、チームの誰もが非難される不安を感じることなく、自分の考えや気持ちを率直に発言できる状態です。「キャリア安全性」は、会社に居続けられるかどうかではなく、自身が在籍する会社以外の場所でも通用するキャリアを築けているかどうかです。

この「心理的安全性」と「キャリア安全性」の2つを高めていくことがエンゲージメント向上や、その先の若手社員・優秀社員の離職対策に非常に有効です。

※出典:心理的安全性が高いだけの職場では、若手は活躍できない(リクルートワークス研究所)

マネジメント層との認識のズレ埋めもポイント

もうひとつ、メンバーとマネジメント層の認識のズレを理解し、改善することもエンゲージメント向上には必要です。若手社員・優秀社員の特徴として、「やりがい」や「成長」に関心が高いと、前編から紹介してきました。しかし、この認識はマネジメント層とギャップがあり、月刊総務がマネジメント層に行った調査によると、41%のマネジメント層が若手社員に「キャリアアップ(昇進)の意欲が全くない」と感じています。こうしたメンバーとマネジメント層の認識のズレを埋めていくこともエンゲージメント向上に欠かせません
※出典:Z世代のマネジメントについての調査(月刊総務)​​

エンゲージメント向上へサーベイをどう活用するのか

エンゲージメントの向上には「現状のエンゲージメントの把握」とともに、「心理的安全性」「キャリア安全性」の確保、「社員とマネジメント層の認識ギャップ」の把握を進める必要があると説明しましたが、そのためにはサーベイを活用し、定量的な現状把握と改善を繰り返すことが効果的です。

サーベイ活用の切り口 - エンゲージメント

サーベイを用いてエンゲージメントを調査するためには、JD-Rモデルという理論を用います。JD-Rモデルは、「仕事の資源」「個人の資源」「仕事の要求度」の3つの要素がエンゲージメントに影響するという考え方です。

「仕事の資源」は、裁量性や上司のサポート、フィードバックなど。「個人の資源」は、自己効力感や楽観性などで、ここにプレッシャーや精神・肉体的不安などの「仕事の要求度」がどれだけ高いかが掛合わさっていきます。

「仕事の要求度」とコントロールのバランスが取れていない場合、社員は仕事にストレスを感じるとともに、さまざまな「仕事の資源」も活用できなくなり、エンゲージメントが低下します。一方、「仕事の資源」が豊富にある場合、「仕事の要求度」の高さに関わらず、エンゲージメントが高まるといわれています。こうした「仕事の資源」「個人の資源」「仕事の要求度」をサーベイを用いて把握し、エンゲージメントの改善を進めます

具体的な質問ですが、たとえばSmartHRのサーベイでは、JD-Rモデルをベースに作られた新職業性ストレス簡易調査票の質問を利用しており、成長の機会や会社の理念、行動指針への共感度、報酬の納得感などの項目を用意しています。

エンゲージメントを調査するサーベイの項目例

サーベイ活用の切り口 - 心理的安全性

心理的安全性は、ハーバード大学のエドモンソン氏が定義した7つの質問を参考に確認するとよいと思います。しかし、実際に利用しようとすると「チームに対してリスクのある行動をしても安全である」というような「リスク」の解釈が難しい質問があったり、分析をする際に心理的安全性の効果を得られない原因がわかりづらい部分があります。

そのため表現を工夫するとともに、「心理的安全性を実践できているか」と「心理的安全性を醸成できているか」の2つをバランスよく確認していくことがポイントになります。仮に両方低い場合には、関係構築が重要になるため、まずは心理的安全性を高める取り組みに注力して組織を作っていくのがよいと思います。

逆に醸成だけうまくいっている会社もあると思います。それはいわゆる仲良し組織になってしまう危険性もあるので、そうした良好な関係を建設的な議論に活かしていくと心理的安全性が高まっていきます。

※出典:「効果的なチームとは何か」を知る(Google re:Work )

エドモンソン氏が定義した7つの質問

サーベイ活用の切り口 - キャリア安全性

リクルートワークス研究所のキャリア安全性の質問では、「このまま所属する会社の仕事をしていても成長できないと感じる(時間視座)」「自分は別の会社や部署で通用しなくなるのではないかと感じる(市場視座)」「学生時代の友人・知人と比べて、差をつけられているように感じる(相対視座)」という設問をしています。

さらに、「そもそも今の仕事にやりがいを感じることができているか」「自分のキャリアのための経験を積めていると感じているかどうか」「直接的に1年以内に異動したいなどあるか」という質問も設けることで、社員のキャリア安全性を高める打ち手が考えやすくなると思います。

※出典:職場の「キャリア安全性」を考える(リクルートワークス研究所)

リクルートワークス研究所のキャリア安全性の3つの質問

サーベイ活用の切り口 - 認識ギャップの把握

メンバーとマネジメント層の認識ギャップを意識しながら、メンバーがマネジメント層に対して何を期待しているかを把握します。たとえば、マネジメント層がメンバーに対して「こんなことをしよう」と方針を伝達しているかや、メンバーの得意不得意、希望キャリアを把握しているかなどの設問をします。

また、マネジメント層にもメンバーを自ら引っ張っていくことが得意な人と、メンバーを支えていくことが得意な人がいます。こうしたマネジメント層の特性を360度評価などを活用して把握することも重要です。そうすれば、メンバーが引っ張ってほしいタイプであれば、方針伝達が強い人をマネージャーに任命するといった配置が可能になり、認識ギャップのズレ埋めにつながります。

メンバーとマネジメント層の認識ギャップを把握するためのサーベイの質問例

離職対策は組織づくりとエンゲージメント向上から

若手社員・優秀社員の離職を防ぐためには、成長環境や処遇を改善するだけではなく、会社へのエンゲージメントを高めることが重要です。そして、「エンゲージメントを高める」ためのポイントが「心理的安全性」「キャリア安全性」の向上であり、マネジメント層が中心となってメンバーに合わせたキャリア形成や会社の魅力を伝えていくことです。

ぜひこのあたりを意識しながら、サーベイを活用した組織の現状把握・改善を繰り返し、魅力的な組織づくりに取り組んでいただければと思います。

お役立ち資料

3分でわかる! SmartHRの従業員サーベイ

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