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注目あびる「限定正社員」人事が知るべき注意点とは?

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目次

こんにちは、特定社会保険労務士の小高 東です。

「限定正社員」普及にまつわる規制緩和策などの動向が注目を集めています。

今回は、限定正社員の概要や注意点等について解説します。

「限定正社員」とは?

正社員と非正規社員の二極化を緩和し、労働者一人ひとりのワーク・ライフ・バランスと、企業による優秀な人材の確保・定着を図るため、労使双方にとって望ましい多元的な働き方の実現が求められています。

「限定正社員」とは?

従来の働き方のように、正社員と非正規社員だけに働き方が二極化されていては、働き方の選択肢が限定され、多様な人材を生かせません。

次表のように、正社員と同様に無期雇用契約でありながら、労働時間・勤務地・職務等の1つ以上が雇用契約で限定された働き方を「限定正社員」といいます。限定内容(勤務時間、勤務地、職務)を組み合わせることで、 企業の実情に応じたバリエーションが広がります。

具体例

注目を集める背景として、以下のようなポイントで期待されています。

(1)労働人口減少による人手不足対策の手段として活用
(2)無期転換ルールに対応する手段として活用

「限定正社員」のメリット

限定正社員の導入・運用は、労使双方に以下のようなメリットが考えられます。

企業側のメリット

(1)優秀な人材の離職防止

育児・介護など、家庭の事情等により転勤やフルタイム勤務が困難な従業員の離職防止となります。

(2)多様な人材の受け入れ

地元就業を希望する優秀な人材の採用や定着促進につながります。

(3)その他

業務効率化、給与水準と業務水準の調整、従業員のモチベーション向上、業務量の変化への対応、無期転換の促進、企業イメージの向上、企業ロイヤリティの向上が考えられます。

労働者側のメリット

(1)ワーク・ライフ・バランスの実現

多様な働き方が可能となり、ワーク・ライフ・バランスを実現しやすくなります。

(2)非正規社員のモチベーションアップ

非正規社員から限定正社員への転換制度を導入することにより、非正規社員のモチベーションアップにつながります。

「限定正社員」の動向

各所の調査によると、限定正社員という雇用区分を導入している企業のうち、取り組みの内訳は次表のとおりです。

「限定正社員」の動向

それぞれ調査団体が異なり同じ調査対象者に一定期間ごとにアンケートを行う「パネル調査」ではないため、推移については言及できませんが、RIETIの調査ではいずれも5割弱〜6 割程度であり大きな偏りはなく、様々なニーズに応じて働きやすい限定正社員制度に取り組んでいるのではないかと推測されます。

【出典】
・厚生労働省
「多様な形態による正社員」に関する研究会報告書
・独立行政法人経済産業研究所(RIETI)
多様な正社員の働き方の実態-RIETI「平成26年度正社員・非正社員の多様な働き方と意識に関するWeb調査」の分析結果より

「限定正社員」の注意事項

限定正社員制度を正しく運用する上での注意点もあります。

(1)限定正社員の内容の明示

労使トラブルを未然に防止するためにも、限定する具体的内容・処遇等を就業規則、雇用契約書に明示し周知する必要があります。

(2)限定正社員転換制度

正社員から限定正社員への転換、あるいは非正規社員から限定正社員への転換において、それぞれ下記のような注意点があります。

1. 「正社員」から「限定正社員」

転換要件、実施時期、回数制限、限定正社員から正社員への再転換について明確にする必要があります。

2. 「非正規社員」から「限定正社員」

転換要件、実施時期について明確にする必要があります。

(3)労使コミュニケーション

企業として、現在、そして未来、どのような限定正社員制度が必要であるのか、労働者からの意見も取り入れましょう。“納得感”が成功へのキーワードとなります。

(4)意識改革

多様な雇用形態ができることにより、仕事の割り振りや評価、賃金体系の再構築など新しいマネジメントが必要となり、活用は簡単ではありません。

おわりに

高度経済成長、年功序列、終身雇用、専業主婦時代の働き方の二極化は終焉を迎えています。

企業としては、新時代の働き方として必要不可欠な「限定正社員」の導入をいち早く検討する必要があります。

(了)

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