「試用期間は解雇しやすい」は間違い! 試用期間と解雇の関係とは
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通常、試用期間は、正規の従業員として適性を有するかを判断する期間として設置されています。
この間は、適性がないと判断すれば、会社が本採用を拒否できるという解約権が付いた労働契約が成立しているということになります。
そのため、本採用拒否の問題は、会社に広い裁量が認められる「採用」の問題ではなく、労働契約を解約させるという「解雇」の問題として扱われ、試用期間といえども実際には厳しい制限を受けることになります。
試用期間“満了時”の本採用拒否
試用期間といえども、本採用拒否は解雇にあたるため、「客観的に合理的な理由」があり、「社会通念上相当」と認められる必要があります。
勤務態度の不良や職務能力の不足を理由に本採用を拒否する場合、平均的な従業員よりもその程度が著しく、会社が指導・教育をしても改善の可能性がほとんどない場合でなければ、本採用拒否は無効とされる可能性があります。
会社としては本採用拒否の具体的な根拠を客観的な資料に基づいて示せるようにしておく必要があります。
試用期間“途中”の本採用拒否
試用期間は、会社が正規の従業員として職務を行えるように「指導、教育する」期間でもあります。
そのため、試用期間の途中で解雇する場合には、残りの試用期間に会社が指導、教育することで本採用の基準に到達する可能性が残されている以上、本採用拒否は無効とされる可能性がより高くなります。試用期間途中で本採用を拒否するには、より高度の合理性と相当性が必要となります。
採用する前に見極めることが大切
実際に本採用拒否が適法と判断されるには、かなりハードルが高いことになります。
そのため、会社としては、本採用にあたって必要な能力を客観的に判断できるような仕組み(例えば、本採用前に社員登用試験を実施するなど)を作っておく必要があります。
なお、本採用拒否の場合にも、試用期間開始から2週間を超えると、労働基準法20条1項に定められた解雇予告が必要となるため、こうした手続を適法に行うことも重要となります。
本採用にならなかった場合の失業保険の取扱い
失業手当を受給するためには、一定期間、失業保険に加入していることが必要になります。本採用拒否となった場合には退職理由が「解雇」となり、特定受給資格者に該当するため、退職日以前1年間で6か月以上加入していれば、失業手当を受けることができます。
しかし、ほとんどの企業が試用期間を6か月程度よりも短く設定しているため、新卒者が本採用を拒否された場合、失業手当を受給できることはほとんどありません。